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第二章 わたしの名前はミキ
わたしの名前はミキ
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ママはカウンター下の冷凍庫からぶっかき氷を取り出すとグラスに入れ、メジャーカップでダブルのウイスキーを注ぐ。それをマドラーで掻きまわしながら「ワタシナマエ、ミキ。アナタハ?」と名を聞いて来た。ミキ?…ハハア源氏名だなと思いつつ「田村、田村淳二さ。職業はフリーライター」と答え差し出されたウイスキーに口をつけた。先ほど来の性的興奮の余韻の中にあった口の中はカラカラで、ウイスキーはことのほか旨かった。ひとくちふたくちと立て続けにあおりながらこの先の会話の持って行きようを考える。ママとの年の差は優に十以上もあるだろう。しかしいまさら大人ぶったところで(今しがたのおのれのザマを思えば)始まるまい。「ミキさんは…えーっとその、どこの国の出身ですか」などと〝さん”づけの〝です〟言葉で聞くのに「ミキデイイヨ」と返され、たたらを踏まされる。決まり悪げにいま一度咳払いをして「あ、ああ、そう。じゃあミキ、君は中国人?それとも韓国かな」と聞くのに「ミキトイッタデショ。ワタシ、ニホンジンヨ」そう返すのだが言葉の抑揚がいかにもおかしく、コンピュータの機械的な合成音としか聞こえない。しかしそれを云うのも憚られるので話題を変えた。「そうか、そ、そりゃそうだよね。ところでさ…さっきピュグマリオンって云う声がしたけど、あれって、君?」「ソウ、ワタシ」やはりそうかと納得はするがしかしなぜピュグマリオンなのかわからない。それをそのまま聞いてみる。「ピュグマリオンって…なぜ、なぜピュグマリオンなの?」ママは意味ありげに一瞬間を置いてから「アナタノメ、トテモサビシソウ、ダッタ。オモテデタバコスッテタトキネ。ココロモ、ヨクボウ…モ?」そう告げてはまたこちら向きに前かがみとなりカウンター下の冷蔵庫から何かを出すようだ。
【サービスで差し出されたチーズとチョコレートのおつまみ】
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