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クロスオーバーな話〜意味ない × Beymind篇〜
Beyondなやつらは突然に 〜その2〜
しおりを挟む「頼むで!はぐれてもうた友達、探してくれ!」
「いいですよ……はい。てか、ラットですよね?……はい?」
昨日の淫魔怪異が討伐された、事後処理の報告を受けて別働隊として動いていた燈火。
その目の前には、噂観測課極地第1課のラットの声をした鼠が居た。鼠は酷く怯えたように、燈火の身体に飛びつき妙な名前を口にしていた。
「本当にラットさんじゃないんですか?」
「せやせや。ワシは咎鼠や。狂気のマッドサイエンティストならぬ、マッドケミストリーな友達の実験に巻き込まれてなぁ……。そういうあんさんこそ、『着火材』はんやないんか?」
「違うですね……はい。火薬庫に火をつけて駐屯地を全焼させた、カヤ子ちゃんってあだ名ならありますけど……はい」
なんとも異様な会話。
そんな会話が、人が行き交う街路で行なわれていた。燈火はいつもの潜入調査の顔、ホームレス格好で鼠と話している。これでは、ドブネズミと心を通わせている痛いホームレスである。
そうこうしていると、お腹が空いてきた燈火と咎鼠のお腹が鳴り出した。とりあえず、腹拵えをしようと提案した燈火は立ち上がり街路から離れるのであった。
「ほいで?あんさんはなにやっとるんや?」
「見てわかんねぇですか?カエル取ってるんですよ。────、はいッ!!」
高架下の河辺で、茂みを睨み付けている燈火。
一方の咎鼠は、燈火に頼まれて上流の水を濾過キットの中に溜めて、浄水されたものを鍋とペットボトルへ入れていった。
パシャンッ、パシャンッ───。燈火のサバイバル術は、伊達ではなかった。カエルを目下の標的にはしつつも、魚を掴み取りで生簀の中へ投げ入れた。そして、遂にカエルを捕まえた燈火は大喜びで籠の中に入れて河を出る。
「いや~冷てぇですね~、この時期の水は……はい。おっ?トカゲさん♪」
陸地に上がり、目に止まったトカゲも捕まえる。ビショ濡れのまま、調理を始める燈火。
火起こしもしなくてはならないと、薪変わりになる木を適当に見繕うため見渡す。すると、煙が近くで立っていた。見ると咎鼠が鼠ではなく、人間の姿に変わって火起こしを完了していた。
「あれ、やっぱりラットさんにそっくりですね……はい」
「あん?そうなんか?ワシも手伝わんと、飯作れんやろ?」
咎鼠の言うことも一理ある。
そして、燈火と咎鼠はともに食事の用意を済ませた時には、すでに夕陽も沈んでいた。
カエルの丸焼き、トカゲの串焼き、魚の塩焼き、適当に集めた山菜のお吸い物。どれも、自然界に生きる料理といったゲテモノ感のあるものばかり。食べなれている燈火はもちろん、咎鼠も躊躇なくトカゲの串焼きを手に取って食べる。
「ヤマイモリの唐揚げを思い出すなぁ。肉質がちと、リザードランベルに似てるのぉ」
「何ですかそれ?ゲームの世界にいそうな生き物の名前ですね……はい」
「ん?この世界にはおらんのかいな?空飛ぶ竜とか、地中を徘徊するランドワームとか」
「居たら、こんな街が発展出来ない気がするんですけど……はい」
にわかには信じがたいが、燈火は異世界人と会話をしている気分になっていた。同時に、頭に過ぎったのはこれは新種の怪異である可能性が生まれたということ。
実在している人間の格好した【ドッペルゲンガー】とは違い、獣に変身する能力も兼ね備えた怪異なのではないかと、眉をひそめながら食事を続ける。
カエルの肉に齧り付くや、目を光らせてその味に感動する咎鼠。なんでも、咎鼠のいる世界ではカエルは食用には向かないらしく、極限状態でもならない限りは食べることはないらしい。それは、こちらでも似てようなものであると燈火は内心思いつつも、食べなれた味に頷きながらカエル肉を食した。
「ふぅ~。燈火はんは、料理が上手いんやね」
「え?まぁ、旦那と最近は子どもも居ますからね……はい」
引っかかる言い方に咎鼠が質問しようとしたその時、燈火のボロボロのポーチから着信音が鳴り出した。
相手を見るや、応答を押してスピーカーを離した状態で話を聞いていた。音量を聴こえる最低音量にしていても、はっきりと聞こえてくる怒鳴り声。その声の主は旦那の家小路である。
