意味のないスピンオフな話

韋虹姫 響華

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クロスオーバーな話〜意味ない × Beymind篇〜

Beyondなやつらは突然に 〜その4〜

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 暁咲あきさの進入に驚きつつも、朝を迎えたフィオとイーファ。

「んで、これをこうして……っと」
「わっはぁ~~っ♪すっげー!……ふぅ~、ジュルル……ッ!!あっ……ヨダレ出た♪」

 フィオの錬金術を超えた魔導錬金を目の当たりにして、興奮のあまり開いた口が塞がらない暁咲。
 こんな程度で目をキラキラさせて喜べるなんてと、冷ややかな目を向けるフィオ。その隣でにっこり笑顔のイーファが、淡々と小さな拍手を続けている。人差しで空をなぞると、全身が光りだして着替えを終えるフィオ。
 何を隠そう、今の今まで裸で暁咲に錬金術をお披露目していたのだ。この場にいるのは、イーファも含め女性しかいないからと言い訳になっていない言葉をイーファに告げ、結界術を解除するフィオ。

「さてと、アタシ人を探してる最中なのよね。今度時間があったら、ゆっくり発明と研究について語り明かしましょう。イーファ」
「合点テン♪」
「うわあああ♪バ、バイクに変形したぁ!?超ぉぉぉぉ、カッコいいッス……♪」

 SF映画みたいな超変形を生で見た暁咲の中に眠るヒーローオタクが、全開に言葉に滲み出る。ヘルメットを装着して、颯爽とバイクを走らせてその場から消えるフィオ。
 あまりの興奮に、悪魔態【恋路に潜む魔窟サタナキア】の姿になってシッポをフリフリしていた暁咲をミラー越しに確認する。だが、フィオにとって魔族なんてその辺に歩いていても何ら不思議もないため、驚く素振りもなくアクセル全開で駆け抜けていくのであった。

 それなりに栄えている街に着き、イーファのビークルモードでモニターを表示させる。
 そこには、昨日のうちに大量に生成して飛ばしておいたセンサー付きのドローンが、収めた映像とフィオが探している人物と輪郭と声質が一致しているものを映していた。

「早速見つけたわ!行くわよイーファ」
「あのですね、主?前にも1回ありましたけど、異世界に来てしまっている以上は声質が一致してしまうパターンもありますよ?」
「あん時は顔が似てなかったじゃない。どうせ、今回も違うならそのパターンでしょ」

 慢心しきった表情で反応のあった場所へ到着するフィオ。

 イーファをアシストモードに戻し、腕に着けているブレスレットを眺め出した。壊れている画面を見つめて、哀愁漂う雰囲気を出すフィオの口から吐露する。

「ヴァロルタちゃん……」
「え?あいや、恐らくあの子は目標に立ち向かっていくところは見ましたので、無事なはずですよ!…………たぶん」
「ほんっと、使えないAIよね?アンタって……」

 眉を歪ませたまま辛辣な一言を返すと、イーファの手から端末を奪い取る。そして、反応の強い場所へ向かいついに見つける。怒りをカンカンに顕しながら、そこに居た男の胸ぐらを掴んだ。

「このバカ鼠ッ!!探したわよ!さぁ、とっととヴァロルタちゃん見つけて帰るわよ!」
「あいてててて……!ちょ、何すんねん!!あん?お前さんは……」
「主?どうやら───」

 キョトンとした顔をしている男。彼は、怪異についての噂が世間に広まっていないかの調査で、いつも立ち寄っているマーケットに来ていた噂観測課のラットである。
 だが、その態度は今のフィオにはマズかった。惚けている話し方、目を開いているのか分からないくらいの細目、それに加えて人の神経を逆撫でして来るエセ関西弁。どれもフィオが探している人物そのものであった故、イーファの言いかけていたことも聞かずウェポンモードへ強制変形させる。
 カチリッと安全装置が外れた音を立てて、ラットの脳天に当てられる銃口。相手のリアクションも待たずに発砲するフィオ。


