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24話・葛藤と提案(2)
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「ライラ~!! お父様は寂しいぞ……!!」
「お父様、おちついてください……!」
お母様から遊学を提案された一週間後。
号泣しながら抱き着いてくるお父様にぎゅうぎゅうと抱きしめられながら、わたしはなんとか声を上げる。
クラージュ皇国への留学が本決まりになって、わたしはセイラとクーと一緒にクラージュ皇国に行くことになった。
なお、わたしの留学に王子であるクーがついてくる、だと色々と外聞が悪いので、対外的にはクーの留学にわたしがついていく、という形になっている。
セイラはわたし付きの侍女として一緒に来てくれることになった。他にもセイラだけでは手が回らないから、とベテランの侍女が何人かついてくる。
クーのほうも王家で選出した騎士と世話係の侍女が何人か一緒だ。
中でもわたしが驚いたのは。
「先生まで引っ張ってくるなんて……カークさまが困るのではないですか?」
「あの王太子は多少苦労したほうがいい!」
「貴方、声が大きいですよ」
まだ怒っているらしいお父様をお母様がたしなめる。でも、その口調は柔らかい。なんだかんだお母様もカークに思うところがあるんだろうな……カークは悪くないんだけどな……。
わたしとカークやクーの剣術指南の先生ダレエン・リーデレを護衛役として連れていくことになったのだ。
わたしとしては心強いけど、カークは本当に困らないだろうか……。さすがに迷惑をかけすぎている気がして心苦しい。
「異国の地でも元気に過ごすんだよ。お父様もお母様もいつもライラの無事を神に祈っている」
「元気で過ごすのですよ。なにかあったらすぐに連絡をいれなさい」
「ありがとうございます、お父様、お母様」
愛が重いけど、嬉しくもあるから複雑だ。お父様の腕の中で少しだけ苦笑を零す。すると、頭上に影が差した。
「私がついています。滅多なことは起こしません」
「頼んだぞ、リーデレ子爵」
「閣下の期待に応えみせます」
立ち上がったお父様が騎士の礼をする先生の肩を叩く。
ダレエン・リーデレ子爵。剣術指南役である先生は、剣を握って以来一度の負けも知らないという剣豪だ。
三十歳を超える男盛りな先生は茶色の髪を短く切りそろえていて、レモンイエローの瞳を持った闊達な人である。
剣術指南は厳しいが、それ以外では優しい人で、なにか一つできるようになるたびにとても褒めてくれるいい先生だ。
「アラベリア公爵、夫人、僕もかならずライラを守ります」
いままでわたしとお父様のやり取りを黙って見守ってくれていたクーが一歩前に出てそんなことをいう。
正面切ってそんなことを言われると照れてしまう……! 心臓が! 煩い!!
クーの言葉に目を丸くしたお父様が、小さく笑った。
「ありがとうございます、クーリスト殿下。殿下になら、娘を任せても大丈夫そうだ」
お父様は次にセイラへと視線を向けた。
「セイラ、お前にも期待している。異国の地はなにかと大変だろうが、娘を頼んだぞ」
「はい、お任せください!」
元気よく返事をしたセイラが深々とお父様に頭を下げる。
ずっと待たせていた馬車を引く馬が暇なのか嘶きを上げた。それが、合図になった。
「では、お父様。行ってまいります」
「ああ、元気でな」
クーに手を引かれて馬車にのる。
いつまでも手を振ってくれるお父様が見えなくなるまで窓に張り付いていたけど、お父様が見えなくなったので窓から視線を外すとクーが微笑ましそうに笑っていた。
「ライラは御父上が大好きなんだね」
「えっと……はい、好きです」
照れくさかったけど、否定する理由もない。わたしが頷くと、クーはにこにこと笑いながら「僕も大変だったよ」と口にする。
「兄上が、それはもう大号泣で……僕とライラが一緒に留学だなんてこの一年は地獄だ、なんて騒いでシーフルに怒られていた」
「まぁ」
口元に手を当ててくすりと笑う。
クーが大好きなカークらしい。目の裏にその様子が浮かぶようだ。
「クーさま、慣れない土地で一年過ごすのは大変かもしれませんが、どうぞ、遠慮なくわたしをたよってくださいね」
「それをいうなら、僕を頼って、だよ。ライラ」
クーの手が伸ばされて、頬にかかっていた髪を耳元にかける。
普段触れてくることが珍しいクーの仕草にわたしがきょとんとしていると、クーはわたしの右手を取って、唇を落とした。
「大切な僕の婚約者さま。これから一年、よろしくね」
「~~っ!」
気障な台詞だ。でも、この上なく似合っている。かっこいい。
心臓が爆発しそうで、わたしは真っ赤な顔でこくこくと頷くのに精いっぱいだった。
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