413 / 702
【高校編】分岐・山ノ内瑛
おめでとう
しおりを挟む
結局のところ、私はただのコムスメなんだよなぁ……と実感したのは、校則の改革の件で。
「敦子さんの鶴の一声なんだもんなぁ」
家のリビングでぶうぶう言ってると、シュリちゃんに小突かれた。
「いたっ」
「目的が達成できたんだから御の字じゃないの。何か文句あんの?」
「……ないです」
おでこを両手でおさえながら、私はそう答えた。
校則の改革、OG会の強烈な反対を押し切ったのは「時代です」っていう敦子さんのひとこと、だった。
「さすがにあのBBA共も常盤コンツェルン総帥には逆らえなかったみたいねぇ」
「権力う」
まぁそれに助けられてるっていうか、権力傘にきてるのは私なんだけれど。
(悪役令嬢感、はんぱない)
そんな感じの11月半ば、学校へ行って、私はこっそりバスケ部の朝練を眺める。
(まさか生徒会室がこんなに眺めが良かったなんて)
ふふふ、と役得役得、と呟いた。
生徒会室の窓からは、グラウンドが見渡せる。
さすがに体育館は無理だけど、こうやって外練してるのをこっそり見るのは可能なのでした!
(あー、走ってる)
アキラくんはめっきり寒いのに、暑いのか上ジャージ脱いで友達と騒ぎながら走ってるみたいだった。グラウンド何周くらいするのかなぁ。
「ぼ、望遠鏡買おうかな」
「星でも見るのか?」
背後からのツッコミに振り返ると、そこには樹くんが苦笑して立っていた。
「あ、えへへ、おはよー」
「山ノ内か」
「うん」
あー、なんかアレだな、ストーカーチックだとか思われてそうですよ?
「樹くんはどうしたの」
ごまかすようにそう聞くと、生徒会長の机からノートを取り出す。
「少し議題をまとめておこうかと」
「……忙しいよね?」
樹くんはかたをすくめる。
「大したことはないさ」
「そうかなぁ」
部活に勉強に、生徒会。
「それはそうとして、例の校則の件。良かったな」
「あ、うん」
私は頷いた。
「おかげさまで、だよ」
「? 俺はなにも」
「静子さんも加勢してくれたみたいだから」
静子さんは、樹くんのおばあちゃん。やっぱり青百合の卒業生で、発言力は相当強かった。
そう言うと、樹くんは苦笑した。
「あの人はそもそも縛られるのが嫌いなんだ」
「ぽいよね」
「それも含めて、おめでとう、だな、華」
「?」
聞き返そうとしたとき、予鈴が鳴る。私たちは並んで生徒会室を出た。
クラスに着くと、同じクラスの大村さんにも「おめでとー」と朝から言われる。
「? ありがとう?」
校則の件、もう広まってるのかな? 委員会からの公式発表はまだなんだけれど。
「あれ、なにその反応。別件だと思ってるねこれ」
「別件ん?」
「職員室前行ってみな~」
言われるがままに、というか半ば引きずられるように来た、そこには。
「あ」
「実力テスト、ついに1番とったね~」
目の下にクマつくった甲斐あったじゃん、と頬を(なぜだか)つねられた。
(うわぁ)
思わず立ちすくむ。うわー、そうか、学年……っていっても理系で一位。うわぁ。
「う、嬉しい……」
「古典は相変わらず酷いねー」
「う」
「でもそれ補って総合一位か」
おめでとう、と言われてやっと私はゆっくり頷く。死ぬほど勉強したかいがあったよー……。
と、二人で廊下を離れようとしたとき。
「よくもまぁ、恥ずかしくないわね設楽華ッ!」
「あ、出た」
横で大村さんが舌打ちしながら呟く。視線の先には(当たり前のように)桜澤青花。
「あたし慣れてきたわ、コイツが現れるの」
「いや、慣れないでよ~」
こっそりとそんな会話をする。
仁王立ちしている青花はふん! と鼻息荒く私を睨みつける。
「こうも毎回毎回、不正で上位をとって! しかも今回は恥知らずにも一位にしてもらったの!?」
騒ぐ青花を横目に、私はため息をついて大村さんにこっそり言う。
「実はさ」
「なに?」
「最近気がついたんだけど」
「うん」
「やっぱりさ、無視がいちばんいいのかも」
大村さんはきょとん、としてそれから笑った。
「そだね」
私たちは踵を返して、廊下を反対側に走り出した。
「あ、待ちなさいっ、正々堂々とっ」
青花の叫び声が聞こえるけど、もー知らない!
あそこにはたくさん生徒がいたし、もしかしたらまた変な噂とかになっちゃうかもだけど、もう気にしたりなんかしない。
(だって忙しいんだもん)
あんな変な子、構ってる暇なんかないんだ。
だから、私は知らなかった。
青花がどんな顔で私をみていたか。
なにをしようとしていたのか。
何も、気がつかなかったんだ。
「敦子さんの鶴の一声なんだもんなぁ」
家のリビングでぶうぶう言ってると、シュリちゃんに小突かれた。
「いたっ」
「目的が達成できたんだから御の字じゃないの。何か文句あんの?」
「……ないです」
おでこを両手でおさえながら、私はそう答えた。
校則の改革、OG会の強烈な反対を押し切ったのは「時代です」っていう敦子さんのひとこと、だった。
「さすがにあのBBA共も常盤コンツェルン総帥には逆らえなかったみたいねぇ」
「権力う」
まぁそれに助けられてるっていうか、権力傘にきてるのは私なんだけれど。
(悪役令嬢感、はんぱない)
そんな感じの11月半ば、学校へ行って、私はこっそりバスケ部の朝練を眺める。
(まさか生徒会室がこんなに眺めが良かったなんて)
ふふふ、と役得役得、と呟いた。
生徒会室の窓からは、グラウンドが見渡せる。
さすがに体育館は無理だけど、こうやって外練してるのをこっそり見るのは可能なのでした!