パァーンッ...ポッポー♪ポッポー♪ポッポー♪


「…………ぷふっ♪く、ふふふふ……♪どうしたの?鳩が豆鉄砲くらったみたいな顔して♪まさかこんな人前で、アタシがマジで発砲するとでも思った?」
「あ、あのやねぇ……?ワシ、あんさんのこと知らんねんけど?一瞬、や思ったやけど……日本ここへ来れる筈もないしな……って」
「────ッ!?」

 目を細めて睨みつけるフィオ。明らかに女が不機嫌の時に見せる表情であると、初対面と分かったラットでも察しがつくほど露骨だ。
 とてつもなく、わがままで傲慢な女であることには間違いないと後退るラット。それを逃げたと捉え、大声を上げて走り出すフィオ。こうして、追いかけっこが始まる。

 そして、現在。
 逃げるラットの耳を摘み上げて、港の貨物置き場に連れ出したフィオ。潮風を連れて波の音が聞こえる静寂を自ら断ち切り再び銃口を向ける。

『あの……主……?』
「うっさわね!アンタは黙ってなさいッ!!いいこと、咎鼠きゅうそ?このフィオ様に逆らうのは勝手よ。でもね───、忘れたなんてことだけは死んでも許さいなわよッ!!」
「ぬわッ!?危ないでぇ!?アホォ、殺す気かいな?」

 その問いにはイエス。数発、二丁のメーザーピストルを発射して近づく。その際、左手の銃を逆手に持ちトンファー形状のダガーとしてラットに刺し向ける。
 これには、ラットも相手が怪異か怪異使いであるのか。調べる余裕はないと、怪異を展開してサイコロを投げ付ける。

「くっ!?サイコロだなんて小洒落たもん、投げてくるんじゃないわよ!!」
「ぬぉ……っ!?ワシ、あんまレディを殴る趣味はないんやけどね!!」

 フィオの左肘を押さえ、懐に潜り込んでみぞおちを突く。しかし、それを膝で防ぐフィオ。サポーターを着けている膝にラットの素手が当たる。痛めている間に、防いだ脚で胸と顔を蹴りつける。
 間髪入れずに、飛び込んでダガーを突き刺す。ラットはフィオが並の怪異はおろか、インフェクターとも違う強さを持っていることを思い知る。刃先を退け、手の甲にメンコを叩きつけるラット。

「手が消し飛んでも恨むなよ?爆打ッ!!」
「はんっ、そんな子ども騙し。アタシに通じるわけないでしょ!」

 確かにラットの怪異によって、フィオの手に付けられたメンコは爆発し、付着先であるフィオの全身も連鎖爆発を起こした。
 しかし、その時崩れ去るフィオは既に空蝉。即座に脱皮した昆虫のように、その背面から飛び出してきたフィオに足を取られる。追撃を避けるためにブレイクダンスで、フィオの銃を蹴り飛ばしながら起き上がる。

「ッ!?い、いつの間にそんな芸当を覚えたわけ?てか、アンタ戦闘はからっきしダメだったわよね?」
「あんな?誰と人違い起こしとるかは知らんが、男やってな女にカッコつけたくて隠し持っとるもん……あったりもするでっ!!」

 叩き落された銃が手元にない。その隙を目掛けてラットは蛇縫いに走って接近する。すると、フィオは不敵に口角を歪ませながらイーファのアシストを解除した。そして、両手を頭より上に上げた。
 それは降参の合図ではない。咄嗟の動作にフィオの胸を揺れ、若干見え隠れをしていた谷間から試験管が飛び出す。本来は詠唱はいらないが、敢えてフィオは分かりやすく口に出してその試験管を破壊する。

「身体強化……《躍動》ッ!!」

 心臓の鼓動を全身に感じたような振動が、フィオの全身に駆け巡る。そして、向かってくるラットの顎にブーツのつま先部分が突き刺さる。コンマの間に宙を舞うラット。その綺麗なアーチを描き天に向かう腹部に回り込み、これでもかというほどに空中で全身に回転をかけたオーバーヘッドキックを叩きつける。
 叩きつけられたアスファルトがめり込み、弾んだラットが錐揉み回転を起こしている。それを頭の位置を見切り、掴み持ち上げるフィオ。背の差もあって、足先が地面にだらんとしているラットに向かって、実験動物を相手に見せつけるマッドな表情を覗かせる。

