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【高校編】分岐・黒田健
【side健】飽きるまで
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「死ぬかボケ」
ぽん、と脳天をチョップ。
またもや俺の部屋と行ったり来たりして服を着替えて、濡れたスウェットは乾燥機にぶち込んだ。
「眠そうだな」
「……かも」
そりゃ疲れてるだろうな、と思う。
「華ちゃんこれ使って」
「わ、ありがとうございます」
かーさんに新品の歯ブラシをもらって、設楽は頭を下げる。
「……というか、すみません」
しゅん、と眉を下げた。
「ご迷惑を」
「そんなことないよ」
かーさんはニコニコと設楽に笑いかけた。
「明日、学校行けそう? わたしお休みだし。明日も家にいてくれていいよ。おばあさま、お仕事でしょ?」
かーさんの言葉に慌てて遠慮する設楽だけど、結局最終的には頷いていた。
「ケーキ作ろうね」
「……っ、はい」
そう返事する設楽は少し顔色も戻っていて、少し俺は安心する。
それから並んで歯磨きをして……少しむず痒い。
設楽の口元に歯磨き粉がついていて、それを手で拭うと「ありがと」と微笑んでくるーー。
(……結婚したらこんな感じなんかな)
こんな時にそんなふうに思うなんて、設楽に少し悪い気もするけど、なんて思ってたら設楽が笑う。
幸せそうに。
「結婚したらね、こんな感じなのかな」
「……だな」
短く返事をした。
同じことを考えてたのが、やけに、嬉しい。
……問題は。
「やだ離れたくない」
ベッドの上で俺にくっついて離れようとしない設楽。いやさすがに、……なぁ。
「すぐ横で寝るから」
ベッドの下に敷いた布団を指差すけれど、設楽はいやいやを繰り返す。
「なんで、やだ」
涙目になってる設楽をそっと抱きしめた。
「……分かったけど、俺は背中向けて寝るからな」
「、うん」
背中を向けて横になる。
くっついてくる設楽。
(あったけー)
そりゃ俺だって抱きしめて寝たい。
(けどなぁ)
この状況で反応しないはずがない。絶対ヤんねーけど、でも、設楽だって気がつくだろうし気まずいだろ。
(関係ねーこと考えよ)
考えたくないのに、設楽の少しの動きの衣擦れとか、背中にあたってる設楽の身体とか、俺の腰に回ってる手とか、甘えるように動く身体とか。
正直にいうと、苦しい。
(心頭滅却…….)
俺はその四字熟語をまた頭の中で唱えながら、なんとか目を閉じた。
眠るに限る。
ふ、と気がつくともう早朝で、ああ人間あれでも眠れんだなぁと目を細める。
「……?」
不思議なことに、背を向けて眠ったはずなのに、起きたら設楽を抱きしめていた。
すうすうという規則正しい寝息。
至近距離でその顔を見つめる。薄いまぶたにキスをした。
愛おしくて仕方なかった。
「設楽」
「……ん」
「設楽」
起こすのは可愛そうな気もするけど、起きて俺がいないほうが嫌な気もする。そっと名前を呼びながら、何度もキスをした。
「……おはよ?」
へにゃりと笑う設楽が本当に愛おしい。
だからそのぶん、コイツを苦しめてる色んなことがムカついて仕方ない。
「はよ」
挨拶を返しながら、頭を撫でる。
「うん」
相変わらずの気が抜けた笑顔で、設楽は両手を広げる。
「ぎゅーして、ぎゅー」
「……はいはい」
横たわったままの設楽を抱きしめて、キスを重ねる。何度も。
やがて設楽はなんていうか、違和感に気がついて俺を見つめる。
「なんだよ」
「えーと、そのう」
「……気にすんな。生理的なモンだから」
「でもあの、そのー。……する?」
「しねえよバカ」
ぽん、と頭を叩く。
「でも」
「でもも何もねーの。起きれるか」
「……うん」
設楽は起き上がって、ぼうっと俺を見つめていた。
「朝飯、食えそうか」
「ええと」
返事と共に、設楽の腹がぐうと鳴る。
「あ」
赤面してる設楽が可愛くて、ほとんど反射的に抱きしめた。
「わ、なに?」
「いやぁ?」
腹を空かせてるお前が可愛いくて、って言ったら頭おかしいと思われそうだからやめとこう。
リビングにおりると、親父がフレンチトーストを量産していた。
「わ、わ、わ。おいしそー」
「たくさん食べてね華さん」
かーさんはまだ寝てるっぽい。休みの日はとことん寝るからな、あの人。
「食べながら聞いてね」
たっぷりのカフェオレを設楽の前におきながら、親父は言う。
「学校は行けそうかな? 妻はもう、休んで自分とケーキ作る気でいるけれど」
「俺も休むわ」
答えると、設楽はぐりっと俺を見た。
「え、あ、でも」
「まだ無理だろ」
トイレ以外で、設楽はやっぱり俺から離れようとしない。
「でも、部活。勉強も」
「今はお前優先」
首をかしげる設楽に、俺は続けた。
「なんつうか、優先順位? 今の状況は、最優先が設楽だから」
「ご、ごめん」
「いや」
場面場面で優先順位は変わってくる。
けど、今言えるのは、今設楽をひとりにすんのはあんま良くねーだろなってこと。
