【本編完結】セカンド彼女になりがちアラサー、悪役令嬢に転生する

にしのムラサキ

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【高校編】分岐・黒田健

【side健】勉強

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 もう直ぐクリスマス、って時期だけど、いまだに設楽は俺の家にいる。
 全然いいんだけど。
 つうか、嬉しいんだけど。
 親父ともかーさんとも馴染んで、かーさんに至ってはもはや近所の人に「うちのお嫁ちゃん」と呼んでる。なんだそれ。

「おかえりー」

 部活から帰ってくると、家に電気がついてる。
 両親いないことが多い俺にとっては、なんか不思議な感覚。

「ご飯できてるよー」

 制服の上にエプロン付けてる設楽。
 にこにこ顔で玄関まで来てくれる。

「……ただいま」

 なんだこれ。新婚みてー。
 あと設楽がいて、俺もめちゃくちゃ助かることがもう一つあって(死ぬほど癒される以外に)。

「そーそー。希ガスで正解だよ」

 俺の部屋、そこに置かれたローテーブルと、そこに広がったノートにテキスト。
 にこにこと俺の宿題を見てくれる設楽。
 さすがトップ私立に通ってただけあって、教え方も上手い。助かる。

「ちなみにこれ、全部言えるかな?」
「あー。ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、ラドン……あと一個あるな?」
「その通り~。思い出して?」

 設楽は少し、悪戯っぽく笑う。そして俺の膝に乗ってきた。

「設楽」
「思い出すまで、好きにしちゃう」

 重なる唇。柔らかくて、しっとりしてて、あったかくて。
 遠慮がちに入ってきたその舌を、ほとんど反射的に甘噛みする。

「ん、」

 上擦った声と、俺の服を掴むその白い手。
 やがて離れた柔らかな唇は、俺の耳を噛む。そっと、甘く。

「……設楽」
「ふふ」

 楽し気な声。
 つうかな、これ。
 どう考えても、正解しないほうが美味しいんじゃん。

(……あ、キセノン)

 思い出したけど、俺はまだ分からないフリをする。
 設楽は楽し気に「ほらほら早く正解しないと色々されちゃうよー? 色々しちゃうよお姉さん」とか言ってるけど、なんつうか……こんなにアホ可愛くて大丈夫か? 可愛いの権化なのかお前は。

「全然思い出せねー」
「ふふふ、ヒントはねぇ、キ! だよ!」

 満面の笑みな設楽。

「……さあなぁ」

 しらばっくれる俺に、まったく気がつかない設楽。あーあ、可愛い。

「思い出してよ!」

 くすくす笑いながら、設楽が俺の首を舐める。そして、ちゅ、と口付けた。
 ぞくぞくと、何かが背中から上がる。

「黒田くん」

 甘える、蕩けそうな声。

「感じてくれてるんだ?」

 押しつけられる胸。潤んだ瞳、そのたおやかな手がスウェット越しに主張してる俺のをそっと撫でた。
 びくりと腰が揺れそうになるのをぐっと耐える。なにしてんだこいつ。

「あのな、これで反応しないやついんのか」

 いねーだろーが。

「うふふ、なんだか楽しくなってきた」

 まだ分からない~? と設楽は首を傾げてーーするりと入り込む手。

「っ、設楽!?」
「黒田くん、ごめんね」

 しゅんとしてる設楽の眉。

「私。ずっとくっついて回って……その、色々」

 俺を見上げる、柔らかな視線。

「溜まってたり、とか。その」

 思わず息を飲む。あんまりにも、設楽の顔がエロくて。

「手、で。しよっか?」

 迷ったように、その少し冷たい手が俺のに触れて、……俺はその手を掴む。

「アホ設楽」
「あっ、あほ?」
「んなもんテキトーに抜いてっから気にすんな」
「エッいつ!? 学校!?」
「んなわけあるか!」

 設楽の手をスウェットから抜き取って、脳天に軽めにチョップ。

「いた」
「つか、手ぇ洗え?」
「汚くないよ?」

 舐めてもいいくらいなのに、と視線を向けて言われて、頭がくらくらする。
 思わず想像してしまったから。
 俺のを。
 美味しそうに。

「……ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、ラドン、……キセノン」

 心頭滅却。
 煩悩を追い払うためにとりあえずの呪文(?)だ。
 設楽は嬉しそうに言う。

「せいかーい! キセノンも言えてた!」

 ぱちぱちと小さな拍手。

「お前には負けるよ」
「? 黒田くんもちゃんと覚えてたじゃん」

 にこにこ見上げる設楽が愛しくて可愛くて、俺はやっぱりこいつには勝てないなと苦笑いしながら抱きしめる。

「あのな」
「なぁに」
「覚えてろよ」

 俺の言葉に、クスクスと設楽は肩を揺らす。

「今すぐでもいいのに」
「ばーか」

 そう言って、また唇を重ねる。
 それはとても甘い、幸せな柔らかさだった。
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