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第七話
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久しぶりに気持ちよく目覚めた朝。
ルカに着替えを手伝って貰い朝食を取りに部屋を出た。
部屋を出た時、階下が騒がしかったので見に行くことにした。
ルカがついて来ようとしたが、朝の支度を優先するように言って下に降りて行った。
寮の入口には人だかりが出来ていた。
その中心にいたのは……
外から降り注ぐ朝日を浴びて特徴的なハニーブロンドが輝いて…… ないわね?
昨日と違いくすんだような色をした髪をせわしなく振り回し何事か叫んでいた。
「なんでよっ!? なんであたしが退学になるのよっ!!」
事務の職員であろう男性が男性教師と共に彼女に言い聞かせていた。
「ですから退学ではなく、入学取りやめです。 入学資格がなかったのに許可が出ていたのはこちらの手違いで申し訳ないのですが……」
入学取りやめ? まあそもそも平民がこの学校に入って学ぶものはあんまりないから妥当な処置ではあるわね。
なにせこの学校で教えるのは貴族のマナーだとか、領地の経営のノウハウだとかだし。
まあ学術を学ぶ科はあるけど、彼女はなぜか貴族科なのよね。
アリシアは納得いかないのかさらに言い募る。
「サワナン侯爵はこの事知ってるのっ!? あんたたちただじゃすまないわよっ!!」
そのアリシアの叫びに職員達の視線が冷たくなる。 そして。
「サワナン子爵もご存じの事ですよ。 もっとも今それどころじゃないでしょうけどね。」
わおっ! まさかもう王宮が動いているの?
つまり夕方のあの後すぐに王宮に伝達したって事か。
しかし、アリシアはサワナンが子爵に降格したことに気付いていないようで……
やがて埒が明かないと思ったのか警備員を使ってアリシアを抑え込もうとする。
「はなせぇ! あ! あんた、ヴァネッサっ! あんたねあんたがこんな事させてるんだわ!! この悪役令嬢がっ! 皆、目を覚ましてっ! ヴァネッサなんてすぐに処刑されるんだからっ! 私こそが本物の鮮血の花嫁よっ!」
見てなさい、と押さえつけを外したかと思うと右手の親指を口に当てその指の腹を噛みちぎった。
それを高々と掲げるアリシア。
「さあっ! 花嫁の血に酔いなさい アッハッハッ!」
と高笑いするも何もおきない。
「え? なんでよ! なんでなんともないのっ!?」
全員が蔑みの眼を向けるだけだった。
「はなしなさいよっ! はなせぇ! ヴァネッサぁ! ヴァネッサぁ! ゔぁねっさああああああっ!!
半狂乱になったアリシアを引きずっていく警備員を見送りながら野次馬達が部屋へ戻っていく。
彼女が使っていた術式は非常に不安定な物だった。
だからニンゲンだった私、ではなく吸血鬼になった私には術が及ばなくなった。 ただそれだけの事なのだ。
それにしても……
私は昨日の夜に新たに思い出したことを考える。
実はこのゲームには続編があった。 とはいえ私はやった事はないし、出たのかすら分からない。
その情報はレジスタンスの仲間の一人の子が教えてくれた。
続編が出るらしい、と。
続編の舞台は同じで、時代は10年後というアナウンスが公式から発表された。
それはもうファンはワクワクして続報を待っていたらしい。 掲示板も盛り上がっていたと。
そしてついに続編の公式HPが立ち上がりファンは一斉に見に行った。
タイトルは ~吸血の口づけは誰がために リインカーネィション~
しかしそれはファンの困惑と怒りを生む結果になった。
続編のストーリー紹介はこう書かれていた。
”大ジュマナン帝国がアルシェ=ヴィラを滅ぼしてより10年の月日が流れた。
そして、帝国の支配地となった旧王都ヴィ=ランシェで再び吸血鬼と少女による恋が花開く。
初めて見たファンはビックリである。
その後の情報でも前作のキャラは一人も出てこないとのアナウンスがありHPは炎上した。
そして公式は一つの短編を投下した。
そこに書かれていたものは、アリシアの出生の秘密などであった。
アリシアはサマナン侯爵が予言に従って南方の蛮族である呪術師に産ませた子供である事。
予言とはヴァンプリージェ公爵家から鮮血の花嫁が生まれる事。
そしてサマナンはみずからの子供を使って、生きた魔術具として鮮血の花嫁の力を奪おうとした。
そしてヴァネッサは殺され、力の供給源を失ったアリシアは花嫁ではなくなった、と……
まあただの人間が口付けの義で吸血されれば死ぬわよねぇ。
花嫁が儀式の時に死ねばそりゃ国内は動揺するわ。
そこを帝国に突かれたって事かしら。
……いやこれは帝国のと言うか皇帝の報復だったんじゃあ?
