暴虐皇子のやり直し「同じ失敗は繰り返しません!」

nayaminotake

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第一章 暴虐皇子のやり直し開始

24話 暴虐皇子は陛下に物申す

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自らの不明を痛感した、あの公園で出会った少女との会話…
それは学園の寮に戻っても一向に頭の中から離れなかった

「クソッ、どんな選択が正しいんだ!」

今、自分が取るべき選択と行動は何か…ない頭を抱え必死に考える

―――そして、出した結論は…

「殿下!?お待ちください!」
「いくら殿下とはいえ、ご予定がなければ!」

「えぇ―――い!うるさい!どけ!」

俺の前を塞ごうとする、近衛兵らの肩をつかみ左右に押しのけ

バン!

黄金の獅子が意匠された大扉を乱暴に押し開ける

「アーサー殿下?これは一体どういう事ですかな?」

宰相のザッハが俺の姿をみて、目を細める

「今日はお前との謁見の予定はないぞ?アーサー」

玉座に腰を下ろし、怪訝な表情を見せるマーリン皇帝陛下

「陛下無礼をお許しください!」

俺の身体の前で両手を広げ、玉座の間への侵入を阻止しようとする近衛兵に向け陛下が片手を上げ「下がる様に」と、無言で命令する

陛下の仕草を目にした近衛兵は深々と頭を下げると、玉座の間の中に俺を残し入口の扉を閉めた。

「殿下…本日はいかな用件で参られたのですか?ご冗談にしては、度が過ぎておられますぞ?」

そう口にする宰相ザッハに向け手を広げ、その先の言葉を制止する

「陛下、私の無礼をお許しください」

陛下の前に膝をつき、まずは突然押しかけてしまった事を謝罪する

「―――申してみよ」

「はっ!」

「陛下、恐れながら帝国の軍は腐っております」

俺の言葉に陛下の眉がピクリと動き、宰相ザッハは、冷ややかなその目をさらに細める

「どういう事だ?理由も無く我が帝国軍の名誉を傷つける事は、いかにお前でも看過出来ぬぞ?」

「―――陛下は、戦死者の遺族がどの様な生活をしているかご存じですか?」

陛下の背後に控えるザッハは何も言わず、ただジッと俺の方を見つめている…余計な横槍の心配はなさそうだ

「報告は内務尚書、軍務尚書から聞いている…それが何だ?」

俺は陛下の言葉に無言で首を横に振る

「陛下、それは「聞いている」であって、「知っている」事にはなりません」

真剣な俺の表情に、陛下はすこし興味を抱いたのか玉座の肘宛てに頬杖をつき、口元に笑みをこぼしながら俺の方を見つめる

「続けよ」

「はっ!私は昨日、戦死者の遺族である小さな少女と知己を得ました、彼女の父親は戦争に行って戦死したのだと…他国との戦争もそれに伴う犠牲も、為政者である我等には享受するべき痛みだとは理解できます」

「しかし、我が軍は本来少女の家族に行き渡るはずの戦没者見舞金を抜き取り、自分の懐に入れているのです…働き手の父親が戦死し、少女とその母親の手に渡った戦没者見舞金は僅かに金貨二枚…」

