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メインストーリーな話
決戦前、アンリード攻略最強チーム結成!?
しおりを挟むラボに到着し、作戦会議を始めた燈火達。
そこで燈火は人質が監禁されている映像を観て、急に立ち上がり映像に顔を寄せた。そこに映っていた、周りのみんなは目隠しをされて後ろで手を拘束されたことで抵抗しないなか、これでもかと暴れ回っている男性が居た。
「家小路さんまで捕まっちゃってたんですか……はい」
「おい。てめぇんとこの旦那の隣にいるの、寄凪じゃねぇか!?音入ってなくても分かるけど、てめぇの旦那が騒いでいるせいで、絶てぇにみんな恐さ倍増だろうが!!」
「はぁ?そんなこと私に言われたって、どうしようもねぇですよ!!はいっ!!」
「やんのか、てめぇ!!」
一触即発。煙を巻き上げて、取っ組み合いの喧嘩になる二人。誰も仲裁することなく、渡された人質の映像を片付け最終的な人選紹介に移った。しかも、その発表者は暁咲だった。
傷は憐都のオペにより、完治することが出来た。加えて、二度のアンリードとの戦闘で得たデータをもとに、アーマーの改良に成功したと言って、最終メンバーの一人に加わったのだ。
「まず、島に上陸するまでに戦闘が予想されるッス。これの対処に夏蝶火さん、それからディフィートさんを当てまぁ~~す。イへへへ……、そんでもってそこの陽キャイチャイチャコンビ!!残念ながら、上陸後は別行動でオナシャ~~ス♪」
辰上と麗由が別行動ということだけ、やけに力の入った言い方をしてクルクルと椅子を回転させる暁咲。一回転の間にタブレットお菓子を宙に投げ、口でキャッチする。そして、雑に書いた地図にポインターを当てて説明を続けた。
久遠達アンリードが拠点とした、核融合炉へは西門と東門からの進入でしか、起動ルームまでは辿り着けない構造になっている。まず、西門を攻めるのは、ラット、虎狼、茅野の三人。対決はルーティンを想定している人選だ。
ルーティンのベースとなった人間は、ゲームにまつわる記憶に弱点があるが、ゲームに持ち込んで戦闘になるとしたら、数は多くいないといけない。そこで、今回の作戦を裏で色々探ってくれた虎狼とその息子であるラットに戦闘を任せ、ハッキング等の対処に茅野という三段構えでこちらは打って出ることにしたのだ。
次は東門。
東門はプロメテウスの配置した人形兵が、かなり多く突破事態が困難としている。そこで、プロメテウスが控えていることを踏まえて、辰上と水砂刻でこれに対処する。その間に、燈火とトレードと暁咲の三人で内部に進入する。
内部には、少なくともフロンティアとボニーが控えていることは確定しているため、フロンティアへ二人。ボニーに一人で一気に突破し、最深部へと到達を目指す。
「レッドヒールはこれまでの立ち回り上、何処にでも配置されていておかしくない、か……」
「まぁ、まず港に乗り出されて困るはずなんで、下手すればそこにフロンティアが配置されている可能性もあるッスね。わっちは、そこにレッドヒールを置いていると思うんですけど……エヘヘヘ……」
「なるほど。それでわたくしが人質を助け出す役割なのですね。承知いたしました」
「────。」
(別にそうじゃねぇ~よだ!どこまで脳天気なメイドなんスかね、コイツ。ああ、寒気してきた……)
水砂刻の前で目立ってほしくない。ましてや、怪異を宿さない辰上の恋人である麗由だからこそ。地味役を与えたつもりであったが、本人にとってもこの場に居る暁咲以外にとっては、一番重要な役割をしていたのであった。
背もたれに寄りかかった、これまた会議を真面目に受ける気なしのディフィートがダルそうに手を挙げて発言した。船の防衛は、おそらくプロメテウスが撃破されるまでの耐久戦になる。となれば、いくらディフィートでも守り切れそうにないと、最強の怪異使いらしくない正直な返答をした。
「なら、俺が居ればいいか?」
「へ?総司きゅん!?」
「おぉ、頼んでおいた助っ人来たぁ~~♪キシシシシ……♪」
「────勝ったわ……」
ディフィートは静かに椅子を立ち、神木原 麗由の兄である神木原 総司の隣で腕組みして、仁王立ちを始めた。胸をこれでもかとはる様は、まるで虎の威を借る狐である。舎弟感丸出しのディフィートにツッコミを入れ、総司も船の防衛に加わることになった。
しかし、総司はこの場所と事情の説明メッセージを送ってきた、《あなたの恋の味方》とは誰なのか気になっていた。ディフィートは字面を見ただけで、差出人が暁咲であると直感して目を向けた。そして、険しい表情を浮かべたまま暁咲にだけ分かるように、サムズアップをした。
ここからは出たとこ勝負になるとはいえ、概ねの作戦はこれにて伝え終わり、それぞれ決行日に向けて最終調整に入った。
「あ、待つですよトレード」
「あん?んだよ?てめぇと話すことなんかねぇっての」
「こっちはあるですよ。実はですね────はい」
いつもなら、おふざけやイタズラを仕掛けるために、下手な芝居を打ったりする燈火とは思えないほど、しんみりした表情で下を向いて話す様子から、特別な事情ありと見て周りに人が居ない場所へ移動した。
武器庫へと来たトレードと燈火。ここなら、そもそも武装した兵がいる訳でもないから、誰も来ない。念のため周囲を確認してから、燈火に質問した。返ってきた言葉にも驚いたが、トレードに対して頭を下げている燈火に驚愕する。
「お願いがあります。私の【夢の提供者】をチューンナップして欲しいです……はい。も、もちろん……代償はこれまで以上になることは覚悟してます」
