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第五話
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小声でノア様と話していたらいつの間にか陛下の言葉は終わり、ファーストダンスを踊る時間となっていた。
続々とダンスフロアに人が集まる。私は、婚約者がいないからこのまま壁の花になっていようかしら?
そう考えていたのだけれど、隣にいたノア様が
「エミリア、俺と踊らないか?今まで婚約者がいたから踊れなかったが…その、良ければだが…」
「よろしいのですか…?」
ノア様は他にファーストダンスを踊る方がいらっしゃらないのかしら?
「ああ、もちろんだ」
「では…」
ノア様の手を取り私たちはダンスフロアへと移動した。
ダンスフロアは人で溢れかえっていたものの、皆適切な距離を保っていた。
「エミリア、手を」
「ええ…、あっ」
「ん?どうした?」
「その…私ダンスが苦手でして….」
「ああ、まだ上達していなかったのか」
「ッ!もう!」
ノア様に当てられてしまった。
「悪い悪い。大丈夫だ、エミリアが例え足を踏んでも俺は丈夫だからな。いくらでも踏めばいい。その代わりに楽しんで踊れよ?」
「ふふっ!ありがとうございます!」
ノア様はお優しい。私が足を踏んでも怒らないでいてくれるようだ。エディは足を踏まれたらどんな人間でも怒り狂うから他の人と踊ってはいけないと言っていたけれど、ノア様みたいに優しい人もいるじゃない。
私たちは手を取って、音楽が流れるのを待った。
すると、大きな声がフロアの中央で響いた。
「エドワード様ぁ!私、ダンス初めてなんです!なのでぇ、色々とリードお願いしますね!」
「ああ」
フロアの中央には聖女様とエディがいた。聖女様はエディの腕にもたれかかるように中央まで歩いていた。胸がツキンッと痛んだものの、これからあの光景を何度も見ることになる。耐えなければ、この想いを消さなければ。
あの2人を見ていたら、ノア様がくるりと私の腕を掴んで回し始めた。
「え?!ノア様?!」
「ダンスが始まるまで身体動かしていた方がいいだろう」
「そんなの聞いたことありません!!!目が回ってしまいます!」
ウッ、既にくらくらしてきた。
「ハハッ、悪い悪い」
そう言って、回すのをやめ、フラフラしていた私を抱きとめてくれた。
婚約者でない私がそんなに触れてもいいの…?!
「ウッ、ノア様、私は大丈夫ですので…」
「まだふらついている。しばらくはこのままの方がいいだろう。俺のせいだから気にするな」
たしかに、ノア様のせいではあるけれど…まぁいいか…。ダンスが始まるまでもう少しかかりそう…。
「ずっと…この…で…いいのに…」
「え?」
ノア様が小さな声で何か言っていたけれど、私にはよく聞き取れなかった。
「いや、何でもない」
ノア様の顔を見ると、なんとも言えない顔をしていらっしゃった。悲しそうな…悔しそうな…そんな顔を…。
「神子様!どちらに!」
周りから叫び声が上がって、私は意識を戻した。
神子様って何事?!エディがどうかしたのかしら?!
「リアッ!」
え、私?!
