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復讐のブルー・ペグランタン編
大きすぎた代償
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あくのだいまおうとの問答の後、心ここに在らずのまま、俺と御玲、そして澄連はとりあえずいつも通りのルーチンワークをこなすべく、北支部の正門前に来ていた。
「澄男さま!」
「お、おう!?」
何度も呼んでいたのか、御玲の怒号が頭の中で反響する。ただ見つめることしかできない俺に、御玲はほんの少しため息をついた。
「澄男さま。お飲み物でも買いに行きましょうか」
北支部駐車場方面を指差す。
確か北支部備え付けの駐車場には、自動販売機があったはず。南支部の手伝いに行くってなったとき、御玲があまりにも汗をかいていたので水分補給のためのジュースを買いに行ったんだったか。
今の御玲は真夏の暑さに備えるため、本家邸から出る前に氷属性霊力を含ませた冷却用技能球に熱を吸収させているので平気とのことだが、今度は俺が補給される側になるとは、因果を感じさせる。
「オレらは?」
「あなたたちは正門前で待っていなさい」
「ボクたちまた待ちなの!?」
「おいおい流石に今回もとかウンコ漏れちまうぜ」
「まあしゃーねぇ、オレは土でも食ってますわ」
「仕方ありません。澄男さんは深刻なパンツ不足のご様子……御玲さんのパンツでパンツを補給するというのも上策でしょう」
勝手に騒いで意味わからん理由で納得する澄連。変に騒がれるより幾分かマシだが、ミキティウスの台詞から俺が御玲のパンツで疲れを癒す変態野郎扱いされているのだけが気に食わないものの、今の俺にはコイツらのボケにツッコむ余力がほとんどない。
待機を澄連に任せ、俺と御玲は件の自動販売機へ向かった。真夏なんて平気のはずなのに、気持ち悪い生ぬるさを感じて不快だ。
鉛のように重い身体を鞭打って、金を入れる。俺は微糖のコーヒー、御玲は普通の清涼飲料水。
「……澄男さまが気に病む必要なんてないんですよ」
お互い飲み物を口に含み、飲み込んだ矢先のことだった。まるで全てを見透かしているような声音に、思わず奥歯を噛み締める。
「……そういうわけにはいかねぇだろうが」
コーヒー缶が軋む音で、我に帰る。後もう少し遅ければ、握力でコーヒー缶を潰し、中のコーヒーが噴き出して大惨事が起きていただろう。
御玲は一度死に、そして俺が生き返らせた。厳密には蘇生魔法を事前に忍ばせていたあくのだいまおうだが、生き返らせる決断をしたのは、他ならぬ俺だ。
俺は何かを代償として支払い、御玲を蘇生させた。人の運命を捻じ曲げるほどの無茶に相応しい代償なんて、俺のちっぽけな想像力では何一つ思いつかない。
コーヒー缶を持つ手が、病気か何かかと思うぐらいに震える。俺は何を支払い、何を失ったのか。それが分からなくて、分からなくて分からなくて。
「お前は……怖くねぇのか」
御玲は、どう思っているのだろう。一度死んで生き返った身でありながら、何か変化があったのだろうか。
俺から見て、御玲は生き返った後も前も変わった様子はない。でもコイツは平気な顔で痩せ我慢しやがるので、実際のところは分からないのだ。俺がまだ復讐に駆られていた頃も色々と我慢していたようだし、何か内面的な変化があったとしても、敢えて口にしない可能性が高かった。
「別に。怖くはないですね」
渦巻く思索に揉まれる俺とは裏腹に、御玲は尚も淡白だ。
「たとえ何かを失っていたとしても、構いません。私はこうして生きてますから。命以上に大事なものなんて、ありません」
「一度死んで生き返ったんだぞ? つまりお前の命と同じ価値のものを支払ったんだ。その話だと、お前の命と同等のもんを、失ってるってことじゃ……!」
「だとしても、今こうして私は生きてます。それだけで、充分じゃないですか」
言葉を遮り、強く、強かに言い切った。俺を見上げる青い瞳は、陽光に照らされているせいか明るく輝いている反面、そこらの湖より深く、その底は見通せない。
クソ間抜けにも二の句が継げなくなった俺、思わずコーヒー缶を握り潰す。
「……怖い、ですか?」
コーヒー缶が手からこぼれ落ち、地面に転げる。転げた缶はその口から残っていた内容物を漏らし、アスファルトを焦げ茶色に濡らした。
立体駐車場を吹き抜ける風の音が、遠く聞こえる。冷たくて、でもどこか優しさを感じさせる温もりがある手が、そっと俺の手を握ったからだろうか。
「今なら、私しかいませんよ」
嗚呼、見透かされている。俺の本音もちっぽけなプライドも、何もかも。
「……怖ぇよ」
俺は転げた缶を踏み潰す。焦げ茶色の残滓が勢いよく噴き出した。それは色のせいも相まって、心なしか汚く見える。濾過しきれなかった、汚泥のように。
「怖ぇよ!! 俺は何を失った? 俺は何を奪っちまった? 御玲の運命を書き換える、それだけの無茶をして今があるのに、怖くて怖くて堪んねぇよ……クソが、クソがクソがクソがクソがぁ!!」
俺は馬鹿だ。御玲を生き返らせる瞬間はどんなことでも背負ってみせると、何があろうと何かを失うことこそが嫌なんだと、そう言い切って選択したことなのに、今になって払った代償を恐れている。
だったら最初から馬鹿な選択しなきゃいい。賢い選択をしておけばいい。あくのだいまおうに惑わされず暗黒の技能球を捨てていれば、クソ間抜けのように恐怖に押し潰されずに済んだはずだ。
でも、その選択をしたらどうなるか。理屈じゃ分かっている。
「すまねぇ御玲……すまねぇ……!」
無様に身体を震わせる。御玲の手を、強く握り返した。
俺は本当に馬鹿野郎だ。無様で間抜けで、自分が一度背負ったものの重みにヒヨる、哀れで低能な男。本来なら生き返らせた相手に取る態度じゃねぇ。これだと御玲なんか生き返らせるんじゃなかったって言っているようなもんだ。実際にそうかと問われれば、そんなことは全くない。御玲が死んでもいい理由なんざこれっぽっちもねぇし、御玲が死ぬ未来なんざあっちゃならねぇ。今回みたいにまた御玲や、もしくは弥平が死ぬ未来がこれからも来るってんなら、確実にその未来をブチ壊す。ただ単に未来を壊すほどの力の代償を背負えるだけの強さが、俺にないだけの話なのだ。
「なくてもいいじゃないですか」
無様に身体を震わせ、怯えきったガキみたくなっている俺に優しい言の葉が囀る。
