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機動兵士 4
艦隊決戦 (後編)
しおりを挟む四条夏生の身体そのままだったのだ。髪の毛が少し癖っ毛であり、切長の目で、頬は赤らんで、唇は色気があって、手足はとても長く、身体のバランスがとても良い。日本人でありながら、どこかイタリア人を思わせる、胸の高さ、声は、やけコロコロとフロアーに響き渡る、いつもの彼女が青いピチピチのノーマルスーツを着て平然とそこに立っているのである。
「その通り。私は、四条夏生です。いや、正確に言えば、四条夏生のクローンです。日本軍に対して、警告します。今すぐ、降伏しないとあなた方は、地獄を見るでしょう。宜しいのですか」
「クローンだと……あの狸親父めっ」
と私は叫んだ。実は、いつも彼女の悪夢にうなされていたのである。だんだん、今見ているのが夢だか現実だかわからなくなり頭を抑えた。そんな私を見てチャーリーが会話を続ける。
「聞かせてもらおうか。今、我々はかなり有利な戦況にある。どうして、降伏しないといけないのかね」
「こちらの新型機動歩兵の強さが圧倒的だからよ」
「それは、戦ってみないとわからない。勿論、降参するつもりはない」
「ええいっ。忠告したんだからねっ。死んじゃっても知らないよっ」
というと通信は切れた。私は、心の中にさざなみがいくつも現れるのをしばらく耐える。何故だか知らないが、四条秋葉のミルクを運ぶ、
「うんしょ。うんしょ」
という声が響いてきた。
「静馬君。大丈夫か」
チャーリー・パイナップルが覗き込む。
「閣下は、お強いですね……」
辛うじて私が答えると、チャーリーはこう嘯いた。
「私だってたんなる人間さ……、さあ、行こう。これが、最後の戦いだ」
私とチャーリーはモビルスーツのハンガーまで降りてゆく。別れ際に、チャーリーはこう呟いた。
「辛いのは君だけじゃない。私も、もう機動歩兵に乗るのはやめたいくらいさ……」
「チャーリー閣下が「やめる」と言っても、世の中がそうさせてくれないのではないですか」
「そうかもしれない。強き者の持つ定めなのかもな」
「閣下は、オムロンを相手してください。私は、夏生と戦います」
「そうか。彼女は……私の手に余るからな……」
「では」
東の端にある最新装備の機動歩兵、ライトニングザゴ3のハッチを開け、コクピットに滑り込む。慣熟飛行はもう何十時間もやっているが、乗り慣れたザゴの系統でありながら、少し旋回するときのタイミングに違和感があった。その少しの感覚の違いが命に直結するのが戦場なのであるが……こんな不都合はパイロットには良くあることだった。
「乗り越えなくてはいけないな……」
私は誰にともなく呟いた。
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