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機動兵士 3
突然、炎の如く
しおりを挟む炎が燃え上がるのを見て、私は瞬時にクワンプが戦死したことを知った。私にとってクワンプは、良い上司でもなく、悪い上司でもなく、不思議なほどに印象に残らなかった。まるで、いつ死んでも準備はできていると言えるほどの潔い感じのする人物ではあった。それは、爽やかであると表現もできるだろう。
人の世に負荷を残そうとしない旅人のような男であった。私は、彼と訓練校に通った時からの親友であったが……そう、私は、役所に書類を出して、訓練校に通ったはずなのであるが、それはどうして機動兵士訓練校だったのであろう。何か、私の記憶はメビウスの輪のようになっているような気がしてならない。一つの端には、機動歩兵のパイロット。もう一つの端は、たんなる底辺のおっさんである。
こんな自己存在の確認をしている場合ではない。今は、目の前の夏生と相対しないといけない。ザゴのソードで彼女の攻撃をかわしながら、彼女の動きの中に稀に見る隙を発見したので、そこを突くと、何と、それは罠だったのである。そう動くと知っていた彼女は、私のザゴの左腕を両断する。地面に椀部が転がってプスプスと土煙が上がる。
「くそおおお」
私は、ビームソードを突き出すと、彼女はヒラリと回転して、ザゴの胴体にソードを突き立てる。隔壁を破って目の前に赤熱したビームソードが現れる。あと少しズレていたら即死であった。私は、それでも怯まずにレバーを引いて、ザゴの方でもソードを突き立てた。
「あぐわはっ。あんた……やったわね」
その一撃は、彼女の身体を蒸発させてしまった。機動兵士の機体のどこに突き刺せば良いのかということは、訓練校で習ったはずであるが、彼女は、ザゴの操縦席の場所を間違って覚えていたようである。もっとずっと下部、下腹部、丹田のところにあるのだ。
「ドーン」
眼前で、彼女のジャンゴが爆発するのであるが、残念ながら彼女を救うことはできなかった。それにしても私はどうして彼女と面識があったのであろうか。記憶が曖昧すぎる。どうして、彼女を恋人にしようとしたのであろうか。そして、秋葉の存在をどうして忘れたのか。はっ……ひょっとしたら、私は狂っているのかも知れない。
「あははははは……星が輝いているよ……あははははははは」
私はさらに口を開けてできるだけ宇宙線を受け止めようとした。全ては、宇宙の思し召しである。空が迫ってくる。まるで、私のためだけに存在している刃のような意思の塊を感じる。助けて。誰か、助けて。クワンプさん。助けてえ。
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