なんでも、粉ミルクを与え終えゲップまで出したにも関わらず、突然泣き出してしまったのだ。トイレでもなく、おもちゃ遊びをしても泣き止まず困っていると連絡してきたのだ。
「いいですか家小路さん?もうこんな時間なんですよ。綻火ちゃんは、おねむなんです……はい。なので、車に乗せてちょっとドライブに連れて行ってやってください」
寝着くことができないと、泣き始めたことをスピーカー越しに聴こえる綻火の泣き声で察した燈火。それを伝え聴いた途端に、爆音で感謝の言葉を告げて切話される。
ひと息ついて振り返ると、皿に乗せておいたものを覗いて咎鼠が完食してしまっていた。一口も食べずにいた、山菜のお吸い物が入っていた鍋が空っぽになっていた。薄味にして水分補給をメインに考えていたことが、不幸を招いてしまった。
涙目になりながら、鍋底に残っていた汁だけを啜りあと片付けをする燈火であった。
片付けを終え、眠りにつくべくダンボールを敷いた布団に横になる。咎鼠は鼠の姿へ再び変身して、燈火の首元で暖を取りながら就寝するのであった。
その翌朝。橋の方でなにやら、男女が揉めている声で目を覚ます燈火。寝惚けていて、状況がよく分かっていないが咎鼠の声とプライドの高そうな女の声が揉めているようだ。
「せやから、ワシはその何とかっちゅう奴やない!ラットって言うんやい!!」
「あぁもう埒明かないッ!!ちょっと、こっち来なさいッ!!」
「あいでででッ!?ちょっ……耳、引っ張んなぁ~~ッ!!」
どうやら、探していた友達と再会出来たのだろうと思い二度寝する燈火。
数時間後。頬を叩かれて目を覚ます。
そこには、人の姿があった。そして、燈火の名前を呼んでいるその声の主に向かって、起き抜けの会話をする。
「おはようございます、ラットさん……。いやぁね、もう少し早く来てたら、ラットさんのそっくりさんに会えたんですよ?」
「何寝ぼけとんねん。はよ、ワシの友達探しに行くで?」
寝惚け眼を擦って顔を見る。それは、ラットではなく人間の姿をした咎鼠であることを確認し、飛び起きる燈火。急いで、急斜面を掛け上げり橋の上を見る。
当然、話し声がしていた男女の姿はない。燈火は二度寝する前に聞こえていた声の正体は、恐らくラットともう一人。咎鼠が探している友達であると推理した。二人はそのまま、どこかへ向かったところで眠りに落ちてしまったことを咎鼠に伝える。
すると、咎鼠は本当に自分とそっくりな奴がいるのだとしたら、今頃勘違いを起こした友達に連れていかれてしまうかもしれないと、焦り出して端末を取り出した。
何もない空間から飛び出した端末を操作して、大きな籠を呼び出す。燈火が唖然としている隣で、籠の中をガサゴソと漁る咎鼠。
「あった。これやで……頼む────、おっ!?」
咎鼠が祈りながら取り出したのは、黒いキューブのようなものであった。
オレンジ色の線が電波のように走り出し、起動したそれを水晶のように覗き込む。それは、友達の居場所を割り出してマップ化してくれた。
最初からあるのなら、使えばよかったのではと燈火が疑問を投げながら目的地へ向かうべく、移動車の場所へ向かい運転を開始する。
しかし、これは起動するかどうか分からなかったこと。それに加えて、自分達を認識している存在が対象としている世界にいることが前提条件であった。
つまり、世界に認知されていないものを探すことは出来ないのだ。咎鼠は燈火と出会う前に一度試してはみたが、お互いにこの世界の誰にも認知されていないことが原因で、起動すらしなかったのだ。
「声だけでも聞いてくれはったってことは認知されたっちゅうこと。ほな、詳しい説明はあとやあと!急いで向かってくれ」
「任せろです、はいっ!!」
アクセル全開で、キューブが反応を示している場所へ急ぐ燈火。
やがて、目的の場所へ到着した燈火達。しかし、急ぐ咎鼠に待ったをかけて燈火はトランクからキャリーケースを取り出して、車に隠れて着替え始めた。
戦闘もすることも想定して、いつもの格好へと着替えた燈火は咎鼠の案内で彼の友達、フィオ・レム・ハーレとラットが居る場所へと向かうのであった。
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