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クロスオーバーな話〜意味ない × Beymind篇〜
Beyondなやつらは突然に 〜その3〜
しおりを挟む峠道の人の手が加わっていない森林地帯。そこに突如として出現したワームホール。政府はこれを新たな怪異の可能性を示唆し、噂観測課を派遣する。
偵察班からの報告では、すでにワームホールから何者かがこちらの世界へ踏み入れたとして、調査を開始している状況に発展していた。そこへ駆け付けたのはトレードとディフィート。そう、噂観測課極地第1課のNo.1とNo.2の出向である。
ビニールテントを被せて、外界からは視認出来ない状態となっているワームホールの前に立つ二人。
「どうだ?飛び込んでみる?」
「おいおい、ふざけんなよ。あたいらはあくまでも、この穴から出てきたかもしれないやつを突き返すか、ぶっ倒すかのどっちかだろ」
心底やる気のない二人。
ディフィートは冗談交じりに言った飛び込むことはしないが、ワームホールに近付き穴の底を覗き込んだ。音も聴こえないし、いろいろな色を混ぜ黒ずんだ絵の具が掻き回されたような螺旋を描く、不気味な渦巻きしか見えない。
恐ろしいのは、この穴がこの一箇所だけで確認されているわけではないということ。実はこれで見るのは、三件目だとトレードの方へ首を向け言おうとした瞬間、トレードの顔は緊迫した状態で言葉を鋭く飛ばした。
「ディフィート、後ろッ!!」
「────ッ!?」
全身をトレードの方へ向けかけていた身体を無理矢理捻り、正面へ振り返ると真っ白な鱗を纏った飛竜がその大きな顎を振り回して、ワームホールの中から強引に飛び出してきた。
近くにいた解析班の隊員達が一斉に腰を抜かした。同時にテントを突き破って大空へと飛翔する飛竜の巻き添えにならないよう、トレードが隊員の避難誘導を開始する。
「やろうぉ!!!!」
「おい、ディフィートッ!!」
飛び去る飛竜の背鰭に掴まり、そのまま大空まで飛び立つ存在に連れ去れてしまったディフィート。
しかし、トレードは被害状況の報告と負傷者の回収を優先するため、その場に踏み留まるのであった。
雲の切れ間すら易々と越え、酸素が薄くなりはじめる高度で姿勢制御を安定化させる飛竜。ディフィートは驚かせてくれた礼をしてやらないと気が済まないと、ニヤッと笑いながら指笛を吹いた。
「来い、【最後の審判・真】ッ!!」
下に広がる雲が忽ち雷雲へと変わり、飛竜の飛行を妨げながら雷柱を起こして主であるディフィートを目指す。煌めいた赤紫の閃光を左手でキャッチし、切っ先に灯った雷切をお見舞いする。
未知の飛竜は怪異ではないためか、ディフィートの攻撃をものともしてない様子で飛行を続ける。だが、時差があって急に首を左右に振って暴れだした。思わず背中に剣を突き刺して、振り落とされないように耐えるディフィート。
それでも、暴れる勢いが収まる様子はなくエスカレートしていた。このままでは、市街の方へ出てしまうとスマホの地図アプリを広げて確認する。
「うわぁ~、ドラゴン速っや♪……じゃなくて、こんなデカブツが人前に出ちまったら、隠蔽工作が大変過ぎて残業続きになるぞぉぉ!!!!」
一人ボケツッコミをしているディフィートのもとに、翡翠色の煌めきが一筋。
もう一つの怪異【終焉を刻む指針】だ。ディフィートは迷うことなく、飛竜から剣を引き抜き飛び降りた。そして、ラグナロッカーをブレードモードからフライトモードへ変形。単身で飛行能力を備えた姿へと移行し飛竜を追跡する。
飛竜はまたしても暴れ出し、遂に火球を口から地上に向けて放った。これには堪らず、ディフィートが盾になるべく火球と地上の間に割り込んで防いだ。
数発は空へ向けて放たれたものの、地上を焼き尽くしかねない熱量をドゥームズデイでもって、すべて凌ぎきったディフィート。
一先ず飛竜に落ち着いてもらおうと思っていたが、こうなっては悠長なことも言っていられないと、全力で反撃に出ることを決心してスラスター全開で急接近する。
