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魔軍上陸編
側近の思索
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有象無象が犇きながらも、内部から曇り一つ無い晴天を展望できる超大型ロビーは、人々が流転する様相を、事細かに包み込んでいる。
人ごみを意に介さず、液晶画面に執心する少年―――流川弥平は、紅茶を片手に休憩コーナーのソファに腰掛け、テーブル付属の霊子ボードをじっと見つめていた。
やるべき事は流川に仇為した敵組織の解明。そして侵攻ルートの形成だが、優先的にするべきは、まず侵攻ルートの形成。
つまり敵拠点の発見である。
情報が不足している現況で、分家派の力を一切借りず、個人で行える情報探査手段としてここ、任務請負機関ヴェナンディグラムがある。
ヴェナンディグラムは武市上威区に存在し、武市全域の情勢ほぼ全てに関与している超大型組織。
厳密には複数の著名な暴閥が集まった合併企業であるが、そのほとんどが武市全域に情報網を張れる程の力を持っている。
従ってここ以上に情報が入手できる場所は、武市に存在しない。
霊子ボードを音声で操作しながら、頭の中で一週間前の出来事をもう一度精査していく。
相手には空間転移の魔法を操る強大な個人が構成員に存在している。
何人在籍しているのかは不明だが、空間転移で移動可能という事実は、大陸全体のどこに拠点が存在してもおかしくない事を示唆している。
人類が住まうこの大陸―――ヒューマノリア大陸の総面積は約五億平方キロメト。武市だけでも、約一億六千万平方キロメトある。
大陸のどこに存在してもおかしくないとはいえ、その範囲は広大の極み。幾ら情報探査に長けていても匙を投げたくなる膨大な探査範囲である。
まず、ヒューマノリア大陸には何があるか。最南端には広大な南ヘルリオン山岳と南ガレルギア火山帯。
北上していくと、南ヘルリオン山岳と隣接して流川本家領と覇劉家本殿領。
そしてそれらを含み、澄男たちの出身国である武市が横たわる。
武市は文明レベルの高い順に上威区、中威区、下威区の三つに区分されている。
実力主義、成果主義が支配的な縦社会。政府の概念が存在せず、より力の強い暴閥が富と領地、資源を好きなだけ手にできる極めて自由奔放な国。
法律も憲法も無く、全てが無法である武市は、自由である反面、巫市からは犯罪大国とも揶揄されている。
実際、軽犯罪等は日常茶判事。銃刀法も存在しないため、ほぼ全国民が一定水準の武器や兵器を所有し、お互いを牽制し合っているのが現状だ。
任務請負機関に所属する一介の任務請負人としてしか、この国を利用した事はないが、上威区は武市の中で最も文明が発達した区域である。
高層化が成された無数のビル。魔術と科学技術の目覚しい発達により、旅客機以外も例外なく大地のみ這いずる事を廃した公共交通機関。
まさに世の強者のみで築かれた都。魔術と科学が豪快に融合した、武市文明のみならず、人類文明の中心地の一つに挙げられる。
更に北上すると幅八百キロメトの大河、大極河を挟んで隣国の巫市。
更に北上して巫市農村過疎地域と呼ばれる田畑と、疎らな住宅しかない地域。そして更に以北に広大な北ヘルリオン山脈が横たわる。
麓には、流川分家邸と水守邸、花筏巫女衆本殿、笹船邸が存在する。
北ヘルリオン山脈以北は``北の魔境``と呼ばれる人類未踏の地が広がっており、全容は明らかになっていない。
火山があるとも、永久凍土があるとも言われているが、唯一分かっているのは竜人の小国があるかもしれない、という不明確な地理程度。
以上が全世界共通のヒューマノリア大陸の全容だ。
ここで、もし自分が敵組織の首謀者だったとして、どこに組織の拠点を置くのかと想像するなら、やはり巫市農村過疎地域であろう。
まず南ヘルリオンと北ヘルリオンは、人類では太刀打ちできない強力な魔生物の巣窟であるため、論外である。
人が踏み入れられないという点では、隠れ蓑としてこの上なく優秀だ。
