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創業日
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夢を見た。
いや、別に「歌手や漫画家、スポーツ選手になりたい」みたいな高尚なモノじゃない。
ただただ怠惰に朝の11時半まで、布団の上で死んでいただけだ。
(そもそも11時を朝と読んでいいものだろうか)
何も生み出さず、何も学ばず、何も動かない。もはや死体と同じと言ってもいいだろう。
ましてや自主的に動かない訳ではなく、動くことの出来ない『死体』。
彼らとは異なり、能動的に動かない俺はもはや死体よりも死体(動詞)をしていると言ってもいいだろう。
間違いなく高校生の中では、トップクラスに何もしていない自信があった。
極端な話、留年生限定の怠惰オリンピックがあったなら、間違いなくメダルを噛める自信がある。
いや、まぁでも仮にそれが実在したとしても、俺は出場しない気がする。
と言うより絶対出ないであろう。
何故なら「面倒くさいからだ」
よく考えればこの大会はおかしい。
本当にだらしない人間は、会場まで来ることすら叶わないだろう。
ADHD向けに書かれた分厚い指南書並みの矛盾を感じる。
彼らが最後まで読める訳が無い。
それに怠惰部門の表彰台で貰えるものは小さなメダルと、僅かな顰蹙と見下しの視線だけだろう。
全くもって割に合わない。
僅かな憤りを感じながら身を起こすと、綿菓子の様に軽い口調とは裏腹に妙な焦燥感に駆られた。
べたつく口の中。寝汗に濡れたシャツ。ぼさぼさに伸び散らかした髪の毛。
起きたら直面させられる。
『1留+進行形の引きこもり』と言う名の現実が、確実に俺を襲っていた。
出場を逃したオリンピックはもはやどうでもよかった。
唾液の絡む口内で舌先をもにゅもにゅと動かし、小さくため息を吐く。
「……朝だ」まだ五月だと言うのに非常に暑い。
いや、そもそも昼なのだよ。と言う熱烈なツッコミを、脳内でもう1人の自分が咄嗟に抑え込む。
焦りはあるし、現に何かしなければオーラが俺を二重三重に取り巻いている。
だがしかし、出来る事は特にない。
いや、勿論勉強や登校をするべきなのだが、本日のオンライン予備校は12時から。
今から飯を食べて風呂に入って、となると準備だけで時間が潰れるのだ。
そんなことを思いつつ、冷蔵庫へ伸ばした腕を止める。
思い出した。飯も無かったのだ。
だが財布に金はある。つまり買い忘れだ。
たまごっちよりも小さい俺の脳のメモリに刻まれた記憶さえ正しければ、昨日の晩もウチの冷蔵庫には何もなかった。
……はずだ。
扉を開ければ何かがあるかもしれないが、振り返ってドアへ手を伸ばす事すら面倒だった。
どこまで"ものぐさ"なのかと自分でも情けなくなるが、別段それほど腹が減っているわけではないのだ。
それに俺はたまごっちと違い、エサを食べずとも、しばらくは死なないし、部屋に排泄物のタワーが建造されるわけではない。
社会の底辺とは言え、旬の過ぎたクリーチャーよりかは劣っていない。
我々の共通点と言えば両者ともに、何の生産性もない事くらいだろうか。
いや、彼らには可愛いと言う差別化がある。そう考えると俺の方がマイナスな気がする。
「……違う。そんなことはどうでも良くて」
話を元に戻そう。怠惰についてだ。
こうもぐーたらな生活を送っているわけだが、普段の俺はここまで怠惰一辺倒な訳ではない。
いつもだって5時には布団から這い出して、健康的な引きこもり生活を謳歌しているのだ。
__引き籠りの朝は早い。
ニートとしては失格だが、人間としてはそこまで道を外れてはいないのだ。
つまり今日の醜態は、特に気温と深く関係している。
思考全てにぼんやりとした靄が掛かった様な状態。
自分の表情すら良く分からない状態で、夢遊病患者の様にフラフラと布団に倒れ込む。
あれ、もしかして熱中症なのだろうか。
家族がいればだれかを呼べばいいのだが、生憎俺は一人暮らしだ。
つまり救急車を呼ばなくてはマズイ。
ウーム。やはり暑いな……
必死に手を伸ばして手に取った携帯電話を起動する。
ぼやけた思考でアダルトサイトを開き、ぼんやりと股間へ手を伸ばす。
あれ、俺してるんだっけ。
まるで夢の中にいるようで、ふわふわとして気持ちが悪い。
何かしなければならない気がしたが、非常に眠くて、もはや何もかもどうでもよかった。
ジリジリと照り付ける灼熱の日差し、窪んだ地形にたたずむ古いアパート。
バルコニーの歪んだアルミから蜃気楼が立ち昇っていた。
その一室、畳の敷かれた部屋の布団の上。このまま眠ってしまおうと、思ったところ。
ファミリ○ーマートの入店音がアパートの狭い部屋に響いた。
玄関のチャイムが押されたのだ。
この時の事はうっすらと記憶に有る。
今思えばこの日の俺は確実に頭がおかしくなっていた気がする。
言うまでもない。熱中症なのだが。
「この日が始まりだった」
