意味のないスピンオフな話

韋虹姫 響華

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クロスオーバーな話〜意味ない × トライワイト篇〜

ラウ・フロス ╳ 『???』

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 コンサート会場に現れるとタレコミのあった怪異を追って、アイドル総選挙会場へ乗り込んできた怪異を捕まえるべく、護衛係として潜入していたラウ。
 知る人のみぞ知る。いや、その業界を推しているものには人気絶頂のアイドルのLIVEに会場のボルテージは最高に達していた。ライトアップに夢中になっているオーディエンスの脇に、警察帽で顔を伏せてステージに意識を集中する。

 この中にアイドルに扮した怪異、あるいはアイドルオタクの中に怪異が潜んでいるかもしれない。そう思い必死に目を凝らして気配を探るラウであったが、突然ステージのライトが消灯する。
 直前まで流れていた曲も止まり、オーディエンスからブーイングが殺到する。即座にアナウンスが入り、会場内は混乱とざわつきで溢れかえり始める。ラウは、暗がりのなかで足元に何か当たる感覚を覚えた。
 それを拾い上げると、途端に光り出して虹色に乱反射する。会場内で一番目立つ光を放ったことで、注目が一気に護衛服を着たラウに向く。

「待たせたなっ!!唯一無二ッ!!永劫にして不朽ッ!!吾輩こそ、真のアイドル無双であるッッッッ!!!!」

 パァァン♪とド派手な演出が巻き起こり、オーディエンスの視線を一斉にかさらって行くアイドルの声。
 ステージには、先程までパーフォーマンスしていたアイドル達が立っており、センターに奇抜な衣装をした女性が仁王立ちで観客を見下ろしていた。その女性こそ声を上げた張本人なのであるが、オーディエンスは見知らぬアイドルの登場に困惑の様子。
 掌で額から差す照明を遮りながら、ざわめいている会場を見渡す女性。呆れたように肩をすかしため息をついた。すると、その隣に降り立つラウに気が付き、向かい合うとマイクを持ってラウを指差して話し始めた。

「おぉ♪其方が吾輩の文字主プロデューサーか。うむ……うむうむっ♪ルックスは『怒髪天』の生き写しといっても良いな♪合格だ────」
「……ッ?プロデューサー……ですか?随分と小洒落たことを言うタイプのようですね……これでは隠蔽が大変というもの」
「む?隠蔽とな?なんと、そうであったか!?」

 スタンドマイクを持ちながらラウへ走りよる。
 咄嗟にファイテングポーズを取ったラウの前で、スタンドマイクを床に突き立て棒高跳びのように華麗に舞い、ラウの頭上を取る女性。そのまますとんとラウの肩に伸し掛る。
 これ以上、一般人に怪異を見させる訳にはいかないと照明に向けて雹を投げつけ、再び暗黒の世界にコンサート会場を変える。一方で、自身がまだ非公開のスペシャルゲストで辺境の地にやって来たと勘違いしている女性。
 彼女も文字版サクリフォトである。名前はその世界で知らぬ者は居ないされている『大喝采』。しかし、ラウはもちろんコンサートにきた観客誰一人として、その名を知っているはずもなく本人が高らかに叫んでもシーンとした静寂しか返ってこなかった。

 セット置き場から、運搬に使っている地下通路まで連れ出したラウは『大喝采』を振り解き、壁に押さえつけようと胸ぐら掴んだ。
 しかし、壁に叩きつけたのは自分の拳のみであった。怪異の力を使わずに行なったため、激痛が走る手を押さえながら後ろを振り返る。そこには、ニコニコと笑っている『大喝采』が立っていた。

「うむっ♪吾輩をプロデュースするのだからな♪それくらい元気があってもらわねば困るというものよ」
「はぁ……、はぁ……、怪異ではないようですね……。それにこの絵馬?というのでしょうか?これに刻まれている大喝采というのが、貴女のお名前のようですね」
「ふむぅ……、その様子だとされたらしいな吾輩は。となれば、やることは1つよな?」