翡翠、深紫、赤みを帯びた紫の三色連なる雷電が、飛竜を斬り裂いた。流石にディフィートの最大出力で繰り出された剣撃は、飛竜には応えたらしくダメージを受けた様子がある。
それでも、苦し紛れに振り回した尻尾で反撃してくる。天を制するのは、飛竜ではなく自分だと言いたげに巧みに避けもう一撃、すれ違いざまに背翼部に命中させる。
「そんじゃ!怪異ではないらしいが、ここいらで片付けさせてもらう。終わ───ッ、なぁ!?」
振り回していた首を狙うために、回り込んで頭部へたどり着いたディフィート。そして今、愛剣ドゥームズデイを解き放つ時のお決まりのこうしょう口上を言いかけた途中で、目の前の光景に動じてしまった。
油断して手が緩んだところで、ソイツと目が合う。合った気がした。どこか、儚げな雰囲気を漂わせて飛竜の頬にしがみついているソイツは、ディフィートを視認するや中心部にモニターを取り出してディフィートに向ける。
『オ願イシマス。ワタシヲ助ケテ下サイ───。ゴ主人様ノ捜シ物、手ニ入レマシタ───』
「……え?──────、ぬあああ!!??ちょっ!?お前、重っ!!」
ディフィートの返事待たずに、真っ赤なボディを持つタコなのかクモなのか分からない機械が飛び込んで来た。
小型な見た目にそぐわない重さに、ラグナロッカーは重量オーバーを訴え地面に向けて降下を開始する。飛竜と空が段々と小さくなっていくディフィートの視界。
「こ、このミニロボ野郎!!あたしの胸を鷲掴みにするな!!あれ?でも……案外フェザータッチ……?って、そんなこと言ってる場合か!!うわぁぁぁ、潰れちまう~~~っっ!!??」
重力に引かれる速度が上昇する。
飛竜を逃すだけでなく、こんな突如飛びついてきたロボットと心中するなんて。ディフィートには考えつかない。それでも、流石の最強と名高い怪異使いも万事休すと思い、目を固く閉ざした。
半分意識を捨てかけたその時、空に向かって引っ張られる感覚がディフィートを襲う。ふわふわとした気持ちに支配され、風に揺れるハンモックのようにヒラヒラと地上に落下していく。
落ちた先には、ディフィートのバイクが独りでに先回りして待機していた。ディフィートの背中が座席にのしかかり、ロボットはディフィートの胸にしがみついたまま二人(?)をパラシュートが包んだ。
ロボットの名前はヴァロルタ。ヴァリスロックと呼ばれる、ダイヤモンドはもちろんのこと、オリハルコンという幻の金属よりも硬い分類の鉱石。それを加工して創られたコンパクトアシスタントメカなのである。
「いやぁ~、助かったぜヴァロルタ!!んで?お前はそのご主人様のために、あんなでっけぇドラゴンから皮膚サンプルと牙サンプルをそのちっこい体の中に敷き詰めていたから、重たくなっていたのか……」
『ゴ理解、感謝致シマス───。ソシテ、オ胸ニ張リツイテシマイ申シ訳御座イマセンデシタ』
「いいよいいよ!それよりさ、ロボット的にもどう?弾力あった?もっちりしてたかな?最近忙しくて、マッサージに行けてなかったんだけど……?」
ヴァロルタは困った様子もなく、モニターに感想を文字起こしして見せた。そこには、ディフィートに対する評価の下に小さな文字で《ご主人様には内緒》と記載されていた。
つまりは、そういうことである。勝負に勝った気がしたディフィートは上機嫌になり、最早飛竜のことなど忘れてしまっていた。その後も、ヴァロルタのことをもっと知りたいと小さな機械を相手に数時間もの間、バイクで過ごすディフィートなのであった。
やがて、市街地上空に白い巨竜を確認したと偵察班の通信が入ってきたことで、本来の目的を思い出したディフィートはバイクのエンジンをかけて現場へと急行する。
ヴァロルタは、そこにご主人様がいるかもしれないとディフィートに着いていくのであった。
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