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2話・ステラ(2)
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「シェリア、人にはそれぞれ譲れないものがある。それは人によって違うと教えただろう。そういう態度は感心しない」
「……はい」
ステラの窘める言葉に僅かに間は空いたものの素直に頷いたシェリアに目元を和ませる。
「わかったなら、いうべき言葉があるだろう」
それでも言葉は厳しく伝えれば、シェリアは向かいに座るリースに向き直った。
初対面が初対面だったので、思わずといった様子で表情を硬くするリースにシェリアは簡潔に一言。
「ごめんなさい、私が悪かったわ」
と謝罪の言葉を告げ頭を下げた。呆気にとられた様子のリースの前でシェリアの頭を撫でてやる。
そろっと上目遣いに見上げてくるシェリアに一つ頷けば、シェリアはほっとした面持ちで顔を上げた。
「弟子の非礼は私からも詫びよう。すまないな」
告げて頭を下げれば、あたふたとした気配。それでも頭を下げ続けていれば、やがて困ったような、不貞腐れたような声が振ってきた。
「頭なんて下げなくていいよ。そういうの……慣れてないから」
「だが、礼儀は大事だ。日常においても剣術においても、な」
僅かに含みを持たせた言い方をすれば、リースははっとした表情になる。聡い子供だと、ほんの少し口角を上げて、ステラは告げた。
「一方的に名を聞くのはフェアではないな。知っているようだが、名乗らせてもらおう。ステラという。剣士として傭兵を生業に世界を旅している」
「シェリア・ウールよ。本来は魔術師、でも今は先生と一緒に旅をしながら剣術を学んでいるわ。一応この間、見習いを卒業したところよ」
ステラとシェリアの真っ直ぐな視線にたじろいだ様子をみせたが、それでも確りと自分で自分を取り戻して、やや大きな声でリースは胸を張って宣言した。
「俺はリース・シカレット! 夢は世界で一番強い剣豪になることだ! そして皇宮に仕えるんだ!!」
と、大声で宣言したはいいものの、恥ずかしいのかステラとシェリアの反応が気になるのかちらと二人に視線をよこす様は微笑ましくもあった。
「そうか、それは胸を張っていい夢だな」
「ほ、ほんとか?!」
「ああ。なんだ、恥じることでもあるのか?」
身を乗り出して確認を取るリースに、ステラが逆に真顔で問い返せば、リースは視線を泳がせてぼそぼそと小声で呟くように弱音を吐いた。
「だって、こんな、辺境の村の、農家の子供が、剣士とか、皇宮務めとか、普通、馬鹿に、するだろ……」
そんな弱音をはんと笑い飛ばしたのはステラの隣に座るシェリアだ。
「出自が何? そんなものいいハンデじゃない」
強気な発言に自然とリースの視線がシェリアに向かう。シェリアは交戦的な笑みを浮かべてぴっと人差し指をリースの鼻先に向けた。
「いい、出自がどうのこうの言う奴らはね、自分に自信がないだけ、そうじゃなければいいわけをしないといけないくらい弱いだけよ。そんな奴ら、気にするだけ無駄なのよ」
力強く言い切った姿はリースに噛み付いていたのとはまた種類の違う強さがあった。
シェリアの出自を知るからこそ、ステラは精神的にも強さを身に着けた愛弟子に心が温かくなる。
* * *
出自など関係ない。したいことをすればいい。
なにを恐れることがある、己に自信を持てば胸を張って生きていける。
それは幼い頃からステラが胸に抱き続け、今なお大切に胸に抱き、掲げている言葉だった。
強くなったな、と思う。肉体的にはもちろん、精神的にも。それがとてもうれしい。
弟子は幾人かとってきたが、シェリアがもっとも長く続いた弟子だった。それだけに感慨も深いというものだ。
一人内心でうむうむと頷いているステラの前で、シェリアの言葉をかみ締めるように神妙な面持ちをしていたリースは勢いよく顔を上げるやいなや、イスから立ち上がり、机に叩きつける様に手を載せて思い切り頭を下げた。
木の机に頭をぶつけた、ゴン!といういかにも痛そうな音が室内に響いた。
「金色の剣士、ステラ師匠にお願いします! どうか、俺を弟子にしてください……!」
痛切なほどの懇願を、断る理由はステラにはない。
だからステラはそっと手を伸ばして机の上で震えているリースの手の甲に手のひらを乗せた。
「いいだろう。現時点をもって、お前は私の弟子だ」
告げれば、ぱっと顔を上げたリースが顔を輝かせている。そこに、すかさず、だが、とステラは付け足した。
「泣き言を言った時点で、破門とする。……私は厳しいぞ、ついてこれるか?」