しかし尋常ではない強さの魔生物が犇ひしめく大自然環境で、人間が住むに値する環境を構築するのは、あまりに至難である。
ヘルリオン付近の環境を整備するには、少なくとも流川家と同等以上の軍事力、技術力等を有しているのが条件。
それだけ大規模になれば、隠れ蓑として適さないアジトになってしまうだろう。見つけられないわけがない。
武市の場合、中威区や下威区は、ここと比べて文明程度が大変低い。
彼らは極めて秀でた文明利器を使用しているため、装備や魔道具の管理環境が外部から目立ってしまう。潜伏に向いておらず、好ましくない。
対してここは人類文明水準がトップを争うほど高く、製造や保全の環境を周囲の建物で同化させるには適しているが、流川家の眼がある。
万が一を考えれば、避難の際にできるだけ時間を稼ぎたい。流川本家邸からは距離を取るのが無難だろう。
残る巫市領は、都心部こそ上威区と同等以上に強大な文明発祥地だが、政府の概念が存在し、監視は鬼気迫るほど厳重。
統制機構と呼ばれる政府が国を治め、国民の人権や人間的生活は対抗組織、警察組織という国家公務員によって守られている。
人類文明国では最も治安が良く、そこはまるで人類が健全に住まうためにある都という意味合いから、別名``人類最後の砦``と言われている。
そのため政府機関が有する自衛能力は高く、建国以来、無法を生業とする武市もののふし民の侵略や、流川等の大暴閥の脅威から、国民を守り続けてきた。
従って、少なくとも都心部での拠点形成は難しい。
戦闘行為を行わざる得ない状況に陥った際、国家公務員の干渉による自軍の二次被害は計り知れない。最悪、自軍が全滅する可能性も考えられる。
だが巫市民は合理主義国家だ。人口の少ない農村過疎地域は色々と手薄で、多少手荒な真似をしても都心部にさえ影響が無ければトラブルは起こらない。
簡素な消去法で導くなら、巫市農村過疎地域が敵組織拠点の候補として最良だと、結論づけることが可能である。
弥平は空を見上げ、おもむろに息を吐く。眼精疲労による頭痛が、頭蓋を締めつける。
何にせよ、所詮簡素な推測。分家派や流川分家派側近の協力は必須だが、相手が逆探対策等を施している事も容易に予想される。
上威区に拠点がある可能性も普通に考えられるし、範囲の広大さも加味すればしばらく時間を要するだろう。
探知系魔術に対する脆弱性を解決し、探知系魔法が使える大物でもない限りは弱点という弱点が存在しない甲型霊学迷彩を所持できる組織である。
施されている逆探対策や隠蔽工作も半端ではないはず。
溜息を吐きつつも、作り笑いのような表情を変えぬまま透かし天井を見上げ、八方塞がりで膨大な手間を前にしている状況を嗤う。
澄男が交戦としたとされる十寺興輝、もしくは彼と同等の立ち位置の存在さえ拿捕できれば駒が進められる。
しかしこうも掻き乱すだけ掻き乱して雲隠れされると、中々に不愉快だ。
逆の立場なら相手の気を逆撫でする、戦意を削ぐ意味でも同じ手を使うけれども、使われる側になると、なんとも辛いものである。
この場合、些細な異変にとにかく首を突っ込んでいくしかない。
たとえ直接的に関係無くとも何らかの糸口が見えてくるかもしれないのならば、アナロジーな根性論を本にしたやり方こそが、最良の情報探査手段だ。
下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、である。
音声操作で霊子ボードに表示される武市情勢特集を一つ一つ読み続けていると、弥平は突然、頁を捲る声が止める。
「凪上家で大型競売会……此度は目玉商品仕入れ済み……」
凪上家とは、中威区を牛耳る大型暴閥``擬巖家``傘下の暴閥である。
中威区なかのいくで競売自体なんら珍しい事ではないが、任務請負機関ヴェナンディグラム、その本部の情勢特集で記事が挙がっている。
相当大規模な競売会を計画しているのか。それとも目玉商品とやらが、一生遊んで暮らせるほどの財を持っている上威区民衆にとって有益なのか。
