幼なじみ公爵の伝わらない溺愛

柴田

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30ー1.通じ合う心 ※

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 その日の夜。いつものようにエドワードを乳母に預けたダリアは、ゆっくりと浴槽で湯に浸かって一日の疲れを癒やしていた。
 まだ湯に浸かり始めてそう経っていないのに、ダリアの顔はのぼせたように真っ赤だ。

(どうしよう。ヘンリーに物凄く溺愛されていたんだって気づいたら、急に顔を合わせるのが恥ずかしくなってきたわ……)

 日中はエドワードがいっしょにいたから気が紛れたけれど、今からは夫婦二人の時間だ。とはいっても出産後も、まだ一度も行為をしていない。夜にだけエドワードを乳母に預けるのは、夫婦の時間を持つためというよりも、身体を休めるためだった。
 エドワードが生まれてからというもの、怒涛のように一日が過ぎ、疲れてすぐに眠ってしまうような生活だったため、そういう雰囲気にすらならなかったのだ。妊娠中にしていたような触れ合いもしていない。

 産後一カ月頃、ダリアは医者からもう夫婦生活をもっても大丈夫だと聞かされていたが、診察のときヘンリーは共にいなかったため、そのことを知らない可能性もある。ダリアから行為に及んでも大丈夫なことを教えてあげなければ、ヘンリーはおそらく手を出してこないだろう。
 きっとヘンリーは、我慢に我慢を重ねている状態に違いない。
 あまりにひさしぶりすぎて、そういった行為に誘う方法を忘れてしまった。恥ずかしい。想像するだけで顔から火が出そうだ。

 ヘンリーは両想いだと知っても、今夜そういうことをするような雰囲気は一切出さなかった。けれど、ダリア自身がヘンリーと抱き合いたいと思っている。

 だって――両想い、である。

 今までと特別何かが変わるわけでもないのに、両想いというだけで気持ちが昂った。ヘンリーがダリアを抱いた一回一回にもうんと愛が込められていたのを実感すると、抱かれたくてたまらなくなり、身体が疼く。

 ダリアは勢いよく浴槽から出ると裸にガウンだけを羽織り、髪もしっかり乾かさないうちに寝室へ急いだ。


 ぐるぐると考え込んでいるうちに長湯しすぎてしまったらしい。ヘンリーはすでに眠っていた。
 ダリアはがっくりと肩を落としながら、ベッドの傍らに立ってヘンリーの寝顔を見下ろす。ヘンリーがダリアより先に寝てしまうことはあまりない。さすがのヘンリーも、慣れない育児に仕事にと疲れているのだろう。

 眠っている顔がエドワードに似ていてかわいい。
 どうやら、ヘンリーの愛が不変のものだと確信してから、ダリアの中でリミッターが外れてしまったようだ。些細なことで胸のときめきが止まらない。
 ヘンリーはいつも自分に対してこのような、もしくはさらに強い感情を抱いているのだろうか。

(とってもムラムラしていて……眠れそうにないわ)

 ヘンリーの明日の予定は、一日中家でのデスクワークだ。多少寝坊しようと自由が利く。
 それに、今のこの強烈な衝動に身を任せでもしないと、自分から誘うなんて恥ずかしくて今後なかなかできないかもしれない。理由をつけてずるずると先延ばしにしてしまい消極的になるよりは、ヘンリーに明日の都合を融通してもらうほうがずっといいだろう。

 一大決心をしたダリアは、ヘンリーの足元から掛け布の中に潜り込んでいった。
 そして引っ込みがつかないところまで辿り着いてしまってから、ヘンリーに断られる可能性を考えていなかったことに思い至る。ダリアは頭を左右に振ってその思考を消し飛ばした。

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