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メインストーリーな話
◆旧生態滅除新星計画◇
しおりを挟む廃墟となった施設に集結するアンリード。
穴あきになった培養槽の配置された、実験室で待つ都越江 久遠とネヴェル・トコシエの前で、跪き顔を上げる。
「ただいま、ママ。パパ……」
「よくやったなボニー。ルーティン、極点との位置関係も完璧な核融合炉施設は見つかったか?」
「もちろんだよ、父さん。人工島にある、あれを使えば効率的だよ」
「ねぇねぇ、ヒール達の方も終わったよ♪捕まえてきた綺麗な人間さん達は、その島に連れて行けばいいんだよね?」
「若干一人、煩いのが混じっておりますが、怪異からの浸食はまだ受けておりませんので、連れて来ました」
茅野や夏蝶火との戦闘に入る前に、拉致してきた人間を収容して運び込んでいたフロンティア達は、次の作戦を仰いだ。任務の更新と言われた後、人選を変更するため一度帰還しろと言ってのは、久遠であった。
プロメテウスの放っていた、ビーコン搭載ドールは妖精の森から脱出することが出来る地下通路、その全域に居た。消滅を確認出来たのは一箇所だけ、そこから怪異を連れて逃げ出したことが容易に読み取れる。
しかし、久遠にとって逃げた怪異を一体一体捕らえて始末するなんて、気の遠くなるようなことは視野に入れる必要のない些事なことでしかなかった。これから行なう計画によって、人類はやり直される。《旧生態滅除新星計画》とは、今ある人類も怪異も消し去り、知性体からやり直しをさせるというものであった。
「あなた……、もうボニーを危険な目に合わせないで……」
「何を言うんだネヴェル。そもそも、この計画を始めるきっかけとなったのは、君とわたしの子が、この世界に生まれながら生きていけなかったことが始まりであっただろう?ボニーはメアリーじゃない。君は亡霊をボニーに重ねているだけだ」
「────。パパ、ママ。喧嘩……よくない」
魂のないボニーの声が、二人の間に割って入った。久遠は別に喧嘩をしている訳ではないと、ボニーの頭を撫でアンリード全員に作戦を出した。
明朝より、ここは政府によって嗅ぎつけられているために放棄する。同時に、プロメテウスはフロンティアとともに逃げた噂観測課が、隠れ家としているであろう拠点への攻撃を開始するよう、命令を出した。
ルーティンは、密輸船のジャックを行なうために久遠とともに湾岸へ向かう。その手間の検問エリアを選挙するために、ボニーとレッドヒールが向かうようネヴェルが指示を出すと、プロメテウスが口を開いた。
「人間どもの輸送は別で行なう方がよかろう。レッドヒールはそちらに手配しろ。連中が船を見つけ次第進入されても、それならどちらかは先に島に辿り着ける」
「随分と慎重ですねプロメテウス。私と貴公が、残党狩りをするのです。それを掻い潜って、船を止めに来るとでも?」
フロンティアは絶対の自信があった。誰も、フロンティアには勝つことが出来ないから。しかし、プロメテウスは敵も時間稼ぎをしてくることを視野に入れて、圧倒的な戦力を持ってしても入念に作戦を実行するべきだと、意見した。
加えて、プロフェッサーであるネヴェルの過剰なまでのボニーへの贔屓に、少し不信感を抱いていた。アンリードはプロトタイプであろうとも、再生能力は変わらずに備わっている。どれだけ、銃で撃たれようとも、体を切り刻まれようとも、すぐに元に戻れる。
久遠は実の娘ではないという言う以上、生前に血の繋がりがあったものとは思えない。その先は思考することが出来ないプロメテウスは、意見を承諾した久遠に会釈だけした。
「人の思想を理解するために、脳が必要だった。圧倒的な強さを維持するために、死骸のすべてとそれを喰って実態化するタイプの怪異が必要だった。プロメテウス、君は実にその有用性を成果にしてくれているよ」
久遠がプロメテウスを激励すると、ルーティンを引き連れて研究室を出ていった。ボニーの両肩に手を置き、涙を流しながら「頑張るのよ、ボニー」と言って、久遠の後をついていく着いていくネヴェル。肩に残る、人の温もりを静かに見つめるボニー。
そして、全員が久遠に託された任務のために、続々と研究所を後にして行った。程なくして、駆け付けた秘密組織の武装をした政府の派遣部隊。研究所へ突入するも、もぬけの殻となっていた。兵の一人がスコープで、照らした方角に人影を感じ、声をかけた。
すると、顔をライトで照らされたフロンティアが槍に魔力を込めて、ひと息に薙ぎ払った。銃弾は強風でその場に止まり、吹き抜けた風が動力室のメーターを破壊し引火。瞬く間に、廃墟は全焼し派遣部隊は壊滅した。炎燃え上がる火の海から、フロンティアだけが姿を現した。
「ミッション、スタート……」
燃え盛り、見える空ですら深紅に染める爆炎の中で、上空を見上げて戦の狼煙をあげた。影を落とすように、その場から消え失せたフロンティア。政府が派遣した部隊との連絡が取れなくなり、噂観測課だけが頼みの綱となってしまった瞬間でもあった。
□■□■□■□■□
ボニーは、検問エリアの制圧を完了した。レッドヒールとともに、奇襲をかけたが、相手が唯の人間であれば、相手にならない。制圧の間も、ボーッとしていたことをレッドヒールに突っ込まれた。
「ボク、ママとパパの子じゃないのかな?」
「ヒール達はみ~んな、ママの子だよ♪あっ、それともぉルーティンが言っていたヤツが来ちゃったのかな?」
「ん?何────っ……」
顔を向けてきたボニーに対して、額に人差し指を当てたレッドヒール。そのまま、ボニーの耳元に口を近づけて囁いた。
再起動────。
動きが止まった。目も琥珀色が抜けて、暗くなった。同時に額にパーセンテージが表示され、記憶の初期化がポップアップされる。レッドヒールはそれを、キャンセルし、《不都合な疑念を消去》を選択して再起動を待った。
「ヒール達は、生きていちゃいけないの。だから、思い出しちゃいけないことがあるの。ボニー、アナタに対するお母様の贔屓には、こういった危険性が付き物ね。ヒールも、踊り仲間が減っちゃうのは嫌だよ♪だからお願い。支障が出そうなことは、忘れちゃおっか?」
再起動が完了する直前のボニーに向かって、聞こえるはずもない言葉をかけるレッドヒール。すると、目に光が戻ったボニーはレッドヒールの方を見た。作戦中に再起動がかかったことで、迷惑をかけていないか尋ねる。
そんな真面目なボニーを見て、クスクスと笑い攫った人間達を収容したトラックが、船に格納されるのを見届けた。ここからは、レッドヒールとは別行動となることを確認し、ボニーは検問エリアの監視塔に残った。
やがて、警報が鳴り、侵入者を感知する司令塔。程なくして、侵入者がサタナキアであることが判明するが、ボニーは隠密行動で潜入していた燈火と夏蝶火のもとへと向かい、戦闘を始めるのであった。
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