私は役目を放棄し関わらないことを誓います

宵丸

文字の大きさ
2 / 17

第二話

しおりを挟む
翌日、王家より私とエディの婚約を破棄するよう書状が届いた。

その書状を見終え、私はよろよろとお父様の元へ向かった。

「お父様、私は…」

「すまないエミリー、エドワードくんが神子様になるとは思わず…」

お父様は私のことをそっと抱きしめてくれた。

「エミリーには話していなかったことだ。少し、時間をもらってもいいかい?」

私は縦に首を振る。

「ありがとう、長くなるだろうからお茶を用意させようか。セバスチャン、お茶と何かつまめるものを」

「かしこまりました」

そう言って我が家の家令セバスチャンが侍女たちに指示を出す。





お父様が言うにはこうだ。

我が国には教会がいくつも存在する。その中でも王都にある大教会と呼ばれる教会は最も強い聖職者たちが集められている。
その中でも更に強い聖職者は大聖者様と呼ばれ、その方が以前この国に平和が続くよう、この国の神と対話する儀式を行なったようだ。
その時、『エドワード・ロバーツ』とエディの名前を神が対話の中で出し、彼は今代の神子であると宣言したそうだ。

ここ数百年誕生しなかった神子様が突如誕生したと言われ、大聖者様は大変驚かれたがとても喜んだそうだ。
そして、神子様とは特別な存在。故に一介の貴族ではなく、この国の王族に仲間入りさせ特別な存在と崇め奉るよう教会側と王族たちが決めたそうだ。だから、一介の貴族でしかない私とエディの婚約も破棄。そして神子様の誕生に伴い、古の術を使いこれから異世界より聖女様を召喚するという。

とね。





「…と言うわけだ…」

「…」

長い沈黙が流れる。

私はお父様から言われたことを理解できなかった。いや、理解したくなかった。

これからも良好な関係を保ちつつ、大好きなエディとこのまま結婚できるのだと思っていた。なのにその輝かしい未来は一瞬にして消し去った。

どうして…。どうしてエディなの神様…。

エディが神子様になったのは喜しいことだけれども、私との婚約がなくなってしまうなんて…。

それに、エディからも何も音沙汰なく、そのことが余計に私の心を歪ませた。

エディにとって、私はそんなものだったのか…。やはり、私なんかの人間がエディの婚約者なんて…。

「エミリー…、エドワードくんのことを慕っていたのはわかるが、これは決まったことだ。辛くても飲み込まなくてはいけないんだ。今は泣いて良い。たくさん泣くといい」

お父様は私の方に来て、強く抱きしめてくれた。

わかってる。これは決まったことだ。私が覆せるようなことではない。だからエディのことは諦めなくてはならない。わかってる、わかってるけれどッ

「…ッッッッ」

私は声を上げて泣いた。貴族令嬢として失格だけれども。お父様に泣いて良いと言われてしまったらね。

泣いて…泣いて…泣いて……。

瞳が溶けてしまうのではないかと言われるほど泣いた。それ程私はエディのことが好きだったのだと改めて実感した。

今日はたくさん泣いて、明日、これからのことを考えよう。



私は泣き疲れてそのまま眠ってしまった。






『リア、は神子様に選ばれたよ』

嬉しそうにエディは私に向かって言った。

『それでね、リアとの婚約は破棄になるそうだ。は新しく異世界からやってくる聖女様と婚約を結ぶことになった。でも、リアは理解してくれるよね?だって、は神子様に選ばれたんだから。特別な存在は特別な存在と婚約するべきだろう?君みたいなただの貴族令嬢…しかも何もかも平凡な子と結婚するなんて…ありえないからね!あ、これから聖女様と顔合わせなんだ。楽しみだな!じゃあは行かないと。元気でね、リア!』

『どういうこと?!エディ!待って!』

走り去るエディを追いかけようとしたが、私の足は動かない。

『なんで?!どうして?!待って待ってッ!』

「待ってッッッ」

ガバッと起き上がるとそこは私の部屋だった。きっとお父様が泣き疲れた私を部屋に運んでくれたのだろう。

「なんて夢なの…」

酷い悪夢を見てしまった。エディがそんなこと言うはずないよね…。そう信じないと私は壊れてしまいそうだった。

夢の中のエディは自分のことをと言っていた。エディはと言うはず。だから、あれはエディでない…はず…。

でも私はエディの全てを知っているわけではない。あれは私の知らないエディの一面だったら?

