サマネイ

多谷昇太

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第二章 竜馬

人間とは?…畢竟、わからない

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ところが俺ときたら全然別ものだった。およそすべて(人、事象)に対して妥協してしまう弱男で、なおかつ俊田やセザールのように人への情に厚いところもまったくなかった。世間・社会に対する‘我らランボー革命派’として、始めセザールは尋常ならぬ親近感を俺に示してくれたが、あたかもランボーがベルレーヌを見限ったように、俺の実態をするどく嗅ぎ分けて遂には俺から離れて行った。俺には実にこのパターンが多い。だからとにかく自信が持てないないのだ、人との関わりにおいて。弱い者が傷の舐めあいを申し出る感があるらしい。それをうとまれて、同類にされるのは御免だとばかり人は離れて行くのだろう。しかし俺からすればそれはすべて裏切りに見えるのだ。友情を結ぼうとするのに何かのしるし(非人?マルドロール?単に弱虫?)を見つけて俺から離れて行くとしか思えなかった。そんな繰り返しを恐れるあまり俺はもう人を信用することをやめていた。傷つきたくなかった。ここでも彼俊田にしつこく聞いて、疎まれるよりは何さわりなくいたほうがいい。人は畢竟…俺にはわからない。
「ところでさ、金のほうどうなったの?家族からの金」こちらがそれほどに悩む人への患いなど微塵もなく俊田が単刀直入に聞いてきた。家族に無心したことを俺はすでに俊田に話していたが、それを云うのに「俺が出国前に銀行に残していた金」などと体裁をつくろっていたのだ。しかし要は家族に迷惑をかけているのだろうし、自分の金うんぬんというのも眉唾ものだとでも云いたげな俊田のぞんざいぶりだった。金のあるなしや、身のふりかたもかなわぬ者への彼の対応ぶりはハッキリしていた。
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