「落ち着くまでこうしてようぜ、設楽」
俺は笑いかけた。
「くっつき飽きるまで付き合うぜ」
ぽん、と脳天をチョップ。
またもや俺の部屋と行ったり来たりして服を着替えて、濡れたスウェットは乾燥機にぶち込んだ。
「眠そうだな」
「……かも」
そりゃ疲れてるだろうな、と思う。
「華ちゃんこれ使って」
「わ、ありがとうございます」
かーさんに新品の歯ブラシをもらって、設楽は頭を下げる。
「……というか、すみません」
しゅん、と眉を下げた。
「ご迷惑を」
「そんなことないよ」
かーさんはニコニコと設楽に笑いかけた。
「明日、学校行けそう? わたしお休みだし。明日も家にいてくれていいよ。おばあさま、お仕事でしょ?」
かーさんの言葉に慌てて遠慮する設楽だけど、結局最終的には頷いていた。
「ケーキ作ろうね」
「……っ、はい」
そう返事する設楽は少し顔色も戻っていて、少し俺は安心する。
それから並んで歯磨きをして……少しむず痒い。
設楽の口元に歯磨き粉がついていて、それを手で拭うと「ありがと」と微笑んでくるーー。
(……結婚したらこんな感じなんかな)
こんな時にそんなふうに思うなんて、設楽に少し悪い気もするけど、なんて思ってたら設楽が笑う。
幸せそうに。
「結婚したらね、こんな感じなのかな」
「……だな」
短く返事をした。
同じことを考えてたのが、やけに、嬉しい。
……問題は。
「やだ離れたくない」
ベッドの上で俺にくっついて離れようとしない設楽。いやさすがに、……なぁ。
「すぐ横で寝るから」
ベッドの下に敷いた布団を指差すけれど、設楽はいやいやを繰り返す。
「なんで、やだ」
涙目になってる設楽をそっと抱きしめた。
「……分かったけど、俺は背中向けて寝るからな」
「、うん」
背中を向けて横になる。
くっついてくる設楽。
(あったけー)
そりゃ俺だって抱きしめて寝たい。
(けどなぁ)
この状況で反応しないはずがない。絶対ヤんねーけど、でも、設楽だって気がつくだろうし気まずいだろ。
(関係ねーこと考えよ)
考えたくないのに、設楽の少しの動きの衣擦れとか、背中にあたってる設楽の身体とか、俺の腰に回ってる手とか、甘えるように動く身体とか。
正直にいうと、苦しい。
(心頭滅却…….)
俺はその四字熟語をまた頭の中で唱えながら、なんとか目を閉じた。
眠るに限る。
ふ、と気がつくともう早朝で、ああ人間あれでも眠れんだなぁと目を細める。
「……?」
不思議なことに、背を向けて眠ったはずなのに、起きたら設楽を抱きしめていた。
すうすうという規則正しい寝息。
至近距離でその顔を見つめる。薄いまぶたにキスをした。
愛おしくて仕方なかった。
「設楽」
「……ん」
「設楽」
起こすのは可愛そうな気もするけど、起きて俺がいないほうが嫌な気もする。そっと名前を呼びながら、何度もキスをした。
「……おはよ?」
へにゃりと笑う設楽が本当に愛おしい。
だからそのぶん、コイツを苦しめてる色んなことがムカついて仕方ない。
「はよ」
挨拶を返しながら、頭を撫でる。
「うん」
相変わらずの気が抜けた笑顔で、設楽は両手を広げる。
「ぎゅーして、ぎゅー」
「……はいはい」
横たわったままの設楽を抱きしめて、キスを重ねる。何度も。
やがて設楽はなんていうか、違和感に気がついて俺を見つめる。
「なんだよ」
「えーと、そのう」
「……気にすんな。生理的なモンだから」
「でもあの、そのー。……する?」
「しねえよバカ」
ぽん、と頭を叩く。
「でも」
「でもも何もねーの。起きれるか」
「……うん」
設楽は起き上がって、ぼうっと俺を見つめていた。
「朝飯、食えそうか」
「ええと」
返事と共に、設楽の腹がぐうと鳴る。
「あ」
赤面してる設楽が可愛くて、ほとんど反射的に抱きしめた。
「わ、なに?」
「いやぁ?」
腹を空かせてるお前が可愛いくて、って言ったら頭おかしいと思われそうだからやめとこう。
リビングにおりると、親父がフレンチトーストを量産していた。
「わ、わ、わ。おいしそー」
「たくさん食べてね華さん」
かーさんはまだ寝てるっぽい。休みの日はとことん寝るからな、あの人。
「食べながら聞いてね」
たっぷりのカフェオレを設楽の前におきながら、親父は言う。
「学校は行けそうかな? 妻はもう、休んで自分とケーキ作る気でいるけれど」
「俺も休むわ」
答えると、設楽はぐりっと俺を見た。
「え、あ、でも」
「まだ無理だろ」
トイレ以外で、設楽はやっぱり俺から離れようとしない。
「でも、部活。勉強も」
「今はお前優先」
首をかしげる設楽に、俺は続けた。
「なんつうか、優先順位? 今の状況は、最優先が設楽だから」
「ご、ごめん」
「いや」
場面場面で優先順位は変わってくる。
けど、今言えるのは、今設楽をひとりにすんのはあんま良くねーだろなってこと。
「落ち着くまでこうしてようぜ、設楽」
俺は笑いかけた。
「くっつき飽きるまで付き合うぜ」
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