俺は出会ってしまったのだ。
――もう1人の自分と。
いや、別に「歌手や漫画家、スポーツ選手になりたい」みたいな高尚なモノじゃない。
ただただ怠惰に朝の11時半まで、布団の上で死んでいただけだ。
(そもそも11時を朝と読んでいいものだろうか)
何も生み出さず、何も学ばず、何も動かない。もはや死体と同じと言ってもいいだろう。
ましてや自主的に動かない訳ではなく、動くことの出来ない『死体』。
彼らとは異なり、能動的に動かない俺はもはや死体よりも死体(動詞)をしていると言ってもいいだろう。
間違いなく高校生の中では、トップクラスに何もしていない自信があった。
極端な話、留年生限定の怠惰オリンピックがあったなら、間違いなくメダルを噛める自信がある。
いや、まぁでも仮にそれが実在したとしても、俺は出場しない気がする。
と言うより絶対出ないであろう。
何故なら「面倒くさいからだ」
よく考えればこの大会はおかしい。
本当にだらしない人間は、会場まで来ることすら叶わないだろう。
ADHD向けに書かれた分厚い指南書並みの矛盾を感じる。
彼らが最後まで読める訳が無い。
それに怠惰部門の表彰台で貰えるものは小さなメダルと、僅かな顰蹙と見下しの視線だけだろう。
全くもって割に合わない。
僅かな憤りを感じながら身を起こすと、綿菓子の様に軽い口調とは裏腹に妙な焦燥感に駆られた。
べたつく口の中。寝汗に濡れたシャツ。ぼさぼさに伸び散らかした髪の毛。
起きたら直面させられる。
『1留+進行形の引きこもり』と言う名の現実が、確実に俺を襲っていた。
出場を逃したオリンピックはもはやどうでもよかった。
唾液の絡む口内で舌先をもにゅもにゅと動かし、小さくため息を吐く。
「……朝だ」まだ五月だと言うのに非常に暑い。
いや、そもそも昼なのだよ。と言う熱烈なツッコミを、脳内でもう1人の自分が咄嗟に抑え込む。
焦りはあるし、現に何かしなければオーラが俺を二重三重に取り巻いている。
だがしかし、出来る事は特にない。
いや、勿論勉強や登校をするべきなのだが、本日のオンライン予備校は12時から。
今から飯を食べて風呂に入って、となると準備だけで時間が潰れるのだ。
そんなことを思いつつ、冷蔵庫へ伸ばした腕を止める。
思い出した。飯も無かったのだ。
だが財布に金はある。つまり買い忘れだ。
たまごっちよりも小さい俺の脳のメモリに刻まれた記憶さえ正しければ、昨日の晩もウチの冷蔵庫には何もなかった。
……はずだ。
扉を開ければ何かがあるかもしれないが、振り返ってドアへ手を伸ばす事すら面倒だった。
どこまで"ものぐさ"なのかと自分でも情けなくなるが、別段それほど腹が減っているわけではないのだ。
それに俺はたまごっちと違い、エサを食べずとも、しばらくは死なないし、部屋に排泄物のタワーが建造されるわけではない。
社会の底辺とは言え、旬の過ぎたクリーチャーよりかは劣っていない。
我々の共通点と言えば両者ともに、何の生産性もない事くらいだろうか。
いや、彼らには可愛いと言う差別化がある。そう考えると俺の方がマイナスな気がする。
「……違う。そんなことはどうでも良くて」
話を元に戻そう。怠惰についてだ。
こうもぐーたらな生活を送っているわけだが、普段の俺はここまで怠惰一辺倒な訳ではない。
いつもだって5時には布団から這い出して、健康的な引きこもり生活を謳歌しているのだ。
__引き籠りの朝は早い。
ニートとしては失格だが、人間としてはそこまで道を外れてはいないのだ。
つまり今日の醜態は、特に気温と深く関係している。
思考全てにぼんやりとした靄が掛かった様な状態。
自分の表情すら良く分からない状態で、夢遊病患者の様にフラフラと布団に倒れ込む。
あれ、もしかして熱中症なのだろうか。
家族がいればだれかを呼べばいいのだが、生憎俺は一人暮らしだ。
つまり救急車を呼ばなくてはマズイ。
ウーム。やはり暑いな……
必死に手を伸ばして手に取った携帯電話を起動する。
ぼやけた思考でアダルトサイトを開き、ぼんやりと股間へ手を伸ばす。
あれ、俺してるんだっけ。
まるで夢の中にいるようで、ふわふわとして気持ちが悪い。
何かしなければならない気がしたが、非常に眠くて、もはや何もかもどうでもよかった。
ジリジリと照り付ける灼熱の日差し、窪んだ地形にたたずむ古いアパート。
バルコニーの歪んだアルミから蜃気楼が立ち昇っていた。
その一室、畳の敷かれた部屋の布団の上。このまま眠ってしまおうと、思ったところ。
ファミリ○ーマートの入店音がアパートの狭い部屋に響いた。
玄関のチャイムが押されたのだ。
この時の事はうっすらと記憶に有る。
今思えばこの日の俺は確実に頭がおかしくなっていた気がする。
言うまでもない。熱中症なのだが。
「この日が始まりだった」
俺は出会ってしまったのだ。
――もう1人の自分と。
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