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銀
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「結局のところ、慶麗から聞き出せた情報はほとんどなくて」
「彼女がひとりで計画して、実行した可能性というのはないのですか?」
私の質問に首を振ったのは、林杏だった。
「ないの。だとすれば、そのお妃様? はどこで呪や妖術を習ったかということになるの」
そして首をかしげる。
「呪だけならともかく、妖術は普通に生きてたんじゃ、身に付けるのは到底不可能なの」
「しかしド下手くそな術であったぞ?」
話に入ったのは玉藻さん。
急に話し出した獅子狗にも、鳳果様は眉ひとつ動かさなかった。
(話、聞いてたのかな)
元・九尾の狐な獅子狗がいます、って。
「妖な玉玉には理解しにくいかも、なの」
新しいあだ名で呼ばれた玉藻さんは「ぎょ、ぎょくぎょく……」と言葉をつまらせた。
「妖をあやつる、それも自分の身体に取り付かせるなんて発想は、正直なところ普通考えつかないの、なの……」
「あったとしても、普通実行できません。素人が術のやり方を知り得たとしても、食い殺されるのが関の山」
林杏さんの後に続けたのは、鳳果様。
「なんでも、ヒトとしての意識は残っていたと。であれば、妖術にある程度詳しい人間から指導を受けた、とみて間違いないでしょう」
「引き離しようがないくらい、クソド下手くそであったぞ?」
「だとしても、です」
「ふうむ」
玉藻さんは私の膝の上で、軽く鼻を鳴らした。
「いちおう、聞き出せた……というか。話の断片から分かったのは、宗元が嫦娥を狙った理由だけ」
憂炎様がそう言って、私を見た。
「え、……私が後宮に留め置かれてる以外に、ですか?」
首をかしげながら、あの日のことを思い返すーーそういえば!
「司馬の孫娘、って……」
確か、そう言っていた。司馬の孫娘を殺そうとしたときも、私が邪魔をしたと!
「どうやら、そうらしい」
憂炎様が頷く。
「あの日の火事。仕組んだのは、宗元みたいだ」
「あんまり覚えてないの、なの」
林杏は困ったように言う。
「妾のせいだと、思ってたのなの……」
「小さかったんだもん、仕方ないよ」
「んむー」
林杏は眉根を寄せる。
「けど、なんでそんなことしたの、なの?」
「林杏は司馬家の娘ってだけで、皇太子が誰になるにせよ、あの時点では妃候補、いや、皇后候補だったんだよ」
「えぇ~……なの」
「嫌そうな顔しすぎ」
憂炎様は苦笑した。
「当時は磊と林杏のお爺様が宰相だった。しかも、後宮で女官として出世し始めてる美杏の娘でもある。自分の娘、喬蘭を将来は皇后に、と思っていた宗元にとっては、邪魔でしかなかった」
当時はまだ喬蘭様だって、幼かったはずだ。なのに、もうそんなことを……。
「まぁ、あくまで想像だけれど、おおむね間違ってはいないと思う」
私たちは頷いた。
「最初の計画が嫦娥と磊のお陰で失敗に終わってーーでも林杏は早くから変わり者だって噂が立ち始めた」
「失礼なの。なにも変わってないなの。ねぇ?」
「ううん」
私は曖昧に頷いた。
「まぁ、結局青龍山に入ることになったでしょ? それで宗元は安心して、喬蘭を後宮に入れることにしたんだけれどーーまた、邪魔が入った」
じ、と憂炎様に見つめられる。
「わ、私?」
「そう。……しかも、易で、宗元はこう言われたらしい」
一息おいて、憂炎様は言った。
「"お前の人生を、秦嫦娥が狂わせるであろう"ーーと」
「狂わせる……」
「狂わせるもなにも、自業自得だ。嫦娥はなにもしていない」
してるとしたら俺だね、と憂炎様は寂しそうに笑った。
「巻き込んで、傷つけて」
「甘い後悔や悔悟に浸るのは後にして欲しいの、なの~」
ばしり、と林杏さん。
「イタイのは、やめて。自分のせいだって自分を責めて気持ちいいのは本人だけなの。さ、話を続けて、なの」
「……なんだかなぁ」
憂炎様は苦笑しつつ、口を開く。
「まぁ、そんなで……この話も、本当に断片的な慶麗の言葉から推測したもので、確実かは分からない」
「その占い師、とやらは?」
聞いたのは鳳果様。憂炎様は首を振った。
「最後まで吐かなかった。だから、なぜ慶麗がその占い師を知ったのか、どうやって宗元が嫦娥を狙っていたことを知ったのかは分からずじまいだ」
