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21話・赫き竜(1)
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太陽の輝きも眩しい昼間。体はへとへとだが、食事を取るのも惜しいと宿を飛び出そうとしたリースは「どこにいくんだ?」という聞きなれた声に呼び止められた。
思わずぎこちない仕草で振り返れば、そこには昼食であろうラグーの煮込みを食べているステラとシェリアの姿。
「え、あれ?師匠たち、どうして」
「急用がはいってな。これを食べたら出るつもりだった」
しれっと答えるステラにシェリアは内心でよく言いますね、とため息をついた。ステラがリースを待っていたのは明らかだ。
普段ならぱぱっと終える買い物に無駄に時間をかけていたもの、一瞥もくれることのない装飾品の店に立ち寄ってわざと時間を潰していたことも知っている。
だが、それをリースに教えるよりもシェリアは言いたいことがあった。
「リース、私アンタに光の指すほうに行けっていったでしょ。どうして確かめないのよ」
じろり、とジト目で見つめれば、リースはわたわたとしながら懐の琥珀色の化石を取り出す。淡く光るそれは確かにステラとシェリアの座るテーブルのほうへ向かって光っていた。言い訳のしようもない。
「……悪かった」
「一回で覚えたら、まぁ、苦労はしないわよね。いいわよ、さっさと何か頼んで食べちゃいなさい。先生もそれくらいまってくれるわよ」
「ああ」
シェリアの言葉に頷いたステラにこれ幸いと部屋から持ってきた路銀の金を出して、クラベッハのバター焼きを頼む後姿に、シェリアはこっそりとため息を吐き出した。
食事を終えてようやく出発となった。
リースの分も買い込んであった日持ちのする食料はリースの分だけ分けて入れて、次の街まで歩きで二週間だ。
長く歩くが、その分次は村ではなく街ということでそれを教えられてからリースは落ち着きがない。
街といっても小さなもので帝都には遠く及ばんぞ、とステラが釘をさしてもそわそわしているのだから、憧れというものは簡単に拭い去れるものではない。
一日歩き通し、特に問題なく夕暮れを迎え早めにテントをはって猛獣よけの術をしき、ステラとシェリアは夜の鍛練を、リースもまた課せられた課題をこなし終え、当たり前だが先に終わっていたステラとシェリアがリースが終わるのにあわせて食事を炊いてそれを食べる。
なんの変哲もない日々は一週間は続いた。
食後にリースがへばってすぐに落ちるように眠るので魔術、精霊術の講義は行われていないことが変更点といえば変更点だが、そこらへんは二人とも承知の範囲だったのでとくにリースには何もいっていないが、当の本人が酷く悔しそうだったので、さすがに見かねたステラが道中に口頭で説明できることだけ教えてやってくれとシェリアに告げたのだ。
剣の重さにも慣れ真っ直ぐ歩けるようになったリースに、シェリアは口頭でまずは専門の魔術の講義をおこなっているのだが、これが中々にリースは吸収がいい。
わからないところは恥じることなく聞き返すし、一度聞けば何度か反芻した後は忘れない。
シェリアが危惧したほど頭の出来も悪くなく、そもそも一人で敬語を練習して身につけている点からして、元の頭の回転もいいのだろうと思っていた。
「だから、魔術的には火の元素は火種と成るものがあったほうが楽なのよ」
「それって精霊術の範囲じゃないのか?」
「そうでもあるけど、言ったでしょ、魔術と精霊術は表裏一体。重なる部分もどうしても出てくるの。元々力をどこから引き出すかが違うだけで、最終的にやることは同じだっていう人もいるくらいなんだから」
「へぇ」
感心したように頷くリースはいまだ剣を抜かせての稽古をさせないステラにも文句を言わないし、シェリアにも講義の面では素直になるいい生徒だった。
そうこうしているうちに、平和な旅路は二週間を終え、新たな街、オールラドンにきた。
