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第1章
凍えるほどに冷たい男 3
しおりを挟む日が落ち、気温もまだまだ冷え込む季節の夜。
それでも1桁になっても9℃程度だ。一人の男が夜道を歩いていると、目の前に黒服にサングラスをしたスーツの女が佇んでいた。
女の存在に気付いた男は、被っていた帽子を深く被って素通りしようとする。その腕を掴みスーツの女は言った。
「どこへ行くのですか?そんなに慌てて」
「い、いや、私はもう関係ない!あの会社の役員が狙われていることは、あなた達の計画通りなのだろう?も、もう充分に情報は提供した。頼むから彼女だけは見逃してくれ!」
スーツの女にしがみついて、その場に崩れ落ちる男。
すると、後ろに停められていた車の後部座席が空いた。水色のワンピースを着た少女が、白銀に翡翠のメッシュ入った髪をなびかせて現れる。
「───大丈夫ですよ。あの怪物は、彼女だけは殺しませんから。気を付けるべきは────、アナタの方かも……?」
一切感情の乗らない。抑揚がなければ、覇気すら感じさせない口調で少女は男に言葉を浴びせた。男は顔を上げて、少女の言葉に凍りついた表情を見せている。
その間スーツの女がずっと、少女に対して頭を下げ続ける。ふと運転席の方を少女が見ると、窓が開きメガネをかけた女執事が声をかける。
「妃様、お時間が迫っています。お車に戻ってください」
「────はーい」
緩急のない声で返事をして、再び後部座席に消えて行く少女。頭を上げたスーツの女は男に、向かってほしい場所を書いた紙を手渡してから、少女と同じ後部座席へ乗りドアを閉めた。
車は走り出し、男の前から姿を消した。
渡された紙に書かれている住所を見て、男は目を見開いた。その場所に見覚えがあったからだ。
急いでタクシーを捕まえて、その場所へ向かう。
辿り着いた建物。そこは今、世間で連続殺人が起きている食品会社の移転前の拠点だった場所。
現在は空きテナントとなっているため、出入口は閉鎖されているが男は鉄柵の間を潜り抜けて、建物内に進入する。
狭い廊下を通って階段を登る。3階へ上がって1番奥の部屋。そこが社長室。この紙に書かれていた最後の部分も、その社長室へ入るように書かれている。
意を決してドアノブに手をかける男。すると、室内に人の気配を感じる。しかし、その人物に会って話をすることが紙に書かれていたことであったため、本当に居たことへの驚きが強かっただろう。
「や、やっぱり貴方でしたか。こんなところへ呼んだのは一体……?」
「────。」
「…………ッ!?ひっ……、ぃぃ────」
暗い部屋に目が慣れてきた男は、社長室に居た存在を目撃して悲鳴を上げた。
それが男の最期であった。男は次の日の夜。自身の住むアパートの高層ビルで、落下死体として警察に発見される。
□■□■□■□■□
───以上までの始終を映像記録で確認したことを告げる停止マーク、モニターを眺めていた女性がゴーグルを外す。
「いやぁ~、しっかり撮れてたッスね♪」
『おいおい。死人が1人出てしまっているんだぞ?そんなに自分のメカの出来栄えの良さを過大評価している場合ではないだろう』
女性の後ろに設置されているスピーカーから、嫁神の声が聞こえてくる。
嫁神の言葉のとおり、死者が出てしまっているのは事実。
「そうッスけど、そっちは何事もなしってことッスか?」
『ああ。殺害された男が、怪しげな車と接触していたこと。それと何の感情に共鳴した傀魔に襲われたのかは、まだ分かっていないわけだ』
「そこは改良の余地ありッスね。ところどころにノイズも入ってましたし、ステルス迷彩機能との両立が全然出来てないッスから♪」
事件の真相調査が嫁神の目的なら、この女性にとっては発明品が今後の依頼をこなす上で、生まれた課題を解消することが目的になる。それが悠ノ瀬 暁咲という女性だ。
通話を切って、課題のプロセスを見直す作業を開始する暁咲。独り言を零しながら、作業に集中するのであった。
「所長さんの睨んだとおり、狙われたのは岩田の会社の専務だったッスね……」
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