「────。そうか……。まぁ、お前の旦那があんな感じなのもソイツを出力出来るようにしたからだしな……」
燈火の怪異【夢の提供者】は、キャリーケースから粘土細工で作ったものを実体化させるもの。その力は、ラットの怪異に近いものであるが、出処が異なっていた。
ラットの怪異の力が想像力の錯視であるのに対して、燈火の力は怪異の名にもあるように《夢》が起源である。燈火は、人々の夢と旦那である家小路の夢を守るために、自分の夢とそれに関わる周囲の記憶を代償として失っていた。
その影響は慶長に出ていて、家小路は燈火との馴れ初めやプロポーズ。果ては記念日も誕生日も覚えていない。ともに生活していて、毎日を幸せそうに生きているように見えていたが、実際は仮面夫婦に近い暮らしをしていた。それを燈火は自分の胸の中にしまい続けていた。
「言っておくが、次はおめぇのことも完全に忘れちまうぜ?これまでの思い出は、苦しかったことも楽しかったことも全部だ」
「それでも、あんなヤツらを────。アンリードを野放しした世界に家小路さんはいて欲しくないです。いいんですよ、世界を救って想い人から忘れられようとも────」
この世界を終わりになんてさせない。
燈火の決意は、今そこにしかない。大切な人達を守れる力が手に入る余地が、まだ自分に残されているのなら、今がその時なのだと。燈火は顔を上げて、トレードの顔を見上げる。
覚悟が本物であることを確認したトレードは、燈火からキャリーケースを預かる。作戦開始までには、チューンナップを済ませておくと言って、燈火の頭に触れる。燈火とキャリーケースのシンクロ率を高めるために、霊魂を引き抜きトレードの持つロッドの中に滞留させた。
□■□■□■□■□
その日の夜。
暁咲の部屋は、ブルーライトとブラックライトが止まない一室と化していた。テーブルに置かれた開発キットの数々。電線も散りばめられて、すっかり研究部屋に様変わりしたところに水砂刻がノックして入った。
「間に合いそうか?それ」
「あ、水砂刻クン。ええ、まぁなんとか。それにしても、あの憐都って人すごいッスね~~♪わっちの体の再生力を損なわずに、傷の手当てをしちゃうんだから。おかげで、今は元気取り戻したどころか有り余り過ぎて、研究魂に火がつきっぱなしッスからね?ギャハハハハ♪」
「そうか、なら良かったよ。俺、龍ちゃんのところに行ってくるから、お前も程々にして眠りにはついておけよ?」
いつもの調子を取り戻した暁咲を見て、安心した水砂刻は立ち上がり部屋を出ていこうとした。一時はどうなるかと思われた、暁咲の容態はすぐに回復することが出来た。上級怪異である彼女の持つ、治癒能力は凄まじいものであった。アンリードは、そんな怪異の再生力すらも凌駕している。
だからこそ、次の戦いはこれまで以上に本気で挑まなければならない。そのための強化アイテムを作成している邪魔をしないように、水砂刻なりの気遣いのつもりだった。
しかし、立ち去ろうとする水砂刻は肩を掴まれた。振り返ろうとする前に、体を引き寄せられて自由を取られた。途端にベッドに叩きつけられる水砂刻。どこも強打はしていないが、一瞬のことで頭を振って状況を確認しようとする水砂刻に、暁咲は飛びつく形で抱きついた。
「お願い……、今日は…………このままで…………」
「は、はぁ?」
「わっち──、…………いから……」
服の布同士が起こす摩擦に負ける音量で、水砂刻に囁く暁咲。
その肌の色を変えて、悪魔形態のサタナキアへと変身する。そして、もう一回水砂刻に自分の弱い部分を見せる言葉を囁きかける。
「本当は……恐いんスよ……わっち。アンリードが────、手も足も出なかったわっち自身が────」
「…………お前」
それ以上は問いかけない水砂刻。
震えている。怪異の姿になったことで誤魔化しているが、おそらく体温も低い。そう思った水砂刻は、そっとサタナキアの背中に手を回した。
そして、かつてサタナキアを恨み。復讐心に取り憑かれていた自分を思い出していた。それが水砂刻の一族が、怪異を引き継いで生きていることを知って、守るための行動であったこと。旧友であった辰上が、必死に呼びかけてくれたことで踏み止まることが出来た。
今のサタナキアからは、その時水砂刻が感じていた恐怖心に近いものを見た。だから、出来ることは辰上や姉にしてもらったことと同じ。大人しく、傍にいてあげるだけだ。
「────ありがとう」
「お前が喋るのかよ。いいから、落ち着いて寝れるまで俺の心臓の鼓動で良ければ、聴いていいぞ……」
「うん……♪」
(水砂刻クン♡わっち、幸せ……ッス♡)
そのまま二人、ベッドに横になる。水砂刻の胸に顔を埋めて、心臓の音を耳を当てて聴く。気が付く間もなく、意識が落ちて柔らかい表情で眠りにつくサタナキア。
その様子を見ていた水砂刻も、辰上のところへ行くのは明日でも大丈夫と思って、一緒に眠りについてのであった。
翌日。
「ん?なんだよこれ?」
「御守りッスね。ああ、戦闘時には絶対肌身離さず身に着けておくこと!!そうじゃないと、効果無いんでぇ?二ヒヒヒ……♪」
アンリードとの決戦に対する覚悟。そのエネルギーを分けてもらった暁咲は、いつも通りの不快で陰湿な笑みを浮かべて、水砂刻に御守りと題したカプセルのようなものを渡した。
そして、水砂刻が部屋を出た後、開発キットから煙を巻き上げて誕生したナキアーマーの強化アイテム。その最終調整のために、シュミュレーションルームへと向かうのであった。
久遠の計画決行まで、───残り3日。
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