【完結】氷の王子様は死ぬ運命?!ー異世界転生したので推しの運命変えてみせますー

久遠れん

文字の大きさ
31 / 33

24話・葛藤と提案(2)

しおりを挟む

 * * *

「ライラ~!! お父様は寂しいぞ……!!」
「お父様、おちついてください……!」

 お母様から遊学を提案された一週間後。

 号泣しながら抱き着いてくるお父様にぎゅうぎゅうと抱きしめられながら、わたしはなんとか声を上げる。

 クラージュ皇国への留学が本決まりになって、わたしはセイラとクーと一緒にクラージュ皇国に行くことになった。

 なお、わたしの留学に王子であるクーがついてくる、だと色々と外聞が悪いので、対外的にはクーの留学にわたしがついていく、という形になっている。

 セイラはわたし付きの侍女として一緒に来てくれることになった。他にもセイラだけでは手が回らないから、とベテランの侍女が何人かついてくる。

 クーのほうも王家で選出した騎士と世話係の侍女が何人か一緒だ。
 中でもわたしが驚いたのは。

「先生まで引っ張ってくるなんて……カークさまが困るのではないですか?」
「あの王太子は多少苦労したほうがいい!」
「貴方、声が大きいですよ」

 まだ怒っているらしいお父様をお母様がたしなめる。でも、その口調は柔らかい。なんだかんだお母様もカークに思うところがあるんだろうな……カークは悪くないんだけどな……。

 わたしとカークやクーの剣術指南の先生ダレエン・リーデレを護衛役として連れていくことになったのだ。

 わたしとしては心強いけど、カークは本当に困らないだろうか……。さすがに迷惑をかけすぎている気がして心苦しい。

「異国の地でも元気に過ごすんだよ。お父様もお母様もいつもライラの無事を神に祈っている」
「元気で過ごすのですよ。なにかあったらすぐに連絡をいれなさい」
「ありがとうございます、お父様、お母様」

 愛が重いけど、嬉しくもあるから複雑だ。お父様の腕の中で少しだけ苦笑を零す。すると、頭上に影が差した。

「私がついています。滅多なことは起こしません」
「頼んだぞ、リーデレ子爵」
「閣下の期待に応えみせます」

 立ち上がったお父様が騎士の礼をする先生の肩を叩く。
 ダレエン・リーデレ子爵。剣術指南役である先生は、剣を握って以来一度の負けも知らないという剣豪だ。
 三十歳を超える男盛りな先生は茶色の髪を短く切りそろえていて、レモンイエローの瞳を持った闊達な人である。

 剣術指南は厳しいが、それ以外では優しい人で、なにか一つできるようになるたびにとても褒めてくれるいい先生だ。

「アラベリア公爵、夫人、僕もかならずライラを守ります」

 いままでわたしとお父様のやり取りを黙って見守ってくれていたクーが一歩前に出てそんなことをいう。

 正面切ってそんなことを言われると照れてしまう……! 心臓が! 煩い!!

 クーの言葉に目を丸くしたお父様が、小さく笑った。

「ありがとうございます、クーリスト殿下。殿下になら、娘を任せても大丈夫そうだ」

 お父様は次にセイラへと視線を向けた。

「セイラ、お前にも期待している。異国の地はなにかと大変だろうが、娘を頼んだぞ」
「はい、お任せください!」

 元気よく返事をしたセイラが深々とお父様に頭を下げる。
 ずっと待たせていた馬車を引く馬が暇なのか嘶きを上げた。それが、合図になった。

「では、お父様。行ってまいります」
「ああ、元気でな」

 クーに手を引かれて馬車にのる。
 いつまでも手を振ってくれるお父様が見えなくなるまで窓に張り付いていたけど、お父様が見えなくなったので窓から視線を外すとクーが微笑ましそうに笑っていた。

「ライラは御父上が大好きなんだね」
「えっと……はい、好きです」

 照れくさかったけど、否定する理由もない。わたしが頷くと、クーはにこにこと笑いながら「僕も大変だったよ」と口にする。

「兄上が、それはもう大号泣で……僕とライラが一緒に留学だなんてこの一年は地獄だ、なんて騒いでシーフルに怒られていた」
「まぁ」

 口元に手を当ててくすりと笑う。
 クーが大好きなカークらしい。目の裏にその様子が浮かぶようだ。

「クーさま、慣れない土地で一年過ごすのは大変かもしれませんが、どうぞ、遠慮なくわたしをたよってくださいね」
「それをいうなら、僕を頼って、だよ。ライラ」

 クーの手が伸ばされて、頬にかかっていた髪を耳元にかける。
 普段触れてくることが珍しいクーの仕草にわたしがきょとんとしていると、クーはわたしの右手を取って、唇を落とした。

「大切な僕の婚約者さま。これから一年、よろしくね」
「~~っ!」

 気障な台詞だ。でも、この上なく似合っている。かっこいい。
 心臓が爆発しそうで、わたしは真っ赤な顔でこくこくと頷くのに精いっぱいだった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~

翡翠蓮
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……

政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~

巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!? //////////////////////////////////////////////////// 悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。 しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。 琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇! ※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……? ※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。 ※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。 隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)

透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。 有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。 「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」 そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて―― しかも、彼との“政略結婚”が目前!? 婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。 “報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

本の虫令嬢ですが「君が番だ! 間違いない」と、竜騎士様が迫ってきます

氷雨そら
恋愛
 本の虫として社交界に出ることもなく、婚約者もいないミリア。 「君が番だ! 間違いない」 (番とは……!)  今日も読書にいそしむミリアの前に現れたのは、王都にたった一人の竜騎士様。  本好き令嬢が、強引な竜騎士様に振り回される竜人の番ラブコメ。 小説家になろう様にも投稿しています。

【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り

楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。 たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。 婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。 しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。 なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。 せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。 「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」 「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」 かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。 執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?! 見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。 *全16話+番外編の予定です *あまあです(ざまあはありません) *2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪

処理中です...