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メインストーリーな話
特定完了
しおりを挟む燈火達と時を同じくして、茅野とラット。そして、夏蝶火もまた戦果の中にいた。
「ふーん、また来たんだ?」
「今度は逃がさないわ、ルーティン」
茅野は噂観測課の怪異ファイルサーバーへ、ハッキングによるアクセスを行なったアンリード。ルーティンと再度対峙していた。
前回は、見事に必要としていたデータを抜き出され、その大規模な電波ジャックの影響により、撹乱されたことで逃げられてしまったのだった。そして、直ぐに燈火達と合流し作戦会議をして、他のメンバーへの共有の間もなく再会を果たしてしまった。
ルーティンが耳に着けている装置に手をかけ、ダイヤルを回転する。途端に電磁波を生じて、周囲にナイフを展開。そのまま、茅野に目掛けて投擲すると、茅野もノートパソコンのエンターを押し、ホログラム状の盾を呼び出して防いだ。
守ってもらった盾から飛び出し、光線銃を放つ。ルーティンの寸前で湾曲して、ビームの軌道が逸れた。
「あ~、無駄だよ。お姉さんのハッキング能力は既に分析済み。付け焼き刃ってとこだね……。僕を倒すことは不可能……」
「そいなら、ワシならどうや?」
電波塔に繋がれた、ルーティンから伸びているチューブに向かって、爆発式のダーツを投げつけるラット。チューブが放電を起こし、ダーツは直撃前に爆発した。しかし、チューブは放電バリアによって無傷で済んでいた。
ルーティンのダイヤルを回して繰り出した、デジタルドルフィンによる反撃を受け、茅野の隣まで追いやられるラット。
現実も電脳も凌ぐ、両刀の強さを前にラットも額に汗を浮かべた。茅野はチューブが繋がれて発生している怪電波を中和する、アンチプログラムの構築に集中するため、防戦を余儀なくされた。
「あかんな、こりゃあ。オカンのやつ、間に合うやろか……」
ラットの焦燥とは対照的に、ルーティンは空中にデジタルモニターを展開し、追加のタスクを着手し始めていた。幾度となく、デジタルドルフィンの追跡を潜り抜けて、一撃を加えていくが、電磁バリアをドーム型に展開してそれさえも防いでいた。
「そっちはどんな感じ?」
果ては、この場に居ない夏蝶火と対峙している方にパスを繋ぎ、連絡を取る始末。返事がないため、モニターを拡大して頭上に展開して様子を見る。
□■□■□■□■□
螺旋状に続く、駐車場スペースを駆ける二つの影。
一つは夏蝶火。もう一つはレッドヒール。猛毒でコーティングした手で、鋼鉄よりも硬いヒールから打ち出される、蹴り技の数々を受け止め、受け流し攻防一体の戦況を繰り広げていた。
「ウフフフ♪楽しいわ、愉しいわ、娯しいわ♪もっと、ヒールと踊りましょう?」
「いいえ、結構なんだな、これ」
飛び膝蹴りにアレンジを加えた、大回転蹴りを披露しながら無邪気に笑うレッドヒール。それを上体を反るリンボーダンス顔負けの回避で、すり抜け返しに右手に集中させた猛毒手のカウンターを当てる。
触れられた背中には、綺麗に手形がついた箇所が皮膚が焼け爛れて蒸気まで発しているというのに、毒の侵食よりも再生力が勝ち直ぐに元に戻った。
「嘘なんだ……これ。はっきり言って、しんどいっての…………これ」
「余所見は禁物ですよ?」
「────はっ!?」
しまった。
そう言い切る前に、後ろを振り返り腕を交差する。纏った猛毒を貫通して、槍先が夏蝶火の胸をかすめて腹の薄皮を剥いだ。体勢を崩したところに、スリンキーバネのウェーブで接近する、レッドヒールの鉄脚が襲った。
地面を転がって、倒れてしまった夏蝶火に現れたフロンティアの槍先が突きつけられた。
「んもぉ~、フロンティアはなんでヒールの邪魔ばかりするの?」
