意味のないスピンオフな話

韋虹姫 響華

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クロスオーバーな話〜意味ない × トライワイト篇〜

管理役に抜擢された人達

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────────────────
・茅野 芳佳 × 『騎士道』
・実 真 × 『着火材』
・アブノーマル × 『天中殺』
・??? × 『天才肌』
・??? × 『風来坊』
・ラット × 『解説者』
・??? × 『季節風』
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 □■□■□■□■□


「いでででっ!!!!」
「どうだ思い知ったかですぅ、はい♪」

 地面に突っ伏しているみのるのお尻に踵を置いて、ドヤ顔で線香の入った箱を開ける『着火材』。なんと、そのままお菓子でも食べるようにボリボリと口に頬張り始めた。

「まったく……、今回のWORDはなんだって管理局から監査員を寄越してくれないんですかね?おかげで現地人とテキトーに契約する羽目になっちまいましたよ、はい」
「まぁそう言うな『着火材』。そういえば『天才肌』のやつはどうしたのだ?」
「あぁ『季節風』ですか……。あいつなら、市街の方に落下してくのを見たですね、はい。まぁ拾われた人に契約でもして寝てるんじゃねぇでしょうかね……はい」

 実のことをベンチ代わりにしている『着火材』の首根っこを掴み、空中へと投げ出した。浮遊能力ですぐに体勢を調整して空気に肘枕を作って、線香を食べ続ける『着火材』。
 気だるそうにしている顔付きは、実が燈火と見間違えるのも無理のないほどそっくりである。「おっと失礼」と言いながら、ゲップを出すだけで火の粉が口から放出される。さながら、悪魔の降臨である。

「んで、『季節風』は誰と組んでるですか?」
「それは言えない……まだ、な。それよりも、他の管理役の文字版サクリフォトを探そう。どうにも、ワタシ達3

 その言葉を聞いて、明らかに面倒くさそうな顔を見せる『着火材』。

 通常、WORDには参加ペア九組に対して三体の管理役に抜擢された文字版サクリフォト。それ以上の人数が呼ばれた場合、そのWORDは正常に機能していない可能性があるのだ。
 そうなった場合、管理役の仕事は通常業務である参加者の不正がないかの監視に加え、もう一つWORDの正常性確認という任務が課せられるのである。
 せっかく他の文字版サクリフォトに任せて、自分はサボろうと密かに企んでいた『着火材』にとってこれは由々しき事態なのである。

「そんなにサボりたいというのなら、オレ達にも頼ってみたらどうかな?」
「おっ?くたばってなかったですか。意外としぶといやつですね、はい」
「なんでもこの世界の住人は怪異という摩訶不思議な力を使うらしい。どうにも、ワタシにはその力がイレギュラーを生んでいるように思えて仕方ない」

 そうとなれば善は急げ。実は『着火材』と『季節風』に手を差し伸べ、二体も管理役として選ばれた文字版サクリフォトとして、契約したものとして実とともに捜査に向かうのであった。

 そんな一同を見送る怪しき影。隠れていた建物の壁から顔を覗かせて、ニヤリと口角を上げる。

(いいぞ『季節風』。そのまま噂観測課とともに原因究明に励め……)

 内心の呟きを残して、闇の瘴気となって姿を完全に消す影。それこそが『季節風』と契約したものであった。


 □■□■□■□■□


 噂観測課極地第1課事務所。
 ラットは困り果てていた。目の前に座っている『解説者』という文字版サクリフォトから説明を受けて、内容は理解出来ている。今回の次元の穴が収束する前に起きてしまった怪異事件。

「分かりやすく《怪異事件-WORD-》と呼称いたしましょう。これにより、呼び出された管理文字版サクリフォトは全部で7体。そのどれもが、ランクがどうあれスペシャリストッ!!」
「ほんで、あんさんらはこのWORDっちゅう賭博みたいな大会に不正やエラーがないかを調査するわけやな?それは重々承知なんやけどなぁ……」

