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【肆】百合ノ宴
①
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――その夕刻、四時。
人々はそわそわと、祭りに向かう準備をしだす。普段はそれなりに人通りのある水川銀座だが、今日ばかりは、月原山道の方に人が集中している。
そんな閑散とした通りを、二人の若者が歩いていた。
一人は、丸井勝太。薄汚れたシャツと作業ズボンと長靴の、普段着のままだ。
もう一人は、久芳春子。いつものように、作務衣に束ねた髪を垂らしている。
二人は同級生である。村にひとつしかない学校で、ずっと同じクラスで過ごしてきた。
西集落から通う子供は少ないため、自然と二人で連れ立って通学するようになった。卒業してからも、事あるごとに話し相手になる。友達以上恋人未満、といった関係だ。
二人は、天狗祭りに行く事はなかった。どうしても、行けない事情があった。
――まだ小学生だった頃。丸井勝太は、天狗に遭った。
子供は全員、お神楽に参加するのだが、このお神楽というのが少し変わっており、男女が逆転の衣装を着るのだ。その由来は、出雲阿国を始まりとするかぶき踊りとも言われているが、詳しくは伝わっていない。
性別の違う衣装を着るというのは、自分の殻を解放するものであり、お神楽もそれに合わせた、非常にコミカルなものである。
その日は衣装合わせだった。女の子の格好をして興奮した勝太は、両親に見せてやろうという悪戯心から、その衣装のまま帰宅しようとしたのだ。
――そして、薄暗い月原山道に差し掛かった時、背後から、天狗に襲われた。
当時は、性的被害を受けたという認識がなかった。物心ついてから、あれはそういう意味だと認識したものの、男の矜恃から、自分だけの胸に隠してある。
一方、久芳春子も、天狗に襲われた経験を持つ。しかし、僧侶の娘という立場、そして、母の与志子が神経質なところから、被害に遭った事を黙っている事を選んだ。
……それに、もうひとつ。
「――天狗の顔を見たのか?」
親戚の集まりの時に、母方の伯父である水川滝二郎にそう聞かれた。春子は血の気が失せるほど驚いた。なぜ彼が、春子が天狗に襲われた事を知っているのか? ――そして、察した。
「……天狗とは、何の事でしょう?」
春子が答えると、滝二郎は
「それでいい」
と、春子の頭を撫でた。
そう、春子はあの時、天狗の面がずれ、その下の顔を見ていたのだ。見間違いだと、ずっと自分に言い聞かせてきたのだが、滝二郎の一言で、それは確信に変わった。
春子はその記憶を、墓まで持って行くと、心に誓った。
――そんな二人である。
互いに、そのような立場にあるとは気付いていない。しかし、相手が「天狗」と聞くだけで顔色が変わるのを知っているため、それ以上は何も言わず、天狗祭りの日は毎年、二人で過ごすのだ。
二人は水川銀座を離れ、月原川の川べりに向かった。
対岸の月原山道は、ひっきりなしにハイヤーが行き交う。山の中腹の百合御殿には、煌々と明かりが灯され、もうすぐ祭りが始まるという合図である、お囃子の音が響きだした。
「……ねえ、勝ちゃん」
石の上に腰を下ろし、水面をチャプチャプと蹴りながら、久芳春子が言った。
「なぜか今年は、父も母も、百合御殿にお手伝いに行ってるの」
例年、僧侶の役割は、二日目の本祭、捧げ物をする際にお経を奉る、それだけなのだ。しかし昨年から、花沢凛麗こと不知火松子が奉納舞をしだして、格段に見物客が増えた。そのため、交通整理などの人手が足りぬと、駆り出されたらしい。
……それはどういう意味か。勝太は戸惑った顔を春子に向ける。すると彼女は、隣に座った彼の手に手を置いた。
「――そろそろ、友達、やめない?」
「…………」
薄明かりの中、勝太を見上げる黒い瞳は、初心な青年をゾクッとさせた。
勝太とて、考えていない訳ではなかった。彼は農家の次男。兄・新造もいい歳だ。家を出た方が、何かと都合が良い。――しかし、善浄寺という由緒ある名跡を継ぐ覚悟があるのかと考えると、それ以上進む勇気がなかった。
そんな心境を知っているのだろう。春子は勝太の節立った指に、白い指を絡める。
「実はね、総本山からお婿さんを迎えようって話があるの」
「……え?」