「覚悟なんて、なくたっていいんです。どうしてもって言うのなら、これからすればいいんです」
「な、何を甘ったれたことを……」
「だって、私が求めてませんから」
いつもの反論にキレなんざない。気高い意志の前に虚しくかき消される。
「私は蘇生という奇跡を受けて、今ここにいます。その奇跡に、何の代償もないとは思っていません。何かを失うとしたら、失っているのでしょう」
「だったら……!」
「でも、私はこうして生きている。命を失うことと比べれば、どんな喪失も大したことありません」
もはや、何も言うことがない。愚図るガキを嗜める母親とも例えられるその姿は、背負いきれずに押し潰されそうになっている俺よりも、何倍も何倍も大きく見える。
「澄男さま。その恐怖……背負いきれぬというのなら、私に背負わせてはくれませんか?」
「な、何言ってんだ……漢として、そんな真似させるわけには……」
「痩せ我慢しない! あなたが私を生き返らせるために代償を支払ったというのなら、その代償による恐怖を半分背負うことこそが、生き返らせていただいた私の代償」
どこまでも澄んだ、青い意志。火山すら飲み込む大海の如きその意志は、俺如きが底を覗くには、あまりに深すぎる。
「私、水守御玲は……流川澄男の専属メイドなんですから」
静かなる大海は、荒れ狂う火山を鎮める。
本来なら男として、家長として、専属メイドに重荷を背負わせるなんぞ格が疑われる行いだ。でもそれも仕方ない。格だのなんだのと、ちっぽけなプライドを振りかざせるほど、今の俺は強くなかった。
「……なんでお前は、そんなに強かでいられる……」
「メンタルの強さには自信がありますので」
何かを失ったかもしれないのに、それをただメンタルの強さで片付けるあたり、俺には真似できそうにない。
俺はやっぱり、失ったと思うと恐ろしくて堪らないし、澪華を失ったあの悪夢のような瞬間が蘇るし。御玲も父親に色々されたって聞いたし、その影響もあるんだろうが、それで今こうして前向きにいられているところが、思わず塞ぎ込んでしまう俺とは違う。
俺もいつか、御玲のようになれるだろうか。
「なれますよ、きっと」
そんなに顔に出ているだろうか。思わず笑いがこぼれた。
「さ、さて。そろそろ……」
「よう」
改めて今までの自分の姿を客観的に見て気恥ずかしくなってきた俺は、正門前に待たせていた澄連の存在を思い出し、胸中に宿る羞恥心を有耶無耶にしてしまおうとした矢先。御玲の背後から、誰かを呼ぶ声がした。身の毛もよだつ、悪寒とともに。
全身を矢で蜂の巣にされるような霊圧が、瞬く間に俺たちの周りを支配する。俺たちは、一瞬で臨戦態勢をとった。
「……何の真似だ」
その正体は、全く予想外の存在だった。むしろ何故アイツが俺たちを脅かせるほどの霊圧を放てるのか。アイツが使役している奴からと考えれば納得のいく話なのだが、アイツの最大の特徴と言っていい奴の姿はどこにもない。青くて冷たい、刺し殺してくるような重圧が、俺を射抜く。
「何の真似だって聞いてんだよ答えろ! ポンチョ女!」
青くて冷たくて鋭い、しかし雑魚だと思っていた奴からは想像もつかないほど大きな霊圧を放つ存在。
ポンチョ女―――又の名を、ブルー・ペグランタンが呆然と、しかし確かな殺意を滾らせて、俺を睨んでいた。
「……前から、おかしいとは思っていたんだ」
ポンチョ女は、おもむろに言葉を紡ぐ。青い霊圧をそのままに、ただ俺だけを睨みつけて。
「ろくに常識も知らねえ、レクの指示にも従わねえ、そのくせ、人類の種族限界を軽く超えてる肉体能力……今思えば、暴閥の当主が支部に来るのも、おかしな話だったんだ」
「テメェ……何を言って」
「オメーなんだろ? もう隠すのやめろや、なあ……? 流川澄男よォ……!」
「なっ!?」
思わず口を塞ぐ。が、もう遅い。予想外にも程がありすぎて、反射的に反応しちまった。
「やっぱりな。オメーはそういう奴だよ。素直で、まっすぐで、本当にに馬鹿な奴」
脂汗が止まらない。悪寒が身体中を暴れ回り、熱が逃げていく。
「なんで……なんで俺たちの正体を……」
「あ? 面白えこと言うじゃねえか」
寒気が、一気に増した。言葉が出ない。紡ごうと口や舌を動かそうとするも、本能が強く拒みやがる。
本能が警鐘を鳴らしているとか、そんなレベルじゃない。寒さと暑さが入り混じり、言葉すら出なくなるほどの濃密な霊圧。これと似た霊圧を、俺は今日の朝方、その身で体感したばかりだった。
「オメーなら見覚えあるだろう、これ」
手、の代わりにポンチョの下から百足の尾らしきものが、あるものを持って飛び出してくる。そのあるものが目に入った瞬間、思考が散り散りになった。
「は、え……いや、なっ……」
百足野郎が取り出したあるもの。それはつい昨日、キシシ野郎が死に際に放った最期の一撃。二つの武器が融合して放たれたその一撃は、不死身と思われたカエルをも瀕死に追いやった悪魔。その武器は、澄連たちによって遥か彼方に葬られたはずだった。
「なんでテメェが、それを持っていやがる!?」
思わず叫び散らかしてしまう。それは怒りゆえか。否。未知への恐怖ゆえだ。
「澄男さま、あれは……」
「御玲はアレに触れるな。アレは俺でも死ぬ」
その言葉に、御玲の表情が緊張に塗り潰される。
俺はポンチョ女が持つ大鋏は触れることなく戦線離脱したため、結局のところ大鋏に触れるとどうなるかは分からないのだが、あの武器に触れたら死ぬと直感が唸っている。本能が危険信号を発し、明確な死を感じ取っているのだ。足先から感覚がなくなる感じは、戦いの中では滅多にない。
「それはオメーがよく知ってんだろ? これ本来の持ち主を」
百足野郎の尾が大鋏を前に突き出す。
本来の持ち主。知らないはずがない。なんなら昨日色々あったばかりの奴だ。忘れるには、あまりに日が浅すぎる。
「……だとして、テメェと何の関係がある?」
自分で言っていて、何を馬鹿なと思ってしまうが、とりあえず投げておく。殺意に満ちた態度と霊圧。流石の俺でもコイツの言いたいことくらい分かる。
「……馬鹿を通り越して暗愚だよ、本当」
思わず奥歯を噛み締める。分かっていたが実際に口に出されると腹が立つ。
「ナユタは俺の家族だった。暴閥のお前には、理解できねぇだろうがな!!」
霊圧の重みが更に増す。何なんだコイツの霊圧、ただの雑魚のはずなのに、なんでこんなに重い。
「下威区と中威区を分つ``武ノ壁``……アレを解いたのはお前ら流川だろ?擬巖のクソ暴閥と戦争を起こしたのも、お前らなんだろ?」
