サマネイ

多谷昇太

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第五章 僧房

拙詩「アフガンの夜」

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このカオスがいつか晴れて魂はあの星空へと舞い上がれるものだろうか。その心地よいイリュージョンを想ううちに俺は眠りの中へと落ちた…。

(※ここでアフガニスタン・ヘラートで詠んだ詩を記しておきます)

「アフガンの夜」
魅せられしはアフガンの夜。
星の光のあまりの明るさ、美しさに、
わがこころ驚き、すなわち哭きぬ。
斯くも静謐なる光を受けるなら
妖精らも出でむ、月の女神も舞い降りむ。
幼子に戻るか、伽の世界へ行くか、知らず。
現し世のすさみから放たれ、
原初の世界へ誘われんとする、そは魔法なめり。
女神よ、舞え。妖精(こ)らよ、遊べ。
もの皆なべてこの光のもと安逸たれ。
我とてもえやは受けざらん、この原初のやさしき光。
ムーンシャワー、スターダスト浴びるがに。

国の人あらば見せまほしきよ、云いまほしきよ、
我らが国の夜空(そら)は空にあらずと。
失われおりしはこの満天の星空、それに比すべき我らが清心たりき。毒心、邪心、欲念、もろもろの不浄、この光のもと、みな洗い流さばや!

流れ来るコラーンの祈り声に、回教徒ならずとも額づき、また起きては、その声がむた星の世界へと飛びたたざるや。

かくこそ思わめ、このアフガン夜空に…

           【シメーニカ・ホダー、親愛なる神よ】
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