「私、結婚させられるかもしれない」
春子の手の下で、勝太の手が震えた。
「……それは、嫌だ」
勝太は、春子と繋がっていない方の手を、彼女の肩に置いた。そして真正面から向き合うと、顔を寄せ、唇を合わせた。
厚い梅雨雲から奇跡的に顔を出した、東の空の十四夜の月だけが、二人を見ていた。
犬神零と椎葉桜子は、多摩荘の部屋を引き上げるべく片付けをしていた。
不知火松子から依頼を受け、今晩から来住野家の離れに泊まるよう、手配がされたのだ。
片付けと言っても、着の身着のままである。少しの手荷物と、桜子が買い物した風呂敷だけ持てば、あとは何もない。
「松子さんからお代は頂戴してますんで」
又吉朝夫が彼らをにこやかに見送った。
……そして、出かけ間際、若女将の史津が二人を呼び止めた。
「この人に案内させるよ」
と、彼らの横に来たのは、三十路の痩せた女だ。史津は零に耳打ちした。
「うちの下働きと、松子さんとこの通い家政婦を兼業してる人。きっと役に立つよ」
彼女は、初江と名乗った。若くして未亡人となり、女手ひとつで三人の子供を育てるため、昼夜問わず働いている苦労人だ。
しかし彼女は、そんな苦しい境遇をおくびにも出さない、おおらかな人柄だった。
「あたしは働いてないと落ち着かない性分でね。子供らも分かってるから、三人でよくやってるよ。むしろ、家の中にあたしの居場所がないくらいさ」
ハハハと笑う様子は、肝っ玉母さんそのものである。
分厚い雲が夕日を覆い、月原山道は一足速い夕暮れを迎えている。行き交うハイヤーのヘッドライトが、轍の目立つ路面を白く照らす。
「しかし、今日は特別、旅館は忙しいんじゃありませんか?」
「あたしもそのつもりだったんだけどね、うちが三人ともお神楽に出てるから、一人しかいない親なんだから、行っておやりと、若女将がね。サチコちゃんの晴れ姿も見たいだろうに」
テキパキとしているが、細やかな気遣いができるところは、さすが若女将である。
「来住野さんのところでは、いつから働いておられるのですか?」
「二年前、松子様が結婚されて、本宅の奥の洋館に住まれるようになってからだよ。あたしは松子様ご夫妻の洋館専属でね、本宅には入らないんだけど」
「今日のお祭りのお仕事は頼まれなかったので?」
「最初からの契約でね。十四郎様から多摩荘の旦那に、朝八時から昼の十二時まで、お掃除とお洗濯だけ、来られる人はいないかって、声が掛かってね。で、お風呂掃除担当のあたしが選ばれたんだよ。お食事のお世話は、本宅の下女の亀乃ちゃんがやってるよ」
恐らく昨日、十四郎に折檻を受けたあの少女だろう。
話しながら歩いているうちに、来住野家へ向かうつづら折れに差し掛かった。
続々と曲がっていくハイヤーの中に、零は柴田の顔を見つけた。彼も気付いたようで、軽く会釈を返す。……そして、その後部座席に収まる人物。その顔は、新聞で見た事がある。次期総理候補と名の上がっている、与党の幹事長だ。このような山奥の祭りの来賓としては、最上級の人物だろう。
ハイヤーだけではない。つづら折れには多くの人影がある。まだお神楽を舞える年齢ではない幼子の手を引く村人たちや、それ以上に、小洒落た洋装の旅行客の姿が目立つ。皆一様に、つづら折れを上って行く。
そして、行き着く先は、古の陣屋を思わせる、立派な長屋門である。
ところが、今宵ここは来賓専用になっている。物々しいばかりに制服警官が目を光らす。小木曽の配慮もあるだろう。
一般客は、竹垣を裏山の方へ回った、裏門が入口になっていた。
「こっちからじゃないと、百合園に真っ直ぐ入れないのよ」
初江が説明する。長屋門の先は、本宅やら洋館やらの居住区画で、百合園と直接繋がっていないらしい。
竹垣を裏手に曲がる。すると道は、薮に吸い込まれるように細くなる。薮を抜けた甍の裏門は、大きくはないが、篝火で照らされ、実に風情がある。……門の左右に二人並ぶ警官が無粋ではあるが、仕方あるまい。
その門を潜った途端、桜子が聞こえる程に大きく息を飲んだ。
「――素敵だわ……」
裏山にかけての斜面一面に、百合の花が咲き乱れている。その広さは、学校の運動場ふたつ分くらいはありそうだ。
百合畑の間を径が走り、裏山から流れる小川が、百合園の中央の池に流れ込んでいる。
各所に配された石灯籠や篝火が、それらを幻想的に浮き上がらせていた。風流人ではない零でも、鳥肌が立つほどの景観だ。
