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第二話
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翌日、王家より私とエディの婚約を破棄するよう書状が届いた。
その書状を見終え、私はよろよろとお父様の元へ向かった。
「お父様、私は…」
「すまないエミリー、エドワードくんが神子様になるとは思わず…」
お父様は私のことをそっと抱きしめてくれた。
「エミリーには話していなかったことだ。少し、時間をもらってもいいかい?」
私は縦に首を振る。
「ありがとう、長くなるだろうからお茶を用意させようか。セバスチャン、お茶と何かつまめるものを」
「かしこまりました」
そう言って我が家の家令セバスチャンが侍女たちに指示を出す。
お父様が言うにはこうだ。
我が国には教会がいくつも存在する。その中でも王都にある大教会と呼ばれる教会は最も強い聖職者たちが集められている。
その中でも更に強い聖職者は大聖者様と呼ばれ、その方が以前この国に平和が続くよう、この国の神と対話する儀式を行なったようだ。
その時、『エドワード・ロバーツ』とエディの名前を神が対話の中で出し、彼は今代の神子であると宣言したそうだ。
ここ数百年誕生しなかった神子様が突如誕生したと言われ、大聖者様は大変驚かれたがとても喜んだそうだ。
そして、神子様とは特別な存在。故に一介の貴族ではなく、この国の王族に仲間入りさせ特別な存在と崇め奉るよう教会側と王族たちが決めたそうだ。だから、一介の貴族でしかない私とエディの婚約も破棄。そして神子様の誕生に伴い、古の術を使いこれから異世界より聖女様を召喚するという。
特別な神子様の婚約相手には特別な聖女様をとね。
「…と言うわけだ…」
「…」
長い沈黙が流れる。
私はお父様から言われたことを理解できなかった。いや、理解したくなかった。
これからも良好な関係を保ちつつ、大好きなエディとこのまま結婚できるのだと思っていた。なのにその輝かしい未来は一瞬にして消し去った。
どうして…。どうしてエディなの神様…。
エディが神子様になったのは喜しいことだけれども、私との婚約がなくなってしまうなんて…。
それに、エディからも何も音沙汰なく、そのことが余計に私の心を歪ませた。
エディにとって、私はそんなものだったのか…。やはり、私なんかの人間がエディの婚約者なんて…。
「エミリー…、エドワードくんのことを慕っていたのはわかるが、これは決まったことだ。辛くても飲み込まなくてはいけないんだ。今は泣いて良い。たくさん泣くといい」
お父様は私の方に来て、強く抱きしめてくれた。
わかってる。これは決まったことだ。私が覆せるようなことではない。だからエディのことは諦めなくてはならない。わかってる、わかってるけれどッ
「…ッッッッ」
私は声を上げて泣いた。貴族令嬢として失格だけれども。お父様に泣いて良いと言われてしまったらね。
泣いて…泣いて…泣いて……。
瞳が溶けてしまうのではないかと言われるほど泣いた。それ程私はエディのことが好きだったのだと改めて実感した。
今日はたくさん泣いて、明日、これからのことを考えよう。
私は泣き疲れてそのまま眠ってしまった。
『リア、僕は神子様に選ばれたよ』
嬉しそうにエディは私に向かって言った。
『それでね、リアとの婚約は破棄になるそうだ。僕は新しく異世界からやってくる聖女様と婚約を結ぶことになった。でも、リアは理解してくれるよね?だって、僕は神子様に選ばれたんだから。特別な存在は特別な存在と婚約するべきだろう?君みたいなただの貴族令嬢…しかも何もかも平凡な子と結婚するなんて…ありえないからね!あ、これから聖女様と顔合わせなんだ。楽しみだな!じゃあ僕は行かないと。元気でね、リア!』
『どういうこと?!エディ!待って!』
走り去るエディを追いかけようとしたが、私の足は動かない。
『なんで?!どうして?!待って待ってッ!』
「待ってッッッ」
ガバッと起き上がるとそこは私の部屋だった。きっとお父様が泣き疲れた私を部屋に運んでくれたのだろう。
「なんて夢なの…」
酷い悪夢を見てしまった。エディがそんなこと言うはずないよね…。そう信じないと私は壊れてしまいそうだった。
夢の中のエディは自分のことを僕と言っていた。エディは私と言うはず。だから、あれはエディでない…はず…。
でも私はエディの全てを知っているわけではない。あれは私の知らないエディの一面だったら?