「どう?これで少しは懲りた?」
「────。」
「あの……、主?その方なのですが……」
「何ッ!?────ひゃっ!!??」

 イーファの横槍を睨みつけるフィオから、乙女な声がうわずって発せられる。

 完全な不可抗力ではあるものの、ラットが頭を掴む手に向けて延ばした手がフィオの豊満なバストに触れてしまったのだ。しかし、龍の逆鱗に触れるとはまさにこのこと。
 両胸を抱えるように押さえながら、力任せにラットを蹴り飛ばすフィオ。部屋の中で見つけた野良鼠を蹴散らす如く、ラットは近くのタンカーにめり込むほど吹き飛ばされるのであった。
 普段は裸で寝ることが日課のフィオでも、異性に身体を触れられることに対しては免疫がなかったことが災難であったと、イーファはラットのお悔やみ申し上げるように合掌する。そして、フィオに向けて伝えるべきことを告げる。

「はぁぁぁぁ!!??あの人、バカ鼠じゃないの?」
「はぃ~。お名前は確かに、ラット様と鼠から取られたコードネームをお使いになられている様子ですが……」
「いっけない!早く治療よ治療ッ!!」

 不慮の事故とはいえ、半殺ししてしまったラットへ駆け寄り手頃な対価を探すフィオ。単なる外傷治癒なら、代償なしの錬金でも可能ではある。しかし、相手は探していた咎鼠ではなく、この世界にいたそっくりさんってだけの人間。死に直結している症状が出ている恐れがある。
 ようやく、手頃な対価となるものを見つける。フィオはそれを軽く投げ、掌に戻ってきた頃には薬液に変わっていた。まずはそれを全身にふりかけ、次いで空から降ってきた注射を打つ。その二つは外傷治療に過ぎない。
 イーファにラットを運ばせる。どうせなら纏めて対処すると言って、ラットを叩き付けて作ったアスファルトのクレーターの中心に置かせる。目を閉じ、自身の髪の毛を一本抜き指に絡ませて無詠唱で魔導錬金を行使する。
 指に巻き付けた髪の毛が砂鉄のようサラサラと何かに導かれるように、宙へ飛び去ったと同時に巻き戻しが起きた。アスファルトが砕かれる前に戻り、ラットの内傷を完全に治癒していき意識を取り戻した。

 起き上がったラットに歩み寄り、頭を下げるイーファ。やったのは主であるフィオだというのに律儀な挨拶するなか、フィオはまるで自分は全く悪くないと言いたげに腕を組んでそっぽを向いていた。
 するとそこへ、燈火がやって来た。

「あ~、待つですよ~~お二人さん!?ここに、ここに居ますよ~~!お友達の咎鼠さんがぁぁぁぁ!!!!」
「燈火はん……来るの遅いで……」

 両膝に手を置いて、ぜぇぜぇと息切れする燈火。その肩には、小さな鼠が乗っている。鼠は顎が外れたのかといわんばかりの顔で、ラットを見つめて硬直していた。
 そして、人間態の姿へ変わったことでラットも同じく驚愕する。そこには、自分お瓜二つのが居たのだから。向かい合って、お互いに頬を摘みこれが現実であることを確認する。

「ホンマにラットワシにそっくりや!」
咎鼠ワシも驚いたで?もしかしたら、生き別れた双子の弟かもしれへんな♪」
「きっとそうに違いないでぇ♪」
((なに、この会話…………))

 手を取り合って、双子のような見た目をしたラットと咎鼠がぐるぐるとその場で回っていた。その隣で据わった目で見つめる燈火とフィオ。紙吹雪を撒き散らして、その場を盛り上げるイーファ。
 カオスな空気感が流れ始めたところで、燈火は咎鼠から聞かされた内容をフィオに質問した。すると、フィオも咎鼠と同じ反応を見せた。どうも、その『着火材』という者に似ているらしいが、皆目見当もつかないと流して質問の答えを求めた。

