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第四章 得度式と鏡僧侶
彼は陽で俺は陰
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「こういう匂いの出ないものなら(夜食べても)平気だから」と戒律を示しておきながらその破り方をも堂々と教えてくれるのだった。こういう人なのである、山本師という人は。いくらタイで坊さんをすると云ったって3食に馴れた日本人の俺たちには無理だよななどと云ってはばからない。もし彼のそばに(子分として)はべるならおよそなんでも許されるような気持ちにさえなってしまうほどだ。先に彼みずからが云ったように本音というか本懐はこれから起こす自分の商売なのであり僧形は方便である。しかしだからと云って先程の喜捨をしてくれた御婦人たちを始め信仰篤きタイの人たちに悪びれる風などまったくない。賭けてもいいがその御婦人たちや同僚のタイ僧侶たちから彼はまちがいなく好かれるだろう。逆にいささかでも慚愧の念を抱く俺に対しては彼らが(のみならずおよそすべての人が)不興の念をもよおすことも間違いはないのだ。24年の全人生の経験から俺には痛いほどそれがよくわかっていた。わかってはいるがしかしそれがなぜなのかはわからない。エミール・ゾラが「居酒屋」で描く業のなせるわざと自分に得心させるばかりである。とにかく、そのような山本師と居るならば孤独感も不自由も悉皆抱くことなく僧院生活を送れそうだ。あたかも仏教大学生に対する鑑師のように、彼ならば俺への矯正師として、俺におけるもろもろの欠点を指摘してくれることだろう(なぜなら彼が日で俺が陰だからだ)。
さてこのようにタバコも吸えることだし俺に不足はないのだが、しかし移籍はもう既に決まったことのようだった。
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