【完結】守護龍の寵愛、傭兵ステラの長い旅路〜次期守護龍候補の赫き竜〜

久遠れん

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20話・精霊の化石

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 中々手ごろな石が見つからず、戻ってきた頃には朝日も昇りきりステラとシェリアは宿屋で朝食を取っていた。汚れた手を洗って、ついでに石も洗ってシェリアに差し出せば、覗き込んだステラが目を見張った。

「お前は面白いものを拾ってくるな」

 剣といい、それといい。

 つげられた言葉にリースが首をかしげると、シェリアがはああああ、と盛大なため息を吐き出す。

 それにむっとして「なんだよ」と突っかかってしまうのは、それだけ必死に探したからこそだ。

「ほんと、どこで見つけてくるのかしら。……ソレ、精霊の化石よ」
「?!」

 思わず声もないほどに驚いて手の中の琥珀色の石を見つめてしまうリースだ。

 確かに土に半分以上埋もれているのが朝日に反射して綺麗で掘り返してみたら、サイズ的にも中々によさそうだったので持って帰ってきたのだが、色も綺麗だなぁと思ってはいたが。

 だが、ここで一つ問題がある。

 リースは精霊の化石、という名前は知っていても実際がどういうものなのか知らないのだ。

 そんなリースの思考を先読みしたように、朝食のスープを口に運ぶ手を止めてシェリアがため息混じりに説明をする。

「精霊の化石は、本来世界を循環する存在である精霊がなんらかの外的要因によって眠りについた状態のことのものを指すのよ」
「……精霊の石とどうちがうんだ?」
「精霊の石は精霊が生まれる前の状態。精霊の化石は、まぁ、いわば仮死状態ね。といってもどちらも持ち主次第で目を覚ますわ。色合い的に、これは土属性かしら」
「そうだろうな。どのような場所でみつけた?」
「えっと、村からちょっとはなれた街道外れの木の下、あたりです」
「なら、木の精の可能性もあるか……シェリア、木の精の場合、その場から動かして大丈夫だったか?」

 え、もしかしてもってきちゃダメだったのか?! とぎょっと目を見開いたリースの前でステラの問いにシェリアはこくりと頷いた。

「はい、問題ないと思います。目覚めたときに万が一、宿り木を必要とするようなら、そのあたりで適当な木をみつければいいですし。コルタリア皇統国はアルドリア国と違い、全ての木々に精霊が宿っているわけではありませんから」
「そう考えると、あの国も特殊だよ」
「あちらからすれば、この国のほうが特殊でしょうけどね」

 と、リースにはいまいちわからない言葉の応酬からとりあえずもっていても問題はないことは理解したリースだが、石を持ってこいと言われて化石をもってきてしまったので、これはまた探しなおしか、と肩を落とす。

「でも、術をかけるにはとてもいい媒体だわ。まぁ、魔術はかけられないけど、初歩的な精霊術なら問題ないし」
「ほ、ほんとか?!」
「嘘いってどうするのよ。ほら、貸しなさい」

 そういって差し出されたシェリアの手にそっと精霊の化石だという琥珀の石をのせる。

 シェリアは両手で琥珀の石をもって目をつむると詠唱を紡いだ。

「チェザーチェーザーチェザーワン」

 仄かに琥珀の化石が光り輝く。

 ステラが上手く陰になったおかげで光は他の宿泊客達の目には留まらなかったようだ。

「はい、終わり。この化石の光が差すほうに進めば私と先生がいるから。精々がんばるのね」

 ぽいっと投げるように渡されて、慌てて受け取る。

 もっと丁寧に扱えよと文句を言いたいのは山々だが、こうやって追いつけるように術をかけてもらった手前文句も言えない。

 非常に微妙な顔をして礼を一応述べると見計らったかのようにステラが告げた。

「ほら、朝の鍛練がまだだろう。さっさといってこい。お前の分の路銀はお前の部屋においてきた。私達は朝食を食べ次第、発つからな」
「はい!あ、そうだ。シェリア。服は燃やさない。しばらく持って歩く」

 戒めだ、と神妙な面持ちで続けたリースにシェリアは浅く頷いた。本人が納得してそれを選ぶならそれでいい。

 やり取りの後、琥珀の化石を懐にしまい慌しく出て行った後姿を見送ってスープを口に運ぶステラにシェリアはこそっとした声でたずねた。

「先生、今日は食料品の補充をするっていってませんでしたか?」
「うん?そうだったかな」

 にこりと笑われてしまえば、それ以上はステラもなにもいえない。やれやれと肩をすくめていいように遊ばれているなぁと初めて若干の同情をリースに抱いたのだった。
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