「ええ、そうよ。アタシとコイツは、ライトレンド・ワイバーンを探していたの。その子の牙と鱗のサンプルが欲しくてね……」
「主。咎鼠様はですよ。勿論、このイーファも反対いたしました♪」
「それでも強行しちゃったんですか……はい?」

 傲慢の塊であるマッドサイエンティストに呆れた顔を向ける燈火。どこか他人事のように思えないと、脳内に姉である夏蝶火ほたるびを思い浮かべて嫌そうな顔をする。

 目的にしていたライトレンド・ワイバーンは、次元の狭間も行き来する生態をもっている。そのため、探し出すためにフィオは時空を一時的に繋ぐ大掛かりな魔導錬金を行なった。それが悲劇のはじまりだった───。
 術式は成功したかに見えた。しかし、突如器にしていたポータルがオーバーラップして、複数の次元の裂け目を作り出してしまい多くの世界を繋ぎ合わせてしまったのだ。
 本来であれば、失敗した術式の止血対応が先であった。だがフィオの目の前に───。フィオはライトレンド・ワイバーンのサンプル採取を優先して、不安定な時空の中へ咎鼠、イーファ、ヴァロルタとともに飛び込んだのであった。

「うわぁ~~、首根っこ掴まれてましたよ……咎鼠さん……はい」
「うっ、うっさいわね!アイツ、いっつもアタシのところに取り立てに来るからよ!」
ラットワシやなくて、咎鼠そっちな」
「って!?いつの間に服取り替えてんのよ!」

 イーファと咎鼠との合流を果たせたフィオ。しかし、まだはぐれてしまったヴァロルタの行方が分からない以上は帰れない。
 そもそも、ライトレンド・ワイバーンがこの世界に来てしまっていたら、話を聞く限りでは一般の人達に見られては大変なことになる。そうフィオが考えを過ぎらせている時、遠くから聞き馴染みのない遠吠えが聞こえてくる。

 港に向かって飛翔する飛竜。そう、ライトレンド・ワイバーンはすぐそこまで迫って来ていたのである。

「ヤベェですよ、ラットさん!!」
「あの距離やと、もう一般の目にも触れとるな……。しかも、海上での戦闘なんて時間がかかり過ぎるで」
「それはつまり、パパッと片がつけば問題ないとちゃうんか?」

 困り果てる噂観測課の会話に割って入る咎鼠。
 その近くで、イーファにフライトアシストモードへ変形させ装着しているフィオの姿があった。元を正せば自分の好奇心が招いた、他世界での面倒事。であるのならば、ここは飛行能力も兼ねそなているフィオがライトレンド・ワイバーンを倒すしかない。
 しかし、フィオには一つ討伐に踏み切れない理由があった。理由というよりはプライドと言った方が適切であろう。実験を行なう研究者にとって、必要サンプルを取り逃がすことや破壊してしまうことは計画が破綻したも同然。
 刻一刻とワイバーンは沖に到達しようとしている。考えあぐねているフィオ。するとそこへ、ワイバーンの周りで閃光が立っていることに気が付くラットと咎鼠が、それを指さして叫んだ。そこには、ディフィートとヴァロルタ並走してワイバーンと戦っている姿があった。

「ん?沖に、お前のご主人様がいる?チッ……こうなりゃ目眩しだ」

 ディフィートはブラスターから閃光弾を発射し、ワイバーンの視力を奪った。一瞬しか奪えないが、沖にヴァロルタを送り届けるには十分過ぎる時間稼ぎだ。

 沖に辿り着くと、一目散にフィオの元へと向かうヴァロルタ。足元に着くなり、ポーチを開き中に入っているものをすべて出して見せた。

「ヴァロルタちゃん……これ───」
『全て、ライトレンド・ワイバーンの牙と鱗のようですね!ほらね、イーファの言ったとおりだったでしょう?』
「ふん……。ヴァロルタちゃん♪一緒に行きましょう♪咎鼠ッ!このサンプル達、アンタの籠に入れておきなさい!いいわね?」