初江が言った。
「ここが、百合御殿よ」
《添付図3》
人々はそわそわと、祭りに向かう準備をしだす。普段はそれなりに人通りのある水川銀座だが、今日ばかりは、月原山道の方に人が集中している。
そんな閑散とした通りを、二人の若者が歩いていた。
一人は、丸井勝太。薄汚れたシャツと作業ズボンと長靴の、普段着のままだ。
もう一人は、久芳春子。いつものように、作務衣に束ねた髪を垂らしている。
二人は同級生である。村にひとつしかない学校で、ずっと同じクラスで過ごしてきた。
西集落から通う子供は少ないため、自然と二人で連れ立って通学するようになった。卒業してからも、事あるごとに話し相手になる。友達以上恋人未満、といった関係だ。
二人は、天狗祭りに行く事はなかった。どうしても、行けない事情があった。
――まだ小学生だった頃。丸井勝太は、天狗に遭った。
子供は全員、お神楽に参加するのだが、このお神楽というのが少し変わっており、男女が逆転の衣装を着るのだ。その由来は、出雲阿国を始まりとするかぶき踊りとも言われているが、詳しくは伝わっていない。
性別の違う衣装を着るというのは、自分の殻を解放するものであり、お神楽もそれに合わせた、非常にコミカルなものである。
その日は衣装合わせだった。女の子の格好をして興奮した勝太は、両親に見せてやろうという悪戯心から、その衣装のまま帰宅しようとしたのだ。
――そして、薄暗い月原山道に差し掛かった時、背後から、天狗に襲われた。
当時は、性的被害を受けたという認識がなかった。物心ついてから、あれはそういう意味だと認識したものの、男の矜恃から、自分だけの胸に隠してある。
一方、久芳春子も、天狗に襲われた経験を持つ。しかし、僧侶の娘という立場、そして、母の与志子が神経質なところから、被害に遭った事を黙っている事を選んだ。
……それに、もうひとつ。
「――天狗の顔を見たのか?」
親戚の集まりの時に、母方の伯父である水川滝二郎にそう聞かれた。春子は血の気が失せるほど驚いた。なぜ彼が、春子が天狗に襲われた事を知っているのか? ――そして、察した。
「……天狗とは、何の事でしょう?」
春子が答えると、滝二郎は
「それでいい」
と、春子の頭を撫でた。
そう、春子はあの時、天狗の面がずれ、その下の顔を見ていたのだ。見間違いだと、ずっと自分に言い聞かせてきたのだが、滝二郎の一言で、それは確信に変わった。
春子はその記憶を、墓まで持って行くと、心に誓った。
――そんな二人である。
互いに、そのような立場にあるとは気付いていない。しかし、相手が「天狗」と聞くだけで顔色が変わるのを知っているため、それ以上は何も言わず、天狗祭りの日は毎年、二人で過ごすのだ。
二人は水川銀座を離れ、月原川の川べりに向かった。
対岸の月原山道は、ひっきりなしにハイヤーが行き交う。山の中腹の百合御殿には、煌々と明かりが灯され、もうすぐ祭りが始まるという合図である、お囃子の音が響きだした。
「……ねえ、勝ちゃん」
石の上に腰を下ろし、水面をチャプチャプと蹴りながら、久芳春子が言った。
「なぜか今年は、父も母も、百合御殿にお手伝いに行ってるの」
例年、僧侶の役割は、二日目の本祭、捧げ物をする際にお経を奉る、それだけなのだ。しかし昨年から、花沢凛麗こと不知火松子が奉納舞をしだして、格段に見物客が増えた。そのため、交通整理などの人手が足りぬと、駆り出されたらしい。
……それはどういう意味か。勝太は戸惑った顔を春子に向ける。すると彼女は、隣に座った彼の手に手を置いた。
「――そろそろ、友達、やめない?」
「…………」
薄明かりの中、勝太を見上げる黒い瞳は、初心な青年をゾクッとさせた。
勝太とて、考えていない訳ではなかった。彼は農家の次男。兄・新造もいい歳だ。家を出た方が、何かと都合が良い。――しかし、善浄寺という由緒ある名跡を継ぐ覚悟があるのかと考えると、それ以上進む勇気がなかった。
そんな心境を知っているのだろう。春子は勝太の節立った指に、白い指を絡める。
「実はね、総本山からお婿さんを迎えようって話があるの」
「……え?」
「私、結婚させられるかもしれない」
春子の手の下で、勝太の手が震えた。
「……それは、嫌だ」
勝太は、春子と繋がっていない方の手を、彼女の肩に置いた。そして真正面から向き合うと、顔を寄せ、唇を合わせた。