「うわああああ、すげええええ」
「ここは西への最後の中継地点にもなっているからな。商人が多い」
ステラの説明に目をキラキラと輝かせながらあっちこっちへと視線を向ける。シェリアはきたことがあるので、そこまであからさまではないが、やはり興味はある。視線はばれない程度に泳いでいる。
「五日ほど滞在する予定だ」
「五日、ですか?」
その言葉に振り返ったリースが不思議そうにする。今まで村への滞在はほぼ一泊だったからだろう。
「手持ちに不足はないが、一応路銀も稼がねばならんしな。適当な場所で稼いで来る」
「え?例えばどんなところですか?」
「んー、まぁ、大抵は飲み屋だな。ここにも馴染みの店がいくつかある」
大柄ないかにも傭兵という男がいると客が萎縮して困る。かといって、酔った勢いで客が暴れだしたとき押さえられないのも困る。という店にステラは人気があるのだ。
そのあたりをシェリアが説明し、リースがほうほうと聞いているのを聞き流しながら、さて、どこの店に顔を出そうかとステラは思案する。
たいていの場合、そういう店は馴染みの傭兵をやとっているものだが、ステラがいけば、その傭兵に臨時休暇をだしてやれるということで喜ばれるのだ。
ひとまず、近い場所から顔を出して行こうと決めて歩き出そうとしたステラの胸元がふいに光りだした。
眉を顰めてステラは正反対、街の外へきびすを返す。
「師匠?」
「悪い、そこで待っていてくれ」
突然の方向転換に戸惑うリースに、ステラの押さえられた胸元が光っていることに気付いたシェリアが無言で急かす。
軽く手を上げてステラは急ぎ足で群衆の間を抜け出した。
そして街の外の人に話を聞かれないだろう場所まできて、胸元からペンダントを取り出す。
ステラの瞳の色にあわせたイエロー・ダイヤの嵌められた大振りのペンダントは魔術師の使う魔術の媒介だ。
教えられた作法でペンダントの上で指を動かせば、ぼうっとペンダントの上に人の顔が浮かび上がり、徐々に鮮明になっていく。
『よかった、ちゃんと繋がりましたね』
「どうした、ラキト。お前がこれを使うなど、よっぽどだろう」
ほっと息を吐く幼馴染で親友のラキトに、ステラはますます眉を寄せる。
思わずぎこちない仕草で振り返れば、そこには昼食であろうラグーの煮込みを食べているステラとシェリアの姿。
「え、あれ?師匠たち、どうして」
「急用がはいってな。これを食べたら出るつもりだった」
しれっと答えるステラにシェリアは内心でよく言いますね、とため息をついた。ステラがリースを待っていたのは明らかだ。
普段ならぱぱっと終える買い物に無駄に時間をかけていたもの、一瞥もくれることのない装飾品の店に立ち寄ってわざと時間を潰していたことも知っている。
だが、それをリースに教えるよりもシェリアは言いたいことがあった。
「リース、私アンタに光の指すほうに行けっていったでしょ。どうして確かめないのよ」
じろり、とジト目で見つめれば、リースはわたわたとしながら懐の琥珀色の化石を取り出す。淡く光るそれは確かにステラとシェリアの座るテーブルのほうへ向かって光っていた。言い訳のしようもない。
「……悪かった」
「一回で覚えたら、まぁ、苦労はしないわよね。いいわよ、さっさと何か頼んで食べちゃいなさい。先生もそれくらいまってくれるわよ」
「ああ」
シェリアの言葉に頷いたステラにこれ幸いと部屋から持ってきた路銀の金を出して、クラベッハのバター焼きを頼む後姿に、シェリアはこっそりとため息を吐き出した。
食事を終えてようやく出発となった。
リースの分も買い込んであった日持ちのする食料はリースの分だけ分けて入れて、次の街まで歩きで二週間だ。
長く歩くが、その分次は村ではなく街ということでそれを教えられてからリースは落ち着きがない。
街といっても小さなもので帝都には遠く及ばんぞ、とステラが釘をさしてもそわそわしているのだから、憧れというものは簡単に拭い去れるものではない。