尤も、気になるのは凪上家の上に立つ擬巖家だ。
擬巖家とは、中威区の全民衆を統べる中威区最高指導者。実際の力は兎も角、威勢だけならば流川と並び称される強大な暴閥の一角である。
ここで頭の中にある数ある仮説の一つを挙げるなら、擬巖家が敵組織である、という仮説。
根拠として、擬巖家が流川家を、近々倒幕しようと目論んでいる、という情報が流れている事だ。
当然巷で耳にした程度であるため、鵜呑みにはできない。流川家は大陸南方の覇権を欲しいままにしている。反流川思想を持つ暴閥は数知れない。
ただ反流川思想を持つ暴閥のうち、流川の要人を暗殺できるだけの専門家を使えるのは、流川家と同格の暴閥のみである。
信憑性が低いので必ず確固な裏を取る必要があるが、本格的に敵が動き出す前に、行動を起こしておいて損はない。
それに澄男の証言から、敵組織の幹部と目される十寺興輝が、木萩澪華を拉致したという情報もある。
目的は言うまでもないが、十寺が擬巖家もしくは擬巖家直系の手の者で、澪華を含めて複数の淑女を拉致しているのだとしたら。
仮説に尚更泊がつく事になる。
原則、十代前半の処女が最も高値で取引されるが、十代以内でなおかつ``原型``がそれなりの美女であれば、かなりの額の取引が期待される。
彼女の身柄をあらかじめ調べた見解としては、澪華が競売にかけられる可能性は充分にあるし、奴隷にされている可能性も決して低くない。
場所は凪上邸、日時は今日の一時間後。思わず涎が漏れ出てしまう好機である。
弥平は荷物を纏め、ソファから立ち上がるとヴェナンディグラムの本部ビルを後にする。
大通りを飛び交う人々の流動。青空を飛翔する公共交通機関の喧騒。弥平の身体全体に、生きた都市の吐息が染み込んでいく。
弥平は人気の無い路地裏に足を踏み入れた。魔道携帯鞄から真っ白に光る球一つ取り出し、手の平で少し転がしながら小さく頷く。
凪上家は擬巖家直系の暴閥。
つまりは中威区の中枢、中威区戦闘民居住区に存在するわけだが、上威区から中威区の戦闘民居住区までの距離は遠大だ。
霊力自動車なら片道数日以上。一般公共交通機関の中で最も速い移動手段である霊力旅客機でも、片道数十時間かかる程には遠い。
流川分家邸に連絡すれば、霊力の高出力噴出を利用し、音速をも超える速度で移動できるようにする加速器、超速機構シチュウサーが標準装備の、飛行能力を有する特殊装甲車を手配させることはできる。
しかし中威区では、文明水準の格差が極めて目立ってしまい、使用できない。現在地から一気に中威区戦闘民居住区まで移動する必要がある。
ここで、この球状のアイテム、技能球の出番である。
技能球とは、あらかじめ任意の魔法を一種類だけ封入できる魔道具で、封入した霊力分だけ、その魔法を無詠唱で行使できる。
流川分家派から手配してもらったものだが、この技能球に封入されているのは空間転移の魔法である``顕現``。
技能球に記録された世界地図の範囲内ならば、どこへでも転移する事ができる。
当然だが、封入されている霊力を使い切れば魔法は使えなくなるので、必ず霊力補充のために分家邸へ帰還する分を残しておかなくてはならない。
まだ今回は一度も使ってないので封入されている霊力残高には、かなり余裕がある。
``顕現``は空間を転移する魔法。魔術関係に特化した戦闘民何十人分になるのか。想像するのも億劫になる。
人間でありながら、転移魔法をも自在に使いこなせる両親が羨ましい。
技能球に意識を集中させ、頭の中に刷り込まれていくように入ってくる地図情報を本に、転移場所を指定する。
技能球が白く輝くや否や、視界は一瞬真っ暗になり、人気ひとけの無い森林公園に切り替わった。
辺りを見渡す。背後に流川るせん邸ほどではないものの、そこそこ大きい邸宅が建つ領地が見える。
凪上邸だ。邸正門付近に行列ができている事から、間違いないだろう。
さて、潜入する事自体は容易だが、問題は競売会のオーナーから、どうやって情報を引き出すかだ。
凪上クラスともなると凡庸な用兵戦力を保有している上、オーナーの周りには手練れた近衛も配置されている筈。