そうだ、と言いたいのに、それを言いたい口が開かない。青の霊圧が、縫い針となって俺の唇に突き刺さる。
「ナユタはツムジが死んだときから、``武ノ壁``を破壊することに執心していた。だからあのとき、お前らと一緒にナユタもいたはずなんだ」
なんでそんなことが分かる、と言いたい。言いたいのに、言えない。言うことを許してくれない。
「ナユタが、機に聡いナユタが、武ノ壁を崩せる絶好の機会を逃すはずがない。そして、この武器は元々ナユタとツムジの形見……それが私の所に来たってことは……」
ポンチョ女の瞳に、射抜かれる。御玲の強かで、それでいて暖かい青とはまるで違う。全てを凍てつかせ、飲みこんで破壊する災厄の蒼。ちょっとした山々や森など、一飲みして洗い流してしまうような。
「お前だろ。ナユタを殺ったのは。俺の家族を奪ったのは!! どうなんだ!!」
霊圧が止んだ。答えろという意味か。
本来なら、しらばっくれるか擬巖に擦りつけるかするべきだ。戦いの場は擬巖領だったわけで、擬巖が殺った可能性だって、ポンチョ女側からしたらあるはずだ。何故その可能性を無視して俺を名指しするのか分からないが、詰問された瞬間、不思議と俺の心は一瞬で凪いでしまった。霊圧から解放されたがゆえの解放感か。それとも、また別の何かか。
「ああ、俺が殺った」
愚直に正直に、馬鹿で暗愚らしく、言い放った。
言い訳、言い逃れ、屁理屈。粗探しして全部言ってもよかったが、俺も甘くなったもんだ。家族―――その言葉を使われると、あらゆる言葉が余計に感じてしまうほどに。
「俺が殺した。アイツが先に敵対してきたからな。黙って殺されてやる義理はねぇし」
「敵対してきた……? ああ、そうか。ナユタは、その道を選んだのか」
「なに?」
「流川を倒し、王になる。弱肉強食がこの世界の摂理なら、お前を倒せばナユタが王だ。それで、オレたちは自由を手にできる」
「自由ねぇ……仮に俺をぶっ殺せたところで、敵は多いと思うけども」
「些細な問題だな。そのときは私も一緒に戦うさ。ナユタと一緒にな」
「お前が? 百足野郎がいくら強ぇとはいえ、自惚がすぎるだろそれは」
「……そうか。そうだな、お前は無知だもんな」
煽り、嘲りとも言える、薄ら笑い。不快度が一気に湧き上がる。
「本当はレクに禁止されてたんだが……どっちにしろ俺はクビだし、もう関係ない、か」
ポンチョの下から這い出る、百足。いつもは俺や御玲の十倍ぐらいの背丈があるが、今はポンチョ女の半分ぐらいの背だ。それでもそこらの百足と比べたらバケモンレベルでデカいが、百足野郎はポンチョ女の身体に巻き付くと、ポンチョ女の顔までよじ登る。
「むーちゃん、おいで」
そう言うと、ポンチョ女はおもみろに口を開けた。
俺は何をしているのか、分からなかった。というより、あんまりにあんまりにも衝撃的すぎて、本能的に理解するのを拒んだのかもしれない。生半可な事では驚かない御玲ですら、目を見開き唖然としている。
無理もない。むしろ俺らが見ている絵面を見て、冷静でいられる奴がいるならソイツを紹介して欲しいぐらいだ。ポンチョ女は、百足野郎を。
―――百足野郎を食っている。
ポンチョ女の喉が別の生き物のように蠢く。普通、人の背丈の半分もあるようなクソデカ百足なんぞサイズ的に飲み込めたもんじゃあないはずだが、ポンチョ女はえずく様子もなく、するすると腹ン中に百足を収めていく。尾が、口の中に入った。
「あー……ああ……あー」
全身から湧き出す、霧。それは駐車場の屋根の隙間から差し込む太陽光を容易く飲み込む。
どこまでも暗く、どこまでも黒い、常闇の濃霧。全身のみならず、ポンチョ女の口からも、煙草の煙の如く大量に沸いて出る。
「ぐ……澄男さま……」
「御玲……!? げほ、げほ……なんだこれ、息がしづれぇ……?」
黒煙の物量は凄まじい。それなりに離れているはずの俺や御玲の所まで夥しく迫ってくる。煙草の煙を目一杯吸い込んで蒸せたときのような息苦しさ、膝を折った御玲を抱えて距離を取るが、それでも肺の中の異物感は消える気配がない。
「御玲。お前は逃げろ」
淡々と、でも強く告げる。御玲はほんの僅かに逡巡するが、すぐに吹っ切って立ち上がる。
「澄連を呼んできます。どうかそれまで、ご武運を……」
さっきより顔色が良くなったが、それでも声に芯がない。頰や額に汗を滲ませ、無意識か否かは分からないが眉間に皺が寄っている。察しの悪い俺でもしんどさが伝わる顔色だ。
御玲も悟ったのだ。今この瞬間、自分が戦力外なのだと。肉体が人類の種族限界に達している自分ですら、悪影響が出るほどの濃厚な霊力。浴びただけで負の感情が湧き上がる感覚は、おそらくだが闇属性霊力だろう。骸骨野郎なんぞ比較にならない、致死量を遥かに超えた濃密な闇。
「舐めやがっ!?」
ぐぢゃ。何かが引き裂かれたような感覚とともに、俺の右側を猛スピードで何かが通り過ぎた。あまりに速すぎて、俺の動体視力だと気配しか追えず、現実の認識が大幅に遅れる。だが、だからこそ気づけたというべきか。
「なっ」
右腕が、ない。まるで何かに引きちぎられたかのように、肩から下がなくなっている。肩の骨が露出し、引きちぎられた血肉からは血が滴る。
確かにさっき何かが引きちぎられた感覚がしたが、あまりに一瞬すぎて右腕を掻っ攫われたとは思えなかった。感覚が鈍ったというよりは、引きちぎられたのが一瞬すぎて、理解と感覚の乖離が激しくなりすぎたがゆえの現象というべきか。
「くそ、こんなとき……に……?」
気がつくと、周りは闇の霧。ついさっきまで、黒煙とはそれなりに距離があったはずなのに、もはや目と鼻の先にまで追い込まれ、取り囲まれている。
また寒気が湧き上がる。取り囲まれた、自分の五感の罷り知らぬ間に濃霧が覆っているのも恐怖だが、それ以上に怖気を感じさせるのは、俺を取り囲む闇の霧に、五感がまるで通じないことだ。
探ろうと視覚、聴覚、嗅覚、触覚、その全てを手繰らせるたび、闇の霧に囚われて飲み込まれ、すぐさま引き離される。だったら霊感で、と霊力を手繰らせるがこれまた空振り。霊力を放つと、まるで黒霧が腹に飢えた獣のように、霊力を貪り食ってしまう。どれだけ注いでも足りない、注いだその瞬間に見通せぬ闇へと飲まれていく。
「っ……!?」
ばり、ばり。ぐち、ぐち。何かを貪る、音が聞こえる。例えるなら手羽元、手羽先の塩焼きを骨ごと噛み砕き、肉を引きちぎるような。