声の上がった方を見ると、エディが私の方にズンズンと進んでくるのが見えた。
即座にノア様が私を後ろに隠した。
「神子様、何故こちらに」
ノア様がエディに問いかけた。
「リアを離せ」
「少々仰ってることが理解しかねます。エミリア嬢と私はこれからファーストダンスを踊る予定です。もちろん、エミリア嬢も了承済みです」
ノア様が『俺』じゃなくてきちんと『私』と言っている。成長しているのね…。
「リアは誰とも踊らない。故にリアを離せ」
チラッとノア様の後ろからエディの様子を伺ったけれど、かなりご立腹のようだ。何故そんなに怒っているのだろうか?私とエディの婚約は解消されたというのに…。自分で言うのも虚しいけれど。
「エディ…」
「リア!こちらにおいで」
瞬時にエディは怒っている顔から嬉しそうな顔に変化した。
しまった、私ったらエディと呼んでしまった。それに気づいたのは、周りの貴族たちから冷ややかな目線を食らったから。
「失礼致しました、神子様」
呼び直すとビクンッとエディの肩が上がったのが見えた。
「神子様、私はこれからノア様と踊る予定ですので…」
「…だ」
「え?」
「何故、何故ッ!リアは私のことをエディと呼ばない?!それに、リアは私としか踊らない!絶対に!」
「恐れながら神子様、私は貴方様との婚約は解消されたと聞いております。そのため、私たちはもう無関係ですので愛称呼びは…」
エディったら、私と婚約が解消されたの聞いてなかったのかしら?自分でそんなことを言うと傷口がどんどん抉られるから出来ればエディとはあまり関わりたくないのに…。でないとせっかく私が閉じ込めた恋心の扉が開いてしまう。
「私はそんなの認めない。ああ…そうか、だからリアは…。大丈夫だよ、リア。私たちは絶対に結婚する運命なんだ。私がなんとかしてあげるからね、婚約せずに待ってるんだよ」
一瞬恐怖を覚えるような笑みを浮かべたエディはノア様の耳元で何かを囁いた。
「…」
「ッ!」
それは私には聞こえなかったものの、ノア様の表情は歪んでいた。
「エドワード様ぁ!私を置いて行かないでください!」
後ろから走ってきた聖女様はエディの腕にまたも絡みついた。淑女としてはいただけない行為だが、彼女はこの国に来てから日が浅い。しょうがないと目を瞑るしかないかもしれない。
「聖女様、あまりそう言う行為はされない方がよろしいかと」
「もう!エドワード様ったらお堅いわねぇ、いいじゃないこれくらい!」
ぷぅと頬を膨らませ、なんとも庇護欲をそそるような聖女様。側から見れば神子様と聖女様は大変仲がいいように見える。
なんで、私はこんなものを見せつけられているのだろうか。
俯いていると、すぐに侍従の方がいらっしゃって、2人を連れて行ってくれた。
エディは何度もこちらに振り向いていたが強制連行させられていた。
「エミリア、手…」
「あ…」
耐えられず、手を握り締めていた私に気づいてくれたノア様がゆっくりと私の手を緩めてくれた。
「ありがとうございます、ノア様…」
「やはり、ここは踊らずに少し休もうか。そこにエミリアの好きそうなお菓子が用意されていた。よかったら食べに行かないか?」
「お菓子…」
確かにこのままの状態で踊ってもボロボロなダンスになるだろう。それに、ノア様の評判にも傷がついてしまう。
「ええ、ぜひ」
そう言って、私たちはダンスフロアから軽食のある場所へと移動した。
《???視点》
ああ、この人間か…。
私はこちらの世界で危険人物と言われる人間を観察する。
『あの子がエドワード様の元婚約者ってわけね?ふーん。エドワード様ったら私がいるのにまだあの子に心残りがあるようね?あんな地味な子の何がいいのかしら?私の方が可愛いのに…。
あ!あの子が地味すぎて次の婚約者が見つかるか心配なのね!なるほど、さすがお優しいエドワード様だわ。じゃあその心残りがなくなればきっと私を愛してくれるはずね!
あの子の隣にいた人もイケメンだったし…あ、もちろんエドワード様が1番よ?だって王子様だし神子様だし、イケメンだし。でもなー、私可愛いから彼氏くらいなら何人いても許されるよね!それに聖女様?だし!
嫌だ、私ったら可愛いから神様が色んなボーナスつけてくれたのね!やるじゃない!