時間的余裕があれば、オーナーの友人に扮して情報を引き出す安全策を取るべきだが、彼等の身元や人間関係を悠長に調べている時間は無い。
手荒いが、オーナーが会場の舞台裏に入った隙を突いて拉致するか。
その場合は霊学迷彩を必要だが、甲型霊学迷彩は使えない。追っ手を振り解き易くなる反面、装備者の推測が容易になるリスクがあるからだ。
甲型霊学迷彩を自在に使えるのは、現状流川家のみ。最悪、手口等から流川関係者の仕業だという事が露見してしまう可能性がある。
使用する霊学迷彩は下位互換の乙型が妥当だろう。
擬巖家が敵本拠地であると仮定し、念には念を入れて適当に金品も一緒に盗んでおくのも良策か。
そうすれば、凪上側につまらないコソ泥兼凪上家に禍根を持つ反抗分子を印象付けられ、反抗分子どもに責任を転嫁させられる。
擬巖家直系の暴閥は、かなりの悪評が目立つ。凪上家も相当な禍根を抱えているに違いない。
つまらないコソ泥兼偽反抗分子を徹底して装うなら、敢えて適当な金品とともにオーナーを盗み、小物な愉快犯を演じる路線も良い。
凪上家構成員と反抗分子の間で疑心暗鬼になってくれれば、撹乱した甲斐があるというものだ。
弥平は頭の中で組み立てたピースをもう一度見直す。
正門から会場に入るまでは無数のクライアントに扮して潜入し、乙型を使ってオーナーの控え室を強襲。追っ手は煙玉や魔術罠で撹乱。
凪上クラスといえど、流川関係者と同等の近衛がいると思えないが、あらかじめ逃亡ルートに魔術罠を複数仕掛けておこう。
霊学迷彩だけで追っ手を撒ければ、良い方だろう。
仕上げは強制的に自白させ、自白後は魔法の効果が自動的に消滅。自白している間の記憶を捏造できる強制自白剤・甲型で、情報を引き出せば完了。
弥平は腕時計を見る。
競売会開始まで後五十分。トラップを仕掛けるだけの時間は充分にある。後は逃亡ルートを即興で編み出すだけだ。
魔道携帯鞄から魔道双眼鏡と、自身のペン型霊子ボードを取り出す。
凪上邸付近の地図情報を逃亡ルート形成の為の位置確認と照らし合わせ、早急にトラップ設置の準備に取りかかるのだった。
人ごみを意に介さず、液晶画面に執心する少年―――流川弥平は、紅茶を片手に休憩コーナーのソファに腰掛け、テーブル付属の霊子ボードをじっと見つめていた。
やるべき事は流川に仇為した敵組織の解明。そして侵攻ルートの形成だが、優先的にするべきは、まず侵攻ルートの形成。
つまり敵拠点の発見である。
情報が不足している現況で、分家派の力を一切借りず、個人で行える情報探査手段としてここ、任務請負機関ヴェナンディグラムがある。
ヴェナンディグラムは武市上威区に存在し、武市全域の情勢ほぼ全てに関与している超大型組織。
厳密には複数の著名な暴閥が集まった合併企業であるが、そのほとんどが武市全域に情報網を張れる程の力を持っている。
従ってここ以上に情報が入手できる場所は、武市に存在しない。
霊子ボードを音声で操作しながら、頭の中で一週間前の出来事をもう一度精査していく。
相手には空間転移の魔法を操る強大な個人が構成員に存在している。
何人在籍しているのかは不明だが、空間転移で移動可能という事実は、大陸全体のどこに拠点が存在してもおかしくない事を示唆している。
人類が住まうこの大陸―――ヒューマノリア大陸の総面積は約五億平方キロメト。武市だけでも、約一億六千万平方キロメトある。
大陸のどこに存在してもおかしくないとはいえ、その範囲は広大の極み。幾ら情報探査に長けていても匙を投げたくなる膨大な探査範囲である。
まず、ヒューマノリア大陸には何があるか。最南端には広大な南ヘルリオン山岳と南ガレルギア火山帯。
北上していくと、南ヘルリオン山岳と隣接して流川本家領と覇劉家本殿領。
そしてそれらを含み、澄男たちの出身国である武市が横たわる。
武市は文明レベルの高い順に上威区、中威区、下威区の三つに区分されている。
