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【拾】真相ヘノ道
④
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「……私が家出をしたのは、十六の時のでした。東京に出たものの、世間知らずの私は、たちまち路頭に迷ったんです」
遠い目を遺影に向け、不知火松子は語り出した。
「行く宛てもなく街を彷徨っていたのは覚えています。気付くと、劇場の前に立っていました。多分、華やかな照明や音楽に、引き寄せられたんだと思います。着飾ったお客さんたちが大勢行き来して、そこは、私にとって別世界でした――」
松子少女の心を魅了した世界に、彼女は飛び込んだ。
――帝東歌劇。当時、絶頂の人気を誇った劇団である。そのため、猫の手も借りたいほどに人手を求めていた。彼女はすぐさま採用され、大勢の劇団員や劇場関係者と共に、劇場の横にある宿舎で生活する事になった。
彼女に与えられた仕事は大道具だった。舞台演出に必要な舞台装置の製作をしたり、管理をしたりする裏方である。もちろん、力仕事も多かった。しかし彼女は音を上げず、仲間たちと共に舞台を作り上げていく事に喜びを感じていた。
……そんな時だった。
幕間の短時間に舞台装置を入れ替える作業中、彼女は出演者のひとりとぶつかってしまった。
「……それが、彼だったの」
――不知火清弥。当時既にスターであった彼は、だが松子の失敗を怒りもせず、逆にその美貌を見出した。
彼の勧めで、彼女は役者としての勉強を始めた。
歌、ダンス、ピアノ、日舞、バレエ。ありとあらゆる、自分を表現するために必要なトレーニングを受けながら、まずはレビューショーの一員として舞台に立つ。
不知火清弥は熱心だった。彼女にスターとしての素質がある事を見抜いていたのだ。毎日舞台に立ちながら、空いた時間に、役者としての基本を清弥から学ぶ。
――そして彼女は、看板スター・不知火清弥の相手役として大抜擢されたのである。
「無我夢中だったわ。彼を引き立てるためにはどうしたらいいのか。台本を読み込んで、役の心情を理解して、それにはどう立ち回ればいいのか考えるのよ。……だけどね、私には、決定的な欠点があったの」
――全く登場人物の心境が理解できないのである。松子はその時、自分が心を持っていない事を悟った。
そんな彼女に、不知火清弥は手取り足取り、演技を教えた。台本に書かれた状況を事細かに説明し、主人公にとってのヒロインの立場を理解できるまで、丹念に丹念に。松子は心情を理解できないながらも、どう振る舞えば、観る人の目にどう映るのかを理解していった。
その成果あって、彼女の才能は花開く。やがて彼女は、不知火清弥と並ぶスターとなった。
そんな彼女を、彼は賞賛した。松子はそれに応えようと研鑽した。そして……。
「気付いたら、愛していました。……そして、彼の子を、身籠りました」
人気絶頂だった彼女は思い悩む。そんな彼女に、清弥は言った。
「――結婚しよう」
桜子は頬を上気させ、この物語を聞き入っている。
「ロマンチックだわ。映画が一本作れそうね」
松子は微笑みを浮かべてうなずいた。
「あの時は本当、夢見心地だったわ。……でも、良い事ばかりは続かなかったの」
――その時の彼女は、二十五歳となっていた。
清弥の強い希望で、来住野家の両親に結婚を認めて貰うよう、挨拶に行ったのだったが……。
「父はああいう人でしょう? 彼を門前払いしてしまったの。……で、私はひとり残されて、お腹の子を無事産むまでは帰さない、来住野家の跡取りだからって」
「――土蔵に、入れられたのですね?」
零の言葉に驚きを見せた松子だったが、すぐに悲しい笑顔を浮かべた。
「そうよ。そんな状況だから、私は心を病んでしまって。……流産したの」
「許せないわ。女を何だと思ってるのかしら」
桜子が憤慨する。
「それにね、流産のせいで、子供が産めない体になってしまって。……さすがに辛くて、それからしばらく体調を崩してしまったわ」
「清弥さんにご連絡は?」
「土蔵にいる時は、させて貰えなかった。でもそのうち、心配して来てくれたのよ。父の制止を振り切って」
松子は思い出に浸るように夕空に目を移した。