最初はなんなのか意味わからなかったけど、これから楽しくなりそうね!』
寝室のベッドの上で枕を抱きしめて妄想する人間に冷ややかな目を送ったのは許して欲しい。
何故聖女と言うだけで、何でも叶うと思っているのだろうか?聖女とは民に寄り添う心優しき人間がなるはずなのに…。
愚かな
さて…この者の行く道は…。
続々とダンスフロアに人が集まる。私は、婚約者がいないからこのまま壁の花になっていようかしら?
そう考えていたのだけれど、隣にいたノア様が
「エミリア、俺と踊らないか?今まで婚約者がいたから踊れなかったが…その、良ければだが…」
「よろしいのですか…?」
ノア様は他にファーストダンスを踊る方がいらっしゃらないのかしら?
「ああ、もちろんだ」
「では…」
ノア様の手を取り私たちはダンスフロアへと移動した。
ダンスフロアは人で溢れかえっていたものの、皆適切な距離を保っていた。
「エミリア、手を」
「ええ…、あっ」
「ん?どうした?」
「その…私ダンスが苦手でして….」
「ああ、まだ上達していなかったのか」
「ッ!もう!」
ノア様に当てられてしまった。
「悪い悪い。大丈夫だ、エミリアが例え足を踏んでも俺は丈夫だからな。いくらでも踏めばいい。その代わりに楽しんで踊れよ?」
「ふふっ!ありがとうございます!」
ノア様はお優しい。私が足を踏んでも怒らないでいてくれるようだ。エディは足を踏まれたらどんな人間でも怒り狂うから他の人と踊ってはいけないと言っていたけれど、ノア様みたいに優しい人もいるじゃない。
私たちは手を取って、音楽が流れるのを待った。
すると、大きな声がフロアの中央で響いた。
「エドワード様ぁ!私、ダンス初めてなんです!なのでぇ、色々とリードお願いしますね!」
「ああ」
フロアの中央には聖女様とエディがいた。聖女様はエディの腕にもたれかかるように中央まで歩いていた。胸がツキンッと痛んだものの、これからあの光景を何度も見ることになる。耐えなければ、この想いを消さなければ。
あの2人を見ていたら、ノア様がくるりと私の腕を掴んで回し始めた。
「え?!ノア様?!」
「ダンスが始まるまで身体動かしていた方がいいだろう」
「そんなの聞いたことありません!!!目が回ってしまいます!」
ウッ、既にくらくらしてきた。
「ハハッ、悪い悪い」
そう言って、回すのをやめ、フラフラしていた私を抱きとめてくれた。
婚約者でない私がそんなに触れてもいいの…?!
「ウッ、ノア様、私は大丈夫ですので…」
「まだふらついている。しばらくはこのままの方がいいだろう。俺のせいだから気にするな」
たしかに、ノア様のせいではあるけれど…まぁいいか…。ダンスが始まるまでもう少しかかりそう…。
「ずっと…この…で…いいのに…」
「え?」
ノア様が小さな声で何か言っていたけれど、私にはよく聞き取れなかった。
「いや、何でもない」
ノア様の顔を見ると、なんとも言えない顔をしていらっしゃった。悲しそうな…悔しそうな…そんな顔を…。
「神子様!どちらに!」
周りから叫び声が上がって、私は意識を戻した。
神子様って何事?!エディがどうかしたのかしら?!
「リアッ!」
え、私?!