 返事を待たずに大空へ飛び上がるフィオ。
 サンプルを籠にしまった咎鼠は、燈火に手を差し伸べこの世界の端末。つまりはネットワークに接続できる物を貸すよう要求した。
 燈火は旦那とのツーショットを待ち受けにしているスマホの画面を切り替えて、手渡すといきなり舌を出してきた咎鼠に驚いた。その舌には紋章が刻まれていた。

「まぁ、これがワシの切り札。爵異ギフトや」

 爵異ギフト。それは咎鼠とフィオを含んだ七人のギフターに与えられた、世界を管理するために備えられた力そのもの。その強大さ故に七分割している。一つの能力を咎鼠が持っているのだ。効力は────。


───万物を流出せし星の鼓動よ...今此処に集約せし情報を世界由来の理として映せし鏡よ!意味のない真理を照らし出さ!《爵異ー醍賦劫だいふごうー》───

 情報操作。正確には、咎鼠がスマホを介して映した映像を見たこの世界の人間すべてに、統一した認識を一つ刻み込ませるものである。
 咎鼠はライトレンド・ワイバーンとフィオの戦闘を撮影し、全世界へ流出させる。それは瞬く間に、映画撮影で使われるCGがいよいよ演者にもその場で見えるほどにまで、レベルアップしたというガセ情報となって認識される。

「ええね!そんな力があったら、ワシらももっと堂々と怪異退治出来るのにな」
「せやろな?んでも、今回限りやで♪」
「……はい?あ、頑張れですぅぅぅ!!はいぃぃぃぃ!!!!」
「なんか分かんねぇけど、あたしはここで見学でいいのか?」

 噂観測課の一行は全員揃って応援に回ることになり、異世界から来た錬金術師と異次元に生息している飛竜の決戦が始まろうとしていた。

 空を我が物顔で自由に飛行するフィオ。その背後に続くヴァロルタが、多脚を全方位に広げて分離する。分裂した八脚はブースターに重なり、ボディ部分はフィオの腰をプロテクトする役割を担う。
 吹き出していたジェットの粒子の色が水色から、禍々しくも見える深紅色に変わって空に広がる。フィオは悪役令嬢でも見せないほど、凶悪な笑顔を見せつけながら合神したその姿の名を叫ぶ───。

「さぁ行くわよ!イーファ、ヴァロルタちゃんっ♪これがエレメンタルフェーズ:ヴァールファルクスッッ!!」

 紅い残影を置き去りにするスピードでワイバーンへ急接近。
 手に持っているエレメントガンナーで、ライトレンド・ワイバーンの強固な鱗目掛けて光弾を放つ。ディフィートの時同様に容易く弾かれるのみで、ダメージを受けている様子はない。
 だが、それもそのはずであった。今フィオが撃ったのは攻撃ではない。敵の体組織を把握するためのサーチ弾と言えば、想像にかたくないだろう。これからの攻撃を有効とするための適切なするイーファとヴァロルタ。

『敵へノ有効属性ヲ開示』
『ピピピ……、閲覧データから照合。フィオ様が扱うべきエレメンタルを抽出中……リンク送信致します』
「へぇ~、やっぱり龍気属性のエレメントを使うのね。でも、イーファのプランではダメね。ここは────」

 天才頭脳を持つAIが導き出した、最高打に対して苦言を呈したフィオ。するとそこへ、飛竜の尻尾による反撃が来る。華麗な旋回で避けてみせ、右拳を突き出すフィオ。
 ヴァロルタが意図を汲み取って、アームキャノンを装着させ放つ。龍気属性による魔弾を受け、飛竜の体表にアナフィラキシーショックが発生する。龍気のエレメンタルとは、過剰なまでの龍由来の力が内包されることでアレルギー反応を起こすことができるのだ。
 龍性が強いほど、その効果は絶大である。ライトレンド・ワイバーンは、その強固な体表にこれまで交戦してきた龍族への耐性を獲得するように、独自の発達を迎えていた。それが逆に弱点となることをフィオに出会うまで気付くことのなかった身体。
 例え、今から耐性を付けることとなっても龍が龍気のエレメンタルに適応するには、時間が数百年とかかるため戦闘中には不可能である。