「それは貴女が1番危なっかしいからですよ、レッドヒール。さて、降参……で宜しいでしょうか?」
「それはちと……、困るんだな、これ」
夏蝶火の返答に慈悲もなく、槍を振り上げるフロンティア。しかし、そんなフロンティアの頭上が大きな影で覆われる。ガシャーンっと物音を立てて、飛んできた自動車の下敷きになったフロンティアとレッドヒール。すると、駐車場スペースに反響する透き通った声が夏蝶火の背後から、徐々に近付いてきていた。
「嗚呼、拙僧としたことが……。殿方達から英気を養い過ぎて力加減を誤ってしまいましたわ……ソワカソワカ」
「あ、あなたは?えっと、確か────、セミダブルさんなんだなぁ、これ?」
アブノーマルですと、笑を浮かべながら訂正し夏蝶火を起こす。
自動車に風穴を空け、爆風の中からアンリード達が姿を現す。炎に包まれていた体は、火傷のあと一つないまでに元どおりとなり、振り出しに戻った状況で両者向かい合った。
そして、レッドヒールと夏蝶火の第二ラウンド。お互いに取っ組み合いをして、駐車場スペースから飛び降りて、地上階まで落下していくアブノーマルとフロンティア。
槍をクネクネと軟体動物のように、躱していく尼僧を見て目の色を変える。力任せに地面を叩き割り、一度距離を置く。槍を振り回し、持ち手を深く握りしめ分裂戦法へ移行するフロンティアは、陣形を張ってアブノーマルへ向かっていった。
槍を突きつけると、大きな柩で一撃を斥け蓋を開いて取り出した、ロザリオメイスで背後から来るフロンティアの頭蓋を叩き割る。ぐしゃりと鈍い手応えに、酔うことなく飛びついてきたフロンティアに前傾姿勢で迎え討つ。助走をつけて腹部に飛び込み、挟撃を避けて内腿で挟み込んでぶん回し、車に投げ付けて後転して三体目の首を脚で掴んで地面に叩き付けた。
「はぁぁ♡拙僧のカラダも温まって参りました。まさか、分身ではなく全てが本体だなんて……、嗚呼♡♡複数プレイは拙僧も大好物です…………ソワカソワカッ♡」
「なんと奇っ怪な……。では、こちらも本気を見せましょう」
無傷のフロンティアがそう言うと、一斉に立ち上がりアブノーマルの方を睨むフロンティア達。そのうち二人が、持っていた槍を投げ渡し素手で構え始めた。
双槍持つ二人のフロンティアはアブノーマルの周りで、円を書くように走り回る。アブノーマルが目で追うと、腹部に衝撃が走った。かと思えば、頬を殴られていた。向き直った先に槍先が目頭に映る。体を横にして、間一髪のところで避けるも、腰に一発、膝に一発と打撃を加えられる。
なんと、フロンティアは円陣を作る高速移動のなか、ローテーションのようにアブノーマルを襲い、円陣の中へ消えていくヒットアンドアウェイで、反撃をさせずに消耗を誘っていたのであった。
「No.3の実力も、この程度ですか……」
「これでは、あのディフィートと呼ばれている怪異使いくらいしか、私とは張り合えませんね……」
「────。」
「さぁ、これで終わり────────ッ!?」
刺し傷に打撲。最早、防御すらままならなくなったアブノーマルに、トドメを刺そうとしたフロンティアの一体が、何かを察して構えていた槍の手を止めた。
同時に、武器を持たないフロンティア二体を鷲掴みにするアブノーマルが、急に茶色へ変色していった。まるで錆び付いているかのような色合いを見せ、掴んでいた手がフロンティアに巻きついていた。
「これは?」
「まさか!?」
双槍を持つフロンティア達は、背中合わせになって周囲を見る。
すると、コンクリートで出来ている地面に波紋が広がると、途端に足元が渦潮に取られて、タイフーンで宙へ放り出されるフロンティア。