嫌な方向に捉えないようにしたいのに。

ひとまず侍女を呼んで着替えを手伝ってもらい朝食を食べることにしよう。

そう思ってベッドの隣にあるベルを鳴らした。



「おはよう、エミリー」

「おはようございます。お父様」

私はお父様に挨拶をしてから席に座る。

ちなみに私のお母様は既に亡くなっている。私が幼い頃に病気で…。だから余計にお父様はお母様の忘れ形見である私を溺愛しているのだ。

「今朝はゆっくり眠れたかい?」

「ええ…まぁ…」

とても嫌な夢を見たけれども。

「エミリー、ここ数日で色んなことがあったけれども、新しい婚約者を探さなければならない。本当にすまない」

「お父様私は大丈夫です。それが貴族の家に生まれた者の役目ですから」

「エミリー…」

そう、私の役割は決まっている。エディとの婚約が破棄された今、私は新たな婚約者を見つけなければならない。サンダース伯爵家の一人娘として。

そう考えるとエディのことは諦めきれないけれども、前に進まなくては。エディへの想いは昨日たくさん流した涙と共に流れたことにしよう。私はお父様のとても心配している顔を見て決心した。
でも、もしすれ違ったら挨拶くらいしても良いよね。それくらいは許してね。

そう言い聞かせて私は自分の本当の想いに気づかないフリをして、自分の想いを心の奥の箱の中に閉まってしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

皇太子から婚約破棄を言い渡されたので国の果ての塔で隠居生活を楽しもうと思っていたのですが…どうして私は魔王に口説かれているのでしょうか?

高井繭来
恋愛
リコリス・ロコニオ・クレーンカは8歳のころ皇太子に見初められたクレーンカ伯爵の1人娘だ。 しかしリコリスは体が弱く皇太子が尋ねてきても何時も寝所で臥せっていた。 そんな手も握らせないリコリスに愛想をつかした皇太子はリコリスとの婚約を破棄し国の聖女であるディルバ・アーレンと婚約を結ぶと自らの18歳の誕生の宴の場で告げた。 そして聖女ディルバに陰湿な嫌がらせをしたとしてリコリスを果ての塔へ幽閉すると告げた。 しかし皇太子は知らなかった。 クレーンカ一族こそ陰で国を支える《武神》の一族であると言う事を。 そしてリコリスが物心がついた頃には《武神》とし聖女の結界で補えない高位の魔族を屠ってきたことを。 果ての塔へ幽閉され《武神》の仕事から解放されたリコリスは喜びに満ちていた。 「これでやっと好きなだけ寝れますわ!!」 リコリスの病弱の原因は弱すぎる聖女の結界を補うために毎夜戦い続けていた為の睡眠不足であった。 1章と2章で本編は完結となります。 その後からはキャラ達がワチャワチャ騒いでいます。 話しはまだ投下するので、本編は終わってますがこれからも御贔屓ください(*- -)(*_ _)ペコリ

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

今さら遅いと言われる側になったのは、あなたです

有賀冬馬
恋愛
夜会で婚約破棄された私は、すべてを失った――はずだった。 けれど、人生は思いもよらない方向へ転がる。 助けた騎士は、王の右腕。 見下されてきた私の中にある価値を、彼だけが見抜いた。 王城で評価され、居場所を得ていく私。 その頃、私を捨てた元婚約者は、転落の一途をたどる。 「間違いだった」と言われても、もう心は揺れない。 選ばれるのを待つ時代は、終わった。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

処理中です...