実力主義、成果主義が支配的な縦社会。政府の概念が存在せず、より力の強い暴閥が富と領地、資源を好きなだけ手にできる極めて自由奔放な国。
法律も憲法も無く、全てが無法である武市は、自由である反面、巫市からは犯罪大国とも揶揄されている。
実際、軽犯罪等は日常茶判事。銃刀法も存在しないため、ほぼ全国民が一定水準の武器や兵器を所有し、お互いを牽制し合っているのが現状だ。
任務請負機関に所属する一介の任務請負人としてしか、この国を利用した事はないが、上威区は武市の中で最も文明が発達した区域である。
高層化が成された無数のビル。魔術と科学技術の目覚しい発達により、旅客機以外も例外なく大地のみ這いずる事を廃した公共交通機関。
まさに世の強者のみで築かれた都。魔術と科学が豪快に融合した、武市文明のみならず、人類文明の中心地の一つに挙げられる。
更に北上すると幅八百キロメトの大河、大極河を挟んで隣国の巫市。
更に北上して巫市農村過疎地域と呼ばれる田畑と、疎らな住宅しかない地域。そして更に以北に広大な北ヘルリオン山脈が横たわる。
麓には、流川分家邸と水守邸、花筏巫女衆本殿、笹船邸が存在する。
北ヘルリオン山脈以北は``北の魔境``と呼ばれる人類未踏の地が広がっており、全容は明らかになっていない。
火山があるとも、永久凍土があるとも言われているが、唯一分かっているのは竜人の小国があるかもしれない、という不明確な地理程度。
以上が全世界共通のヒューマノリア大陸の全容だ。
ここで、もし自分が敵組織の首謀者だったとして、どこに組織の拠点を置くのかと想像するなら、やはり巫市農村過疎地域であろう。
まず南ヘルリオンと北ヘルリオンは、人類では太刀打ちできない強力な魔生物の巣窟であるため、論外である。
人が踏み入れられないという点では、隠れ蓑としてこの上なく優秀だ。
しかし尋常ではない強さの魔生物が犇ひしめく大自然環境で、人間が住むに値する環境を構築するのは、あまりに至難である。
ヘルリオン付近の環境を整備するには、少なくとも流川家と同等以上の軍事力、技術力等を有しているのが条件。
それだけ大規模になれば、隠れ蓑として適さないアジトになってしまうだろう。見つけられないわけがない。
武市の場合、中威区や下威区は、ここと比べて文明程度が大変低い。
彼らは極めて秀でた文明利器を使用しているため、装備や魔道具の管理環境が外部から目立ってしまう。潜伏に向いておらず、好ましくない。
対してここは人類文明水準がトップを争うほど高く、製造や保全の環境を周囲の建物で同化させるには適しているが、流川家の眼がある。
万が一を考えれば、避難の際にできるだけ時間を稼ぎたい。流川本家邸からは距離を取るのが無難だろう。
残る巫市領は、都心部こそ上威区と同等以上に強大な文明発祥地だが、政府の概念が存在し、監視は鬼気迫るほど厳重。
統制機構と呼ばれる政府が国を治め、国民の人権や人間的生活は対抗組織、警察組織という国家公務員によって守られている。
人類文明国では最も治安が良く、そこはまるで人類が健全に住まうためにある都という意味合いから、別名``人類最後の砦``と言われている。
そのため政府機関が有する自衛能力は高く、建国以来、無法を生業とする武市もののふし民の侵略や、流川等の大暴閥の脅威から、国民を守り続けてきた。
従って、少なくとも都心部での拠点形成は難しい。
戦闘行為を行わざる得ない状況に陥った際、国家公務員の干渉による自軍の二次被害は計り知れない。最悪、自軍が全滅する可能性も考えられる。
だが巫市民は合理主義国家だ。人口の少ない農村過疎地域は色々と手薄で、多少手荒な真似をしても都心部にさえ影響が無ければトラブルは起こらない。
簡素な消去法で導くなら、巫市農村過疎地域が敵組織拠点の候補として最良だと、結論づけることが可能である。
弥平は空を見上げ、おもむろに息を吐く。眼精疲労による頭痛が、頭蓋を締めつける。
何にせよ、所詮簡素な推測。分家派や流川分家派側近の協力は必須だが、相手が逆探対策等を施している事も容易に予想される。
