人生和歌集 -風ー(1)

多谷昇太

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海を渡る風

いざズーリックへ!

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バーゼルゆズーリックまで銭要らぬベンツの夫婦われらを運びぬ

私の「ズーリックまでの電車代いくらだった?」の質問に「なに云うてんのや。ヒッチや。ヒッチで行くんや。自分は(大阪弁で「おまえは」の意)電車で行くつもりやったんか?金あるのう」と呆れたように松山が揶揄う。最前の彼一人だけのズーリックからの往復もヒッチだったとか。私は恐れ入るしかなかった。私だって渡欧以来、特にユーレイルパスが切れてからはヒッチを何回かやりましたがしかしどうにも恥ずかしく、ヒッチは苦手だったのです。今はまだ手持ちの金があるし、電車での移動しか念頭になかったのを松山からどやされたような気がしました。私は大いに自戒しヒッチに同意しましたが、ただここでひとこと読者に付言すべき事態があって、実はこのヒッチ行は私と松山だけでなく、私から見れば優雅なことこの上ない日本人の旅行者がもう一人いたのでした。どういう男かと云うと、身は交通公社の社員で社命だったのか自発的な研修旅行だったのか忘れましたが、ヨーロッパにおけるこれからの色々な旅のパターンを模索すべく、その必要もないでしょうにホテルに泊まらずここバーゼル・ユースホステルに宿泊してみたり、我々のヒッチ行に是非とも云って同行を申し出たのでした。まあとにかく、かくして我々3人は師走のバーゼルを離れここから80キロメートルほど離れたズーリック(日本ではチューリッヒ)へと旅立ちました。思えばドイツ・フランクフルトから決死の気構えで入ったバーゼルだったし、離れるとなると些かでも感慨深いものがありました。もう再び訪れることもあるまいとその時は思ったものでしたが豈図らんや、実はこの数ヶ月先に私一人だけでまた再訪することとなるのです。その折りにまたフランキーやらパゴスやらのマレーシア人たちとも再会するのですが、まあそれは先の話となります。そのマレーシア人たちからグッドラックの握手を受けて、我々一行は勝手知ったる松山に先導されバーゼル郊外にある高速道路の入り口に立ちました。

【キュキューッとばかりに止まってくれたメルセデスベンツ。ズーリックまで高級車でタダ…私は驚くやら嬉しいやら、ただ感謝感激でした。↓Emslichterさんの作品】
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