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【仇】隠シ通路ノ三悪人
③
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鉄板を引っ張ってずらし、通路への入口を露にする。それは、石垣と裏山との隙間に造られた階段だった。石垣が二重になっており、その隙間に石段が設えてある、という構造だ。無骨な石段は、石垣と同様、きちんと大きさを揃えた段にはなっておらず、踏み外さないよう注意が必要だった。
中は薄暗い。しかし、石積みの隙間から明かりが洩れるようになっており、足元もおぼつかないという事はなかった。
階段はすぐに分かれ道に出た。右手の石段は上りになっており、そこは少し行くと、何と東屋のすぐ下に出たのだ。腰掛けのすぐ下の、覗き込まなければ見えない板をどけると、パッカリと口が開く。これには零も驚いた。
それから元の階段に戻り、しばらくその階段を下りる。階段はまっすぐ、崖の下に向かっているようだ。
……すると、突如として暗くなる。手探りで先に進むが、ここからは階段になっていない。なだらなか下り坂だ。慎重に進んでいくと、今度は突如として明るくなった。
――そこは、鍾乳洞だった。乳白色の石の氷柱が、天井から幾本も垂れている。天井に穴があり、そこから眩しく光が差し込んでいた。床には苔が生えていて、様々な虫が蠢いている。……桜子は来なくて正解だった。零は思った。
月原洞窟がそうであるように、石灰質のこの辺りの山には、このような鍾乳洞が、人知れずそこかしこにあるのかもしれない。
その空間は折れ曲がりながらも、人が通れる程度の大きさは確保して、先へ先へと続いていく。途中、人為的に岩を削られた場所や、地面をならした場所、分かれ道が塞がれた場所もあった。時折差し込む光は、天井に穿たれた穴からのものだ。そのおかげで、薄暗くはあるが視界が保たれている。この洞窟が隧道として機能するよう、人の手が加えられた痕跡である。往時の人々は、城主のため、土地を守るために、この道を整備したのだろう。
岩の裂け目から滴る水滴、それらが何万年もかけて作り上げた造形、そこに人の手による光が当たり、緑が育まれる。実に興味の尽きない場所である。
そんな中を十分も歩いただろうか。道は行き止まりになった。……とそこに、上へ上る梯子が掛けられている。それはつい最近置かれたように真新しいものだ。二間(約三.六メートル)ほど見上げたその先には、薄暗い天井が見える。
「…………」
零はじっと耳を澄ませる。そして、何の気配もない事を確認すると、梯子に手を掛けた。音に気を付けてゆっくりと一段一段上っていき、静かに出口に足を置く。
そこは、石室のようだった。広さは二畳ほどもあるだろうか。高さは、零の長身では四つん這いにならなければならない程だ。湿ってひんやりした空気は、納骨堂の中を思わせる。
――納骨堂。
零は確信した。……善浄寺の裏の石塔。あの下部に違いない。
石室の内部は、きっちりと組まれていて隙がない。しかし、出入口に当たるのだろう、石の蓋の隙間から、光が糸のように洩れていた。
零は慎重にそちらに向かう。石の蓋を押す。すると、コマでも付いているのか、それは軽く動いた。
そして、ゆっくりと顔を出した瞬間、明るさに目が眩んだ。暗闇に慣れた目は、夏の昼間の日差しに対応できなかったのだ。
――その一瞬だった。
ゴンッ。
後頭部に強い衝撃を受ける。痛みを感じる間もなかった。
零の視界は、再び闇に包まれた。漆黒の深淵の闇に。
その頃、久芳春子は、まるいやの店内で、女店主の丸井セツと向き合っていた。