【女王の蟻塚】。アブノーマルの持つ、一つ目の怪異。その力によって生み出された、アブノーマルの口寄せが二体のフロンティアを捕え、発生させた渦潮のタイフーンによって、残りの二体も自由を奪ったもう一つの怪異、【八百比丘尼】。
二つの怪異の力を使い、フロンティア全員を捕縛したアブノーマルが渦潮の中から、にゅるっと姿を現した。妖艶な表情を浮かべて、おふざけ無しのダウナー気味のボイスでフロンティア達に言葉を浴びせた。
「その厄介な能力。果たして、全員同時に砕いたら。再生にはどれくらいお時間が掛かるのでしょうか?嗚呼……、愉しみですねぇ?」
普段は、淫らなことに全力なアブノーマル。
しかし、今だけは戦闘の獣としての一面を露わにして、駆け出した。眼光を輝かせて、四枚の札を両手に二枚ずつ持って一箇所に集めたフロンティアに貼り付けた。
伝々殺法・宵影ノ曼陀羅────。
波紋に映る、チャクラの紋様。札に印の力を集約させて、一気に爆散させた。アブノーマルが着地する、コンクリートの大地を渦潮の清き水飛沫が、恵みの雨として降り注ぐ。
フロンティアとの激闘が一段落ついたそこへ、レッドヒールが落下して来た。続いて、追ってきた夏蝶火も現れた。
「形勢逆転なんだなぁ……これ」
「アハハハ♪お姉さんの毒、ちょっとヒールには効いているかもぉ♪でも、逆転はないかなぁ?ほら見て見て♪」
優勢に立った夏蝶火に対して、レッドヒールはニコニコしながらアブノーマルが立ち尽くしている方を指さした。
振り向いた時、夏蝶火は目を見開いた。何故なら、夏蝶火もアブノーマルの一撃が、四体のフロンティアを一斉に消し去るところを見ていた。いくら、核を持たないフロンティアと言えど、あれだけの攻撃を受ければそう簡単に完全再生は出来ない。そう思っていた。
「認めましょう。貴公は、誉ある戦士です……。しかし、私には通用しなかっただけのこと。気に病むことも、恥じることもありません」
「く────、こほぉ…………っ────。ぅ、ぐ……」
アブノーマルの体は地上に足をつかず、浮き上がっていた。フロンティアの槍で心臓部を抉られ、腕力で突き刺したアブノーマルを持ち上げていたのだ。幸い、【八百比丘尼】の持つ再生力が機能し、アブノーマルはこの程度のことでは、致命傷にはならないが突き刺さっている間は苦痛が続くことになる。
フロンティアは、そんな苦痛を長時間与える必要はないと夏蝶火の足元へ、アブノーマルを投げ渡した。止血は済み、外傷が消えたものの咳混んでいるアブノーマルに駆け寄る夏蝶火。またしても、レッドヒールとフロンティアに挟み込まれ、不利な状況に立たされていた。
全快しているアンリードによる、更なる攻撃が迫る。しかし、ピタリと動きを止める二体。頭に手を当て、ルーティンからの通信を聴き始める。
『状況終了。プロメテウスの配置した、ビーコンドールが破壊された。これにより、脱出経路の割り出しに成功。マザーより、新たな指令が課せられた。フロンティア、レッドヒール。遊びはそこまでにして、切り上げよう』
「分かりました。連中は私にとって、取るに足らない存在であることを認識。そのため、このまま捨ておきます。帰りますよレッドヒール」
「ちぇっ……、ヒールはもうちょっと遊びたかったのになぁ~~♪」
疲弊している夏蝶火とアブノーマルには、目もくれずにその場から姿を消すフロンティアとレッドヒール。
やがて、茅野から怪電波のアンチプログラムは完成して、ルーティンのジャミングは止めることが出来たが、燈火達の方へ向かわせているアンリード達と、ルーティン達は次の作戦へ移行するため、準備行動をしていただけだったことが告げられた。
アブノーマルを治療のため、医療班に預けた夏蝶火達は急いで燈火達のもとへと合流するのであった。
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