異形の血を引く聖女は王国を追放される

雪月花

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17.*キス描写あり

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「……ん、……ふぁ……」

 先程まで優しく重なっていた唇が、角度を変えて何度も荒々しく押し付けられる。

 ん……息が……

「あ、んぁ……ん、んぅん……」

 息苦しくて口を開けた途端に、ギルの舌がぬるりと入ってくる。

 生ぬるく柔らかな感触が、口の中をぐるりと舐める。
 私の舌と絡み合い、離したと思ったら、今度は舌先を舐め刺激してくる。

 頭が……痺れる……

「ヘ、へいか……まって……」

「……ギルだ……ギルと呼んでくれ」

 唇が解放されて、思わず後ろに引いた私の頭をギルはグッと手で押さえる。
 
「ギ、ギルま……ん、んぅん……」

 名前で呼んだのに……。待ってと言わせたくないのか、塞ぐように唇を重ねられた。

 舌で唇を舐められ、啄むように吸われる。荒々しくも情熱的な口付けに翻弄される。

 もう……だめ……これ以上は……

 頭が痺れ、腰が疼き、思考が低下していく。体の力が抜け、気づけばソファに押し倒されていた。

 ソファに押し倒された私が咄嗟にギルを見ると、、、

 妖艶に微笑みながら、金の瞳はギラギラと輝きを放ち、私を見下ろしていた。

 雄だ……私を……雌を求める雄の顔。

 ギルの顔を見て私の中の雌が疼く。もっと触れてほしいと。もっと触れたいと。

 覆い被さろうとするギルを見ながら、私はゆっくりと目を閉じ・・・


 ──── いえ、駄目だわ!


 私の僅かに残る理性が警告した。


「ちょっと待ってぇぇ!!!」

「……うぐぅ」
 
 必死に両手を伸ばして、ギルの顔を押し留める。

「こ、こういうことは夫婦がするものです!!!」

 私は体を捩らせてギルの拘束から抜け出すと、ソファから立ち上がり距離をとった。

 ギルは「なんで……」と呟きながら呆然としている。

「な、なんでも何も! く、口付けは夫婦がするもので、未婚の身でするなんて……」

 さっきまでの行為を思い出して顔が赤くなる。

「クローディアは俺に触れられるのは嫌じゃないと言っただろう?」

「そ、それとこれは話が違います!」

「いや、全然違わない。俺はもっと君に触れたい! もっと俺を感じてほしい!」

「か、感じてって!?」

 そ、そんな、艶っぽい顔で………ッ!!
 な、なんてことを言うの!!!

「クローディアは俺に触れたいと思わないのか?」

「ふ、ふれ!!??」

 触れたいと…思ってしまった。
 思ってしまったけど!

「そ、それは……でも、夫婦でもないのに……」

「遅かれ早かれ結婚するんだ。だったら今でもいいだろう」

 ソファの上で両手と翼を広げて、情欲的な眼差しで、こっちにおいでと催促してくる。

 今でもいいって何を!?何をするって言うの!?
 だ、駄目よ。ここで言い負かされては……。

「そう言う問題じゃ……そ、それに、私にはやるべき事があって……そうだわ! そのことで聞きたいことがあって! 水の浄化の方法を調べないと……」

 少し強引に話を切り替えようとすると、ギルは髪をかきあげながら、はぁーーと深く溜め息を吐いた。

「まぁそうだな……性急すぎるか。いや、しかし……」

「ギ、ギル?」

 お、怒っているの?
 おずおずと様子を伺うとギルは優しく微笑んでくれた。

「いや……クローディアの嫌がることはしたくないからな。我慢するさ」

「ご、ごめんなさい」

 ……思わず謝ってしまったわ。

 我慢させしまっているのか……申し訳ないと思うけど。
 でもやっぱりこれ以上は……。

 うーーーんと、悩み考えていると、、、


 ────   チュッ

 ふぇ!? つ、角に!!

 ギルは私の角に唇を落としてニッコリと微笑んだ。

「ああ、そうだ。これからはクローディアのことをディアと呼んでもいいかな。俺だけの特別な呼び名なんて素敵だろう? ディアは俺のことをギルと呼んでくれ。堅苦しい言葉遣いはやめてくれよ」

 少し早口で戯けるように話をしているのは、私が気にしないように配慮してくれているからだろう。

「うん、わかった。ありがとう、ギル」

 ギルの気遣いに感謝しながら、そっと寄り添うとギルは優しく抱きしめてくれる。

「……結婚したら、もう待たないからな。覚悟しておいてくれ」

 甘く囁くギルの吐息が耳をくすぐる。

 か、覚悟!? ……がんばります??

 コクンと頷き了承の意を示すと、ギルの尻尾は満足そうに揺れていた。
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