厚い梅雨雲から奇跡的に顔を出した、東の空の十四夜の月だけが、二人を見ていた。
犬神零と椎葉桜子は、多摩荘の部屋を引き上げるべく片付けをしていた。
不知火松子から依頼を受け、今晩から来住野家の離れに泊まるよう、手配がされたのだ。
片付けと言っても、着の身着のままである。少しの手荷物と、桜子が買い物した風呂敷だけ持てば、あとは何もない。
「松子さんからお代は頂戴してますんで」
又吉朝夫が彼らをにこやかに見送った。
……そして、出かけ間際、若女将の史津が二人を呼び止めた。
「この人に案内させるよ」
と、彼らの横に来たのは、三十路の痩せた女だ。史津は零に耳打ちした。
「うちの下働きと、松子さんとこの通い家政婦を兼業してる人。きっと役に立つよ」
彼女は、初江と名乗った。若くして未亡人となり、女手ひとつで三人の子供を育てるため、昼夜問わず働いている苦労人だ。
しかし彼女は、そんな苦しい境遇をおくびにも出さない、おおらかな人柄だった。
「あたしは働いてないと落ち着かない性分でね。子供らも分かってるから、三人でよくやってるよ。むしろ、家の中にあたしの居場所がないくらいさ」
ハハハと笑う様子は、肝っ玉母さんそのものである。
分厚い雲が夕日を覆い、月原山道は一足速い夕暮れを迎えている。行き交うハイヤーのヘッドライトが、轍の目立つ路面を白く照らす。
「しかし、今日は特別、旅館は忙しいんじゃありませんか?」
「あたしもそのつもりだったんだけどね、うちが三人ともお神楽に出てるから、一人しかいない親なんだから、行っておやりと、若女将がね。サチコちゃんの晴れ姿も見たいだろうに」
テキパキとしているが、細やかな気遣いができるところは、さすが若女将である。
「来住野さんのところでは、いつから働いておられるのですか?」
「二年前、松子様が結婚されて、本宅の奥の洋館に住まれるようになってからだよ。あたしは松子様ご夫妻の洋館専属でね、本宅には入らないんだけど」
「今日のお祭りのお仕事は頼まれなかったので?」
「最初からの契約でね。十四郎様から多摩荘の旦那に、朝八時から昼の十二時まで、お掃除とお洗濯だけ、来られる人はいないかって、声が掛かってね。で、お風呂掃除担当のあたしが選ばれたんだよ。お食事のお世話は、本宅の下女の亀乃ちゃんがやってるよ」
恐らく昨日、十四郎に折檻を受けたあの少女だろう。
話しながら歩いているうちに、来住野家へ向かうつづら折れに差し掛かった。
続々と曲がっていくハイヤーの中に、零は柴田の顔を見つけた。彼も気付いたようで、軽く会釈を返す。……そして、その後部座席に収まる人物。その顔は、新聞で見た事がある。次期総理候補と名の上がっている、与党の幹事長だ。このような山奥の祭りの来賓としては、最上級の人物だろう。
ハイヤーだけではない。つづら折れには多くの人影がある。まだお神楽を舞える年齢ではない幼子の手を引く村人たちや、それ以上に、小洒落た洋装の旅行客の姿が目立つ。皆一様に、つづら折れを上って行く。
そして、行き着く先は、古の陣屋を思わせる、立派な長屋門である。
ところが、今宵ここは来賓専用になっている。物々しいばかりに制服警官が目を光らす。小木曽の配慮もあるだろう。
一般客は、竹垣を裏山の方へ回った、裏門が入口になっていた。
「こっちからじゃないと、百合園に真っ直ぐ入れないのよ」
初江が説明する。長屋門の先は、本宅やら洋館やらの居住区画で、百合園と直接繋がっていないらしい。
竹垣を裏手に曲がる。すると道は、薮に吸い込まれるように細くなる。薮を抜けた甍の裏門は、大きくはないが、篝火で照らされ、実に風情がある。……門の左右に二人並ぶ警官が無粋ではあるが、仕方あるまい。
その門を潜った途端、桜子が聞こえる程に大きく息を飲んだ。
「――素敵だわ……」
裏山にかけての斜面一面に、百合の花が咲き乱れている。その広さは、学校の運動場ふたつ分くらいはありそうだ。
百合畑の間を径が走り、裏山から流れる小川が、百合園の中央の池に流れ込んでいる。
各所に配された石灯籠や篝火が、それらを幻想的に浮き上がらせていた。風流人ではない零でも、鳥肌が立つほどの景観だ。
初江が言った。
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