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アンチ群衆の人
「アンチ群衆の人」自考・その一
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大戦前エドガー・アラン・ポーが『群衆の人』を著し、増大する個と社会の不安、カオスを描いて見せた。巷には「群衆の人」があふれ誰かの号令を待っているようだった。やがて超人が現れ、彼らに印を与えると、彼らは互いに殺し合いを始め、そして破滅した。その後しばらくのルネッサンスを経て、いま再び「群衆の人」は巷にあふれ始めているようだ。しかし今はまだ経済や地位への傲りから、彼らはただ傲慢であることでしかその片鱗を見せてはいない。「アンチ群衆の人」への差別だけでその溜飲をさげているとも見る。しかしかつてのように経済が傾ぎ、不安が増大するとどうだろうか。その時にはこんどは誰が印を与え、誰をユダヤの的とするのだろう?「群衆の人」が顕在化するなら、「アンチ群衆の人」もまた抽出されるのだ。我々は再びの愚行を、暴走と破滅を繰り返すのだろうか?「群衆の人」も「アンチ群衆の人」も、それぞれのカオスを介在とした無明と不安のアンビバレントな両面とわかっているのに?大切なのはカオスを正面から見て、まさしく一人の中で、それぞれが人間の本性に立ち還り、正誤の分別を厳しく為すことではあるまいか。ちょうどあの男、人々に怪人とあざけられた男が為したように。彼は群れようとする人たちも孤独の中に走ろうとする者たちも、どちらも畢竟仮面をかぶっていると、かぶらされていると看破した。思うにその二種の仮面は互いを見ると、どうも排斥し合い、いがみ合うように造られているようだ。でも誰によって?それは恐らく、超人…ではあるまいか。では超人とは何か。 具体的に誰を指すのだろうか。それはひょっとして、他ならぬこの男のような存在であるかも知れないのだ。
歌姫に諭される前のこの男の傲慢さは、その思考と物言いのほどはどうだったろうか。「無知な大衆は指令されることを待っている」とヒトラーはその著「わが闘争」の中で述べている。烏合の大衆に対する絶望と蔑視が嵩じれば、極限に至れば、この男は開き直って逆に彼らを利用し、特別化して印を与え、挙句自らを表すための道具とするやも知れないのだ。画家志望だったかつてのヒトラーの孤独さと陰湿だった様はよく知られているところである。その性癖と思考はあるいはこの男と似たようなものであったかも知れない。民族、国家、血統、貴賤貧富や階級の桎梏、そのどこからでも彼、超人は大衆に印を与えて増長させ得る。「汝ならぬ我」をこそ際立たせてみせる。なぜなら他との「違い」こそが人間の命であることを、自らの思念に鑑みて彼はよおく理解しているからだ。他方で、ではこの印を与えられた大衆、群衆こそが降臨した真の超人そのものであるとも云えるのではないか。なぜなら「違い」を奉じて実際に現出してしまった、力あるМAX体、正真の怪物であるからだ。それと比べればこの男など現出の為の単なる媒介であり、現出後はもはやピエロにしか過ぎず、超人・ МAX体に踊らされるがままの存在と堕してしまうようだ。それは彼の文豪トルストイが『戦争と平和』の中で「ナポレオンがモスクワ遠征を欲したのではない。(制御の効かなくなった)フランス人民こそがそれを欲したのであり、彼ナポレオンはただの彼らの操り人形でしかない」と看破したのとまったく同じロジックである。しこうして違いに奢ったМAX体が暴走に走る様は、絶望的にただ破壊あるのみである。一次、二次後の、三次大戦へと…でさえあるかも知れないのだ。まったく反省のない、「繰り返し」というものである。
歌姫に諭される前のこの男の傲慢さは、その思考と物言いのほどはどうだったろうか。「無知な大衆は指令されることを待っている」とヒトラーはその著「わが闘争」の中で述べている。烏合の大衆に対する絶望と蔑視が嵩じれば、極限に至れば、この男は開き直って逆に彼らを利用し、特別化して印を与え、挙句自らを表すための道具とするやも知れないのだ。画家志望だったかつてのヒトラーの孤独さと陰湿だった様はよく知られているところである。その性癖と思考はあるいはこの男と似たようなものであったかも知れない。民族、国家、血統、貴賤貧富や階級の桎梏、そのどこからでも彼、超人は大衆に印を与えて増長させ得る。「汝ならぬ我」をこそ際立たせてみせる。なぜなら他との「違い」こそが人間の命であることを、自らの思念に鑑みて彼はよおく理解しているからだ。他方で、ではこの印を与えられた大衆、群衆こそが降臨した真の超人そのものであるとも云えるのではないか。なぜなら「違い」を奉じて実際に現出してしまった、力あるМAX体、正真の怪物であるからだ。それと比べればこの男など現出の為の単なる媒介であり、現出後はもはやピエロにしか過ぎず、超人・ МAX体に踊らされるがままの存在と堕してしまうようだ。それは彼の文豪トルストイが『戦争と平和』の中で「ナポレオンがモスクワ遠征を欲したのではない。(制御の効かなくなった)フランス人民こそがそれを欲したのであり、彼ナポレオンはただの彼らの操り人形でしかない」と看破したのとまったく同じロジックである。しこうして違いに奢ったМAX体が暴走に走る様は、絶望的にただ破壊あるのみである。一次、二次後の、三次大戦へと…でさえあるかも知れないのだ。まったく反省のない、「繰り返し」というものである。
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