骨付き肉を食うには、あまりにデカい音だが、その音は鼓膜に焼きつくようにしつこくねちっこく、音を認識するたびに刻まれる。
気配はない、臭いはない、目には見えない。ただただ、血肉と骨を貪り食べる音だけが、霧の中を反響する。
「殺します。お前を殺します」
次は声。声音はポンチョ女のそれだが、口調は全然違う。もはや別人だ。でも何故だ、確かに聞こえるのに、位置がまるで分からない。
「私はお前に興味はありません。でもブルーの為に、お前を殺します。抵抗するなら、食べます。食べて、食べて、殺します」
声音はポンチョ女なのに、その調子はどこか無機質で、機械的で。ただ無感情ってわけでもなく、その声音、一言一句に怖気が蝕むほどの殺意を感じる。言葉の通り、殺す気なのだ。いや、殺す気しかない。が正しい。
「面白ぇ冗談だ、テメェみてぇなチビが、俺を食えると思ってんのか?」
余裕などない。だがここは強がらなければ相手のペースに飲まれてしまう。虚勢とも言えるが、張らなきゃ舐められるときは張らなきゃならねぇ。負けないためにも。
「なら、証明します」
「げあっ!?」
その一言が聞こえた、その瞬間だった。背後から何かが覆い被さると同時、背中から熾烈な痛みが身体中を荒れ狂う。
それは、背中の肉を皮ごと引きちぎられるような、猟奇的感覚。いや、感覚じゃない。今俺は。背中を、食われている。何かが剥がされた、右肩が軽くなる。
「かっ……」
間違いない、肩甲骨を無理やり引き剥がされた。がり、ばり、べき、ばき。また骨を噛み砕くような粉砕音。左肩に何かが触れる。コイツ、まさか。
「さ、せるかぁ!!」
俺は背中に向かって、体内霊力を集中させる。
そんなに血肉が欲しいなら、くれてやる。肉は生で食うより、焼いて食うほうが美味いのだ。幸いなことに、俺は火属性霊力を扱える。体内にはありったけの霊力がある。なら、望み通りくれてやろう。
「俺の背中の肉ごとなァ!! テメェも焼肉してやるよォ!!」
刹那、背中から大量の炎が噴射する。その炎はどこまでも紅い。血を彷彿とさせるほどに紅く、コンクリでできた地面が一気にドロドロに融ける熱量、流石にこれなら塵も残らな―――。
「私はお前を殺す為に、お前を食べます。殺すために食い、死ぬ為にお前は焼けます」
抑揚のない、無機質な口調は明確だった。周囲が熱でドロドロに融ける灼熱地獄の中で、背中の化け物は彼我にもかけず、俺の背中に食らいつく。
左側の肩甲骨も剥がされ、食われた。炎に焼かれながら、ポンチョ女だったソイツは、俺を食う。俺の背中を。
「火、が効かねぇだとぉ……!?」
背中を貪り食われながら、叫ぶ。火が効かない。初めての経験に、焦りが募る。焦ったら負けなのは分かっているのに、理性があまりに弱すぎた。
俺の人生で火が効かない存在ってのはほとんどいない。今までだと母さんか裏鏡ぐらいなもので、俺の中でアイツらは化け物すぎてノーカンという枠組みだった。
大概な奴らは、テキトーに火を放てば焼き尽くせる。たとえそれは、ポンチョ女だって例外じゃない。敵対したところで、やろうと思えばいつでも焼き尽くせる程度の存在。そのはずだったのに。
「いい加減しにしやがれ!!」
渾身の力で、身を翻す。背中に乗られていてどう足掻いても振り解けそうにないほどの力、だったら融けた地面に沈めてやる。幸い体をひっくり返すぐらいの余力はあった。
竜人化して基礎的な膂力を底上げし、更に体内霊力でほんの一瞬だけ身体強化をかけることで得られる、爆発的フィジカル。それでなんとか振り解き、距離を取る。
俺が発した火属性霊力の熱量によって、ドロドロになった地面に埋もれていくポンチョ女。普通、融けた地面に埋もれたら即死すると思うが、火属性霊力の大噴射を喰らって平然としていた奴が、この程度でやられるだろうか。
とにかく辺りを埋め尽くす黒い霧の圏外に出なければ始まらない。いわば今は、相手の有利な盤面の上に突っ立っているようなもので、いくら馬鹿で脳筋な俺でも、相手の有利な盤面の上でゴリ押しが効くと考えるほど筋肉には侵されていない自負がある。いくらなんでも無限に霧を出せるわけもなし、霧の有効範囲から出てしまえば、盤面上は対等だ。
火属性霊力が大して効かないのが問題だが、だったら物理でブチのめせばいいだけの話。それすらも効かなかったら―――。
「チッ……!」
詰みだ。手数の少ない俺に、パワー押しが効かなかったときの対処法はゼヴルードを使って強制的に終わらせる以外に方法がない。
でもアレは使わないと決めている。使わないのなら、残された道は一つしかない。
立ちこめる、胸中の暗雲。湧き出るだけ鬱陶しいそれを振り払うが、振り払っても振り払っても、無限に湧き出てきやがる。
「いや。仮にそうだとしても、俺には……」
仲間がいる。おそらく戦いを俯瞰しているであろう、久三男に意識を飛ばす。
『兄さん!』
『お前ならできるだろ? アイツの分析を頼みてぇ』
『兄さんそれが……』
お得意の分析を頼んだってのに、歯切れ悪く言い淀む。ほんの僅かな沈黙を挟み、久三男は恐る恐るといった感じで、その理由を話し始めた。
ポンチョ女が百足野郎を丸呑みした直後に出した、黒い霧。五感だけでなく霊感すらも狂わせる暗雲は、久三男の力をもってしても、分析ができないらしいのだ。
『霊的に干渉できないから、エラーが出てしまう。直接は無理だから、すぐにはどうにかできないかも……』
『すぐじゃなけりゃ、どうにかできるか?』
『正確な時間は言えないけど……僕の予想が正しいければ、いけると思う』
『んじゃ、頼む。分かったら言ってくれ』
了解、と言い残して霊子通信が切れる。まさか久三男で時間がかかるなんて露ほどにも思えなかっただけに、背中から大量の錘を背負わされたかのように足取りが重くなる。
火が全然効かず、周りはいくら見渡しても闇の霧。完全に相手の盤面の上、闇の霧さえどうにかできたら活路が開けるのに、その活路はすぐに開けない。相手の盤面の上で、踊らなきゃならねぇってのかよ。
「ハッ……そっちがその気ってんなら、やってやろうじゃねぇか」
幸い、俺は不死だ。何があろうと、肉体が粉々にされようと死なない。相手が俺を食い殺すってんなら、腹が破裂するまで食わせてやるまでだ。血肉に溺れやがれ、クソ百足野郎どもが。
闇の霧は晴れない。俺をしつこくつきまとうそれは、俺の行く末を案じているのか、それともただ嘲笑ってやがるだけなのか。どちらにせよ、俺はやれることをやるだけだ。
