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出逢えるまであと1回

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 今のところ、草しか食べてないけど、水は割と飲んでいる。
 さっきも河川敷によってすくって飲んだ。
 
 確かに、自転車をひいてる買い物帰りの女性にそれを見られて、緊張で胃液を嘔吐したから、おなかには本当に水だけ。
 もちろん高い草の茂るところまでもっていって吐いた。

 俺は最近、男を認識していない。実際にはすれ違っているはずなのだが、そうなっていた。
 歩いていても、視界に入れない。男ってだけでもうだめらしい。

 それにしても、なぜかしら体が軽い。解放感。何をしても、しなくても、誰も期待しないし、文句も言わない。
 そして外に出て、人に注目されるのはどんな風であれ気持ちがいい。
 その人たちが俺に深入りしないから、殺されたり、キスしてきたり、手を触られて瞳をえぐるように見つめられることもないから。
 
 もうそういう事をされることはないんだ。
 これも解放感の一つの成分だった。
 日本に来たばかりの頃は大変だったな。
 でも、ここに来られたのも自分へのギフト。

 ああ…花束を贈る人ももういないんだな。
 逆に、一輪のゼラニウムをもらって、嬉しくて飾ったら、いつの間にか空き巣がもって行ってしまったこともあったっけ。

 通勤通学の乗降者がいなくなって静まり返った駅に入り、ベンチに腰掛けると、とりとめもない思考が走馬灯のように取り巻いた。
 駅のベンチと線路と、フェンス。その向こうには道路が勿論。
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