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私小説 3
マンリキの向こう側
しおりを挟む「うんしょ。うんしょ」
さあ、今日は楽しみです。半年間の修行を経て、あたしは、究極の性技「マンリキ」を習得しました。そして、ようやく、愛しの静馬さんに試すことができるのです。
ドアを開けると、静馬さんは布団に横になって待っていました。そして、こう叫びました。
「カム ヒアー ミルク少女!」
あたしは、ジャンプしてそのまんま服を脱いで、静馬さんのもとに潜り込みます……。それから一分が経過しました……。
静馬さんは、体育座りしてショボンとしています。あたしは、布団に横になって何が起きたのかわかりませんでした。彼はこう言ったのです。
「ごめん。俺、超早漏で……入れた途端に秒殺されちゃった……」
「えええ?」
「だから、相手がマンキツだろうが、マンリキだろうが、関係ないんだよ……」
「あのねえ。じゃあ、あたしはこの身体をどうすればいいわけ?」
「ごめん。見栄を張ってしまって……」
「あのね。もう、最低!」
というと、あたしは、髪を振り乱す。しかし、静馬さんはすぐにショックから立ち直った。というか、何の被害もないので当たり前であるが……。
「でもさ。君の話を聞くと、もし相手が早漏じゃなかったら死んでいるんだろう」
「うん」
「そんな技、俺にかけられても困るんだけど」
「いや……でもさ。恋ってそういうもんじゃないじゃん!」
「えっ?」
「恋ってもっと、こう、燃え上がるものだと思うもの」
「そ、そうなんだ」
「もう、あんたには幻滅したわ。もう、あたし、一生、引きこもるわ!」
というと、あたしは戸口まで行きました。
「最後に教えてくれ」
「何をよ」
「ミルク少女……君の本名は何なんだい?」
あたしはドアを開ける。すると、夕日が差し込んできた。その陽光を片方の顔に照らして私は答える。
「秋葉だよ。……四条秋葉だよ。バカヤロー」
というと、ドアを閉めて夕日に向かって走り去ってゆくのでした。
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