俺には仲間がいる。そう、信じて。
「澄男さま!」
「お、おう!?」
何度も呼んでいたのか、御玲の怒号が頭の中で反響する。ただ見つめることしかできない俺に、御玲はほんの少しため息をついた。
「澄男さま。お飲み物でも買いに行きましょうか」
北支部駐車場方面を指差す。
確か北支部備え付けの駐車場には、自動販売機があったはず。南支部の手伝いに行くってなったとき、御玲があまりにも汗をかいていたので水分補給のためのジュースを買いに行ったんだったか。
今の御玲は真夏の暑さに備えるため、本家邸から出る前に氷属性霊力を含ませた冷却用技能球に熱を吸収させているので平気とのことだが、今度は俺が補給される側になるとは、因果を感じさせる。
「オレらは?」
「あなたたちは正門前で待っていなさい」
「ボクたちまた待ちなの!?」
「おいおい流石に今回もとかウンコ漏れちまうぜ」
「まあしゃーねぇ、オレは土でも食ってますわ」
「仕方ありません。澄男さんは深刻なパンツ不足のご様子……御玲さんのパンツでパンツを補給するというのも上策でしょう」
勝手に騒いで意味わからん理由で納得する澄連。変に騒がれるより幾分かマシだが、ミキティウスの台詞から俺が御玲のパンツで疲れを癒す変態野郎扱いされているのだけが気に食わないものの、今の俺にはコイツらのボケにツッコむ余力がほとんどない。
待機を澄連に任せ、俺と御玲は件の自動販売機へ向かった。真夏なんて平気のはずなのに、気持ち悪い生ぬるさを感じて不快だ。
鉛のように重い身体を鞭打って、金を入れる。俺は微糖のコーヒー、御玲は普通の清涼飲料水。
「……澄男さまが気に病む必要なんてないんですよ」
お互い飲み物を口に含み、飲み込んだ矢先のことだった。まるで全てを見透かしているような声音に、思わず奥歯を噛み締める。
「……そういうわけにはいかねぇだろうが」
コーヒー缶が軋む音で、我に帰る。後もう少し遅ければ、握力でコーヒー缶を潰し、中のコーヒーが噴き出して大惨事が起きていただろう。
御玲は一度死に、そして俺が生き返らせた。厳密には蘇生魔法を事前に忍ばせていたあくのだいまおうだが、生き返らせる決断をしたのは、他ならぬ俺だ。
俺は何かを代償として支払い、御玲を蘇生させた。人の運命を捻じ曲げるほどの無茶に相応しい代償なんて、俺のちっぽけな想像力では何一つ思いつかない。
コーヒー缶を持つ手が、病気か何かかと思うぐらいに震える。俺は何を支払い、何を失ったのか。それが分からなくて、分からなくて分からなくて。
「お前は……怖くねぇのか」
御玲は、どう思っているのだろう。一度死んで生き返った身でありながら、何か変化があったのだろうか。
俺から見て、御玲は生き返った後も前も変わった様子はない。でもコイツは平気な顔で痩せ我慢しやがるので、実際のところは分からないのだ。俺がまだ復讐に駆られていた頃も色々と我慢していたようだし、何か内面的な変化があったとしても、敢えて口にしない可能性が高かった。
「別に。怖くはないですね」
渦巻く思索に揉まれる俺とは裏腹に、御玲は尚も淡白だ。
「たとえ何かを失っていたとしても、構いません。私はこうして生きてますから。命以上に大事なものなんて、ありません」
「一度死んで生き返ったんだぞ? つまりお前の命と同じ価値のものを支払ったんだ。その話だと、お前の命と同等のもんを、失ってるってことじゃ……!」
「だとしても、今こうして私は生きてます。それだけで、充分じゃないですか」
言葉を遮り、強く、強かに言い切った。俺を見上げる青い瞳は、陽光に照らされているせいか明るく輝いている反面、そこらの湖より深く、その底は見通せない。
クソ間抜けにも二の句が継げなくなった俺、思わずコーヒー缶を握り潰す。
「……怖い、ですか?」
コーヒー缶が手からこぼれ落ち、地面に転げる。転げた缶はその口から残っていた内容物を漏らし、アスファルトを焦げ茶色に濡らした。
立体駐車場を吹き抜ける風の音が、遠く聞こえる。冷たくて、でもどこか優しさを感じさせる温もりがある手が、そっと俺の手を握ったからだろうか。
「今なら、私しかいませんよ」
嗚呼、見透かされている。俺の本音もちっぽけなプライドも、何もかも。
「……怖ぇよ」
俺は転げた缶を踏み潰す。焦げ茶色の残滓が勢いよく噴き出した。それは色のせいも相まって、心なしか汚く見える。濾過しきれなかった、汚泥のように。
「怖ぇよ!! 俺は何を失った? 俺は何を奪っちまった? 御玲の運命を書き換える、それだけの無茶をして今があるのに、怖くて怖くて堪んねぇよ……クソが、クソがクソがクソがクソがぁ!!」
俺は馬鹿だ。御玲を生き返らせる瞬間はどんなことでも背負ってみせると、何があろうと何かを失うことこそが嫌なんだと、そう言い切って選択したことなのに、今になって払った代償を恐れている。
だったら最初から馬鹿な選択しなきゃいい。賢い選択をしておけばいい。あくのだいまおうに惑わされず暗黒の技能球を捨てていれば、クソ間抜けのように恐怖に押し潰されずに済んだはずだ。
でも、その選択をしたらどうなるか。理屈じゃ分かっている。
「すまねぇ御玲……すまねぇ……!」
無様に身体を震わせる。御玲の手を、強く握り返した。
俺は本当に馬鹿野郎だ。無様で間抜けで、自分が一度背負ったものの重みにヒヨる、哀れで低能な男。本来なら生き返らせた相手に取る態度じゃねぇ。これだと御玲なんか生き返らせるんじゃなかったって言っているようなもんだ。実際にそうかと問われれば、そんなことは全くない。御玲が死んでもいい理由なんざこれっぽっちもねぇし、御玲が死ぬ未来なんざあっちゃならねぇ。今回みたいにまた御玲や、もしくは弥平が死ぬ未来がこれからも来るってんなら、確実にその未来をブチ壊す。ただ単に未来を壊すほどの力の代償を背負えるだけの強さが、俺にないだけの話なのだ。
「なくてもいいじゃないですか」
無様に身体を震わせ、怯えきったガキみたくなっている俺に優しい言の葉が囀る。
「覚悟なんて、なくたっていいんです。どうしてもって言うのなら、これからすればいいんです」
「な、何を甘ったれたことを……」
「だって、私が求めてませんから」
いつもの反論にキレなんざない。気高い意志の前に虚しくかき消される。
「私は蘇生という奇跡を受けて、今ここにいます。その奇跡に、何の代償もないとは思っていません。何かを失うとしたら、失っているのでしょう」
「だったら……!」