上威区に拠点がある可能性も普通に考えられるし、範囲の広大さも加味すればしばらく時間を要するだろう。
探知系魔術に対する脆弱性を解決し、探知系魔法が使える大物でもない限りは弱点という弱点が存在しない甲型霊学迷彩を所持できる組織である。
施されている逆探対策や隠蔽工作も半端ではないはず。
溜息を吐きつつも、作り笑いのような表情を変えぬまま透かし天井を見上げ、八方塞がりで膨大な手間を前にしている状況を嗤う。
澄男が交戦としたとされる十寺興輝、もしくは彼と同等の立ち位置の存在さえ拿捕できれば駒が進められる。
しかしこうも掻き乱すだけ掻き乱して雲隠れされると、中々に不愉快だ。
逆の立場なら相手の気を逆撫でする、戦意を削ぐ意味でも同じ手を使うけれども、使われる側になると、なんとも辛いものである。
この場合、些細な異変にとにかく首を突っ込んでいくしかない。
たとえ直接的に関係無くとも何らかの糸口が見えてくるかもしれないのならば、アナロジーな根性論を本にしたやり方こそが、最良の情報探査手段だ。
下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、である。
音声操作で霊子ボードに表示される武市情勢特集を一つ一つ読み続けていると、弥平は突然、頁を捲る声が止める。
「凪上家で大型競売会……此度は目玉商品仕入れ済み……」
凪上家とは、中威区を牛耳る大型暴閥``擬巖家``傘下の暴閥である。
中威区なかのいくで競売自体なんら珍しい事ではないが、任務請負機関ヴェナンディグラム、その本部の情勢特集で記事が挙がっている。
相当大規模な競売会を計画しているのか。それとも目玉商品とやらが、一生遊んで暮らせるほどの財を持っている上威区民衆にとって有益なのか。
尤も、気になるのは凪上家の上に立つ擬巖家だ。
擬巖家とは、中威区の全民衆を統べる中威区最高指導者。実際の力は兎も角、威勢だけならば流川と並び称される強大な暴閥の一角である。
ここで頭の中にある数ある仮説の一つを挙げるなら、擬巖家が敵組織である、という仮説。
根拠として、擬巖家が流川家を、近々倒幕しようと目論んでいる、という情報が流れている事だ。
当然巷で耳にした程度であるため、鵜呑みにはできない。流川家は大陸南方の覇権を欲しいままにしている。反流川思想を持つ暴閥は数知れない。
ただ反流川思想を持つ暴閥のうち、流川の要人を暗殺できるだけの専門家を使えるのは、流川家と同格の暴閥のみである。
信憑性が低いので必ず確固な裏を取る必要があるが、本格的に敵が動き出す前に、行動を起こしておいて損はない。
それに澄男の証言から、敵組織の幹部と目される十寺興輝が、木萩澪華を拉致したという情報もある。
目的は言うまでもないが、十寺が擬巖家もしくは擬巖家直系の手の者で、澪華を含めて複数の淑女を拉致しているのだとしたら。
仮説に尚更泊がつく事になる。
原則、十代前半の処女が最も高値で取引されるが、十代以内でなおかつ``原型``がそれなりの美女であれば、かなりの額の取引が期待される。
彼女の身柄をあらかじめ調べた見解としては、澪華が競売にかけられる可能性は充分にあるし、奴隷にされている可能性も決して低くない。
場所は凪上邸、日時は今日の一時間後。思わず涎が漏れ出てしまう好機である。
弥平は荷物を纏め、ソファから立ち上がるとヴェナンディグラムの本部ビルを後にする。
大通りを飛び交う人々の流動。青空を飛翔する公共交通機関の喧騒。弥平の身体全体に、生きた都市の吐息が染み込んでいく。
弥平は人気の無い路地裏に足を踏み入れた。魔道携帯鞄から真っ白に光る球一つ取り出し、手の平で少し転がしながら小さく頷く。
凪上家は擬巖家直系の暴閥。
つまりは中威区の中枢、中威区戦闘民居住区に存在するわけだが、上威区から中威区の戦闘民居住区までの距離は遠大だ。
霊力自動車なら片道数日以上。一般公共交通機関の中で最も速い移動手段である霊力旅客機でも、片道数十時間かかる程には遠い。
