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クロスオーバーな話〜意味ない × トライワイト篇〜
??? ╳ 『未??』
しおりを挟むふわふわと浮遊する怪異。此処へやって来たのは、噂観測課ではなく防護服を着用した特殊部隊の兵士達。
麻酔弾を装備した兵士よりも先に、実弾兵装部隊が先行して銃撃を始める。浮遊している怪異は、浮遊能力を活かし弾幕を避けて兵士の一人に巻き付き駒のようにクルクルと回転させ、弾丸の盾にして逃げ回る。
「ダ、ダメです!追跡部隊を向かわせますが、これでは────」
『こちらC班。もう1体、浮遊タイプの怪異と思わしき飛行体を確認』
「まさか、2体も居たというのか?」
兵士達の士気が下がる知らせばかりが錯綜する。
そこへ、通信越しに女性の声が割り込んだ。これ以上の被害を出す前に、怪異への対処に出ると宣言して通信を切った。
彼女の名前は夏蝶火。あの噂観測課極地第2課の燈火の実の姉である。
モニターで中継していた夏蝶火は白衣を脱ぎ捨て、メガネをクイッと位置を調節しながら、車から出て怪異と特殊部隊が交戦している場所へ向かう。これは人怪調和監査局が発見した怪異を鹵獲する作戦だったのだ。
□■□■□■□■□
空をクルクルと旋回しながら、胸前に両手に持っている絵馬を持ち上げ見つめる影。水色の髪の毛を模した頭部、右半身がメカのように左半身は見えている肌にツギハギの跡、絵本の中に出てくる妖精もしくは魔法少女のようなドレスに身を包んでいた。
さらに頭部には、金魚水槽のようなドーム状の帽子。中にはUFOや星マークの物質、ロケットが入っている。だけに留まらず、ウーパールーパーが空間内を漂っていた。
そんな摩訶不思議な見た目をしている飛翔体が目指せしているのは、銃撃の聞こえてきた方向であった。絵馬をしまい、特殊部隊の待ち伏せを突破して暴れている浮遊する怪異に向かっていく。
コンクリートを突き破り、地面に墜落する二つの浮遊体。瓦礫となった破片を振り払い、怪異は自分に不意打ちを当ててきた者を見て吠えた。怪異の名は【クリオネ男】。
水中では愛嬌ある揺れ踊りを見せるクリオネの持つ、グロテスクな捕食の際に見える口を開いて叫んだ。
「ギザマァッ!?よぐも、邪魔ヲォォ!!??」
「ファイミ、ルギャルギャッ!ノンア ギャ ヴィ ヴェ イラ リュ?」
独自の言語を発して、【クリオネ男】を指差して戦闘意思を示す。
彼女もまた、巷に現れている文字版である。しかし、そんなことを知りもしない特殊部隊はその伝わらない言葉に、敵か味方かの区別がつかずに混乱していた。
一方で【クリオネ男】の方は、走り出して捕食器官を振り回しながら文字版に襲いかかる。予備動作なしに浮き上がり、攻撃を避けてすぐに懐から光線銃を取り出して反撃する。
見事直撃はするも、出力不足なのか怪異の追撃を止めることが出来ずに地面に叩きつけられてしまう。地面を抉りながら、叩きつけられた先にいた兵士の方を見て、絵馬をかざして兵士と交互に見合わせる。
「ヴィ ギャ ギュッ!ギャ ギョ ギョ ギョ……、ギョ ギョ ギョ ギョッ!!」
手当り次第に近くの人間全員に試し、パスポートの顔写真と見比べるように動作を繰り返す文字版。
その場に居合わせた特殊部隊の中には、見つからなかったという様子で絵馬を叩きつけて悔しがり出す。そんな文字版の茶番に苛立つ【クリオネ男】の一撃が、背後を捕え壁に叩きつけた。
特殊部隊も【クリオネ男】の攻撃を受け、その場にいた部隊は全滅してしまっていた。
そこへ遅れてやって来た夏蝶火。鹵獲の予定であった怪異が、とてつもない危険性をもって暴れ出したとなれば、もう生け捕りなんて甘いことは考えていられない。
「アァ?ふんっ、妙な女のガキの次は理系女子か?見てのとおり、政府直属の特殊部隊でもこの有様だぜ?」
「そうみたいなんだな……これ。あ、でも───、ワタシのことただの理系女だと思わない方がいいかもなんだなぁ、これ♪」
宙を泳ぎ回って一撃を喰らわせようとしていた【クリオネ男】が、その身を翻して一度夏蝶火のから距離を置いた。その目先に映る彼女の身体が、毒液と分かるほどの紫色の液体となって地面に滴り落ちる。
ジュウゥゥっと溶解していく音と煙を立たせるほど、強酸性の強い毒であることを確認して冷や汗を浮かべる【クリオネ男】。