「でも、私はこうして生きている。命を失うことと比べれば、どんな喪失も大したことありません」
もはや、何も言うことがない。愚図るガキを嗜める母親とも例えられるその姿は、背負いきれずに押し潰されそうになっている俺よりも、何倍も何倍も大きく見える。
「澄男さま。その恐怖……背負いきれぬというのなら、私に背負わせてはくれませんか?」
「な、何言ってんだ……漢として、そんな真似させるわけには……」
「痩せ我慢しない! あなたが私を生き返らせるために代償を支払ったというのなら、その代償による恐怖を半分背負うことこそが、生き返らせていただいた私の代償」
どこまでも澄んだ、青い意志。火山すら飲み込む大海の如きその意志は、俺如きが底を覗くには、あまりに深すぎる。
「私、水守御玲は……流川澄男の専属メイドなんですから」
静かなる大海は、荒れ狂う火山を鎮める。
本来なら男として、家長として、専属メイドに重荷を背負わせるなんぞ格が疑われる行いだ。でもそれも仕方ない。格だのなんだのと、ちっぽけなプライドを振りかざせるほど、今の俺は強くなかった。
「……なんでお前は、そんなに強かでいられる……」
「メンタルの強さには自信がありますので」
何かを失ったかもしれないのに、それをただメンタルの強さで片付けるあたり、俺には真似できそうにない。
俺はやっぱり、失ったと思うと恐ろしくて堪らないし、澪華を失ったあの悪夢のような瞬間が蘇るし。御玲も父親に色々されたって聞いたし、その影響もあるんだろうが、それで今こうして前向きにいられているところが、思わず塞ぎ込んでしまう俺とは違う。
俺もいつか、御玲のようになれるだろうか。
「なれますよ、きっと」
そんなに顔に出ているだろうか。思わず笑いがこぼれた。
「さ、さて。そろそろ……」
「よう」
改めて今までの自分の姿を客観的に見て気恥ずかしくなってきた俺は、正門前に待たせていた澄連の存在を思い出し、胸中に宿る羞恥心を有耶無耶にしてしまおうとした矢先。御玲の背後から、誰かを呼ぶ声がした。身の毛もよだつ、悪寒とともに。
全身を矢で蜂の巣にされるような霊圧が、瞬く間に俺たちの周りを支配する。俺たちは、一瞬で臨戦態勢をとった。
「……何の真似だ」
その正体は、全く予想外の存在だった。むしろ何故アイツが俺たちを脅かせるほどの霊圧を放てるのか。アイツが使役している奴からと考えれば納得のいく話なのだが、アイツの最大の特徴と言っていい奴の姿はどこにもない。青くて冷たい、刺し殺してくるような重圧が、俺を射抜く。
「何の真似だって聞いてんだよ答えろ! ポンチョ女!」
青くて冷たくて鋭い、しかし雑魚だと思っていた奴からは想像もつかないほど大きな霊圧を放つ存在。
ポンチョ女―――又の名を、ブルー・ペグランタンが呆然と、しかし確かな殺意を滾らせて、俺を睨んでいた。
「……前から、おかしいとは思っていたんだ」
ポンチョ女は、おもむろに言葉を紡ぐ。青い霊圧をそのままに、ただ俺だけを睨みつけて。
「ろくに常識も知らねえ、レクの指示にも従わねえ、そのくせ、人類の種族限界を軽く超えてる肉体能力……今思えば、暴閥の当主が支部に来るのも、おかしな話だったんだ」
「テメェ……何を言って」
「オメーなんだろ? もう隠すのやめろや、なあ……? 流川澄男よォ……!」
「なっ!?」
思わず口を塞ぐ。が、もう遅い。予想外にも程がありすぎて、反射的に反応しちまった。
「やっぱりな。オメーはそういう奴だよ。素直で、まっすぐで、本当にに馬鹿な奴」
脂汗が止まらない。悪寒が身体中を暴れ回り、熱が逃げていく。
「なんで……なんで俺たちの正体を……」
「あ? 面白えこと言うじゃねえか」
寒気が、一気に増した。言葉が出ない。紡ごうと口や舌を動かそうとするも、本能が強く拒みやがる。
本能が警鐘を鳴らしているとか、そんなレベルじゃない。寒さと暑さが入り混じり、言葉すら出なくなるほどの濃密な霊圧。これと似た霊圧を、俺は今日の朝方、その身で体感したばかりだった。
「オメーなら見覚えあるだろう、これ」
手、の代わりにポンチョの下から百足の尾らしきものが、あるものを持って飛び出してくる。そのあるものが目に入った瞬間、思考が散り散りになった。
「は、え……いや、なっ……」
百足野郎が取り出したあるもの。それはつい昨日、キシシ野郎が死に際に放った最期の一撃。二つの武器が融合して放たれたその一撃は、不死身と思われたカエルをも瀕死に追いやった悪魔。その武器は、澄連たちによって遥か彼方に葬られたはずだった。
「なんでテメェが、それを持っていやがる!?」
思わず叫び散らかしてしまう。それは怒りゆえか。否。未知への恐怖ゆえだ。
「澄男さま、あれは……」
「御玲はアレに触れるな。アレは俺でも死ぬ」
その言葉に、御玲の表情が緊張に塗り潰される。
俺はポンチョ女が持つ大鋏は触れることなく戦線離脱したため、結局のところ大鋏に触れるとどうなるかは分からないのだが、あの武器に触れたら死ぬと直感が唸っている。本能が危険信号を発し、明確な死を感じ取っているのだ。足先から感覚がなくなる感じは、戦いの中では滅多にない。
「それはオメーがよく知ってんだろ? これ本来の持ち主を」
百足野郎の尾が大鋏を前に突き出す。
本来の持ち主。知らないはずがない。なんなら昨日色々あったばかりの奴だ。忘れるには、あまりに日が浅すぎる。
「……だとして、テメェと何の関係がある?」
自分で言っていて、何を馬鹿なと思ってしまうが、とりあえず投げておく。殺意に満ちた態度と霊圧。流石の俺でもコイツの言いたいことくらい分かる。
「……馬鹿を通り越して暗愚だよ、本当」
思わず奥歯を噛み締める。分かっていたが実際に口に出されると腹が立つ。
「ナユタは俺の家族だった。暴閥のお前には、理解できねぇだろうがな!!」
霊圧の重みが更に増す。何なんだコイツの霊圧、ただの雑魚のはずなのに、なんでこんなに重い。
「下威区と中威区を分つ``武ノ壁``……アレを解いたのはお前ら流川だろ?擬巖のクソ暴閥と戦争を起こしたのも、お前らなんだろ?」
そうだ、と言いたいのに、それを言いたい口が開かない。青の霊圧が、縫い針となって俺の唇に突き刺さる。
「ナユタはツムジが死んだときから、``武ノ壁``を破壊することに執心していた。だからあのとき、お前らと一緒にナユタもいたはずなんだ」
なんでそんなことが分かる、と言いたい。言いたいのに、言えない。言うことを許してくれない。
