私は役目を放棄し関わらないことを誓います

宵丸

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第六話

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あの後、ノア様と一緒に軽食を食べ、軽く知り合いと話をして屋敷へと帰宅した。本当はノア様と踊るはずだったのだけれど、私の体調を心配したノア様に今日は早めに帰宅した方がいいと言われてしまったから…。
ノア様は心配性ね、私は大丈夫なのに。

それでも、緊張していたせいかいつもより疲れてしまってベッドに入ったらすぐに眠ってしまった。











翌日、私はお父様の執務室を訪ねた。そして、昨日お会いした婚約者候補の方々の様子を報告した。

アスター様やハイド様もとても温和な方で素晴らしい方だったけれど、やはり小さな頃から仲の良かったノア様が1番親しみやすいということを伝えた。
お父様は私の報告にホッとしていたようだった。お父様を安心させるためにも私は早く婚約者を決めないといけないなと改めて実感した。

報告を終えたため、私は執務室を退出しようとした時思い出した。

昨日、エディに会ってエディの様子が少しおかしかったことを…。

「あ…」

「どうした?エミリー」

「その…」

かくかくしかじか…。

「…ということです…」

「…」

私が昨日のことを話し終えると、お父様は頭を抱えてしまった。

「あの、お父様…」

「ああ、すまない。少し頭痛が…」

「まぁ、それは大変。すぐにお医者様を」

「いや、いいんだ。それより、先ほどまで話してた婚約者候補の件だが、決定までは少し時間をもらってもいいだろうか?」

「?ええ、わかりましたわ」

私もそんなに早く婚約者を決定する気はなかったのだけれど…。一体何がどうしたのかしら?

「ありがとう。エミリー、私は少し急用が出来た。出かけてくるね」

「はい、行ってらっしゃいませ」

お父様は、執事を連れてさっさと屋敷を出て行ってしまった。

お父様が出て行ってしまい、やることがなくなってしまった。
今日は家庭教師の先生もいらっしゃらないことだし、本でも読んでゆっくりしましょうか。




本を読んでいる時だった。ふと睡魔が襲ってきて、私は座っていた椅子の背もたれに深く寄りかかりそのまま眠ってしまった。


ここは夢の中だろうか。目を開けるとそこは真っ暗な暗闇が広がっていた。

「随分と不思議な夢ね。思った通りに身体が動かせるわ」

私は暗闇の中をくるくると回ったり走ったりしてみた。暗闇は無限に広がっているようで、全力で走っても全く壁にぶつからなかった。普通だったら怖くて動けないだろうけど、何故かこの時は気がしてそれに向かって走っていた。

そして、走り続けているとしゃらんという綺麗な鈴の音がした。
鈴の音がした方に向かって更に歩を進めると、鮮やかな朱色の門のようなものが真っ直ぐと連なっている光景が広がった。

「なんて綺麗な色…」

こんなに鮮やかな朱色は見たことがなかった。それに、この門のようなものも。

ゆっくりと歩き続けていると、奥に大きな小屋のようなものがあった。その小屋は更に濃い朱色に染まっていて、不思議な造りをしていた。近づいて見てみると何本もの太い草で編まれたような縄が小屋の前方にあったり、長方形の紙が何枚貼りつけてあった。
なんて書いてあるのかわからないけれど、少し不気味な感じがした。

「ここは…」

「おや…?人間か?」

突然、小屋の方から声が聞こえた。低く伸びるような声…、中に人がいるのだろうか?そう思い、私は小屋へと近づく。

すると、小屋の扉がほんの少し開いて、黒い瞳と目があった。

「ああ、お前か…。何故ここに来れたかはわからぬが、ここに近づいてはならぬ。帰れ」

刹那、ヒュンッと鋭い風が吹き抜けたかと思うと同時に、私の周りのもの全てが消え、元の暗闇へと戻ってしまった。

一体、あの建物たちは何だったのだろうか…。それに、あの瞳の持ち主は…。

暗闇の中で考え込んでいたら、急に意識が浮上し始めた。暗闇がどんどん薄くなっていったから。



「…ま、さま…、お嬢様ッ!」

「はいッ!」

「ようやく起きられましたか、全く…。こちらの本落とされていましたよ。それと、もうすぐお昼となりますが、軽食に致しますか…?昨日はお疲れのようでしたし…」

「ありがとう。そうね、軽食でお願い」

「かしこまりました」

侍女は、紅茶を私が飲んでいたカップに注いで部屋を去って行った。

あの侍女は厳しめの口調だけれど、とても優しい人。18歳と聞いているから私と年が近いため姉のように慕っている。

ああ、そうだわ。軽食の前に夢のことを少しでも調べなければ。

先ほど見たあのおかしな夢は何だったのだろうか?調べるために夢の内容を紙に書き留めようとするけれども、ぼんやりとしか思い出せなかった。

夢というのは夢を見ている間はしっかりと覚えているというのに、夢から覚めてしまえば、断片的にしか思い出せない。

夢とは思えないあの不思議な夢。好奇心旺盛な私はその夢の中で見たあの不思議な光景を解き明かしたかった。それなのに、覚えているのは暗闇と黒、それにルビーに似た色。全て色しか思い出せない。

もう一度見ることは出来ないだろうか?そう思い、最初と同じように本を抱きしめ椅子に深く座り目を瞑る。

…。

眠れない…。

ついさっきまで眠っていたせいか全く眠気がない。もう少し粘ってみよう…。

もう少し…、もう少し…。

…そうそう….少しずつ眠くなって……。

…。

眠れない…。

仕方がない、紙に覚えていること…色だけだけれど、そのことだけ書いて私は再び本を読むことに徹した。そのうち夢など簡単に見られるだろうと思って…。



だけど、その日以降私が夢を見ることはなかった。










_________キリトリ_______
宵丸です。

始めに…明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い致します。


この作品では作者コメントなしにしようと考えていたのですが、作者コメントをしたすぎてコメントしました。作者コメント&少しのネタバレなんざいらねぇ!という方はスルーして頂けますと幸いです。



この作品サラッと終わらせる気だったのですが、書いているうちに作者の悪い癖である、回り道をしたいがために前回と今回に謎キャラを出しました。後の重要人物です。このキャラがなかなかに説明が厄介でして…その…。
つまり、この作品短編でなく長編になりそうですということをご報告させて頂きます。本当に毎度毎度詐欺してすみません…。

一話を2000~3000字で書いているため週一ペースで投稿致します。亀更新ですがどうぞ最後までよろしくお願い致します。




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