「彼の姿を見たら、私、心を奥にわだかまっていたもの全てを吐き出すみたいに泣いてしまって。……でも、それでスッキリしたのね。現実と向き合う事を決めたの」
……ここまで、亀乃の話と完全に合致する。零は目を細めた。
「この先どうするかを、彼と私と父で話し合ったの。父は、子供の産めなくなった娘の責任を取って貰うって、彼に迫ったわ。でもそれは、私たちの希望でもあったから問題はなかった。それから父は、子供の産めない夫婦に家督は譲らない、私が彼にお嫁に行く形にするって言ったの」
「しかし、同じ敷地でご同居になっています。それはなぜですか?」
「……私が、役者を引退したいって、彼に頼んだのよ。これ以上役者を続けていけば、有名人夫婦なんだし、子供はまだか、なんて話が出るでしょ? それに耐えられなくて。それには、東京から離れたここの方がいいだろうと。……彼はしばらくは、東京に通いながら役者を続けていたわ。でも……」
松子は顔を伏せた。
「いつの間にか、主従が逆になってしまっていたのよ。最初は、私が彼の引き立て役だった。でも、私が引退する頃には、彼が私の引き立て役になっていたの。だから、もう、舞台に彼の居場所はなかった」
閉じた松子の目から、涙が一筋流れ落ちた。
「……その現実を知った彼の心は、私から離れてしまった。毎晩のように飲みに出掛けて、女をあちこちに作っていたのも知っていたわ。――でも、私には何も言えなかった。私のせいで、彼は、役者でいられなくなったんだもの」
零も桜子も口を閉ざす。目を伏せたまま、松子は続けた。
「そりゃあ、私も彼を恨んだわ。嫉妬したわ。……でも、どうする事もできなかった。そんなわだかまりを抱えたままの、二年間の結婚生活。辛かった……。――でもね」
涙に濡れた目を、松子は遺影に向けた。
「失って初めて気付くものって、本当にあるのね。……そんな関係の夫婦だったけど、私は彼を、心から愛していたのよ。今さら気付くなんて遅いと笑って貰って結構よ。――私、生まれて初めて、悲しいと思ったの」
すっかり夜闇に沈んだ百合園は、漆黒の闇に包まれていた。夕方から雲が出て、月夜を覆い隠しているのだ。
古井戸にも天狗堂にも、もう見張りの警官はいない。犯人が逮捕されたためだ。
離れに電気は通っておらず、行灯の灯で照らされた室内では、零が六畳の端に置いてある長持を机に、何やら書き物をしていた。
桜子は、広大な闇を縁側で眺めながら、大きく溜息を吐いた。
「……辛すぎて、何と言っていいか、分からなかった」
先程の松子の話である。しかし零は、乾いた口調で答えた。
「あれは彼女の中の物語です。全てが真実であるとは限りません」
「酷い言い方をするわね。彼女の涙を見なかったの? ……薄々気付いてはいたけど、やっぱりあなた、冷血よね」
「何とでも言ってください。……しかし、彼女の言葉には、物語以上の闇が潜んでいるような気がしてならないんですよ」
湿気を含んだ夜風が肌を刺す。少し身震いすると、桜子は雨戸を閉め、六畳へ入って行く。そして、零が書いているものを眺めて目を細めた。
「何これ?」
「登場人物の相関図です。……松子さんを、主人公とした場合の」
紙切れを埋める名前の数々。その名前同士が、血縁によって線で結ばれている。……松子と線で繋がれているのは、十四郎と、寒田ハン。そして……。
「竹子さんと梅子さんのところに、線がないじゃない?」
「はい。……もしかしたらと、昼間から考えているのです」
零はおもむろに鉛筆を取り上げ、竹子と梅子の上に線を繋げた。それを見た桜子は、悲鳴に近い吐息を漏らした。
「……嘘、よね」
「そうであって欲しいとは思います。しかし、状況がこれを指しているように、思えてならないのです」
――七月二十六日。
昨夜帰って来た来住野鶴代は、百々目に見せられた手毬に手を伸ばし、取り上げた。
「これは、あなたのものですか?」
だが鶴代は返事をせず、慣れた手付きで毬遊びを始めた。手毬唄と鈴の音が食堂に響く。
「――そのようですな」
赤松が呟いた。
犬神零は、朝露に濡れたつづら折れを下りていた。
今日はひとりだ。……桜子に聞かせるには、あまりに辛い内容になるだろうと、彼女には黙って出てきた。
夜遅くに降った雨露が、つづら折れを囲む薮に茂る笹の葉に滴っている。
つづら折れから眺める水川村の家々は、濡れた屋根を朝日にキラキラと輝かせていた。……それらを見下ろす山の中腹に建つ、コンクリートの宮殿。零はそれに目を向けた。