嫌な方向に捉えないようにしたいのに。
ひとまず侍女を呼んで着替えを手伝ってもらい朝食を食べることにしよう。
そう思ってベッドの隣にあるベルを鳴らした。
「おはよう、エミリー」
「おはようございます。お父様」
私はお父様に挨拶をしてから席に座る。
ちなみに私のお母様は既に亡くなっている。私が幼い頃に病気で…。だから余計にお父様はお母様の忘れ形見である私を溺愛しているのだ。
「今朝はゆっくり眠れたかい?」
「ええ…まぁ…」
とても嫌な夢を見たけれども。
「エミリー、ここ数日で色んなことがあったけれども、新しい婚約者を探さなければならない。本当にすまない」
「お父様私は大丈夫です。それが貴族の家に生まれた者の役目ですから」
「エミリー…」
そう、私の役割は決まっている。エディとの婚約が破棄された今、私は新たな婚約者を見つけなければならない。サンダース伯爵家の一人娘として。
そう考えるとエディのことは諦めきれないけれども、前に進まなくては。エディへの想いは昨日たくさん流した涙と共に流れたことにしよう。私はお父様のとても心配している顔を見て決心した。
でも、もしすれ違ったら挨拶くらいしても良いよね。それくらいは許してね。
そう言い聞かせて私は自分の本当の想いに気づかないフリをして、自分の想いを心の奥の箱の中に閉まってしまった。
その書状を見終え、私はよろよろとお父様の元へ向かった。
「お父様、私は…」
「すまないエミリー、エドワードくんが神子様になるとは思わず…」
お父様は私のことをそっと抱きしめてくれた。
「エミリーには話していなかったことだ。少し、時間をもらってもいいかい?」
私は縦に首を振る。
「ありがとう、長くなるだろうからお茶を用意させようか。セバスチャン、お茶と何かつまめるものを」
「かしこまりました」
そう言って我が家の家令セバスチャンが侍女たちに指示を出す。
お父様が言うにはこうだ。
我が国には教会がいくつも存在する。その中でも王都にある大教会と呼ばれる教会は最も強い聖職者たちが集められている。
その中でも更に強い聖職者は大聖者様と呼ばれ、その方が以前この国に平和が続くよう、この国の神と対話する儀式を行なったようだ。
その時、『エドワード・ロバーツ』とエディの名前を神が対話の中で出し、彼は今代の神子であると宣言したそうだ。
ここ数百年誕生しなかった神子様が突如誕生したと言われ、大聖者様は大変驚かれたがとても喜んだそうだ。
そして、神子様とは特別な存在。故に一介の貴族ではなく、この国の王族に仲間入りさせ特別な存在と崇め奉るよう教会側と王族たちが決めたそうだ。だから、一介の貴族でしかない私とエディの婚約も破棄。そして神子様の誕生に伴い、古の術を使いこれから異世界より聖女様を召喚するという。
特別な神子様の婚約相手には特別な聖女様をとね。
「…と言うわけだ…」
「…」
長い沈黙が流れる。
私はお父様から言われたことを理解できなかった。いや、理解したくなかった。
これからも良好な関係を保ちつつ、大好きなエディとこのまま結婚できるのだと思っていた。なのにその輝かしい未来は一瞬にして消し去った。
どうして…。どうしてエディなの神様…。
エディが神子様になったのは喜しいことだけれども、私との婚約がなくなってしまうなんて…。
それに、エディからも何も音沙汰なく、そのことが余計に私の心を歪ませた。
エディにとって、私はそんなものだったのか…。やはり、私なんかの人間がエディの婚約者なんて…。
「エミリー…、エドワードくんのことを慕っていたのはわかるが、これは決まったことだ。辛くても飲み込まなくてはいけないんだ。今は泣いて良い。たくさん泣くといい」
お父様は私の方に来て、強く抱きしめてくれた。
わかってる。これは決まったことだ。私が覆せるようなことではない。だからエディのことは諦めなくてはならない。わかってる、わかってるけれどッ
「…ッッッッ」
私は声を上げて泣いた。貴族令嬢として失格だけれども。お父様に泣いて良いと言われてしまったらね。
泣いて…泣いて…泣いて……。
瞳が溶けてしまうのではないかと言われるほど泣いた。それ程私はエディのことが好きだったのだと改めて実感した。
今日はたくさん泣いて、明日、これからのことを考えよう。
私は泣き疲れてそのまま眠ってしまった。
『リア、僕は神子様に選ばれたよ』
嬉しそうにエディは私に向かって言った。
『それでね、リアとの婚約は破棄になるそうだ。僕は新しく異世界からやってくる聖女様と婚約を結ぶことになった。でも、リアは理解してくれるよね?だって、僕は神子様に選ばれたんだから。特別な存在は特別な存在と婚約するべきだろう?君みたいなただの貴族令嬢…しかも何もかも平凡な子と結婚するなんて…ありえないからね!あ、これから聖女様と顔合わせなんだ。楽しみだな!じゃあ僕は行かないと。元気でね、リア!』
『どういうこと?!エディ!待って!』
走り去るエディを追いかけようとしたが、私の足は動かない。
『なんで?!どうして?!待って待ってッ!』
「待ってッッッ」
ガバッと起き上がるとそこは私の部屋だった。きっとお父様が泣き疲れた私を部屋に運んでくれたのだろう。
「なんて夢なの…」
酷い悪夢を見てしまった。エディがそんなこと言うはずないよね…。そう信じないと私は壊れてしまいそうだった。
夢の中のエディは自分のことを僕と言っていた。エディは私と言うはず。だから、あれはエディでない…はず…。
でも私はエディの全てを知っているわけではない。あれは私の知らないエディの一面だったら?
嫌な方向に捉えないようにしたいのに。
ひとまず侍女を呼んで着替えを手伝ってもらい朝食を食べることにしよう。
そう思ってベッドの隣にあるベルを鳴らした。
「おはよう、エミリー」
「おはようございます。お父様」
私はお父様に挨拶をしてから席に座る。
ちなみに私のお母様は既に亡くなっている。私が幼い頃に病気で…。だから余計にお父様はお母様の忘れ形見である私を溺愛しているのだ。
「今朝はゆっくり眠れたかい?」
「ええ…まぁ…」
とても嫌な夢を見たけれども。
「エミリー、ここ数日で色んなことがあったけれども、新しい婚約者を探さなければならない。本当にすまない」
「お父様私は大丈夫です。それが貴族の家に生まれた者の役目ですから」
「エミリー…」
そう、私の役割は決まっている。エディとの婚約が破棄された今、私は新たな婚約者を見つけなければならない。サンダース伯爵家の一人娘として。
そう考えるとエディのことは諦めきれないけれども、前に進まなくては。エディへの想いは昨日たくさん流した涙と共に流れたことにしよう。私はお父様のとても心配している顔を見て決心した。
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