私は役目を放棄し関わらないことを誓います

宵丸

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第七話

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時が流れ、今日は私が学園に入学する日となった。

不思議な夢を見たあの日以来、私は夢を見ることがなかった。とても残念だけれど、また見れることを願っている。

それと、王宮でのパーティー以来、エディとは会うことがなかった。あの日のエディは様子がおかしかったけど、接触がないためその後のエディのことはわからない。ただ、神子様としての務めと王家の養子になったことなど…とても忙しい日々を送っているだろう。
そんな多忙な中でも、学園に通い続けているらしいので、少しでも顔を見れたらという願望を胸に抱いて入学式に向かっている。

「お嬢様、着きましたよ」

「ええ、ありがとう!」

近況について説明してたらどうやら学園に到着した模様。御者が扉を開いて手を貸してくれた。馬車の外に出ると、壮大な学園の景色が広がっていた。

「とても立派ね…」

白を基調にした豪奢な校舎の前には、校舎まで続く長い道脇に何十人の庭師で整えたのだろうか…。これまた立派に咲き誇る花々が植っていた。希少価値の高い青いバラまで植えてあるなんて…あれ一本育てるのにどれだけの労力がかかるのかしら。

「お嬢様、お帰りの時間になりましたらまた来ますので」

「あ、ごめんなさいね…。ええ、お願いね!」

学園に見惚れてうっかり御者の手を握ったままだったようだ。御者は私にお辞儀をすると、足早に去って行った。





校舎に向かって歩いていると、聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。

「エミリア!」

「あら!ノア様!」

そう、ノア様だ。パーティー以来、ノア様はあまり会うことはなかったものの、私たちは文通をするようになった。ノア様はいつも面白いことを書いてくださるから私はノア様から送られる手紙を日々楽しみにしているのだ。

「入学おめでとう。制服似合ってるな」

「ノア様こそ、入学おめでとうございます!ありがとうございます。制服に着られないように侍女が頑張ってくれたので」

「いや、エミリアが…なんでもない」

何かを言いかけてノア様はプイッとそっぽを向いてしまった。

「あー、その、なんだ。ここで会って挨拶だけで別れるのもなんだし、式場まで一緒に行かないか?」

「ぜひご一緒させて下さい!迷子になったらどうしようかと思っていたので、よかったですわ」

「そうか、よかった。エミリアが迷子にならないように俺がついてないといけないもんな。そうかそうか」

何故か上機嫌になったノア様と私は一緒に入学式が行われる場所へと向かった。


いや、正しくは向かおうとした。

私たちが歩き出した直後、私の背中に衝撃が走った。

ドンッ

「キャッ」

私は誰かにぶつかられてしまい、よろけてしまう。後ろから可愛らしい声が聞こえたので、恐らく後ろにいる方は女子生徒だろう。

「エミリア!」

私はよろけたもののノア様が引っ張ってくれたため怪我はなかった。

「ありがとうございます、ノア様」

「いや、それより怪我はないか?」

心配そうに見てくるノア様。

「ノア様が引っ張って下さったおかげで、怪我はありませんわ!ノア様は心配しすぎです」

「怪我がないならよかった」

そういうとまたそっぽを向いてしまった。

ノア様って何かに似てるのよね…、あれだわ、我が家に前住み着いていた猫の一匹にそっくり。私が撫でるとゴロゴロと喉を鳴らしてくれるくせに、撫でている途中でそっぽを向いてしまうのよね。あの子も不思議な子だったわ。

「ン"ンッ」

後ろから誰かの咳払いが聞こえた。そうだわ、後ろの方は大丈夫だったかしら?

私はくるりと後ろを振り返ると、驚きのあまり一瞬息をするのをやめてしまった気がする。

後ろには聖女様がいたのだ。

「聖女様、大丈夫ですか…?」

私が座り込んでいらっしゃる聖女様に手を差し出すと、振り払われてしまった。

「痛いわぁ~、私ぃ怪我しちゃったみたい。もう本当にドジなんだから!あ!そこの方私を保健室まで連れて行ってくれないかしらぁ?」

聖女様はシクシクと泣いているそぶりをすると、私の隣にいるノア様を指差した。

あら?私聖女様に手を差し出したのだけれど…。

振り払われて自分の手に呆然としてしまった。

「俺か…?」

「そう!そこの貴方!」

「ほう…、申し訳ないが俺は彼女を式場まで連れて行かなければならない。他をあたってくれ。見たところ大きな怪我もしてないように見えるしな。ここで失礼すッ」

「ちょ、ノア様!」

ノア様の発言に私は驚き、意識を戻した。
急いでノア様の制服を引っ張り、後ろを向かせ小声でお説教をする。

「あの方は聖女様ですよ!」

「ああ、知っているが」

「なら、聖女様への言葉遣いを!」

そう、聖女様とは、この国の王族または、王族より上の扱いになる。つまり、私たちは最上級の対応をしなければならないのだ。 

そのことについて、ノア様に小声で指摘する。

「ここは実力主義の学園だ。身分制度は関係ない。そうこの学園も言っているだろう?だから平気だ」

「そういうものなのですか…」

「そういうものだ」

「ちょっと!私を無視してこそこそ話なんて酷いわ!私は怪我をしてるのよ!早く連れて行って!」

私がそういうものかと納得しかけている時に聖女様が再び喚き始めた。

「はぁ…、仕方がない」

「連れて行ってくれるのね!」

「ああ、これ以上騒ぎ立てられても困るからな」

確かに周囲には人が集まってきていた。このままだと変な噂を流されかねない。

聖女様はノア様が近づくと両手を広げて、上目遣いをしながら待っていた。

同性の私から見てもその姿はとても可愛らしいと感じるほどだった。

「よいしょっと」

そう言って、ノア様は聖女様を肩に担いだ。

「え?!ちょっとどういうことよ?!なんでお姫様抱っこじゃないの?!」

「エミリア、すまないがここからは一人で行って貰ってもいいか?道がわからなければ腕に腕章を付けてる生徒に聞けばいい。あの人たちは在校生だ」

「え、ええ…?わかりましたわ。ノア様お気をつけて下さいね。聖女様も早く怪我がよくなりますように」

ノア様は私にそう言い残すと、騒ぐ聖女様を気にするそぶりも見せず、スタスタと歩いて行ってしまった。

ノア様は身分など関係ないと言っていたけれど、さすがに1人の少女を担ぐのはいかがなものかと思ってしまった。全く、ノア様の少し残念なところは変わっていないわ。

ノア様の後ろ姿を見て、私は苦笑してしまった。
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