丸井勝太と駆け落ちの約束をした後、自分があまりにも衣装持ちでない事に気付いたのだ。普段着の作務衣、儀式の時に着る振袖、それしかない。村で生活していく分にはそれでいいのだが、東京でそれは……。乙女心である。
そこで彼女は、村で唯一洋服を購入できる、まるいやに足を運んだ。……これから駆け落ちをする相手の母親が経営する店である。躊躇しなかった訳はない。しかし、他に選択肢がなかったのだ。
「おや、春子ちゃん、珍しいじゃないか」
丸井セツは、そんな彼女の事情を知るはずもなく、親切に彼女の洋服選びに付き合った。息子の彼女という立場は知っているのだろう、微妙な気遣いを春子は感じた。
店内では最も華やかな花柄のワンピースと、大きめの手提げ鞄を春子は求めた。本当はもう少し揃えたかったのだが、作務衣のポケットにあった一円札二枚では、これが限界だった。
会計を済ませると、セツは少し遠慮がちに、
「ちょっと、お茶でもしてかないかい?」
と、春子を店の中央のテーブルに誘った。ドキッとしたが、これを断っては却って怪しまれる。
こうして春子は、丸椅子に腰を下ろして、冷えた麦茶のコップを挟み、セツと向き合う事になったのだ。
「……まぁ、はっきり言うよ」
セツは春子に柔らかい笑顔を向けた。
「あの子があなたに釣り合うとは、到底思えないんだよ」
……やっぱり。春子の予想通りだった。
「百姓仕事しか知らない子がだよ、由緒あるお寺のお嬢さんとお付き合いなんて。……あ、もちろん、あなたに非がある訳じゃないさ。逆だよ。こんなに可愛らしくて清楚で品があって、しかもお寺のお仕事をバリバリ手伝ってるしっかり者だ。うちの出来損ないからしたら、月とスッポン、猫に小判だよ」
セツも緊張しているようだ。一気にそう言うと、麦茶をガブ飲みした。
「あなたには、あなたに相応しい殿方がいるんじゃないかとね。まだまだお若いんだし、ねぇ」
「……嫌なんです」
春子は顔を伏せ、コップに滴る水滴を睨んだ。
「勝太さんじゃないと、私、嫌なんです」
「でも……」
「私、お寺しか知りません。世間知らずだと、両親も含め、皆さんそう思われるでしょう。私も、そうなんだと思います。だから、若い二人の一時の火遊び、みたいに思われるのも無理はありません。……でも、私たち、そんなんじゃありません」
セツはコップを手に、優しい眼差しで春子を見ている。
「私たち、小学校に入った時にから、ずっと一緒でした。勝ちゃん、毎朝お寺まで迎えに来てくれて、一緒に学校に行って、一緒に遊んで、一緒に帰って。……もちろん、喧嘩した事もあります。でも、一晩寝るとまた普通に、一緒に学校に行きました。勝ちゃんは、私がわがままを言っても許してくれたし、私も、勝ちゃんの嫌なところがあっても、許せちゃうんです。……そんな人、他にいると思いますか?」
「…………」
「お互いに言いたい事を言って、……でも、どうしても触れられたくないところは気付かないふりをしてくれて。勝ちゃんの事を全部は知らないかもしれない。でも、私は勝ちゃんの心は、優しさは、よく知ってます。……大好きなんです、勝ちゃんの事が」
春子の目に涙が溢れる。
「これから先も、勝ちゃん以外の人と生きていくなんて、考えられません。ずっと勝ちゃんと一緒にいたいんです。……わがままだとは分かってます。でも、私には、それが一番なんです」
セツは、商品棚からハンカチを取り、春子にそっと渡した。そのセツの目も濡れていた。
「……ありがとう。倅の事をこんなに良く思ってくれるなんて、母親として、こんなに嬉しい事はないよ」
春子はそのハンカチで目を拭った。
「私もね、結婚した時、両親に猛反対されたんだよ。一応ね、うちは裕福で、洋裁学校に通ってたくらいさ。それが百姓の倅となんて、って、そりゃあもう。……だけど、私もね、今の主人が良かったんだ」