 ラットは困りの原因であるものがいる方を見て、深くため息をついていた。
 そこには、修道女の格好した尼僧が二人鏡合わせになって座っていた。お互いの頬に白肌の手を当てて、見つめあっていたかと思うといきなり身体をくねらせて絶叫する。
 お互いの指を絡ませて、額をくっ付けてニヤニヤして口を開いた。

「嗚呼♡なんということでしょう!拙僧の、拙僧の生き写しがいらっしゃるだなんて……♡」
「それも、こちらの世界でもお強いのですね拙僧は♡」
「「「嗚呼ッ♡♡ソワカソワカァァ♡♡♡」」」

 まるで双子のように息ぴったりの決めゼリフを叫ぶ、アブノーマルと『天中殺』。容姿だけでなく、声も瓜二つの両者を見てラットはあんぐりと口を開けて見つめていた。
 対照的に『解説者』は、世の中には似た顔が三人居ると言われるから何の不思議もないという表情で話を続けた。

 WORDの管理を通常で行なう文字版サクリフォトは、すでに『着火材』、『季節風』、『天才肌』に決まっていた。そこへ、追加された四体の文字版サクリフォト。その二体がこの『解説者』と『天中殺』なのである。
 頭を抱えつつも、こうなれば次元の穴が閉じるまでの間に起きた事件として噂観測課で解決に向けて動くのも、時間の問題であると考え申請を先に行なって協力することを約束した。
 しかし、残りの二体はと聞くと『風来坊』という文字版サクリフォトは文字どおり風来坊。風のようにいつか現れるだろうと解説して、ラットに不安を与えるような回答をした。

「ご安心を!後の御一方も、あなた方噂観測課の人間と契約するように言っています。今しがた、我々が目をつけていた場所に向かったものと思いますよ!」

 会話の間にカタカタと打ち込んできたキーボードの手を止め、パソコンに映した現場の中継映像をラットへ向ける『解説者』。そこには、噂観測課の茅野かやの 芳佳よしかと同行する騎士の格好をした女性の姿が映っていた。


 ✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳


 茅野が向かった場所は、先日怪異調査で向かった廃墟施設。事後処理も終わった場所にやって来たことに、頭を掻きながらも懐中電灯を持って施設内に入る茅野。

「ねぇ、本当に奴らのアジトがここにあるって言うの?私、事後処理でも立ち会ってるけど、隠れ家には向いてないわよ?」
「確かにそう見えるな。だが、あの『解説者』のテンションの上がりようからするに、ハズレではないはずだぜ」
「はぁ……。貴女のその男らしいところ、私ちょっと尊敬しちゃうかも」
「ほ、ホントか!?やっぱり芳佳はいいヤツだぜ♪オレの騎士道精神ってやつをよく理解している」

 ピンク色の鎧に身を包んだ女騎士は、茅野のという言葉に感銘を受けたらしく、胸を張って手を置いた。
 すると、茅野の方を向き直ったと同時に腰に下げていた剣を抜き刺し出し、茅野の頬をギリギリ通過した。その切っ先は、黒いシルエットをした陰の急所を捕らえていた。

「ほら、居た居た」
「ひっ!?見つけていたのなら、早く声掛けなさいよ!!斬り殺されるのかと思ったわよ!!」
「悪ぃ悪ぃ……。でもほら、敵を欺くにはナントカって言うだろ?それにコイツら、文字無ブランクだ」

 文字無ブランク
 それは、文字版サクリフォトとしての三文字を宿さないボディだけの存在。茅野や怪異と生きる世界にわかりやすく言い換えると、名無しの怪異と同じく雑魚キャラということになる。
 敵はここへ来た人間を罠にかけるつもりで配置していたらしいが、やって来たのが管理役の文字版サクリフォトである場合は、自分達の存在を明かしたのと同義であった。

「なんかよく分かんないけど、あんた達の探していた不正をやっている連中だってんなら、やっちゃってぇー『騎士道』ッッ!!」
「応ッ!!いっくぜぇぇぇ────、てぇりやぁぁ!!!!」