「二枚―――であるか…」

俺の言葉に険しい表情を見せる陛下――その怒りの矛先は勿論俺でも少女にでもない

「少女は言いました「そういう決まり…」だと、これが意味するのは軍部における組織的な見舞金の着服に他なりません!」

「それだけでは御座いません、陛下は朝昼晩といつでも好きな時に澄んだ水を口になさいます…私もそうです、あまつさえ余った水は、そこら辺に捨ててさえいました…」

「でも、昨日少女が喉が渇いた私の為にと入れてくれた市街地の井戸水は、濁り小さなゴミが浮いていてお世辞にも綺麗な水とは言えない代物です」

「―――で、お前はその水を…」

「飲みました、一滴残らず」

陛下はザッハに視線を向ける事なく、右手をかるく上げ無言で指示を出した

宰相ザッハは陛下に向け深々と頭を下げると、ツカツカと玉座の前を退出していく

「成程な、アーサーお前は自らの目と耳で帝国の民の声を見聞きした…それを以て「知っているか」と余に問うた訳か?」

「はい、その通りです…陛下、陛下は世に賢帝と呼ばれる程、治世に尽力された名君と臣民に敬われており、私自身も全くの同感に御座います…ですが、「今までそうだったから」と、古き悪習を正さず、黙認していてはいずれ、遠からずこの国は滅びます、もちろん賢帝であるマーリン陛下の代では御座いません。陛下の次の代、はてはその次、もっと先かも知れませんが、このままでは確実に民衆の心は離れて行きます」

陛下は俺の言葉に身を乗り出し、興味深そうに僅かに笑みをこぼす

「で、お前は余にどうせよ、と?」

「―――正しい選択です、我等の生活の基盤である民の生きる糧を奪う様な事を黙認してはなりません、戦争は騎士団だけでも、兵士長だけでも出来ません、徴兵された民兵の力は不可欠です。」

「税もそうです、民が健康的に労働してこそ我等の生活も担保されます、決して一部の政務官が税の徴収を担保してるわけでは御座いません!」

「―――つまり、どちらがこの国にとって大事な存在か余に「選択せよ」と、そう言う事か?」

「その通りで御座います」

陛下に向け深々と頭を下げる

「で、あれば、アーサー皇太子よ、お前も余にとっては民と比べる「選択」の対象という事になるのか?」

(これは予想外の返しだ…軍の不正と、政務官たちの不審な税金の使い道を進言したかっただけなのに、墓穴を掘ったか!?)

「―――選択とは、全ての人々が生きてく上で神より与えられるもの、それが陛下の選択と言うのであれば、その通りなのでしょう、私も私の選択をするまで」

「ほう?つまり、余の選択次第で、この父に、いや…この帝国に牙を剥く…と?」

俺は首を横に振り否定する

「それは今の時点ではお答えできません、選択とは、その時、その状況にならないと見えて来ないですし、選ぶ事も出来ないという厄介な代物ですので」

「‥‥ククククッ…ア――ハッハハ、いいぞ皇子よ、ミョルニルの所の娘との婚約を破棄したと聞いた時には、なんと愚かな息子だと廃嫡も頭をよぎったが、お前の中で何が有ったのかはわからぬが、今のお前は中々に面白いぞ」

「…はっ」

「お前の進言はしかと覚えておこう、後は…そうじゃな、余の「選択した結果」というのを、しかと見ているが良い」

「はっ!」

アーサーはマーリン皇帝に頭を下げると、玉座の前を退室していった

「‥‥首尾はどうだ?」

マーリン皇帝は、アーサーの退出していった扉を見つめながらそう呟く

「はっ、今隠密に長けた憲兵に調べさせております、概要であれば一両日中には・・・しかし、アーサー殿下の申す通り、陛下や私の眼を掻い潜って隠蔽出来る程の者が関わっているとなると…」

「もしかしたら、尚書級の血の入れ替えが必要となるか…まぁよい、そちらの調査は宰相に任せる」

「はっお任せ下さい」

「それより、お前はどう見る?」

「アーサー殿下の、突然の変貌ぶりでございますか?」

「あぁ…我が子ながら、昔は優しい一面もあったが、妃に先立たれアレの世話を城の者へ全部任せていたばかりに、とんでもない我儘な皇子に育ってしまい」

「ご心痛お察しします」

「だが、先日からの皇子の変化…あれが、皇子の成長だと言われればそうなのだろうが…」

「明らかに急すぎますね…」

「ああ、もしかしたらダインスレイブの魔族どもに何かしら精神操作を受けてる可能性もある…」

「畏まりました、私に適任の心当たりが御座います、是非ともお任せ下さい」

「―――成程、鉄血宰相も、所詮は人の親…と、いう訳か」

陛下の言葉にザッハは敢えて答える事なく、その場で深々と頭を下げた



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