涙で濡れた顔を、セツはエプロンで拭いた。
「私は後悔してないよ。今の人生が、一番幸せだと思ってる。……あなたの気持ちは、分かったよ」
そしてセツは背筋を伸ばし、満面の笑みを浮かべた。
「頭も気も弱いけど、体だけは頑丈に育てたから、ビシバシ尻を叩いて、鍛えてやっておくれ。……不束な倅ですが、どうぞよろしくお願いします」
久芳正善と久芳与志子は、ぐったりと倒れた男を見下ろして、しばらくそのまま固まっていた。
殴られた男の後頭部から血が滲み、地面を濡らす段になって、与志子が震える声を上げた。
「し、死んでないわよね……」
「だ、大丈夫だろう。御仏のご加護がある」
正善の手にあるのは、寺の大きなおりんである。相手は大の男。反撃されたら厄介だ。一撃で昏倒させられる物を考えた時、これが一番相応しいと思ったのだ。
何度も深呼吸をした後、正善は妻に顔を向けた。
「夢子さんに、連絡を。石塔の下に隠しておくと」
与志子はひとつ頷いて、寺務所へと駆け去った。
「…………」
それを見送ってから、正善は派手な着物姿のその男の手足を縛り、石室の中へ押し込んだ。上背はあるが痩せているため、力に自信はない正善でも可能だった。
そして、血で汚れた石塔の土台を洗い流し、血が染みた地面に土を被せてそれを隠した。
――と、そこへ声が掛かった。
「何してるの?」
娘の春子である。いつもの作務衣に大きなつばの麦わら帽子を被り、手には風呂敷包みを抱えている。
「……どうしたんだ、その帽子は」
正善は、近頃の娘の様子に神経を尖らせていた。だから、その帽子は、娘が普段使っているのもではないと、すぐに気付いた。
これは、まるいやから出る時、丸井セツがくれたものだった。
「その顔じゃ、村を歩きにくいでしょ」
泣き腫らした目を気遣い、大舅の宗右衛門が編んだものだろう、少々野暮ったいが実用的な、この麦わら帽子を春子にそっと被せたのだった。
春子は咄嗟に帽子のつばで顔を隠した。
「……何でもないわ」
そう言うと、春子はタタッと裏口に去った。
中は薄暗い。しかし、石積みの隙間から明かりが洩れるようになっており、足元もおぼつかないという事はなかった。
階段はすぐに分かれ道に出た。右手の石段は上りになっており、そこは少し行くと、何と東屋のすぐ下に出たのだ。腰掛けのすぐ下の、覗き込まなければ見えない板をどけると、パッカリと口が開く。これには零も驚いた。
それから元の階段に戻り、しばらくその階段を下りる。階段はまっすぐ、崖の下に向かっているようだ。
……すると、突如として暗くなる。手探りで先に進むが、ここからは階段になっていない。なだらなか下り坂だ。慎重に進んでいくと、今度は突如として明るくなった。
――そこは、鍾乳洞だった。乳白色の石の氷柱が、天井から幾本も垂れている。天井に穴があり、そこから眩しく光が差し込んでいた。床には苔が生えていて、様々な虫が蠢いている。……桜子は来なくて正解だった。零は思った。
月原洞窟がそうであるように、石灰質のこの辺りの山には、このような鍾乳洞が、人知れずそこかしこにあるのかもしれない。
その空間は折れ曲がりながらも、人が通れる程度の大きさは確保して、先へ先へと続いていく。途中、人為的に岩を削られた場所や、地面をならした場所、分かれ道が塞がれた場所もあった。時折差し込む光は、天井に穿たれた穴からのものだ。そのおかげで、薄暗くはあるが視界が保たれている。この洞窟が隧道として機能するよう、人の手が加えられた痕跡である。往時の人々は、城主のため、土地を守るために、この道を整備したのだろう。