 独特な掛け声とともに、そよ風を引き連れて文字無ブランクの群れへ単身突っ込む『騎士道』。
 その身に纏っているそよ風は、【騎士道の心得】というスキルで『騎士道』に正々堂々闘う精神ココロを宿すことで基本ステータスを上昇させる効果を持つ。
 今『騎士道』は契約した茅野の心の清さに呼応して、そのスキルの性能を遺憾なく発揮出来る状態なのである。

 回し斬りに乗って風は疾風となり、敵を薙ぎ倒す斬撃へと強化された。踊るように三体纏めて斬り伏せて、地上すれすれを滑空する程の前傾姿勢で次なるターゲットへ急接近し剣を振り下ろした。
 しかし、数は減るどころか奥から次々に現れ優勢とは言えない状況になっていた。

「キリがない。いくら、ザコを相手しているとはいえこれでは芳佳を守りながらの戦闘になっては不利になるっ!?」
「そういうことなら私の番ね♪ちょっと待ってね『騎士道』ちゃん……あ、こう言うと怒るんだったっけ?よっと、これを試してみて『騎士道』っ!!」

 茅野が【嘘から出た真】によって、パソコン操作で作り出したバフプログラム。それによって、『騎士道』の纏っていたそよ風が剣だけでなく身体強化にも作用するようになった。
 両脚を包むようにそよ風が集中すると、疾風斬りに加えて風の速さを得た『騎士道』の快進撃が幕を開けた。

 蛇縫いに追い抜いた文字無ブランク達を斬撃が遅れて現れたと同時に、一掃する剣技を披露した。

「スゲェぜ、これ♪芳佳サンキューなッ!!よぉし、残りも纏めて片付けてやるぜ!!芳佳、絵馬をかざせ!そして、光った言葉を発してくれ!!」
「分かったわ!ちょっと恥ずかしいけど、なんだか私達ヒーローになったみたいね」

 ヒーローじゃなく、本当に英雄ヒーローになるのだと返した『騎士道』は剣を天高く振り上げ構えた。途端に風が何処からともなく吹き荒れ、『騎士道』の切っ先に集約されていく。
 それが臨界点に達する時、茅野の叫び声を乗せたワードライブ。すなわち、『騎士道』の大技が発動する。


──そよ風を引き連れる旋風斬撃ゼファー・トルネェイッッダァァァァ!!!!──


 吹きすさぶ旋風が攻撃の対象とした、文字無ブランクだけを捕え殲滅する斬撃を解き放ち対象だけを廃墟施設から追い出した。
 上空へ放り出された文字無ブランクの群れに飛び込む『騎士道』は、トドメの一撃を横一線に振り放ち風を象徴する色を宿した光柱が発生した。その衝撃はとてつもなく、強風を巻き起こして周囲に吹き荒れた。
 しかし、そのことを目撃する人間は一人も居ない。文字無ブランクを発見した段階で、絵馬を起動させた茅野はWORDのバトル開始の時と同じように空間スキャニングを行なっていた。
 つまり、今茅野と『騎士道』の立っている廃墟施設は仮想空間に作られたもう一つの廃墟施設であるため、戦闘終了するまでは絵馬の所有者以外は立ち入れない空間なのである。

「本当に便利ねこの絵馬。私達噂観測課にもこれあれば、もっと怪異調査が楽に出来るのに……」
「無いものねだりしたって仕方ないだろ?それよりも芳佳、ナイスファイトだったぜ!おかげで今回のWORDを裏で糸引いている存在がいることが分かった。管理役のメンバーと合流して、情報共有しに向かうとしようぜ」
「ええ、大賛成♪なんか、今回の私?影ながら一般市民の生活を護る噂観測課のヒーロー。それが、ヤバそうな悪党を裁くヒーローになっちゃったりしてぇ?キャハハハ♪」

 すっかり、『騎士道』の文字版サクリフォトとしての力に酔いしれてしまっている茅野。

 これから先、案外思いやられる事も多そうだと頭を抱えつつ仲間と合流する『騎士道』なのであった。
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