「ナユタが、機に聡いナユタが、武ノ壁を崩せる絶好の機会を逃すはずがない。そして、この武器は元々ナユタとツムジの形見……それが私の所に来たってことは……」
ポンチョ女の瞳に、射抜かれる。御玲の強かで、それでいて暖かい青とはまるで違う。全てを凍てつかせ、飲みこんで破壊する災厄の蒼。ちょっとした山々や森など、一飲みして洗い流してしまうような。
「お前だろ。ナユタを殺ったのは。俺の家族を奪ったのは!! どうなんだ!!」
霊圧が止んだ。答えろという意味か。
本来なら、しらばっくれるか擬巖に擦りつけるかするべきだ。戦いの場は擬巖領だったわけで、擬巖が殺った可能性だって、ポンチョ女側からしたらあるはずだ。何故その可能性を無視して俺を名指しするのか分からないが、詰問された瞬間、不思議と俺の心は一瞬で凪いでしまった。霊圧から解放されたがゆえの解放感か。それとも、また別の何かか。
「ああ、俺が殺った」
愚直に正直に、馬鹿で暗愚らしく、言い放った。
言い訳、言い逃れ、屁理屈。粗探しして全部言ってもよかったが、俺も甘くなったもんだ。家族―――その言葉を使われると、あらゆる言葉が余計に感じてしまうほどに。
「俺が殺した。アイツが先に敵対してきたからな。黙って殺されてやる義理はねぇし」
「敵対してきた……? ああ、そうか。ナユタは、その道を選んだのか」
「なに?」
「流川を倒し、王になる。弱肉強食がこの世界の摂理なら、お前を倒せばナユタが王だ。それで、オレたちは自由を手にできる」
「自由ねぇ……仮に俺をぶっ殺せたところで、敵は多いと思うけども」
「些細な問題だな。そのときは私も一緒に戦うさ。ナユタと一緒にな」
「お前が? 百足野郎がいくら強ぇとはいえ、自惚がすぎるだろそれは」
「……そうか。そうだな、お前は無知だもんな」
煽り、嘲りとも言える、薄ら笑い。不快度が一気に湧き上がる。
「本当はレクに禁止されてたんだが……どっちにしろ俺はクビだし、もう関係ない、か」
ポンチョの下から這い出る、百足。いつもは俺や御玲の十倍ぐらいの背丈があるが、今はポンチョ女の半分ぐらいの背だ。それでもそこらの百足と比べたらバケモンレベルでデカいが、百足野郎はポンチョ女の身体に巻き付くと、ポンチョ女の顔までよじ登る。
「むーちゃん、おいで」
そう言うと、ポンチョ女はおもみろに口を開けた。
俺は何をしているのか、分からなかった。というより、あんまりにあんまりにも衝撃的すぎて、本能的に理解するのを拒んだのかもしれない。生半可な事では驚かない御玲ですら、目を見開き唖然としている。
無理もない。むしろ俺らが見ている絵面を見て、冷静でいられる奴がいるならソイツを紹介して欲しいぐらいだ。ポンチョ女は、百足野郎を。
―――百足野郎を食っている。
ポンチョ女の喉が別の生き物のように蠢く。普通、人の背丈の半分もあるようなクソデカ百足なんぞサイズ的に飲み込めたもんじゃあないはずだが、ポンチョ女はえずく様子もなく、するすると腹ン中に百足を収めていく。尾が、口の中に入った。
「あー……ああ……あー」
全身から湧き出す、霧。それは駐車場の屋根の隙間から差し込む太陽光を容易く飲み込む。
どこまでも暗く、どこまでも黒い、常闇の濃霧。全身のみならず、ポンチョ女の口からも、煙草の煙の如く大量に沸いて出る。
「ぐ……澄男さま……」
「御玲……!? げほ、げほ……なんだこれ、息がしづれぇ……?」
黒煙の物量は凄まじい。それなりに離れているはずの俺や御玲の所まで夥しく迫ってくる。煙草の煙を目一杯吸い込んで蒸せたときのような息苦しさ、膝を折った御玲を抱えて距離を取るが、それでも肺の中の異物感は消える気配がない。
「御玲。お前は逃げろ」
淡々と、でも強く告げる。御玲はほんの僅かに逡巡するが、すぐに吹っ切って立ち上がる。
「澄連を呼んできます。どうかそれまで、ご武運を……」
さっきより顔色が良くなったが、それでも声に芯がない。頰や額に汗を滲ませ、無意識か否かは分からないが眉間に皺が寄っている。察しの悪い俺でもしんどさが伝わる顔色だ。
御玲も悟ったのだ。今この瞬間、自分が戦力外なのだと。肉体が人類の種族限界に達している自分ですら、悪影響が出るほどの濃厚な霊力。浴びただけで負の感情が湧き上がる感覚は、おそらくだが闇属性霊力だろう。骸骨野郎なんぞ比較にならない、致死量を遥かに超えた濃密な闇。
「舐めやがっ!?」
ぐぢゃ。何かが引き裂かれたような感覚とともに、俺の右側を猛スピードで何かが通り過ぎた。あまりに速すぎて、俺の動体視力だと気配しか追えず、現実の認識が大幅に遅れる。だが、だからこそ気づけたというべきか。
「なっ」
右腕が、ない。まるで何かに引きちぎられたかのように、肩から下がなくなっている。肩の骨が露出し、引きちぎられた血肉からは血が滴る。
確かにさっき何かが引きちぎられた感覚がしたが、あまりに一瞬すぎて右腕を掻っ攫われたとは思えなかった。感覚が鈍ったというよりは、引きちぎられたのが一瞬すぎて、理解と感覚の乖離が激しくなりすぎたがゆえの現象というべきか。
「くそ、こんなとき……に……?」
気がつくと、周りは闇の霧。ついさっきまで、黒煙とはそれなりに距離があったはずなのに、もはや目と鼻の先にまで追い込まれ、取り囲まれている。
また寒気が湧き上がる。取り囲まれた、自分の五感の罷り知らぬ間に濃霧が覆っているのも恐怖だが、それ以上に怖気を感じさせるのは、俺を取り囲む闇の霧に、五感がまるで通じないことだ。
探ろうと視覚、聴覚、嗅覚、触覚、その全てを手繰らせるたび、闇の霧に囚われて飲み込まれ、すぐさま引き離される。だったら霊感で、と霊力を手繰らせるがこれまた空振り。霊力を放つと、まるで黒霧が腹に飢えた獣のように、霊力を貪り食ってしまう。どれだけ注いでも足りない、注いだその瞬間に見通せぬ闇へと飲まれていく。
「っ……!?」
ばり、ばり。ぐち、ぐち。何かを貪る、音が聞こえる。例えるなら手羽元、手羽先の塩焼きを骨ごと噛み砕き、肉を引きちぎるような。
骨付き肉を食うには、あまりにデカい音だが、その音は鼓膜に焼きつくようにしつこくねちっこく、音を認識するたびに刻まれる。
気配はない、臭いはない、目には見えない。ただただ、血肉と骨を貪り食べる音だけが、霧の中を反響する。
「殺します。お前を殺します」
次は声。声音はポンチョ女のそれだが、口調は全然違う。もはや別人だ。でも何故だ、確かに聞こえるのに、位置がまるで分からない。
