エスター公爵家の男たち~男性恐怖症の薄幸令嬢ですが、竜の父子に溺愛されて4人で幸せになります~

柴田

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4-1.庭園での邂逅

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「なんだよおまえ、テーブルマナーも習ってねぇのか?」
「キリアン、ちょっと黙りなさい。緊張しちゃったんだよね、ジゼル。大丈夫だよ。僕が切ってあげるから、お皿貸して」

 ナイフとフォークを置いたジゼルは、小さく縮こまってガタガタと震えていた。
 ヴァルトロはキリアンをにらみつけ、ジゼルの前から皿を取り寄せると肉を一口大に切ってから返す。「ありがとうございます」と呟く声は小さくか細くて、今にも泣き出してしまいそうなジゼルを安心させるために、ヴァルトロは微笑みかけた。

「ジゼル。もし君が困っていることがあるなら、僕や父上に相談してごらん」

 穏やかな声にジゼルはハッと顔を上げる。ヴァルトロの瞳は甘やかすように細められていて、そんな眼差しを向けられた経験のないジゼルは戸惑うと同時に、胸のあたりがくすぐったくなるような感覚を味わった。

「ヴァルトロお兄さま……ありがとうございます」
「いいえ。ほら、たくさん食べて。ジゼルはちょっと細すぎるから心配だよ」

 骨と皮だけのような手首を見てヴァルトロは眉を顰める。
 ジゼルはこくんと小さく頷いて、一口大に切り分けられた肉を頬張った。

「兄貴ィ、なんかコイツに甘くね?」
「そう? 僕はいつもみんなに優しいよ」

 にこやかな笑顔を浮かべるヴァルトロに向け、キリアンは舌を出して「おえー」とおどけてみせた。


 初めて口にする美味しい料理の数々にいちいち感動しているうちに、あっという間に食事の時間は過ぎていった。

 メイドに案内されて部屋へ向かう。今のところひとまず、ジゼルはゲストルームを使うことになっていた。
 執事によると、ヴィンセントの指示でジゼルの部屋を用意してくれているらしい。ただし急遽言いつけられたからまだ間に合っていないのだ、と執事は申し訳なさそうに語っていた。だがジゼルにとっては客室でも十分に豪華だ。
 きらびやかさに圧倒されていると、メイドに声をかけられる。

「お嬢さま、沐浴の準備ができております」
「あ、はいっ、入ります」
「ではお手伝いをさせていただきますね」

 そう言われた瞬間、ジゼルはぶんぶんと首を横に振り拒否を示した。
 予想外の反応を受けて、メイドは目を丸くする。

「ひっ、一人で入れます。着替えも、自分でできます……!」

 ジゼルは自分の身体をぎゅっと抱き締めて、震える声で言った。
 ジゼルのその様子が尋常ではなく、メイドは静々と引き下がる。

 一人で就寝の準備まで済ませたジゼルは、ベッドに寝転がる。天蓋つきの大きなベッドは、ジゼルが5人は寝られそうな大きさだった。ふかふかのベッドと、部屋に漂ういい香りが落ち着かない気分にさせる。
 長い馬車での旅を終え、宿でもずっと気の休まらない時間を過ごしてきた。やっとプライベートな空間に来られたというのに、未だにこの状況が夢なのか現実なのかあやふやなままだ。眠るために無理矢理瞼を閉じたけれど、なかなか眠気はやってきそうにない。

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