私は役目を放棄し関わらないことを誓います

宵丸

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第三話

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「子爵家、男爵家、子爵家、伯爵家…」

「お嬢様、少し休憩されてはいかがですか?」

「え…、ああもうこんな時間なのね…。ありがとう」

あれから私は婚約者探しに没頭していた。何かしていないとエディのことを思い出してまた泣き出してしまいそうだから。

こんな私でも、伯爵家の一人娘。故にエディと婚約が解消されても婚約を申し込んでくれる方々がいらっしゃる。

「はぁ…」

お父様からはゆっくりでいいと言われているが、早く婚約をしてお父様を安心させたい。私はもう大丈夫だと。

1枚1枚丁寧に見ていき、私は候補を3人に絞った。

1人はアスター子爵家次男ルーク・アスター様。アスター子爵家は子爵家ではあるが、商会を経営しており、その商会の商品の品質が良く人気が高いためとても繁盛している。そのため我が家よりも金銭的に裕福である。
次男のルーク様は現在16歳。エディと同い年。おっとりとした性格ではあるが成績は優秀。加えて商会の手伝いもしているため、将来は優秀な方だろう。

2人目はハイド伯爵家次男ウィリアム・ハイド様。現在17歳、私の3つ上で私が学園に入学する時には既に学園を卒業されている。一度社交界で見たことがあるけれども、とても大人っぽい方でとてもお顔が整っていた気がする。銀髪紫瞳の持ち主で、次男ではあるけれど、婚約者がいないためご令嬢たちの注目の的だった。

3人目はバッテンベルク侯爵家三男ノア・バッテンベルク様。バッテンベルク侯爵家は王国が出来た当初からある由緒正しい家。ノア様は私と同い年の14歳。少し捻くれ者と言われ周囲に距離を置かれていることがしばしばあったらしい。
でも、ウィリアム様同様社交界で見かけた時に、ウィリアム様は1人会場の外に出て行かれ、私は何事かと後ろをついて行ったことがある。そしたら、庭園の生垣に隠れ、小さな動物たちに餌をやりながら反省会を1人でしていたのをよく覚えている。捻くれ者と呼ばれていた彼がこんなに可愛らしい一面を持っていたなんて…そう思った時には既に私は彼に話しかけていた。
以来、彼と私は出会うたびに自分の悩み事を相談し合う程仲良くなった。私は彼とは良き友人であると思っている。

この3人の方と今度開催される社交界、またはパーティでお話しし、1番良いと思った方と婚約を結ぶ予定。しばらく社交界やパーティーはないため、3人と会うのはいつになるかわからないけれど、一旦お父様にも報告して、納得してもらえたので私は一安心した。





そして、私が3人とお話しする機会は突然現れた。

「エミリー、落ち着いて話を聞きなさい」

「どうされたの?お父様。急に」

私は朝食を取った後お父様の執務室に呼ばれた。

「昨日、聖女様召喚の儀式が行われた」

「ッ!」

ハッ息を飲んだ。
私はその一瞬で理解できてしまった。お父様がこれから何を言うのか。

「無事、聖女様を異世界より召喚することができ、来週にも王宮にて聖女様歓迎パーティーが王家主催により行われることが決まった。エドワードくんとの婚約式も兼ねて」

「そう…ですの…」

「王家主催、しかも聖女様歓迎パーティーに神子様と聖女様の婚約式。これは王族の生誕祭並みに大きなパーティーだから貴族は皆出席を義務付けられている。何か理由がなければ欠席は認められないそうだ。エミリー…辛いとは思うがパーティーに参加してもらえないだろうか…」

エディが婚約するパーティーに…。気乗りはしない。エディを見たらどんな感情にのまれてしまうかわからないし、エディと婚約する聖女様がとても憎い…。聖女様に向かってこんな感情を持つのはよくないと思うけれど…。私は会場内で落ち着いてられるだろうか。
そんな不安が私の心の中でぐるぐると渦巻く。

ダメよ、エミリア。私は貴族の娘。貴族に生まれたからには役割をしっかり果たさないと。

色々と言いたいことをグッと堪えて、私はお父様に向き直った。

「大丈夫です、お父様。私もぜひ参加させて頂きます。当日婚約者候補の方々も参加されると思うので、その時に婚約者候補の方々と少しお話ししてもいいかしら?」

「ありがとう、エミリー。ああ、構わないよ。エスコートは私に任せてくれ。何かあったら私を頼るんだよ」

お父様が私の手を握ってくれた。優しくて温かいお父様の手に少し涙が溢れそうになったけれど、グッと堪えた。

「ええ、ありがとうお父様」





パーティーの日。私は朝早くに侍女たちに叩き起こされ、メイクやらマッサージやらいろんな事を施された。王家主催の大規模なパーティーのため皆気合が入っていた。
パーティーは夕方からだと言うのに…。

「本日はお嬢様が婚約者候補の方々とお会いされる日ですからね、腕によりをかけさせて頂きますわ」

「それは楽しみにしているわ」

あまりのやる気に苦笑してしまったのは許してほしい。



「お嬢様、息を吸って、もっと、もっとですわ!」

「無理よ、これ以上は…」

「ふんッ!」

「グッ!!!」

「あら、そんなカエルのような声は不要でしてよッ!」

「これ以上は本当に無理よ!」

「いえ、まだまだッ!」

「まだしめるの?!」

「ええ!まだまだ!」

ドレスのコルセットを付けられている最中なのだけれど、侍女が鬼畜過ぎる。ウエストを少しでも細く見せるために私は今しめられすぎて、朝食べたものが全て出てきそうです…あら、汚い表現をごめんなさい…。


それからもみっちりとメイクを施され、パーティーの準備は朝早くから行われたのに気づけば、太陽が空高く昇った頃になっていた。

「さぁ!出来ましたよ!」

鏡の前に立つ少女はとても美しく…。



ないわよ。



だって、私だもの。



『まぁ、これが私なの…?!』

なんて言ってみたいけれども…、どんなに侍女たちが頑張っても私は私よね…平凡な私だもの…。

それでも、錆びたような赤髪は侍女たちのおかげで艶があった。エディは…エディに会ったらエディは綺麗な赤髪だねって褒めてくれそう…侍女たちのおかげね…。

「お嬢様はお美しいのに…どうして自信がそんなにないのかしら?」

いつまでもエディが心の中に存在し、エディのことを考えていた私に、侍女たちのぼやきは届かなかった…。





「さぁ、エミリー、行こうか」

「ええ、お父様」

私はお父様にエスコートされ馬車の中に乗った。

「「「行ってらっしゃいませ、旦那様、お嬢様」」」

「ああ、留守は頼んだよ」

「行ってきます」

使用人たちに見送られ、馬車は王宮に向かって走り出した。

「エミリー、何かあったらすぐに私に言うんだよ」

「もう、お父様ったらそればかり言って!大丈夫です、わかっています」

お父様はとても心配しているけれど、私はそれより何より、ダンスに誘われた時足を踏まないかの心配をしていた。

今まではエディがいるから他の方と踊らなかったけれど、エディはもう私の婚約者ではない。だから、私は最低でも一曲、誰かと踊らなければならない。エディとこの間お茶会の時踊ったけれども足を踏んでしまった…ダンスの練習を頑張ったのに…。

今日のパーティーでは、絶対に踏まないようにしないと。それに相手はエディではないのだし、怒られるかもしれない…。私怒られ慣れてないのだけれど大丈夫かな…?

そんな不安で、つい今日のパーティーエディと聖女様の婚約式も込みであると言う事を忘れてしまっていた私だった。
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