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クロスオーバーな話〜意味ない × トライワイト篇〜
トレード ╳ 『発明家』
しおりを挟む公園で昼寝している憐都を見かけた。
しかし、トレードはそこへ駆け寄ると両肩を掴んで激しく身体を揺すった。
「れ、憐都!?か、かか……顔に落書き!?されてるぞぉぉ!!」
「ス───、ス───、ス───zzZ」
慌てている自分を落ち着かせながら、咄嗟に取り出したスマホから連絡先を開くトレードは、こんなイタズラをしでかす奴は一人しかいないと決めつけて連絡を取った。
送信相手は燈火である。しかし、燈火は寝ぼけているのかとトレードを足蹴にして電話を切ってしまった。仕方ないと、近くの蛇口を捻ってタオルを濡らして憐都と思しき青年の顔に付いた。
「な、なんだこれ……全然取れねぇぞ!あのチビめ……、油性ペンだとしても落ち無さすぎだろ」
「そりゃそうじゃん、だってそれ落書きじゃないぜ?」
「ぬわっ!?」
必死に顔を擦るように拭き取ろうとしているところに、覗き込んでくる女の子。それにビビって、後ろに腰が引けてしまったトレード。
見れば、顔に機械に差すオイルを擦り付けたような跡が付いていて、おとぎ話やゲームに出てくるメカニックって感じの服装をしている。熱の籠る空間にいる事が多い整備士でも、そこまでは出さないだろう体のラインが露出しているのに大胆さに、見ているこっちが恥ずかしくなってしまう。
トレードがそう感じて、赤面している様子を見て含み笑いをする女の子は言葉を紡いだ。
「アンタ、アタシの母ちゃんそっくりだ!だから、父ちゃんのこと旦那だと勘違いしたのか。ん?ということは、アンタの旦那さんもアタシの父ちゃんにそっくりってことか?」
「は……、はぁ?な、何言ってんやがんだ、テメェ?あ、あたいと憐都には寄凪って娘が居るんだ。おめぇみてぇな、場を弁えない格好するような、か……隠し子なんざ……い、いっ、居ねぇよっ!!」
自分でも何でそんなことを言っているのか、分からなくなってしまっているトレード。その頭上には、蒸気が発せられているかのように体温が上がっていることが分かる変調を来たしていた。
それからも揶揄うように、トレードの赤面する様子を見て大喜びする女の子であったが、そこへトレードも聞き覚えのある声が割って入った。それは顔に《!》と《?》のマークがある憐都そっくりの寝ていた青年であった。
「よさないか『発明家』……、仮にも……君の文字主だろ……?」
「おっ?父ちゃん、やっと起きたのか♪今回は監督役で呼ばれたんだろ?安心して愛娘であるアタシの活躍を見ていてくれよな♪」
「…………?だったら、まずはその人……ん?『探検家』にそっくりだな……!」
眠そうにしていた青年は、左頬の《?》マークを人差し指で差しながら『発明家』に説教っぽく話していた。その直後、目にしたトレードを見て右頬の《!》マークに人差し指を差し替えて驚愕する。
どうやら、トレードの容姿は『探検家』という文字版によく似ているらしく、親子である二体は顔を見合わせてコソコソと話していた。
そうすると、当然意味不明な状況を説明する必要があると、『天才肌』と名乗る憐都似の文字版は諸々の説明をトレードにするのであった。
しかし、脳が全く追い付いていないトレードは放心状態で『天才肌』の顔をじっと見つめ続けていた。その光景は、『発明家』も『天才肌』もいつも見ているらしく、ケラケラと笑っていた。
「とにかくさ、アタシとアンタはWORDっていう競争みたいなゲームに参加する事になった。んで、敗北条件はアタシかその絵馬の消滅。もちろん、参加者の殺害はアタシ達文字版には禁止行為だが、文字主間であれば規則違反にはならないぜ♪」
「お、おう……」
「ふぁ~~~っ……。とりあえず、お家に帰ってみるといい。僕とは別で、ちゃんと君の旦那さんは居るはずさ……」