「そろそろフィナーレといこうかしら?」
『はい。龍気バランスの安定化のため、イーファの偽装人格を停止致します。同時にヴァロルタとのリンクシーケンスにより、いつでもいけます我が主』

 先程までの陽気な口調は消え失せ、フィオに忠実に従うアシストスキンへと身を投じるイーファ。ヴァロルタとともに、フィオが龍気属性を扱うことへの負担を最小限に軽減していた。
 そして、先程のイーファのプランで選択されていたエレメントの《水》と《風》を《土》と《火》に変えて、旋回してライトレンド・ワイバーンに接近する。

 頭上にいるワイバーンの両翼を撃ち抜き、さらに高く飛翔するフィオ。テイクオフの凄まじい衝撃波をリング状で表現し、四つほど作った辺りで急停止。
 そのまま、自由落下で大地目掛けて落ちるフィオ。身も守っていた燈火とディフィートが、まるで臨場感溢れるアトラクションを観ているかのように抱き合って慌てる。

「見せてあげるわ!アタシのBeymindビーマインドを───」

 天高く両手に持っているシューターを向ける。ブースターのように、深紅色の龍気エレメンタルが溢れ出して天空に伸びる。徐々に光が圧縮され、銃口の先に小さな玉となって安定する。フィオはその一撃をライトレンド・ワイバーンの居ない、天の方向に発砲した。
 的外れな解答。的外れな狙い。誰もがそう思って見守るなか、咎鼠だけはニヤリとしていた。フィオの技は対象を射抜く必殺の連撃。それは、フィオの慈悲深き心が極まった時に本懐を遂げる。


━━━慈悲深くも研ぎ澄まされた天涙ヴァルキリオン・ネバーラスティ・レイン━━━


 無数の深紅魔光弾がフィオを避けて周囲に降り注ぐ大雨となって、ライトレンド・ワイバーンだけを狙って降りしきる。紅い雨が飛竜の原形を残すことなく、その尽くを破壊し尽くした。

「ごめんね。この世界ここには、キミの居場所はないの……だから…………」

 海面スレスレでイーファの自動制御が加わり、飛行に復帰して沖で待つ仲間の元へと向かうフィオ。その眼には、今さっき使用した必殺技の代償とも呼ぶべきか、大量の涙を流していた。
 フィオの持つBeymind能力『慈悲零刹じひれいせつ』は、対象への慈悲の心を持って討ち果たすという能力である。その副作用に、フィオの意志とは関係なく涙が出るというのが本人も困っている代償なのだ。

「さてと♪バカ鼠も連れて、この世界から帰りましょう。次元の裂け目を塞ぐ代用錬金もしないとだし!」

 涙を拭って、みんなに手を振るフィオ。こうして、彼女の世界という垣根を越えた自由研究が生んだ奇妙な話は幕を閉じることとなる。

━ 翌日 ━

「ほなな♪頑張れよ、こっちのラットワシ
「任せときぃそっちの咎鼠ワシ

 別れの時。
 フィオ曰く、時空の穴は小規模なものがこれからもしばらく開いたままになるとのこと。急ぎ、大穴の封鎖は向こうの世界に戻ってすぐに行なうが、小さすぎるものは事象が直ってから自然に塞がるのを待つしかないと告げる。
 ライトレンド・ワイバーンが現れた大穴を最優先に塞ぐこともあり、その場所にて元の世界へ帰ることとなったフィオと咎鼠は、手を振って燈火達のもとを去るのであった。

「いや~、にしてもあのフィオって子。ワシの彼女にそっくりやったで……。ほな、久々に連絡したろっかな?って、こないだ腕のメンテナンスで会うてるやけどね♪」
「────え?ラット、お前彼女居たのかよ?」
「はい?ディフィートさん知らなかったんですか?ちなみに私は知ってましたよ~♪はい~♪」

 大穴が塞がったことを確認した三人の、いつもどおりの何気ない会話。

 この時、彼女達は知らなかった。この時空の穴が塞がるまでの間に、とてつもない出来事の数々がまっているということを────。
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