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第三章 山本僧侶
ありがたき在家の寄進
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こんどは自分の顧客や販売ルートを探ろうと思っていま坊さんをしてるわけ。だからほとんどあんたと同じよ。もっともあんたと違って正式な手続きを踏んで、金も払ってるけどね」と云って気さくに笑った。申し遅れたが「金」云々というのは本来得度、サマネイのパンサー料が要るのだった(少額ではない!)。それを払って一時的な見習い僧、サマネイになったのだから彼にとってはすべてタダどころか、すでに一括して事前に払い込んでいることになる。もっともその見習い時期、パンサーはとっくに過ぎていようし、いまこうして新人の日本人サマネイを迎えて指導する役をおおせつかっているくらいだから、いまの彼の本当のところはわからなかった。少なくもいまだサマネイであるということはなさそうである。であるなら彼の近未来への意向はともかくすでに正式な山本僧侶であるということだ。もとより俺に関して云えば得度・パンサー料もすべてタダだった。無銭飲食と住居が目的だからあたりまえと云えばあたりまえだが、ただしそこには経緯があって、実は俺に代ってその費用を立て替えてくれた人がいるのである。タイ人の在家という存在で、裕福な篤志家であるのに違いなかった。僧への寄進が功徳となることを奉じている方、名前も知らないそのどなたかがいてくださって、「どうぞこのお金で仏道修業をなさってください。在家の私のかわりとなって戒律・精進にお励みください」と、畢竟このような俺ごとき凡夫にさえ寄進してくださっていたのだ。三宝への信仰篤き人と云わねばならない。このように、この国ではいまだ三宝への敬いと寄進が現実に生きていた。
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