流川分家邸に連絡すれば、霊力の高出力噴出を利用し、音速をも超える速度で移動できるようにする加速器、超速機構シチュウサーが標準装備の、飛行能力を有する特殊装甲車を手配させることはできる。
しかし中威区では、文明水準の格差が極めて目立ってしまい、使用できない。現在地から一気に中威区戦闘民居住区まで移動する必要がある。
ここで、この球状のアイテム、技能球の出番である。
技能球とは、あらかじめ任意の魔法を一種類だけ封入できる魔道具で、封入した霊力分だけ、その魔法を無詠唱で行使できる。
流川分家派から手配してもらったものだが、この技能球に封入されているのは空間転移の魔法である``顕現``。
技能球に記録された世界地図の範囲内ならば、どこへでも転移する事ができる。
当然だが、封入されている霊力を使い切れば魔法は使えなくなるので、必ず霊力補充のために分家邸へ帰還する分を残しておかなくてはならない。
まだ今回は一度も使ってないので封入されている霊力残高には、かなり余裕がある。
``顕現``は空間を転移する魔法。魔術関係に特化した戦闘民何十人分になるのか。想像するのも億劫になる。
人間でありながら、転移魔法をも自在に使いこなせる両親が羨ましい。
技能球に意識を集中させ、頭の中に刷り込まれていくように入ってくる地図情報を本に、転移場所を指定する。
技能球が白く輝くや否や、視界は一瞬真っ暗になり、人気ひとけの無い森林公園に切り替わった。
辺りを見渡す。背後に流川るせん邸ほどではないものの、そこそこ大きい邸宅が建つ領地が見える。
凪上邸だ。邸正門付近に行列ができている事から、間違いないだろう。
さて、潜入する事自体は容易だが、問題は競売会のオーナーから、どうやって情報を引き出すかだ。
凪上クラスともなると凡庸な用兵戦力を保有している上、オーナーの周りには手練れた近衛も配置されている筈。
時間的余裕があれば、オーナーの友人に扮して情報を引き出す安全策を取るべきだが、彼等の身元や人間関係を悠長に調べている時間は無い。
手荒いが、オーナーが会場の舞台裏に入った隙を突いて拉致するか。
その場合は霊学迷彩を必要だが、甲型霊学迷彩は使えない。追っ手を振り解き易くなる反面、装備者の推測が容易になるリスクがあるからだ。
甲型霊学迷彩を自在に使えるのは、現状流川家のみ。最悪、手口等から流川関係者の仕業だという事が露見してしまう可能性がある。
使用する霊学迷彩は下位互換の乙型が妥当だろう。
擬巖家が敵本拠地であると仮定し、念には念を入れて適当に金品も一緒に盗んでおくのも良策か。
そうすれば、凪上側につまらないコソ泥兼凪上家に禍根を持つ反抗分子を印象付けられ、反抗分子どもに責任を転嫁させられる。
擬巖家直系の暴閥は、かなりの悪評が目立つ。凪上家も相当な禍根を抱えているに違いない。
つまらないコソ泥兼偽反抗分子を徹底して装うなら、敢えて適当な金品とともにオーナーを盗み、小物な愉快犯を演じる路線も良い。
凪上家構成員と反抗分子の間で疑心暗鬼になってくれれば、撹乱した甲斐があるというものだ。
弥平は頭の中で組み立てたピースをもう一度見直す。
正門から会場に入るまでは無数のクライアントに扮して潜入し、乙型を使ってオーナーの控え室を強襲。追っ手は煙玉や魔術罠で撹乱。
凪上クラスといえど、流川関係者と同等の近衛がいると思えないが、あらかじめ逃亡ルートに魔術罠を複数仕掛けておこう。
霊学迷彩だけで追っ手を撒ければ、良い方だろう。
仕上げは強制的に自白させ、自白後は魔法の効果が自動的に消滅。自白している間の記憶を捏造できる強制自白剤・甲型で、情報を引き出せば完了。
弥平は腕時計を見る。
競売会開始まで後五十分。トラップを仕掛けるだけの時間は充分にある。後は逃亡ルートを即興で編み出すだけだ。
魔道携帯鞄から魔道双眼鏡と、自身のペン型霊子ボードを取り出す。
凪上邸付近の地図情報を逃亡ルート形成の為の位置確認と照らし合わせ、早急にトラップ設置の準備に取りかかるのだった。
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