岩の裂け目から滴る水滴、それらが何万年もかけて作り上げた造形、そこに人の手による光が当たり、緑が育まれる。実に興味の尽きない場所である。
そんな中を十分も歩いただろうか。道は行き止まりになった。……とそこに、上へ上る梯子が掛けられている。それはつい最近置かれたように真新しいものだ。二間(約三.六メートル)ほど見上げたその先には、薄暗い天井が見える。
「…………」
零はじっと耳を澄ませる。そして、何の気配もない事を確認すると、梯子に手を掛けた。音に気を付けてゆっくりと一段一段上っていき、静かに出口に足を置く。
そこは、石室のようだった。広さは二畳ほどもあるだろうか。高さは、零の長身では四つん這いにならなければならない程だ。湿ってひんやりした空気は、納骨堂の中を思わせる。
――納骨堂。
零は確信した。……善浄寺の裏の石塔。あの下部に違いない。
石室の内部は、きっちりと組まれていて隙がない。しかし、出入口に当たるのだろう、石の蓋の隙間から、光が糸のように洩れていた。
零は慎重にそちらに向かう。石の蓋を押す。すると、コマでも付いているのか、それは軽く動いた。
そして、ゆっくりと顔を出した瞬間、明るさに目が眩んだ。暗闇に慣れた目は、夏の昼間の日差しに対応できなかったのだ。
――その一瞬だった。
ゴンッ。
後頭部に強い衝撃を受ける。痛みを感じる間もなかった。
零の視界は、再び闇に包まれた。漆黒の深淵の闇に。
その頃、久芳春子は、まるいやの店内で、女店主の丸井セツと向き合っていた。
丸井勝太と駆け落ちの約束をした後、自分があまりにも衣装持ちでない事に気付いたのだ。普段着の作務衣、儀式の時に着る振袖、それしかない。村で生活していく分にはそれでいいのだが、東京でそれは……。乙女心である。
そこで彼女は、村で唯一洋服を購入できる、まるいやに足を運んだ。……これから駆け落ちをする相手の母親が経営する店である。躊躇しなかった訳はない。しかし、他に選択肢がなかったのだ。
「おや、春子ちゃん、珍しいじゃないか」
丸井セツは、そんな彼女の事情を知るはずもなく、親切に彼女の洋服選びに付き合った。息子の彼女という立場は知っているのだろう、微妙な気遣いを春子は感じた。
店内では最も華やかな花柄のワンピースと、大きめの手提げ鞄を春子は求めた。本当はもう少し揃えたかったのだが、作務衣のポケットにあった一円札二枚では、これが限界だった。
会計を済ませると、セツは少し遠慮がちに、
「ちょっと、お茶でもしてかないかい?」
と、春子を店の中央のテーブルに誘った。ドキッとしたが、これを断っては却って怪しまれる。
こうして春子は、丸椅子に腰を下ろして、冷えた麦茶のコップを挟み、セツと向き合う事になったのだ。
「……まぁ、はっきり言うよ」
セツは春子に柔らかい笑顔を向けた。
「あの子があなたに釣り合うとは、到底思えないんだよ」
……やっぱり。春子の予想通りだった。
「百姓仕事しか知らない子がだよ、由緒あるお寺のお嬢さんとお付き合いなんて。……あ、もちろん、あなたに非がある訳じゃないさ。逆だよ。こんなに可愛らしくて清楚で品があって、しかもお寺のお仕事をバリバリ手伝ってるしっかり者だ。うちの出来損ないからしたら、月とスッポン、猫に小判だよ」
セツも緊張しているようだ。一気にそう言うと、麦茶をガブ飲みした。
「あなたには、あなたに相応しい殿方がいるんじゃないかとね。まだまだお若いんだし、ねぇ」
「……嫌なんです」
春子は顔を伏せ、コップに滴る水滴を睨んだ。
「勝太さんじゃないと、私、嫌なんです」
「でも……」