一日歩き通し、特に問題なく夕暮れを迎え早めにテントをはって猛獣よけの術をしき、ステラとシェリアは夜の鍛練を、リースもまた課せられた課題をこなし終え、当たり前だが先に終わっていたステラとシェリアがリースが終わるのにあわせて食事を炊いてそれを食べる。
なんの変哲もない日々は一週間は続いた。
食後にリースがへばってすぐに落ちるように眠るので魔術、精霊術の講義は行われていないことが変更点といえば変更点だが、そこらへんは二人とも承知の範囲だったのでとくにリースには何もいっていないが、当の本人が酷く悔しそうだったので、さすがに見かねたステラが道中に口頭で説明できることだけ教えてやってくれとシェリアに告げたのだ。
剣の重さにも慣れ真っ直ぐ歩けるようになったリースに、シェリアは口頭でまずは専門の魔術の講義をおこなっているのだが、これが中々にリースは吸収がいい。
わからないところは恥じることなく聞き返すし、一度聞けば何度か反芻した後は忘れない。
シェリアが危惧したほど頭の出来も悪くなく、そもそも一人で敬語を練習して身につけている点からして、元の頭の回転もいいのだろうと思っていた。
「だから、魔術的には火の元素は火種と成るものがあったほうが楽なのよ」
「それって精霊術の範囲じゃないのか?」
「そうでもあるけど、言ったでしょ、魔術と精霊術は表裏一体。重なる部分もどうしても出てくるの。元々力をどこから引き出すかが違うだけで、最終的にやることは同じだっていう人もいるくらいなんだから」
「へぇ」
感心したように頷くリースはいまだ剣を抜かせての稽古をさせないステラにも文句を言わないし、シェリアにも講義の面では素直になるいい生徒だった。
そうこうしているうちに、平和な旅路は二週間を終え、新たな街、オールラドンにきた。
「うわああああ、すげええええ」
「ここは西への最後の中継地点にもなっているからな。商人が多い」
ステラの説明に目をキラキラと輝かせながらあっちこっちへと視線を向ける。シェリアはきたことがあるので、そこまであからさまではないが、やはり興味はある。視線はばれない程度に泳いでいる。
「五日ほど滞在する予定だ」
「五日、ですか?」
その言葉に振り返ったリースが不思議そうにする。今まで村への滞在はほぼ一泊だったからだろう。
「手持ちに不足はないが、一応路銀も稼がねばならんしな。適当な場所で稼いで来る」
「え?例えばどんなところですか?」
「んー、まぁ、大抵は飲み屋だな。ここにも馴染みの店がいくつかある」
大柄ないかにも傭兵という男がいると客が萎縮して困る。かといって、酔った勢いで客が暴れだしたとき押さえられないのも困る。という店にステラは人気があるのだ。
そのあたりをシェリアが説明し、リースがほうほうと聞いているのを聞き流しながら、さて、どこの店に顔を出そうかとステラは思案する。
たいていの場合、そういう店は馴染みの傭兵をやとっているものだが、ステラがいけば、その傭兵に臨時休暇をだしてやれるということで喜ばれるのだ。
ひとまず、近い場所から顔を出して行こうと決めて歩き出そうとしたステラの胸元がふいに光りだした。
眉を顰めてステラは正反対、街の外へきびすを返す。
「師匠?」
「悪い、そこで待っていてくれ」
突然の方向転換に戸惑うリースに、ステラの押さえられた胸元が光っていることに気付いたシェリアが無言で急かす。
軽く手を上げてステラは急ぎ足で群衆の間を抜け出した。
そして街の外の人に話を聞かれないだろう場所まできて、胸元からペンダントを取り出す。
ステラの瞳の色にあわせたイエロー・ダイヤの嵌められた大振りのペンダントは魔術師の使う魔術の媒介だ。
教えられた作法でペンダントの上で指を動かせば、ぼうっとペンダントの上に人の顔が浮かび上がり、徐々に鮮明になっていく。
『よかった、ちゃんと繋がりましたね』
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