「私はお前に興味はありません。でもブルーの為に、お前を殺します。抵抗するなら、食べます。食べて、食べて、殺します」
声音はポンチョ女なのに、その調子はどこか無機質で、機械的で。ただ無感情ってわけでもなく、その声音、一言一句に怖気が蝕むほどの殺意を感じる。言葉の通り、殺す気なのだ。いや、殺す気しかない。が正しい。
「面白ぇ冗談だ、テメェみてぇなチビが、俺を食えると思ってんのか?」
余裕などない。だがここは強がらなければ相手のペースに飲まれてしまう。虚勢とも言えるが、張らなきゃ舐められるときは張らなきゃならねぇ。負けないためにも。
「なら、証明します」
「げあっ!?」
その一言が聞こえた、その瞬間だった。背後から何かが覆い被さると同時、背中から熾烈な痛みが身体中を荒れ狂う。
それは、背中の肉を皮ごと引きちぎられるような、猟奇的感覚。いや、感覚じゃない。今俺は。背中を、食われている。何かが剥がされた、右肩が軽くなる。
「かっ……」
間違いない、肩甲骨を無理やり引き剥がされた。がり、ばり、べき、ばき。また骨を噛み砕くような粉砕音。左肩に何かが触れる。コイツ、まさか。
「さ、せるかぁ!!」
俺は背中に向かって、体内霊力を集中させる。
そんなに血肉が欲しいなら、くれてやる。肉は生で食うより、焼いて食うほうが美味いのだ。幸いなことに、俺は火属性霊力を扱える。体内にはありったけの霊力がある。なら、望み通りくれてやろう。
「俺の背中の肉ごとなァ!! テメェも焼肉してやるよォ!!」
刹那、背中から大量の炎が噴射する。その炎はどこまでも紅い。血を彷彿とさせるほどに紅く、コンクリでできた地面が一気にドロドロに融ける熱量、流石にこれなら塵も残らな―――。
「私はお前を殺す為に、お前を食べます。殺すために食い、死ぬ為にお前は焼けます」
抑揚のない、無機質な口調は明確だった。周囲が熱でドロドロに融ける灼熱地獄の中で、背中の化け物は彼我にもかけず、俺の背中に食らいつく。
左側の肩甲骨も剥がされ、食われた。炎に焼かれながら、ポンチョ女だったソイツは、俺を食う。俺の背中を。
「火、が効かねぇだとぉ……!?」
背中を貪り食われながら、叫ぶ。火が効かない。初めての経験に、焦りが募る。焦ったら負けなのは分かっているのに、理性があまりに弱すぎた。
俺の人生で火が効かない存在ってのはほとんどいない。今までだと母さんか裏鏡ぐらいなもので、俺の中でアイツらは化け物すぎてノーカンという枠組みだった。
大概な奴らは、テキトーに火を放てば焼き尽くせる。たとえそれは、ポンチョ女だって例外じゃない。敵対したところで、やろうと思えばいつでも焼き尽くせる程度の存在。そのはずだったのに。
「いい加減しにしやがれ!!」
渾身の力で、身を翻す。背中に乗られていてどう足掻いても振り解けそうにないほどの力、だったら融けた地面に沈めてやる。幸い体をひっくり返すぐらいの余力はあった。
竜人化して基礎的な膂力を底上げし、更に体内霊力でほんの一瞬だけ身体強化をかけることで得られる、爆発的フィジカル。それでなんとか振り解き、距離を取る。
俺が発した火属性霊力の熱量によって、ドロドロになった地面に埋もれていくポンチョ女。普通、融けた地面に埋もれたら即死すると思うが、火属性霊力の大噴射を喰らって平然としていた奴が、この程度でやられるだろうか。
とにかく辺りを埋め尽くす黒い霧の圏外に出なければ始まらない。いわば今は、相手の有利な盤面の上に突っ立っているようなもので、いくら馬鹿で脳筋な俺でも、相手の有利な盤面の上でゴリ押しが効くと考えるほど筋肉には侵されていない自負がある。いくらなんでも無限に霧を出せるわけもなし、霧の有効範囲から出てしまえば、盤面上は対等だ。
火属性霊力が大して効かないのが問題だが、だったら物理でブチのめせばいいだけの話。それすらも効かなかったら―――。
「チッ……!」
詰みだ。手数の少ない俺に、パワー押しが効かなかったときの対処法はゼヴルードを使って強制的に終わらせる以外に方法がない。
でもアレは使わないと決めている。使わないのなら、残された道は一つしかない。
立ちこめる、胸中の暗雲。湧き出るだけ鬱陶しいそれを振り払うが、振り払っても振り払っても、無限に湧き出てきやがる。
「いや。仮にそうだとしても、俺には……」
仲間がいる。おそらく戦いを俯瞰しているであろう、久三男に意識を飛ばす。
『兄さん!』
『お前ならできるだろ? アイツの分析を頼みてぇ』
『兄さんそれが……』
お得意の分析を頼んだってのに、歯切れ悪く言い淀む。ほんの僅かな沈黙を挟み、久三男は恐る恐るといった感じで、その理由を話し始めた。
ポンチョ女が百足野郎を丸呑みした直後に出した、黒い霧。五感だけでなく霊感すらも狂わせる暗雲は、久三男の力をもってしても、分析ができないらしいのだ。
『霊的に干渉できないから、エラーが出てしまう。直接は無理だから、すぐにはどうにかできないかも……』
『すぐじゃなけりゃ、どうにかできるか?』
『正確な時間は言えないけど……僕の予想が正しいければ、いけると思う』
『んじゃ、頼む。分かったら言ってくれ』
了解、と言い残して霊子通信が切れる。まさか久三男で時間がかかるなんて露ほどにも思えなかっただけに、背中から大量の錘を背負わされたかのように足取りが重くなる。
火が全然効かず、周りはいくら見渡しても闇の霧。完全に相手の盤面の上、闇の霧さえどうにかできたら活路が開けるのに、その活路はすぐに開けない。相手の盤面の上で、踊らなきゃならねぇってのかよ。
「ハッ……そっちがその気ってんなら、やってやろうじゃねぇか」
幸い、俺は不死だ。何があろうと、肉体が粉々にされようと死なない。相手が俺を食い殺すってんなら、腹が破裂するまで食わせてやるまでだ。血肉に溺れやがれ、クソ百足野郎どもが。
闇の霧は晴れない。俺をしつこくつきまとうそれは、俺の行く末を案じているのか、それともただ嘲笑ってやがるだけなのか。どちらにせよ、俺はやれることをやるだけだ。
俺には仲間がいる。そう、信じて。
0
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コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
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