――そこに、真相への道は隠されている。
彼は確信していた。
遠い目を遺影に向け、不知火松子は語り出した。
「行く宛てもなく街を彷徨っていたのは覚えています。気付くと、劇場の前に立っていました。多分、華やかな照明や音楽に、引き寄せられたんだと思います。着飾ったお客さんたちが大勢行き来して、そこは、私にとって別世界でした――」
松子少女の心を魅了した世界に、彼女は飛び込んだ。
――帝東歌劇。当時、絶頂の人気を誇った劇団である。そのため、猫の手も借りたいほどに人手を求めていた。彼女はすぐさま採用され、大勢の劇団員や劇場関係者と共に、劇場の横にある宿舎で生活する事になった。
彼女に与えられた仕事は大道具だった。舞台演出に必要な舞台装置の製作をしたり、管理をしたりする裏方である。もちろん、力仕事も多かった。しかし彼女は音を上げず、仲間たちと共に舞台を作り上げていく事に喜びを感じていた。
……そんな時だった。
幕間の短時間に舞台装置を入れ替える作業中、彼女は出演者のひとりとぶつかってしまった。
「……それが、彼だったの」
――不知火清弥。当時既にスターであった彼は、だが松子の失敗を怒りもせず、逆にその美貌を見出した。
彼の勧めで、彼女は役者としての勉強を始めた。
歌、ダンス、ピアノ、日舞、バレエ。ありとあらゆる、自分を表現するために必要なトレーニングを受けながら、まずはレビューショーの一員として舞台に立つ。
不知火清弥は熱心だった。彼女にスターとしての素質がある事を見抜いていたのだ。毎日舞台に立ちながら、空いた時間に、役者としての基本を清弥から学ぶ。
――そして彼女は、看板スター・不知火清弥の相手役として大抜擢されたのである。
「無我夢中だったわ。彼を引き立てるためにはどうしたらいいのか。台本を読み込んで、役の心情を理解して、それにはどう立ち回ればいいのか考えるのよ。……だけどね、私には、決定的な欠点があったの」
――全く登場人物の心境が理解できないのである。松子はその時、自分が心を持っていない事を悟った。
そんな彼女に、不知火清弥は手取り足取り、演技を教えた。台本に書かれた状況を事細かに説明し、主人公にとってのヒロインの立場を理解できるまで、丹念に丹念に。松子は心情を理解できないながらも、どう振る舞えば、観る人の目にどう映るのかを理解していった。
その成果あって、彼女の才能は花開く。やがて彼女は、不知火清弥と並ぶスターとなった。
そんな彼女を、彼は賞賛した。松子はそれに応えようと研鑽した。そして……。
「気付いたら、愛していました。……そして、彼の子を、身籠りました」
人気絶頂だった彼女は思い悩む。そんな彼女に、清弥は言った。
「――結婚しよう」
桜子は頬を上気させ、この物語を聞き入っている。
「ロマンチックだわ。映画が一本作れそうね」
松子は微笑みを浮かべてうなずいた。
「あの時は本当、夢見心地だったわ。……でも、良い事ばかりは続かなかったの」
――その時の彼女は、二十五歳となっていた。
清弥の強い希望で、来住野家の両親に結婚を認めて貰うよう、挨拶に行ったのだったが……。
「父はああいう人でしょう? 彼を門前払いしてしまったの。……で、私はひとり残されて、お腹の子を無事産むまでは帰さない、来住野家の跡取りだからって」
「――土蔵に、入れられたのですね?」
零の言葉に驚きを見せた松子だったが、すぐに悲しい笑顔を浮かべた。
「そうよ。そんな状況だから、私は心を病んでしまって。……流産したの」
「許せないわ。女を何だと思ってるのかしら」
桜子が憤慨する。
「それにね、流産のせいで、子供が産めない体になってしまって。……さすがに辛くて、それからしばらく体調を崩してしまったわ」
「清弥さんにご連絡は?」
「土蔵にいる時は、させて貰えなかった。でもそのうち、心配して来てくれたのよ。父の制止を振り切って」
松子は思い出に浸るように夕空に目を移した。
「彼の姿を見たら、私、心を奥にわだかまっていたもの全てを吐き出すみたいに泣いてしまって。……でも、それでスッキリしたのね。現実と向き合う事を決めたの」
……ここまで、亀乃の話と完全に合致する。零は目を細めた。