ヴァネッサの母親は、設定集にしか書いてないが帝国の皇女だった。
現皇帝の一人娘でうちに和平の証として嫁いできた。
つまりヴァネッサは皇帝の孫にあたる。
王家に嫁がせないのは人間至上主義ゆえかしらね。
そしてこの皇帝、祖父バカであった。
なにせ私の誕生日プレゼントに帝国皇女の地位を与えたり、騎士団を丸々一つプレゼントしようとしたりするのだ。 その騎士団は帝国に今だ存在するらしい。
まあなんにせよヴァネッサの死が引き金になって滅びを迎えたんでしょうね。
この事とタイトルのリインカーネィションから、今度の主人公はヴァネッサの生まれ変わりではないかと言われたわ。
なにせ主人公は最初9歳からスタートするらしい。
そこから成長して学園に入学して……という流れなのだそうだ。
こうなると絵師さんのヴァネッサの方に思い入れがある発言は伏線だったのかしらね?
そんな事を立ち止まって考えているといつの間にやらハルト王子に捕まっていた。
あれ?
「昨日の事やサマナンの事について話があるので昼休みにサロンに来てもらいたい。」
えーめんどくさいんですけどー。 などと言えるはずもなく、分かりましたわと答え解放してもらった。
ああ、本当にめんどくさいなあ。 とはいえ行かなきゃ問題になるだろうしなあ。
しかし王子が私を見る目が変わったなあ。 ヴラドの件というよりヴァンパイアになったからかしら?
彼はニンゲン嫌いだものねえ。
おっと、それより朝食の時間がなくなるわ。
私は急いで食堂に向かうのだった。
続く
ルカに着替えを手伝って貰い朝食を取りに部屋を出た。
部屋を出た時、階下が騒がしかったので見に行くことにした。
ルカがついて来ようとしたが、朝の支度を優先するように言って下に降りて行った。
寮の入口には人だかりが出来ていた。
その中心にいたのは……
外から降り注ぐ朝日を浴びて特徴的なハニーブロンドが輝いて…… ないわね?
昨日と違いくすんだような色をした髪をせわしなく振り回し何事か叫んでいた。
「なんでよっ!? なんであたしが退学になるのよっ!!」
事務の職員であろう男性が男性教師と共に彼女に言い聞かせていた。
「ですから退学ではなく、入学取りやめです。 入学資格がなかったのに許可が出ていたのはこちらの手違いで申し訳ないのですが……」
入学取りやめ? まあそもそも平民がこの学校に入って学ぶものはあんまりないから妥当な処置ではあるわね。
なにせこの学校で教えるのは貴族のマナーだとか、領地の経営のノウハウだとかだし。
まあ学術を学ぶ科はあるけど、彼女はなぜか貴族科なのよね。
アリシアは納得いかないのかさらに言い募る。
「サワナン侯爵はこの事知ってるのっ!? あんたたちただじゃすまないわよっ!!」
そのアリシアの叫びに職員達の視線が冷たくなる。 そして。
「サワナン子爵もご存じの事ですよ。 もっとも今それどころじゃないでしょうけどね。」
わおっ! まさかもう王宮が動いているの?
つまり夕方のあの後すぐに王宮に伝達したって事か。
しかし、アリシアはサワナンが子爵に降格したことに気付いていないようで……
やがて埒が明かないと思ったのか警備員を使ってアリシアを抑え込もうとする。
「はなせぇ! あ! あんた、ヴァネッサっ! あんたねあんたがこんな事させてるんだわ!! この悪役令嬢がっ! 皆、目を覚ましてっ! ヴァネッサなんてすぐに処刑されるんだからっ! 私こそが本物の鮮血の花嫁よっ!」
見てなさい、と押さえつけを外したかと思うと右手の親指を口に当てその指の腹を噛みちぎった。
それを高々と掲げるアリシア。
「さあっ! 花嫁の血に酔いなさい アッハッハッ!」
と高笑いするも何もおきない。
「え? なんでよ! なんでなんともないのっ!?」
全員が蔑みの眼を向けるだけだった。
「はなしなさいよっ! はなせぇ! ヴァネッサぁ! ヴァネッサぁ! ゔぁねっさああああああっ!!
