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ダンスレッスンはほぼ毎日続き、今やどんな曲でも踊れるほどに、ジゼルのダンスの腕前は上達した。毎日ダンスレッスンを受けているためキリアンとの仲も急激に縮まり、呼び捨ても敬語抜きで話すのも慣れたものだ。
――冬が終わり、とうとうヴァルトロの卒業記念パーティーの日を迎えた。
事前にヴァルトロが手配しておいてくれたドレスを身にまとう。ヴァルトロがジゼルのために選んだのは、彼女の茶髪に馴染む柔らかなラベンダー色のドレスだ。生地を贅沢に何枚も重ねたボリュームのある裾には宝石が散りばめられており、翻したときに美しく見えるようデザインされている。
あくまでも主役は卒業生で、パートナーのジゼルはおまけでしかないのに、見たこともないくらい華やかなドレスに目が眩む。
姿見の前でくるりと回ったジゼルは、キラキラと輝くドレスに夢中なようだった。
「なんて素敵なドレスだろう……。私にはもったいないくらい」
うっとりするほど美しいドレスに怖気づいていると、扉がノックされる。訪ねてきたのは本日の主役でもあるヴァルトロだ。
「わっ! ジゼル、すっごいきれいだね。僕が想像してた以上にこのドレスは君にぴったりだ。扉を開けた瞬間、妖精がいるのかと思ったよ」
「ヴァルトロお兄様……恥ずかしいです」
「あはは! だってジゼルが不安そうな顔してたから。どう? 自信でたんじゃない?」
胸を張るヴァルトロに、ジゼルはクスクスと楽しそうに笑う。確かにオーバーなほどたくさん褒められたおかげで、この豪華なドレスに相応しくなれたような気もしてくる。
「お兄様もとても素敵です」
「せっかくジゼルにパートナーになってもらったから、おそろいにしてみたんだ。あんまりこういう色って着ないんだけど、ジゼルがそう言うならこれからは明るい色も着てみようかな」
ヴァルトロの衣装もラベンダー色を使っているが、華やかなジゼルの装いとは違い、落ち着いた印象になるようデザインされている。
エスター公爵家の男たちは黒い色ばかり身につけているが、明るい色もよく似合っていた。ヴァルトロの柔和な印象が強調され、まるで絵本に出てくる王子様のようだ。
「――――ジゼル」
突然名前を呼ばれてヴァルトロの背後に視線をやると、扉のところに立っていたのはヴィンセントだった。
夏の長期休暇ぶりに会うヴィンセントに恋しい気持ちがわき、ジゼルは思わず駆け寄る。
アカデミーの卒業記念パーティーは、基本的に卒業生の家族も参加するものだ。ヴィンセントがアカデミーに来ることは事前に知っていた。それでもわざわざパーティーの前にジゼルのところに寄ってくれたことがうれしい。
「公爵さま、お久しぶりです」
「ああ。元気そうだな、ジゼル」
ヴィンセントは、ジゼルの姿を頭のてっぺんから足の先まで見回す。舐めるような視線がくすぐったい。
「きれいだ」
直球な褒め言葉に、ジゼルの顔が赤くなる。それをヴィンセントの横で見ていたキリアンは、甘ったるい雰囲気に砂を吐きたい気分だった。
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