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28話・守護龍(1)
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皇宮のさらに奥、森の中にあるぽっかりと開けた空間はさんさんと日差しが差し込んで暖かい。
動物達が端々で日向ぼっこをしているのを視界の端に収めながら、声を上げようしたラキトは直前でステラに口に手を当てられた。
「私がやる」
そういったステラに頷いて、半歩下がる。
動きやすさよりも派手になりすぎない、ぱりっとした正装を選んだステラは今真っ白なドレスに身を包んでいた。
腰から下は何枚もの薄い布が重ねられてグラデーションになっていき、最終的にオレンジ色におちつくという少し変わったデザインだ。
剣術で生計を立てているために体のあちこちにある傷を隠すため、露出は最大限抑えられている。
それに普段サイドだけをシェリアに編んでもらうのをラキトの屋敷のメイドの手によって短い髪ながらもふんわりと飾ったステラは贔屓目なしに美人と評していい。
元々顔の作りも美麗なステラは纏うものによって大きく雰囲気が変わる。
今ここにいるのは、金色の傭兵と恐れられ畏怖される存在ではなく、ただの深窓の姫君のようだった。
「我らが国を守りし守護龍よ、我が願いとし我の前に姿を現したまえ」
薄い絹の手袋に包まれた両手を捧げもつようにあげての言葉には、すぐに反応があった。
上空に影が差す。見上げたラキトは陽光を受けてきらきらと眩いばかりに光り輝く巨大な存在に目を細めた。
――全く、私が呼ぶと待たせるというのに、本当にステラには甘い
内心で最高神に愚痴を呟きつつも表情には出さず、降下してくる守護龍を見据える。
空中で人の姿をとり、ふわりと降り立ったのはステラとはまたちがった色合いの金の髪に蜂蜜色の瞳を持った三十台半ばの美丈夫だった。
竜が人間の姿を借りる際にはその属性が現れる。
例えば、火属性の赫き竜ならば真っ赤な髪と紅の瞳になるだろう。その点で目の前の男の纏う色は金だ。それは彼が光属性であることを示している。
その齢は当に千年を超えており、長年にわたりこの国を守護しているとは思えぬほど凛々しい。
が、やはりラキトの内心はそっけない。
――かっこつけ
である。
そもそもが、ラキトが呼べば年相応の姿かたちが楽だと言う理由で、白髪の爺さんの姿ででてくるのに、ステラが呼んだらこれである。ラキトでなくとも一言くらいいいたくなろうものだ。
「おお、久しぶりだな。ステラ。元気にしていたか」
「はい、加護のお陰で健やかに」
特別この守護龍と仲のいいステラは彼の前だと子供のような笑みを見せる。
「おにいさ……いえ、守護龍様もお元気そうでなによりです」
「そう言い直すな。寂しいではないか。昔のようにお兄様と呼んでくれていいのだよ」
そう、なにを隠そうステラの剣の師は目の前で目を細めて娘の成長を喜んでいるような顔をしている守護龍なのだ。
ステラ当人は当時知る由もなく、のちのち守護龍と知ったらしいが、幼いステラが「お兄様」と呼び慕っていたのが守護龍だと知ったときのラキトはリアルに卒倒した。
屋敷では何事かと騒がれたが、訳を話すこともできずに悶々としたのも今ではいい思い出……なのかもしれない。
そんなわけで、守護龍との関わりがあり、旅の道中何かの折につけてどこどこの竜と面識ができた、などとけろっとした表情で話すステラであるからこそ、赫き竜のことも一縷の望みを託して、それでも心配だったので釘をさし、送り込んだのだが、結果がアレだと予想できただろうか。いや、できまい。
本来守護龍の加護を直接受けるのは皇家の直属の血を引くものだけだ。
傍系ですらはじかれるというのに、幼いステラはなにをしたのやら。そのあたりは本人も記憶があいまいで気付いたら「お兄様」として認識していたというし、ラキトがステラがいないときに守護龍を問い詰めてものらりくらりと交わされ、最終的には「関係ない」と冷えた目で切り捨てられたのだ。全くもって謎だった。
そんなどうでもいいことをつらつらと考えているとステラから一通りの話を聞いたらしい守護龍がふむと腕を組んだ。
「あれは元から気性が荒い。その分一度懐に入れたものにはとことん甘いのだが……今回はそれが裏目にでたようだな。主を傷つけようとは、我が牙をむいてやろうか」
「ご冗談を。これは人間のしでかしたことが元凶。なれば、我ら人間がけりをつけねばなりません」
軽やかにステラが笑い飛ばした守護龍の本気を悟って、光の守護龍と赫き竜がガチで激突した場合の被害総額、人民の避難経路などをとっさに脳裏で計算してしまうのは、悲しいかな皇宮勤めの性だった。