「この先どうするかを、彼と私と父で話し合ったの。父は、子供の産めなくなった娘の責任を取って貰うって、彼に迫ったわ。でもそれは、私たちの希望でもあったから問題はなかった。それから父は、子供の産めない夫婦に家督は譲らない、私が彼にお嫁に行く形にするって言ったの」
「しかし、同じ敷地でご同居になっています。それはなぜですか?」
「……私が、役者を引退したいって、彼に頼んだのよ。これ以上役者を続けていけば、有名人夫婦なんだし、子供はまだか、なんて話が出るでしょ? それに耐えられなくて。それには、東京から離れたここの方がいいだろうと。……彼はしばらくは、東京に通いながら役者を続けていたわ。でも……」
松子は顔を伏せた。
「いつの間にか、主従が逆になってしまっていたのよ。最初は、私が彼の引き立て役だった。でも、私が引退する頃には、彼が私の引き立て役になっていたの。だから、もう、舞台に彼の居場所はなかった」
閉じた松子の目から、涙が一筋流れ落ちた。
「……その現実を知った彼の心は、私から離れてしまった。毎晩のように飲みに出掛けて、女をあちこちに作っていたのも知っていたわ。――でも、私には何も言えなかった。私のせいで、彼は、役者でいられなくなったんだもの」
零も桜子も口を閉ざす。目を伏せたまま、松子は続けた。
「そりゃあ、私も彼を恨んだわ。嫉妬したわ。……でも、どうする事もできなかった。そんなわだかまりを抱えたままの、二年間の結婚生活。辛かった……。――でもね」
涙に濡れた目を、松子は遺影に向けた。
「失って初めて気付くものって、本当にあるのね。……そんな関係の夫婦だったけど、私は彼を、心から愛していたのよ。今さら気付くなんて遅いと笑って貰って結構よ。――私、生まれて初めて、悲しいと思ったの」
すっかり夜闇に沈んだ百合園は、漆黒の闇に包まれていた。夕方から雲が出て、月夜を覆い隠しているのだ。
古井戸にも天狗堂にも、もう見張りの警官はいない。犯人が逮捕されたためだ。
離れに電気は通っておらず、行灯の灯で照らされた室内では、零が六畳の端に置いてある長持を机に、何やら書き物をしていた。
桜子は、広大な闇を縁側で眺めながら、大きく溜息を吐いた。
「……辛すぎて、何と言っていいか、分からなかった」
先程の松子の話である。しかし零は、乾いた口調で答えた。
「あれは彼女の中の物語です。全てが真実であるとは限りません」
「酷い言い方をするわね。彼女の涙を見なかったの? ……薄々気付いてはいたけど、やっぱりあなた、冷血よね」
「何とでも言ってください。……しかし、彼女の言葉には、物語以上の闇が潜んでいるような気がしてならないんですよ」
湿気を含んだ夜風が肌を刺す。少し身震いすると、桜子は雨戸を閉め、六畳へ入って行く。そして、零が書いているものを眺めて目を細めた。
「何これ?」
「登場人物の相関図です。……松子さんを、主人公とした場合の」
紙切れを埋める名前の数々。その名前同士が、血縁によって線で結ばれている。……松子と線で繋がれているのは、十四郎と、寒田ハン。そして……。
「竹子さんと梅子さんのところに、線がないじゃない?」
「はい。……もしかしたらと、昼間から考えているのです」
零はおもむろに鉛筆を取り上げ、竹子と梅子の上に線を繋げた。それを見た桜子は、悲鳴に近い吐息を漏らした。
「……嘘、よね」
「そうであって欲しいとは思います。しかし、状況がこれを指しているように、思えてならないのです」
――七月二十六日。
昨夜帰って来た来住野鶴代は、百々目に見せられた手毬に手を伸ばし、取り上げた。
「これは、あなたのものですか?」
だが鶴代は返事をせず、慣れた手付きで毬遊びを始めた。手毬唄と鈴の音が食堂に響く。
「――そのようですな」
赤松が呟いた。
犬神零は、朝露に濡れたつづら折れを下りていた。
今日はひとりだ。……桜子に聞かせるには、あまりに辛い内容になるだろうと、彼女には黙って出てきた。
夜遅くに降った雨露が、つづら折れを囲む薮に茂る笹の葉に滴っている。
つづら折れから眺める水川村の家々は、濡れた屋根を朝日にキラキラと輝かせていた。……それらを見下ろす山の中腹に建つ、コンクリートの宮殿。零はそれに目を向けた。
――そこに、真相への道は隠されている。
彼は確信していた。
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