声の上がった方を見ると、エディが私の方にズンズンと進んでくるのが見えた。
即座にノア様が私を後ろに隠した。
「神子様、何故こちらに」
ノア様がエディに問いかけた。
「リアを離せ」
「少々仰ってることが理解しかねます。エミリア嬢と私はこれからファーストダンスを踊る予定です。もちろん、エミリア嬢も了承済みです」
ノア様が『俺』じゃなくてきちんと『私』と言っている。成長しているのね…。
「リアは誰とも踊らない。故にリアを離せ」
チラッとノア様の後ろからエディの様子を伺ったけれど、かなりご立腹のようだ。何故そんなに怒っているのだろうか?私とエディの婚約は解消されたというのに…。自分で言うのも虚しいけれど。
「エディ…」
「リア!こちらにおいで」
瞬時にエディは怒っている顔から嬉しそうな顔に変化した。
しまった、私ったらエディと呼んでしまった。それに気づいたのは、周りの貴族たちから冷ややかな目線を食らったから。
「失礼致しました、神子様」
呼び直すとビクンッとエディの肩が上がったのが見えた。
「神子様、私はこれからノア様と踊る予定ですので…」
「…だ」
「え?」
「何故、何故ッ!リアは私のことをエディと呼ばない?!それに、リアは私としか踊らない!絶対に!」
「恐れながら神子様、私は貴方様との婚約は解消されたと聞いております。そのため、私たちはもう無関係ですので愛称呼びは…」
エディったら、私と婚約が解消されたの聞いてなかったのかしら?自分でそんなことを言うと傷口がどんどん抉られるから出来ればエディとはあまり関わりたくないのに…。でないとせっかく私が閉じ込めた恋心の扉が開いてしまう。
「私はそんなの認めない。ああ…そうか、だからリアは…。大丈夫だよ、リア。私たちは絶対に結婚する運命なんだ。私がなんとかしてあげるからね、婚約せずに待ってるんだよ」
一瞬恐怖を覚えるような笑みを浮かべたエディはノア様の耳元で何かを囁いた。
「…」
「ッ!」
それは私には聞こえなかったものの、ノア様の表情は歪んでいた。
「エドワード様ぁ!私を置いて行かないでください!」
後ろから走ってきた聖女様はエディの腕にまたも絡みついた。淑女としてはいただけない行為だが、彼女はこの国に来てから日が浅い。しょうがないと目を瞑るしかないかもしれない。
「聖女様、あまりそう言う行為はされない方がよろしいかと」
「もう!エドワード様ったらお堅いわねぇ、いいじゃないこれくらい!」
ぷぅと頬を膨らませ、なんとも庇護欲をそそるような聖女様。側から見れば神子様と聖女様は大変仲がいいように見える。
なんで、私はこんなものを見せつけられているのだろうか。
俯いていると、すぐに侍従の方がいらっしゃって、2人を連れて行ってくれた。
エディは何度もこちらに振り向いていたが強制連行させられていた。
「エミリア、手…」
「あ…」
耐えられず、手を握り締めていた私に気づいてくれたノア様がゆっくりと私の手を緩めてくれた。
「ありがとうございます、ノア様…」
「やはり、ここは踊らずに少し休もうか。そこにエミリアの好きそうなお菓子が用意されていた。よかったら食べに行かないか?」
「お菓子…」
確かにこのままの状態で踊ってもボロボロなダンスになるだろう。それに、ノア様の評判にも傷がついてしまう。
「ええ、ぜひ」
そう言って、私たちはダンスフロアから軽食のある場所へと移動した。
《???視点》
ああ、この人間か…。
私はこちらの世界で危険人物と言われる人間を観察する。
『あの子がエドワード様の元婚約者ってわけね?ふーん。エドワード様ったら私がいるのにまだあの子に心残りがあるようね?あんな地味な子の何がいいのかしら?私の方が可愛いのに…。
あ!あの子が地味すぎて次の婚約者が見つかるか心配なのね!なるほど、さすがお優しいエドワード様だわ。じゃあその心残りがなくなればきっと私を愛してくれるはずね!
あの子の隣にいた人もイケメンだったし…あ、もちろんエドワード様が1番よ?だって王子様だし神子様だし、イケメンだし。でもなー、私可愛いから彼氏くらいなら何人いても許されるよね!それに聖女様?だし!
嫌だ、私ったら可愛いから神様が色んなボーナスつけてくれたのね!やるじゃない!
最初はなんなのか意味わからなかったけど、これから楽しくなりそうね!』
寝室のベッドの上で枕を抱きしめて妄想する人間に冷ややかな目を送ったのは許して欲しい。
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