すると、『天才肌』のその言葉を聞き切る前に猛ダッシュで絵馬も『発明家』も置き去りに、颯爽と家まで飛んで帰るトレード。
やれやれと、肩をすくめる『発明家』は絵馬を天高く投げた。一瞬にして閃光を放ち、その場から電脳体に変わったかと思うと絵馬と共に消失した。
ガチャンッと、持ち前の怪力でドアを破壊しそうになりながらもリビングへ飛び出したトレード。そこには、トーストを齧ってテレビを観ていた娘の寄凪の姿があった。
「おかえり♪やっぱり旦那さん居たぞちゃんと♪」
「がぁぁ……!?な、なんでおめぇがあたいの家に居るんだよ……?」
「この人、ママの知り合いなんでしょう?とっても体汚れていたから、お風呂に入ってもらったよ」
風呂上がりのフルーツ牛乳をいただいている『発明家』が、寄凪の隣に腰掛けていた。
それに対して、ズッコケから起き上がったトレードはさっきの説明にあった文字版には、味覚や人間の持つ五感機能が著しく低下していて感知しにくい話と矛盾していると、掴みかかっていた。
すると、『発明家』は説明が漏れていたと頭上に閃きを現す豆電球を作り出していた。実体化して落ちてきた豆電球を受け取ると、形状を保ったままグラスに変身させて炭酸水を冷蔵庫から取り出して注いだ。
そして、そのまま炭酸水を一気に飲み干して顔をクシャッとさせて豆電球グラスを天井に突き上げて、冷たさを感じていることを表現していた。
通常、文字版はトレードの認識どおりに五感機能が損なわれている。ただ、それはあくまでもある世代までの話なのである。
つまり、『発明家』は文字版の中でも新世代の存在なのである。そこには、人間同様に五感を持つだけでなくダイレクトに感情を持ち成長することが出来るシステムが搭載されているのである。
「まぁ、もともと文字版は人間の思想に依存した存在であることに変わりはないんだけどな♪にしても、このエビフライ美味いな♪」
「おい……、何ご飯まで一緒に食ってんだよ……」
「え?いいじゃないママ。お客さんなんでしょ?そんな厳しい言い方しなくても、ね?パパ?」
「…………うん」
いきなり現れて、いきなり訳の分からないゲームに参加する羽目になって───、あっという間に家族と仲良くなった『発明家』。本当に自分の娘なのかもしれないくらいに、当たり前の存在になって消灯の時間がやってきた。
寄凪の部屋に布団を敷き、横になる『発明家』は寄凪と色んな話をしていた。
自分の家族である『探検家』と『天才肌』が、如何にして結ばれたのか。最初はお互いに異なる派閥したという話には、寄凪も食いついて聞いていた。
馴れ初めは異なれど、見た目も声もそっくりな二組の夫婦。その娘同士のトークは朝まで続いたのであった。その隣の部屋で、ずっと寝れずにいたトレードとぐっすりの憐都がいることも知らずに────。
━ 翌 朝 ━
玄関で見送る寄凪と憐都。髪の毛ボサボサのまま、目の下にクマを作るトレードと元気いっぱいの『発明家』はこれから仕事があると言って、自宅を出ていくのであった。
「よっしゃー!まずは、敵情視察だな♪母ちゃん……じゃなかった、トレード?それともこっちの方がいいかな?代伊伽」
「ッ!?なんであたいの本名知ってんだよ?」
「契約したんだから、そんくらいは絵馬に情報が入ってくるよ。それに、憐都さんだっけ?アンタの旦那さんが寝言で呼んでたからな♪ウチの父ちゃんもたまに寝言で呼んでるからそこも似てる似てる♪」
ウキウキの『発明家』に怒りマークを作って、ピクピクと眉が痙攣するトレードであったが、これも閉じ始めている次元の穴の影響で引き起こされた神のイタズラかもしれないと、自分に諦めるよう言い聞かせるのであった。
こうして、トレードと『発明家』のWORDが開戦するのである───。
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