(あー、走ってる)
アキラくんはめっきり寒いのに、暑いのか上ジャージ脱いで友達と騒ぎながら走ってるみたいだった。グラウンド何周くらいするのかなぁ。
「ぼ、望遠鏡買おうかな」
「星でも見るのか?」
背後からのツッコミに振り返ると、そこには樹くんが苦笑して立っていた。
「あ、えへへ、おはよー」
「山ノ内か」
「うん」
あー、なんかアレだな、ストーカーチックだとか思われてそうですよ?
「樹くんはどうしたの」
ごまかすようにそう聞くと、生徒会長の机からノートを取り出す。
「少し議題をまとめておこうかと」
「……忙しいよね?」
樹くんはかたをすくめる。
「大したことはないさ」
「そうかなぁ」
部活に勉強に、生徒会。
「それはそうとして、例の校則の件。良かったな」
「あ、うん」
私は頷いた。
「おかげさまで、だよ」
「? 俺はなにも」
「静子さんも加勢してくれたみたいだから」
静子さんは、樹くんのおばあちゃん。やっぱり青百合の卒業生で、発言力は相当強かった。
そう言うと、樹くんは苦笑した。
「あの人はそもそも縛られるのが嫌いなんだ」
「ぽいよね」
「それも含めて、おめでとう、だな、華」
「?」
聞き返そうとしたとき、予鈴が鳴る。私たちは並んで生徒会室を出た。
クラスに着くと、同じクラスの大村さんにも「おめでとー」と朝から言われる。
「? ありがとう?」
校則の件、もう広まってるのかな? 委員会からの公式発表はまだなんだけれど。
「あれ、なにその反応。別件だと思ってるねこれ」
「別件ん?」
「職員室前行ってみな~」
言われるがままに、というか半ば引きずられるように来た、そこには。
「あ」
「実力テスト、ついに1番とったね~」
目の下にクマつくった甲斐あったじゃん、と頬を(なぜだか)つねられた。
(うわぁ)
思わず立ちすくむ。うわー、そうか、学年……っていっても理系で一位。うわぁ。
「う、嬉しい……」
「古典は相変わらず酷いねー」
「う」
「でもそれ補って総合一位か」
おめでとう、と言われてやっと私はゆっくり頷く。死ぬほど勉強したかいがあったよー……。
と、二人で廊下を離れようとしたとき。
「よくもまぁ、恥ずかしくないわね設楽華ッ!」
「あ、出た」
横で大村さんが舌打ちしながら呟く。視線の先には(当たり前のように)桜澤青花。
「あたし慣れてきたわ、コイツが現れるの」
「いや、慣れないでよ~」
こっそりとそんな会話をする。
仁王立ちしている青花はふん! と鼻息荒く私を睨みつける。
「こうも毎回毎回、不正で上位をとって! しかも今回は恥知らずにも一位にしてもらったの!?」
騒ぐ青花を横目に、私はため息をついて大村さんにこっそり言う。
「実はさ」
「なに?」
「最近気がついたんだけど」
「うん」
「やっぱりさ、無視がいちばんいいのかも」
大村さんはきょとん、としてそれから笑った。
「そだね」
私たちは踵を返して、廊下を反対側に走り出した。
「あ、待ちなさいっ、正々堂々とっ」
青花の叫び声が聞こえるけど、もー知らない!
あそこにはたくさん生徒がいたし、もしかしたらまた変な噂とかになっちゃうかもだけど、もう気にしたりなんかしない。
(だって忙しいんだもん)
あんな変な子、構ってる暇なんかないんだ。
だから、私は知らなかった。
青花がどんな顔で私をみていたか。
なにをしようとしていたのか。
何も、気がつかなかったんだ。
0
あなたにおすすめの小説
ふたりの愛は「真実」らしいので、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしました
もるだ
恋愛
伯爵夫人になるために魔術の道を諦め厳しい教育を受けていたエリーゼに告げられたのは婚約破棄でした。「アシュリーと僕は真実の愛で結ばれてるんだ」というので、元婚約者たちには、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしてあげます。
傷物令嬢は魔法使いの力を借りて婚約者を幸せにしたい
棗
恋愛
ローゼライト=シーラデンの額には傷がある。幼い頃、幼馴染のラルスに負わされた傷で責任を取る為に婚約が結ばれた。
しかしローゼライトは知っている。ラルスには他に愛する人がいると。この婚約はローゼライトの額に傷を負わせてしまったが為の婚約で、ラルスの気持ちが自分にはないと。
そこで、子供の時から交流のある魔法使いダヴィデにラルスとの婚約解消をしたいと依頼をするのであった。
彼女が高級娼婦と呼ばれる理由~元悪役令嬢の戦慄の日々~
プラネットプラント
恋愛
婚約者である王子の恋人をいじめたと婚約破棄され、実家から縁を切られたライラは娼館で暮らすことになる。だが、訪れる人々のせいでライラは怯えていた。
※完結済。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ
朝霞 花純@電子書籍発売中
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。
理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。
逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。
エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームを元にした人気のライトノベルの世界でした。
しかも、定番の悪役令嬢。
いえ、別にざまあされるヒロインにはなりたくないですし、婚約者のいる相手にすり寄るビッチなヒロインにもなりたくないです。
ですから婚約者の王子様。
私はいつでも婚約破棄を受け入れますので、どうぞヒロインのところに行って下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる