【完結】守護龍の寵愛、傭兵ステラの長い旅路〜次期守護龍候補の赫き竜〜

久遠れん

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12話・精霊

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 持ち帰った肉は皮とともにスカッツラ率いるキャラバンに引き取られた。

 肉の分値引きされた剣を剣帯とともに買い求めて、今では確りとリースの腰に下がっている。

 リースは右利きなので左側に下げているのだが、慣れない重さに自重が偏って気を張って歩かないとふらついてしまう。

 それも慣れだというステラに素直に頷く。

「風呂以外では常に肌身離さず身につけろ。剣の感覚を覚えるんだ。そこにある、自分の片割れ、その存在なくして己は存在できない。というところまで剣の存在を刷り込め」

 との言葉ももらった。

 同時に。

「これほどの名剣が手に入るとは思っていなかった」

 とぽつりと呟いていたので、やはりかなりいい業物であることもわかった。

 シェリアがステラにたずねたところによると、とりあえず、ここで適当な剣を見繕い後は旅をする中でリースにあうものを探す予定だったのだというから、運がいいとしか言いようがない。

 しかも精霊の加護つきの剣だ。

 ただし、剣の柄にある精霊の石はいまだ孵化していない状態なので、現状は普通の剣と変わりがない。石が孵化し精霊が生まれれば、その精霊はリースの唯一無二のパートナーとなることはステラとシェリアに教えられた。

 精霊という存在はアルドリア国ほどコルタリア皇統国では身近なものではないが、それでも生活に根付いた存在ではある。

 農村での生活でも村長は自身のパートナーたる精霊をもっていたという話であったし、極々まれにだが、リースも精霊と思しき存在を目にすることがあった。

 そういった日はたいていの場合とても運がいい日で、なにをやっても上手くいく。コルタリア皇統国の守護龍ほどではないが、精霊もまた信仰の一部であることに変わりはなかった。

 だが、守護龍信仰の根強い最果ての村では精霊は忌むべきものという考え方も大きく、村長はおおっぴらにその事実をあかしはしなかった。ただ、リースの境遇に同情してか、こそりと教えてくれたことがあるくらいだ。

 自身の剣に宿る精霊は火の属性だという説明もシェリアから受け、一日の鍛練を終え宿屋で夕食も済ませたリースは何気ない疑問として二人に投げかけた。

「師匠は精霊をどれくらい見ることが出来るんですか?」

 精霊をその瞳に写せるものはコルタリア皇統国ではごく一部だ。魔術と精霊の国たるアルドリア国では国民の九十八%が精霊を大なり小なり見ることができるというが、竜を信仰するコルタリア皇統国では良くて国民の半分の割合だろう。

 それもリースのようにたまに目にするものから日常的に目にしているもの、最も高等な者では直接精霊と話すことができるものまで様々だ。

 だからこその問いに食後の紅茶を口にしていたステラは微苦笑を浮かべた。

「私はあまりそっちの方面には才がなくてな。日がいいときに時折視認できる程度だ」
「え? でも村でえーっと確か、風の精? を使ってましたよね」
「アレは兄が間を取り持ってくれたんだよ。私一人の力で契約したわけではないし、そもそも滅多に頼むこともない。基本的に精霊は自由気ままだからな」

 村で見た一件を口にすれば軽く肩をすくめての返答だ。そういえば、礼だといっていたりんごが一人でに宙をくるくる回っているのを翌日に見た覚えがある。

「その点はシェリアのほうが優秀だぞ」
「……そう、なのか?」

 嫌いではないが、出会いが出会いだったために苦手意識がぬぐえず、さらにはシェリア自身がなにかと突っかかるような物言いのため、僅かに顔を顰めながら、それでもシェリアに問いかければシェリアはふんと鼻を鳴らした。

「私は魔術師だけどね。基本的な精霊学も学んでいるわ。魔術と精霊術は表裏一体だから」
「そうなのか?」
「……魔術師は自分の内の力を使う人を指す、反対に精霊術師は自分の外、外界の力を使う。まぁ、平たく言えば魔術師は体内に温存している魔力で戦って、精霊術師は精霊の力を借りて戦うってところね」

 つっけんどんな言い方ではあれど、シェリアはリースが尋ねたことに対して答えなかったことはない。

 いまさらながらそんなことに思い至って、リースはこれまた好奇心で尋ねた。

「なぁ、お前俺を嫌ってるのに、質問には律儀に答えてくれるよな。どうしてだ?」
「……」

 流石に沈黙が返ってきたが、それでも反応を待っているとシェリアはため息を吐いて紅茶の入ったカップをテーブルに置いた。

「自身で招いていない理由から来る、無知は罪ではないわ。知る機会があるなら、知っておくに越したことはない。……ただ、それだけよ」

 その伏せられた瞳が、どうしてだか、とても悲しそうだったから。

 リースは本能的に踏み込んではいけない場所に足を踏み入れたのだと悟らざるを得なかった。

 言葉を見つけられないでいるリースの前で影が動く。ステラだ。

「まぁ、そういうことだ。学がないのも、知識がないのも仕方がない。その都度たずねて覚えていけばいいだけのことだ」

 だからあまり気にすることはないとリースに告げ、どこか気落ちした様子のシェリアの頭を優しく撫でて立ち上がる。

「さ、今日はもう寝るぞ。明日も早いんだから」

 この村には一泊するだけで明日の早朝の鍛練が終わればすぐに出立すると告げられていたシェリアとリースに否はない。

 特にリースは夕食前にした鍛練の効果もあって眠くてたまらなかった部分もあったので、シェリアの様子は気になったものの大人しく宛がわれた部屋に引っ込んだ。
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