貴方と私に2度目なんてない

宵丸

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始まり

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その日は運が悪かった。

朝、ゴミ出しに行ったらちょうどゴミ収集車は行ってしまうし、電車も目の前で扉が閉まった。

会社内でも私の嫌いな黒くてツヤがあってかさかさいう虫が私目掛けて羽を広げて飛んできたし…。

たまたま通りかかった私の先輩がはたき落としてくれたから助かったが…。

もちろん後片付けはその先輩に頼みました。そしてお礼として今度の晩ご飯を奢ることになってしまった。



そして、今本日1番と言えるほど運が悪いことが起こっている。それは…。

恋人であり、同期の海斗かいとが会社内で1番可愛いと言われている同じく同期のひかりと抱き合っていたからだ。

「ん~、かいくんっていい匂いだよね」

「そうか?俺的には光の方がいい匂いだと思うがな」

午前中にあった会議でうっかり1本のペンを会議室に置いてきてしまったのに気づき、お昼休み中に取りにきたのである。

私は今非常に後悔している。何故ペン1本のためにわざわざここに来てしまったのか…。

「ねぇねぇ、私かいくんの彼女になりたい!かいくん優しいし、カッコいいし…。あ、でもぉ…、皐月が彼女なんだよね…」

「ああ、あいつね。彼女だって言っても名ばかりのやつだよ。あいつ、たまに俺の家来て夕飯作って行くけど、大抵ババくさい料理ばっかだし。しかも会話もつまらねーし。今度別れようと思ってたんだ」

…は?そのババくさい料理を美味しい美味しいって言いながらご飯おかわりしてたのはどこのどいつだ?

「それに比べて光は女子っぽい料理で可愛いし、気遣いが出来るし…。俺も付き合うなら光みたいなやつがいいなって思ってたんだ」

「ほんとッ!?嬉しい!」

そう言って更にギュッと抱きつく光。

そして、ドアを少ししか開けてなかったのに、光と目があった。

私と目があった途端、海斗に見えないよう器用に、にやっと嫌な笑みを浮かべてくる光。


あ、こいつ確信犯だな。


そう瞬時に思った。





光は男性にはモテるが女性には嫌われる。当たり前だ。男性陣の前では愛くるしく振る舞い、女性陣にはただ仕事しか押し付けてこない、そんな典型的なぶりっ子だった。

しかも、女性陣の彼氏を根こそぎ奪って行くような人間。可愛いらしい顔を使って彼氏を誑かし、挙げ句の果てにはその彼氏の彼女に虐められたなどの虚言を吐く。

そして彼氏は

『君がそんな人間だとは思わなかった』

などと言って勝手に別れを告げる。

こちらも思う。

『お前がそんな頭弱いとは思わなかったよ』

とね。

だが、この会社の女性陣はとても頼もしく、大抵別れを告げられたとしても

『こっちからお前なんて願い下げなんだよ。さっさとそこのあばずれ連れてハワイでもグアムでも行ってこいよ』

なんて言って別れを告げにきた彼氏を蹴り飛ばしていた。

口は悪いが美人で面倒見のいい人ばかりなのである。いわゆる姉御タイプが多い。

だから、私のことも心配してくれていた。

『皐月ちゃん、あんたも気をつけなさいよ?イケメンな彼氏がいるんだから…」

『そうよ?あんなあばずれに奪われるんじゃないわよ!』

『もし奪われたら言いなさい?あたしたちが彼氏とあばずれに天誅下してあげるから』

そう言って撫でてくれて、飴をよくくれた。

私は意外とこの職場の女性陣の妹分としてとても気に入られているらしい。

『はい、ありがとうございます!』

『はぁ~、癒されるわ…なんで皐月ちゃんの笑顔ってこんなに癒されるのかしら…』

『ほら~、皐月ちゃんこっちにおいで~』

まだこの時は知らなかった。この後彼氏がそのあばずれ…おっと、光に誑かされている最中なんて…。

 



そして、現在に戻ってくる。

今でも2人はいちゃいちゃしている。大事な会議室で何をやっているのやら…。

髪を撫でられ光は猫のようにすり寄っている。そしてその行為に満更でもない顔をする海斗。

そんな2人に私の心は急激に冷え切って行った。

決めた、こんな彼氏なんていらん。

そう思った私の行動は早かった。



バタンッッッッ!!!



「誰だ?!皐月?!」

驚く海斗。

「ねぇ、海斗、別れましょうか?」

自分でも驚くほど冷たく、低い声が出た。

「いや、その、これは…」

「いいじゃんかいくん!この際だから言ってやりましょぉ~!皐月、私とかいくんはぁ~、付き合ってますッ!」

いや、堂々と言ってきたよ。キャピッ!ピース!じゃないよ。後から先輩たち姉御たちに絞められるかもしれないよ?

「光ッ!いや、違うんだ皐月、これはだな」

「言い訳は結構です。先程のお話を聞かせて頂きましたので。今までありがとうございました。お2人ともお幸せに」

淡々とかつ敬語で言って、その場を去る私。去り際に海斗が何か言っていた気がしたが、きっと気のせいだろう。

それより…。

「先輩たちになんて説明しよう?!絶対今見たことそのまんま言ったらきっと流血事件起きそうだし…?!かと言って話さなかったら話さなかったで、あとでバレたら怒られる。一体どうしたら…」

そう、先輩たちは先程も言ったが私のことを気に入っている。そのため、私に何かあれば烈火の如く怒るのだ。

その場を治めるのがかなり難しい。

今回は事が事だから更に怒るだろう。私はあまり…、うん、あまり気にしてないから大丈夫なのだが…。

頭を悩ませていると今朝虫をはたき落としてくれた先輩がやってきた。

「あれ?皐月?どうしたの?」

「春先輩ィィィィィ、ナイスタイミングですゥゥゥ。今日奢るんで、今日ッ、今日相談乗ってくださいィィィィィ」

そして、私はその夜春先輩を拉致った。






________キリトリ________
宵丸です。
こちらは短編の予定で書いております。少しずつ書いていく予定ですので更新頻度は低いと思われます。もしかしたら別作品と交互に書くかもしれませんが…。

新作のこちらは口が悪い主人公、現代風です。よろしくお願いします。
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