「私、お寺しか知りません。世間知らずだと、両親も含め、皆さんそう思われるでしょう。私も、そうなんだと思います。だから、若い二人の一時の火遊び、みたいに思われるのも無理はありません。……でも、私たち、そんなんじゃありません」
セツはコップを手に、優しい眼差しで春子を見ている。
「私たち、小学校に入った時にから、ずっと一緒でした。勝ちゃん、毎朝お寺まで迎えに来てくれて、一緒に学校に行って、一緒に遊んで、一緒に帰って。……もちろん、喧嘩した事もあります。でも、一晩寝るとまた普通に、一緒に学校に行きました。勝ちゃんは、私がわがままを言っても許してくれたし、私も、勝ちゃんの嫌なところがあっても、許せちゃうんです。……そんな人、他にいると思いますか?」
「…………」
「お互いに言いたい事を言って、……でも、どうしても触れられたくないところは気付かないふりをしてくれて。勝ちゃんの事を全部は知らないかもしれない。でも、私は勝ちゃんの心は、優しさは、よく知ってます。……大好きなんです、勝ちゃんの事が」
春子の目に涙が溢れる。
「これから先も、勝ちゃん以外の人と生きていくなんて、考えられません。ずっと勝ちゃんと一緒にいたいんです。……わがままだとは分かってます。でも、私には、それが一番なんです」
セツは、商品棚からハンカチを取り、春子にそっと渡した。そのセツの目も濡れていた。
「……ありがとう。倅の事をこんなに良く思ってくれるなんて、母親として、こんなに嬉しい事はないよ」
春子はそのハンカチで目を拭った。
「私もね、結婚した時、両親に猛反対されたんだよ。一応ね、うちは裕福で、洋裁学校に通ってたくらいさ。それが百姓の倅となんて、って、そりゃあもう。……だけど、私もね、今の主人が良かったんだ」
涙で濡れた顔を、セツはエプロンで拭いた。
「私は後悔してないよ。今の人生が、一番幸せだと思ってる。……あなたの気持ちは、分かったよ」
そしてセツは背筋を伸ばし、満面の笑みを浮かべた。
「頭も気も弱いけど、体だけは頑丈に育てたから、ビシバシ尻を叩いて、鍛えてやっておくれ。……不束な倅ですが、どうぞよろしくお願いします」
久芳正善と久芳与志子は、ぐったりと倒れた男を見下ろして、しばらくそのまま固まっていた。
殴られた男の後頭部から血が滲み、地面を濡らす段になって、与志子が震える声を上げた。
「し、死んでないわよね……」
「だ、大丈夫だろう。御仏のご加護がある」
正善の手にあるのは、寺の大きなおりんである。相手は大の男。反撃されたら厄介だ。一撃で昏倒させられる物を考えた時、これが一番相応しいと思ったのだ。
何度も深呼吸をした後、正善は妻に顔を向けた。
「夢子さんに、連絡を。石塔の下に隠しておくと」
与志子はひとつ頷いて、寺務所へと駆け去った。
「…………」
それを見送ってから、正善は派手な着物姿のその男の手足を縛り、石室の中へ押し込んだ。上背はあるが痩せているため、力に自信はない正善でも可能だった。
そして、血で汚れた石塔の土台を洗い流し、血が染みた地面に土を被せてそれを隠した。
――と、そこへ声が掛かった。
「何してるの?」
娘の春子である。いつもの作務衣に大きなつばの麦わら帽子を被り、手には風呂敷包みを抱えている。
「……どうしたんだ、その帽子は」
正善は、近頃の娘の様子に神経を尖らせていた。だから、その帽子は、娘が普段使っているのもではないと、すぐに気付いた。
これは、まるいやから出る時、丸井セツがくれたものだった。
「その顔じゃ、村を歩きにくいでしょ」
泣き腫らした目を気遣い、大舅の宗右衛門が編んだものだろう、少々野暮ったいが実用的な、この麦わら帽子を春子にそっと被せたのだった。
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