にやりと挑発的に笑えば、こちらも挑戦的な眼差しで返されて、ステラは満足気に頷いた。
「……はい」
ステラの窘める言葉に僅かに間は空いたものの素直に頷いたシェリアに目元を和ませる。
「わかったなら、いうべき言葉があるだろう」
それでも言葉は厳しく伝えれば、シェリアは向かいに座るリースに向き直った。
初対面が初対面だったので、思わずといった様子で表情を硬くするリースにシェリアは簡潔に一言。
「ごめんなさい、私が悪かったわ」
と謝罪の言葉を告げ頭を下げた。呆気にとられた様子のリースの前でシェリアの頭を撫でてやる。
そろっと上目遣いに見上げてくるシェリアに一つ頷けば、シェリアはほっとした面持ちで顔を上げた。
「弟子の非礼は私からも詫びよう。すまないな」
告げて頭を下げれば、あたふたとした気配。それでも頭を下げ続けていれば、やがて困ったような、不貞腐れたような声が振ってきた。
「頭なんて下げなくていいよ。そういうの……慣れてないから」
「だが、礼儀は大事だ。日常においても剣術においても、な」
僅かに含みを持たせた言い方をすれば、リースははっとした表情になる。聡い子供だと、ほんの少し口角を上げて、ステラは告げた。
「一方的に名を聞くのはフェアではないな。知っているようだが、名乗らせてもらおう。ステラという。剣士として傭兵を生業に世界を旅している」
「シェリア・ウールよ。本来は魔術師、でも今は先生と一緒に旅をしながら剣術を学んでいるわ。一応この間、見習いを卒業したところよ」
ステラとシェリアの真っ直ぐな視線にたじろいだ様子をみせたが、それでも確りと自分で自分を取り戻して、やや大きな声でリースは胸を張って宣言した。
「俺はリース・シカレット! 夢は世界で一番強い剣豪になることだ! そして皇宮に仕えるんだ!!」
と、大声で宣言したはいいものの、恥ずかしいのかステラとシェリアの反応が気になるのかちらと二人に視線をよこす様は微笑ましくもあった。
「そうか、それは胸を張っていい夢だな」
「ほ、ほんとか?!」
「ああ。なんだ、恥じることでもあるのか?」
身を乗り出して確認を取るリースに、ステラが逆に真顔で問い返せば、リースは視線を泳がせてぼそぼそと小声で呟くように弱音を吐いた。
「だって、こんな、辺境の村の、農家の子供が、剣士とか、皇宮務めとか、普通、馬鹿に、するだろ……」
そんな弱音をはんと笑い飛ばしたのはステラの隣に座るシェリアだ。
「出自が何? そんなものいいハンデじゃない」
強気な発言に自然とリースの視線がシェリアに向かう。シェリアは交戦的な笑みを浮かべてぴっと人差し指をリースの鼻先に向けた。
「いい、出自がどうのこうの言う奴らはね、自分に自信がないだけ、そうじゃなければいいわけをしないといけないくらい弱いだけよ。そんな奴ら、気にするだけ無駄なのよ」
力強く言い切った姿はリースに噛み付いていたのとはまた種類の違う強さがあった。
シェリアの出自を知るからこそ、ステラは精神的にも強さを身に着けた愛弟子に心が温かくなる。
* * *
出自など関係ない。したいことをすればいい。
なにを恐れることがある、己に自信を持てば胸を張って生きていける。
それは幼い頃からステラが胸に抱き続け、今なお大切に胸に抱き、掲げている言葉だった。
強くなったな、と思う。肉体的にはもちろん、精神的にも。それがとてもうれしい。
弟子は幾人かとってきたが、シェリアがもっとも長く続いた弟子だった。それだけに感慨も深いというものだ。
一人内心でうむうむと頷いているステラの前で、シェリアの言葉をかみ締めるように神妙な面持ちをしていたリースは勢いよく顔を上げるやいなや、イスから立ち上がり、机に叩きつける様に手を載せて思い切り頭を下げた。
木の机に頭をぶつけた、ゴン!といういかにも痛そうな音が室内に響いた。
「金色の剣士、ステラ師匠にお願いします! どうか、俺を弟子にしてください……!」
痛切なほどの懇願を、断る理由はステラにはない。
だからステラはそっと手を伸ばして机の上で震えているリースの手の甲に手のひらを乗せた。
「いいだろう。現時点をもって、お前は私の弟子だ」
告げれば、ぱっと顔を上げたリースが顔を輝かせている。そこに、すかさず、だが、とステラは付け足した。
「泣き言を言った時点で、破門とする。……私は厳しいぞ、ついてこれるか?」
にやりと挑発的に笑えば、こちらも挑戦的な眼差しで返されて、ステラは満足気に頷いた。
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