「ああ、こんなにも生命力が薄れて……ラキト、貴様なにをしておった」
そっとステラの頬をなぜた守護龍が嘆くようにいう。
動物達が端々で日向ぼっこをしているのを視界の端に収めながら、声を上げようしたラキトは直前でステラに口に手を当てられた。
「私がやる」
そういったステラに頷いて、半歩下がる。
動きやすさよりも派手になりすぎない、ぱりっとした正装を選んだステラは今真っ白なドレスに身を包んでいた。
腰から下は何枚もの薄い布が重ねられてグラデーションになっていき、最終的にオレンジ色におちつくという少し変わったデザインだ。
剣術で生計を立てているために体のあちこちにある傷を隠すため、露出は最大限抑えられている。
それに普段サイドだけをシェリアに編んでもらうのをラキトの屋敷のメイドの手によって短い髪ながらもふんわりと飾ったステラは贔屓目なしに美人と評していい。
元々顔の作りも美麗なステラは纏うものによって大きく雰囲気が変わる。
今ここにいるのは、金色の傭兵と恐れられ畏怖される存在ではなく、ただの深窓の姫君のようだった。
「我らが国を守りし守護龍よ、我が願いとし我の前に姿を現したまえ」
薄い絹の手袋に包まれた両手を捧げもつようにあげての言葉には、すぐに反応があった。
上空に影が差す。見上げたラキトは陽光を受けてきらきらと眩いばかりに光り輝く巨大な存在に目を細めた。
――全く、私が呼ぶと待たせるというのに、本当にステラには甘い
内心で最高神に愚痴を呟きつつも表情には出さず、降下してくる守護龍を見据える。
空中で人の姿をとり、ふわりと降り立ったのはステラとはまたちがった色合いの金の髪に蜂蜜色の瞳を持った三十台半ばの美丈夫だった。
竜が人間の姿を借りる際にはその属性が現れる。
例えば、火属性の赫き竜ならば真っ赤な髪と紅の瞳になるだろう。その点で目の前の男の纏う色は金だ。それは彼が光属性であることを示している。
その齢は当に千年を超えており、長年にわたりこの国を守護しているとは思えぬほど凛々しい。
が、やはりラキトの内心はそっけない。
――かっこつけ
である。
そもそもが、ラキトが呼べば年相応の姿かたちが楽だと言う理由で、白髪の爺さんの姿ででてくるのに、ステラが呼んだらこれである。ラキトでなくとも一言くらいいいたくなろうものだ。
「おお、久しぶりだな。ステラ。元気にしていたか」
「はい、加護のお陰で健やかに」
特別この守護龍と仲のいいステラは彼の前だと子供のような笑みを見せる。
「おにいさ……いえ、守護龍様もお元気そうでなによりです」
「そう言い直すな。寂しいではないか。昔のようにお兄様と呼んでくれていいのだよ」
そう、なにを隠そうステラの剣の師は目の前で目を細めて娘の成長を喜んでいるような顔をしている守護龍なのだ。
ステラ当人は当時知る由もなく、のちのち守護龍と知ったらしいが、幼いステラが「お兄様」と呼び慕っていたのが守護龍だと知ったときのラキトはリアルに卒倒した。
屋敷では何事かと騒がれたが、訳を話すこともできずに悶々としたのも今ではいい思い出……なのかもしれない。
そんなわけで、守護龍との関わりがあり、旅の道中何かの折につけてどこどこの竜と面識ができた、などとけろっとした表情で話すステラであるからこそ、赫き竜のことも一縷の望みを託して、それでも心配だったので釘をさし、送り込んだのだが、結果がアレだと予想できただろうか。いや、できまい。
本来守護龍の加護を直接受けるのは皇家の直属の血を引くものだけだ。
傍系ですらはじかれるというのに、幼いステラはなにをしたのやら。そのあたりは本人も記憶があいまいで気付いたら「お兄様」として認識していたというし、ラキトがステラがいないときに守護龍を問い詰めてものらりくらりと交わされ、最終的には「関係ない」と冷えた目で切り捨てられたのだ。全くもって謎だった。
そんなどうでもいいことをつらつらと考えているとステラから一通りの話を聞いたらしい守護龍がふむと腕を組んだ。
「あれは元から気性が荒い。その分一度懐に入れたものにはとことん甘いのだが……今回はそれが裏目にでたようだな。主を傷つけようとは、我が牙をむいてやろうか」
「ご冗談を。これは人間のしでかしたことが元凶。なれば、我ら人間がけりをつけねばなりません」
軽やかにステラが笑い飛ばした守護龍の本気を悟って、光の守護龍と赫き竜がガチで激突した場合の被害総額、人民の避難経路などをとっさに脳裏で計算してしまうのは、悲しいかな皇宮勤めの性だった。
「ああ、こんなにも生命力が薄れて……ラキト、貴様なにをしておった」
そっとステラの頬をなぜた守護龍が嘆くようにいう。
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