 どうやら前にも異世界に召喚された事があるらしく、『大喝采』は非常に落ち着いていた。
 そして、状況を理解するやいきなりこの世界のトップアイドルになることを宣言する。ラウはそのためのプロデューサー兼マネージャーとして、契約することを許可するのであった。
 ラウの意思を確認する前に、絵馬が独りでに輝き出して契約成立を通知音で知らせる。唖然としているラウを置き去りにして、絵馬に《しおり機能》が搭載されていることを知っている『大喝采』は、ラウが確認する必要のある箇所にしおりを付けた。
 ひととおり付け終えて、自己紹介も兼ねてプロフィールを開いて空間に浮かび上がるホログラム映像を見せた。


────────────────

文字版サクリフォト名:『大喝采』
ランク:EX(測定規格外)
スキル:アイドル無双
ワードライブ:舞台は声援と期待を奏でる為に輝くえ?今来たばっかり?それでも結構♪ 他

────────────────


 謎めいたステータスに謎めいた事だらけなプロフィールに、ラウは首を傾げることしか出来なかった。

 やがて、しおりを付けられた箇所を一読して概ね自分が巻き込まれたことの全容を理解したラウは、『大喝采』の前に膝を着いた。

「うむ♪これも《アイドル無双》のスキルによるものであるというのが、少々癪ではあるが仕方あるまい。すまぬなラウとやら、WORDへの本腰を入れる前に吾輩はこの世界のアイドル業界に旋風を巻き起こさせて貰う♪良いな?」
「はい……、『大喝采』様。まずは、個人勢でもご活躍できる売り込みルートから攻めましょう!」
「良かろう♪吾輩のことだ、3日もあれば人気急上昇間違いなしである♪」

 ラウは普段着である執事服に着替え、『大喝采』の隣に立ってマネージャーにでもなったようにスケジュール帳を開き、これから人気を勝ち取るための作戦をメモし始めた。
 しかし、自身が絶世の美女級の愛嬌を兼ね備えた存在であると確信しているとはいえ、『大喝采』は文字主ワープロットであるラウのスキル耐性の無さに少し頭を掻きながら困っていた。
 こうなったら、意地でもトップアイドルになって人気者に躍り出てやろうとアイドル魂に火をつけ、戦略を立てることを『大喝采』は決心した。

「ここが吾輩の工房。否ッ!トレーニングテリトリーであるッ!!良いかラウよ。其方はこれより、我がマネージャー兼プロデューサーとしてこのテリトリーへの出入りを許可する」
「ありがとうございます。それではまず────」
「む?」

 売り込みの作戦を考案するかとも思いきや、いきなり脱ぎ始めるラウ。執事服の下に隠れていた肉体美が、照明を受けて汗が光り出す。
 艶めかしくも見える筋を伸縮させながら、『大喝采』の隣へ立ちキリッと目を合わせてきた。すると、手を取り胸に手繰り寄せて目の奥に炎を滾らせつつ『大喝采』に情熱をぶつけた。

「ダンスレッスンから参りましょう!!わたしもご一緒に鍛えますので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」
「う、うむ……。其方は……なかなかに鍛えておるのだな?吾輩、感心したぞ……」
(これはもしや、いけるかもしれぬな?トレンドなるものを取り入れねば、エンターテインメントは乗り遅れるからな……)

 思わず真のアイドル無双ですらも、見とれてしまうほどの整った筋肉を持つラウの体にインスピレーションを感じ取った。
 次の瞬間、着ている服の肩に手をかけて脱ぎ捨てると、ダンスレッスン用のユニフォームに早着替えを果たした。『大喝采』はラウの手を改めて掴み、アイドルとしての魅せるダンス。その極意を叩き込んだ。

 やがて、太陽と月が二周するまでに続いたダンスレッスン。その成果も実ってか、『大喝采』は三日という期間で見事注目の的として────、アイドルとして人気者となったのであった。
 これがWORDで対戦相手を探す参加者達に、どのような効果をもたらすのかを知るのは、もう少し後のお話である。
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