「その占い師を見つけ出すことが出来れば……」
私は呟く。
そうすれば、話は解決、のはずだ。
「彼女がひとりで計画して、実行した可能性というのはないのですか?」
私の質問に首を振ったのは、林杏だった。
「ないの。だとすれば、そのお妃様? はどこで呪や妖術を習ったかということになるの」
そして首をかしげる。
「呪だけならともかく、妖術は普通に生きてたんじゃ、身に付けるのは到底不可能なの」
「しかしド下手くそな術であったぞ?」
話に入ったのは玉藻さん。
急に話し出した獅子狗にも、鳳果様は眉ひとつ動かさなかった。
(話、聞いてたのかな)
元・九尾の狐な獅子狗がいます、って。
「妖な玉玉には理解しにくいかも、なの」
新しいあだ名で呼ばれた玉藻さんは「ぎょ、ぎょくぎょく……」と言葉をつまらせた。
「妖をあやつる、それも自分の身体に取り付かせるなんて発想は、正直なところ普通考えつかないの、なの……」
「あったとしても、普通実行できません。素人が術のやり方を知り得たとしても、食い殺されるのが関の山」
林杏さんの後に続けたのは、鳳果様。
「なんでも、ヒトとしての意識は残っていたと。であれば、妖術にある程度詳しい人間から指導を受けた、とみて間違いないでしょう」
「引き離しようがないくらい、クソド下手くそであったぞ?」
「だとしても、です」
「ふうむ」
玉藻さんは私の膝の上で、軽く鼻を鳴らした。
「いちおう、聞き出せた……というか。話の断片から分かったのは、宗元が嫦娥を狙った理由だけ」
憂炎様がそう言って、私を見た。
「え、……私が後宮に留め置かれてる以外に、ですか?」
首をかしげながら、あの日のことを思い返すーーそういえば!
「司馬の孫娘、って……」
確か、そう言っていた。司馬の孫娘を殺そうとしたときも、私が邪魔をしたと!
「どうやら、そうらしい」
憂炎様が頷く。
「あの日の火事。仕組んだのは、宗元みたいだ」
「あんまり覚えてないの、なの」
林杏は困ったように言う。
「妾のせいだと、思ってたのなの……」
「小さかったんだもん、仕方ないよ」
「んむー」
林杏は眉根を寄せる。
「けど、なんでそんなことしたの、なの?」
「林杏は司馬家の娘ってだけで、皇太子が誰になるにせよ、あの時点では妃候補、いや、皇后候補だったんだよ」
「えぇ~……なの」
「嫌そうな顔しすぎ」
憂炎様は苦笑した。
「当時は磊と林杏のお爺様が宰相だった。しかも、後宮で女官として出世し始めてる美杏の娘でもある。自分の娘、喬蘭を将来は皇后に、と思っていた宗元にとっては、邪魔でしかなかった」
当時はまだ喬蘭様だって、幼かったはずだ。なのに、もうそんなことを……。
「まぁ、あくまで想像だけれど、おおむね間違ってはいないと思う」
私たちは頷いた。
「最初の計画が嫦娥と磊のお陰で失敗に終わってーーでも林杏は早くから変わり者だって噂が立ち始めた」
「失礼なの。なにも変わってないなの。ねぇ?」
「ううん」
私は曖昧に頷いた。
「まぁ、結局青龍山に入ることになったでしょ? それで宗元は安心して、喬蘭を後宮に入れることにしたんだけれどーーまた、邪魔が入った」
じ、と憂炎様に見つめられる。
「わ、私?」
「そう。……しかも、易で、宗元はこう言われたらしい」
一息おいて、憂炎様は言った。
「"お前の人生を、秦嫦娥が狂わせるであろう"ーーと」
「狂わせる……」
「狂わせるもなにも、自業自得だ。嫦娥はなにもしていない」
してるとしたら俺だね、と憂炎様は寂しそうに笑った。
「巻き込んで、傷つけて」
「甘い後悔や悔悟に浸るのは後にして欲しいの、なの~」
ばしり、と林杏さん。
「イタイのは、やめて。自分のせいだって自分を責めて気持ちいいのは本人だけなの。さ、話を続けて、なの」
「……なんだかなぁ」
憂炎様は苦笑しつつ、口を開く。
「まぁ、そんなで……この話も、本当に断片的な慶麗の言葉から推測したもので、確実かは分からない」
「その占い師、とやらは?」
聞いたのは鳳果様。憂炎様は首を振った。
「最後まで吐かなかった。だから、なぜ慶麗がその占い師を知ったのか、どうやって宗元が嫦娥を狙っていたことを知ったのかは分からずじまいだ」
「その占い師を見つけ出すことが出来れば……」
私は呟く。
そうすれば、話は解決、のはずだ。
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