半狂乱になったアリシアを引きずっていく警備員を見送りながら野次馬達が部屋へ戻っていく。
彼女が使っていた術式は非常に不安定な物だった。
だからニンゲンだった私、ではなく吸血鬼になった私には術が及ばなくなった。 ただそれだけの事なのだ。
それにしても……
私は昨日の夜に新たに思い出したことを考える。
実はこのゲームには続編があった。 とはいえ私はやった事はないし、出たのかすら分からない。
その情報はレジスタンスの仲間の一人の子が教えてくれた。
続編が出るらしい、と。
続編の舞台は同じで、時代は10年後というアナウンスが公式から発表された。
それはもうファンはワクワクして続報を待っていたらしい。 掲示板も盛り上がっていたと。
そしてついに続編の公式HPが立ち上がりファンは一斉に見に行った。
タイトルは ~吸血の口づけは誰がために リインカーネィション~
しかしそれはファンの困惑と怒りを生む結果になった。
続編のストーリー紹介はこう書かれていた。
”大ジュマナン帝国がアルシェ=ヴィラを滅ぼしてより10年の月日が流れた。
そして、帝国の支配地となった旧王都ヴィ=ランシェで再び吸血鬼と少女による恋が花開く。
初めて見たファンはビックリである。
その後の情報でも前作のキャラは一人も出てこないとのアナウンスがありHPは炎上した。
そして公式は一つの短編を投下した。
そこに書かれていたものは、アリシアの出生の秘密などであった。
アリシアはサマナン侯爵が予言に従って南方の蛮族である呪術師に産ませた子供である事。
予言とはヴァンプリージェ公爵家から鮮血の花嫁が生まれる事。
そしてサマナンはみずからの子供を使って、生きた魔術具として鮮血の花嫁の力を奪おうとした。
そしてヴァネッサは殺され、力の供給源を失ったアリシアは花嫁ではなくなった、と……
まあただの人間が口付けの義で吸血されれば死ぬわよねぇ。
花嫁が儀式の時に死ねばそりゃ国内は動揺するわ。
そこを帝国に突かれたって事かしら。
……いやこれは帝国のと言うか皇帝の報復だったんじゃあ?
ヴァネッサの母親は、設定集にしか書いてないが帝国の皇女だった。
現皇帝の一人娘でうちに和平の証として嫁いできた。
つまりヴァネッサは皇帝の孫にあたる。
王家に嫁がせないのは人間至上主義ゆえかしらね。
そしてこの皇帝、祖父バカであった。
なにせ私の誕生日プレゼントに帝国皇女の地位を与えたり、騎士団を丸々一つプレゼントしようとしたりするのだ。 その騎士団は帝国に今だ存在するらしい。
まあなんにせよヴァネッサの死が引き金になって滅びを迎えたんでしょうね。
この事とタイトルのリインカーネィションから、今度の主人公はヴァネッサの生まれ変わりではないかと言われたわ。
なにせ主人公は最初9歳からスタートするらしい。
そこから成長して学園に入学して……という流れなのだそうだ。
こうなると絵師さんのヴァネッサの方に思い入れがある発言は伏線だったのかしらね?
そんな事を立ち止まって考えているといつの間にやらハルト王子に捕まっていた。
あれ?
「昨日の事やサマナンの事について話があるので昼休みにサロンに来てもらいたい。」
えーめんどくさいんですけどー。 などと言えるはずもなく、分かりましたわと答え解放してもらった。
ああ、本当にめんどくさいなあ。 とはいえ行かなきゃ問題になるだろうしなあ。
しかし王子が私を見る目が変わったなあ。 ヴラドの件というよりヴァンパイアになったからかしら?
彼はニンゲン嫌いだものねえ。
おっと、それより朝食の時間がなくなるわ。
私は急いで食堂に向かうのだった。
続く
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他サイトにも掲載しています。
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