【万象を統べる脳毒庫】、それが夏蝶火の持つ怪異。彼女は凡ゆる毒は、脳内の毒素を織り交ぜることで再現出来る脳内を持っているのだ。
それゆえに毒性のある攻撃は彼女に通じず、同時に相手の毒性上回る毒攻撃も可能としている。それだけでなく、毒は時に人体に良い影響ももたらすことがある。
「例えば、身体強化とかね♪」
「何ッ!?いつの間に────」
5m以上は地上から離れていた【クリオネ男】の背後に、逆さの夏蝶火の存在を感じ取った。しかし、振り向き切る前に蹴りを受けて地上へ落下する。
空かさず追いかける夏蝶火は、両脚を毒液化させた飛び蹴りを繰り出すも回避されてしまう。着地と同時に回し蹴りで毒液を吹き飛ばす。ニヤリと口角を上げて柔軟な身のこなしで、浮遊回避を成功させる【クリオネ男】。
その時、夏蝶火は背後に壁を背もたれにして倒れている文字版の少女の姿が目に映った。一度体を離れた毒の軌道を操作する事は、ある一定の距離であれば可能ではある。しかし、この距離ではもう間に合わない。
夏蝶火がそう確信して目を一瞬伏せる。付着した対象を溶かす溶解音が聞こえ始め、ただ一人残っていた生存者を怪異使いが手にかけたと腹を抱えて笑う怪異。
「ググリィ♪ググリィ♪」
「え?今なんて……、ってそんなまさかなんだなぁこれっ!?」
なんと、お目当てのものを見つけた子どもようにウキウキと両手を挙げて向かってくる文字版は、全身に受けた毒が発生させた溶解現象を掻き消していた。
それどころか、頭部の水槽内に取り込んで我がものとしていたのだ。文字版の起こした奇跡に驚く夏蝶火に近付き、手を取って先ほど自分が叩きつけた絵馬を指差した。それは呼応するかのように光を放っていた。
夏蝶火は手を引かれるまま、絵馬へと近付き拾い上げる。側面には『未確認』と刻まれていた。それを指差してから、自分の名前であるとジェスチャーする文字版は、そのまま契約成立画面にしていた待機画面のロックを解き、夏蝶火にサインを求めた。
少しの間だけ、眉間に皺を寄せて考えている夏蝶火。そこへ【クリオネ男】がよそ見をするなと、襲いかかるが毒の防壁を作って防ぎ弾き返した。
「ふむぅ?ワタシ特製の毒液を瞬時につけた耐性で克服した……。ふふっ♪興味深いんだなぁこれ♪アナタの言っている言葉はまだ理解出来ていないから、そちらの解析も合わせてこれからもよろしくってことで♪」
「ギャッギャ!ガグガグ、ガグガグ♪」
「おっ、何やら嬉しそうですね?いや、面白がっているのかしら?」
夏蝶火の周りを飛び回る『未確認』を見て、感情を読み取ろうとするがよく分からない。
概ね間違えていないことだけは、雰囲気を見れば理解出来た夏蝶火は起き上がろうとしている【クリオネ男】にトドメを刺すために、毒液を作り出して走り出した。
すると、並走してきた『未確認』が笑顔を向けながら、倒れている特殊部隊の横に落ちていた捕縛用ネットを搭載していたバズーカを見つめていた。かと思うと、いきなり全身が光を放ちながら夏蝶火の頭上で変形して落下する。
キャッチすると、それはバズーカ砲に擬態した『未確認』であった。『未確認』の文字版スキルの一つ。それは見たものをトレースして、自身がその物体と同等の性能を持つ存在になることが出来るのだ。
「よくは分からないことばかりですけど、とりあえず初共闘にして初の合体必殺ッ♪シンプルですが、技名はユナイトポイズンランチャーッ!!」
「なっ……、なんだそれぇぇぇぇ────っっ!!!???」
相手の怪異の力を無力化するために、有効である毒素を調合した特製弾薬を『未確認』に装填して放つ夏蝶火。
弾丸が体内に張り込んだことで、大爆発を起こす【クリオネ男】は怪異の力を失った人間に戻り、その場に倒れ附した。
□■□■□■□■□
やがて、他の特殊部隊兵士と救護班が到着し隠蔽工作が行われた。その様子を見ることもなく、夏蝶火は『未確認』とともにその場から離れようとしたが、肝心の『未確認』の姿が何処にも見当たらない。
すると、手に持っていた絵馬の側面がディスプレイの役割を果たしていることに気付いた夏蝶火は、絵馬の中に『未確認』が避難したことを知って安心した。
そして、WORDという出場した人間の願い事を叶えることの出来るゲームの存在を知ったことで、夏蝶火の次なる目的地が開催エリアに指定された日本へと決まるのであった。
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